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メタルスライムの使い方


 私たちは道中に出てくるモンスターを狩りながら坑道の奥へと進んでいた。
 かなり移動したつもりだけどボス部屋まで未だたどり着いていない。
 坑道の中なので気づかなかったが、今歩いている道もさっき通った道のような気がしてならない。


 「おかしい」
 「どうしたのよ、ヒロキ」
 「なんだか、さっきから俺たち同じところをぐるぐるしていないか?」
 「ん~確かに。言われてみればさっきもここを通ったような、通ってないような…」


 ヒロキもおかしいと思ったのだろう。立ち止まってみんなにそう言うと、みんなも「そう言われると確かに…」といった感じで立ち止まる。
 私はメタルスライムを追っていた時のことを思い出し、何か道はないかと探す。

 (そういえば、私が前に来たときはメタルスライムを追って4時間くらい探し回ったけど、その時もボス部屋は見あたらなかったな……。ん?ちょっと待って。あの時って確かメタルスライムを追って、壁に追い詰めたはいいけど……あ!)


 「ヒロキヒロキ!」
 「どうしたんだマチ?」
 「下だよ、下!」
 「下がどうかしたの?」


 私は、ヒロキたちに一度ここに来たことがあって、メタルスライムを追っていた時のことを話した。


 「なるほどね。でも、そんなこと攻略情報には書いてなかったわよね」
 「ああ、坑道を進めば良いとしか書いてなかった」
 「間違ってはいないけど、もうちょっと情報書いてくれてもいいんじゃない?」
 「全部教えられたら、それはそれで面白くないけどな」
 「まぁ、それがゲームの醍醐味だしな」
 「確かに」

 「じゃあ、マチの言う通り、メタルスライムを見つければいいんだな?」
 「うん」





 「いたぞ!」
 「行き止まりまで追い詰めろ!」


 メタルスライムを探し始めてから30分後くらいには見つけることが出来た。私の時は4時間以上も見つけることが出来なかったのに。解せぬ…。
 メタルスライムを倒さずに、前と同じように壁際まで追い詰めていった。
 すると、メタルスライムが追い詰められたのを悟ったのか、体が光に覆われていった。


 「避けて!」


 私の掛け声とともに、みんなその場から素早く離れる。
 一歩遅れて、私たちがいた場所目掛けてメタルスライムが猛スピードで突進してきて、激しい轟音が坑道内に響き渡った。


 「もう少しその場から距離をあけて!」


 みんなが私の声に反応して距離を取る。
 メタルスライムは地面と衝突した衝撃に耐えきれずに消滅していた。
 メタルスライムとぶつかったところにはクレーターが出来、ところどころ小さな罅割れが入っていた。しばらくすると、その罅割れが大きく広がっていき地盤が崩壊して下へと落ちていった。


 「おお、本当に下に道がある」
 「下が暗くて見えないけどどのくらいの深さがあるんだこれ?」
 「ん~、私が落ちたときは死ななかったし大丈夫じゃない?」
 「ちょっと、シュン。そんなに身を乗り出して覗いてたら落ちるわよ?」
 「へっ。これくらい大じょう……あ」


 シュンがリンの忠告を無視し、身を乗り出して下へ続く穴を覗いていると、シュンが手を付いてる地面が重さに耐えきれずに崩壊した。
 体重を前に傾けていたのが災いして、足場がなくなったシュンはそのまま下へと落ちていった。


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!」
 「あのバカ…」
 「まぁ、マチが落ちて生きていたんならシュンも大丈夫だろ」
 「そうね」


 落ちていくシュンに対して、ほら見たことか、とこめかみを抑えているリン。
 私は落ちていくシュンに対して、無言で合掌しておいた。
 悲鳴が聞こえてすぐに「ぐぇ」と地面に落ちた音が聞こえたから、そこまで深さがないことが確認できた。

 「よし、シュンのおかげで安全も確認できたな」
 「じゃあ、私たちも行きましょうか」
 「うん」


 先にヒロキが穴に飛び込んで行って、私たちも後に続いて穴に飛び込んだ。


 「ぎゃ!ぐあ!げふ!がは!」
 「あ、悪ぃ」
 「ごめん!」
 「ごめんね」
 「あら、いたの?」
 「だ、大丈夫?」
 「だてにタンクやってるわけじゃねぇから平気だぜ…がふ」


 私たちが落ちた先にシュンがまだいたようで、みんなで踏みつけてしまったらしい。私は慌ててシュンの上から飛び降りる。
 シュンが無事か確認し、本人は無事だと言うが…うん、大丈夫じゃないね。吐血してるし。


 「シュンには自動HP回復スキルがあるから、このくらいの傷なら大丈夫だ」
 「そうなんだ、良かった」
 「もうちょっと心配してくれてもいいんじゃなねえか?」
 「あんたは頑丈さが売りなんだから心配なんかしないわよ」


 シュンがすぐに立ち上がったところを見ると、本当に心配の必要はないようだ。


 「奥へと続く道があるようだな」
 「この先の奥にボス部屋があるんだな」
 「なんか緊張してくるわね」
 「まだ戦うわけじゃないんだから、今ここで緊張しても仕方がないだろう」
 「そ、そうよね。よし、奥へと進みましょう!」





 しばらく歩き続けていくと、広大な空間が広がっている場所の前まで来た。


 「この先がボス部屋みたいだな」
 「そのようね」
 「気を引き締めていくぞ!」
 「おう!」
 「勿論!」
 「ええ」
 「うん!」


 私たちは、ボス部屋に入ったら相手を迎え撃つためにすぐに迎撃態勢を取る。ボス部屋は坑道の中と同じように弱く輝く鉱石が光源のため、フロア全体が見通せない。
 私たちは、いつ攻撃が来てもいいように体勢を崩さないようにしてじりじりと中央までつめていく。


 「ボスの姿が見当たらないな」
 「油断しちゃだめよ」


 ボスの姿を探していると、私の足元に転がっている石ころが、カタカタと音を立てて揺れ始めた。
 私が怪訝にその様子を見ていると、石ころだけじゃなくフロア全体にまでーゴゴゴゴゴと揺れが広がり始めた。


 「気を付けろ!ボスは地中だ!」


 ヒロキの怒声とほぼ同時に、地中から——ドォォォォン!と巨大な何かが飛び出した。

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