異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

第一夫人としての気高さと脆さ

ユート達がニュクスの街へ向かって二ヶ月が過ぎた頃
イリーナ達に任せていた街開発も充分人が住め、ある程度不自由の無い暮らしが出来るまでに進んでいた

そして、ディオニスから出されていた条件の半年が流れた為
現在イリーナとレイカはシオンの馬車を借りて王都に向けて馬車を走らせていた

「ユート君がいないけど…大丈夫かな?」
レイカはこの場にユートがいない状況に対して苦笑する

「仕方あるまい…ユート殿にはやらなければならない事があるのだろう」
「それに…夫がいない時こそ妻である私達が頑張らなければならない」
イリーナはそう言ってレイカに微笑みながら諭す

「イリーナさんは大丈夫なの?」
「イリーナさんは本来なら安静にしてなきゃ駄目なんだからね?」
レイカはそう言ってイリーナのお腹の赤ちゃんを心配する
妊娠して約半年が経っている為お腹の膨らみが目立ってきていた

「私としてもユート君が帰って来るまでは期限を先延ばしにしてもらう様にディオニスさんに頼んだ方が良いと思うんだけどな」
シオンはそう言ってイリーナに言うがイリーナはその申し出を断った

「ユート殿は私達に開発を任せて行ったのだ…」
「私達はそれに応えるだけだ…」
イリーナがそう言うとちょうど王都に着いたようだ
王城の騎士にエスコートされながら馬車を降りたイリーナ達は謁見の間に連れて行かれた



謁見の間に行くとディオニスとガストロが先に座って待っていた
イリーナ達は先にいるとは思ってもいなかったので慌ててその場に座り経緯を示す

「堅苦しい事は抜きだ…ところで…ユートはどこだ?」
ディオニスはイリーナ達に楽にするように言った後、事の本題であるはずのユートがいない事に気付き質問をぶつける

「ユート殿は今どうしても外せない用事がある為、第一夫人である私が参上いたしました」
シオンとレイカが席に付いたあとにイリーナは改めて深くお辞儀をする

「ほぅ…ユート殿は此度の件は取るに足らぬ件だとお思いで?嘆かわしい限りでありますなぁ…」
ディオニスの隣に座っていたガストロが顎に手を添えてニヤニヤと笑う

「さては…間に合わなかったのですな?」
「それで自身の口からは言えず何人もいる妻の一人を遣わせて自分はどこかに雲隠れした…ディオニス王よ、これは由々しき事態ですなぁ」
ガストロは立ち上がりイリーナの隣に行ってあごを掴んでイリーナの顔を見入りながら次々と言い始める

「違う!!開発自体はちゃんと人が住み…そしてある程度は快適な暮らしが出来る様に完成させた!」
イリーナはガストロの手を払って半分怒鳴り声でガストロに反発する

「どうかな?口ではどうとでも言えるからなぁ…?」
「そもそもが間違っているのだ…一介の冒険者風情が街を統治するなど不可能なのだ…今すぐ田舎にでも帰るが良い哀れな娘よ、あぁ無論私の土地を返却した後になぁ?」
ガストロはイリーナを嘲笑する…ガストロにとってはイリーナ程度は取るに足らない小娘という認識であるからだ…


隣でずっとガストロの言葉を聞いていたレイカは腰に帯刀していた不知火に手を掛けてガストロの首に狙いを定めるが…シオンに止められる

「ガストロ氏、いい加減にしてください」
「貴方の言葉を完全に否定する事は一介の商人風情の私には出来かねますが…最後の一言は完全否定させていただきます」
「あそこは既に貴方の土地ではありません」
シオンの言葉にガストロは反発しようとするが…シオンの言葉に間違いはなく言い返そうにも言い返せなかった

「付け加えるのならば…貴方にユート君をとやかく言う権利はありませんし…イリーナさんを嘲笑するなど…貴方様は人間として最底辺な物だの思いますが?それが貴族の礼法と言うものなのでしょうか?」
シオンのその言葉にガストロは完全に頭の血管が切れる程に怒り狂う

「貴様!このローレライ市を統治するこの私を…人間の最底辺だと…」
「許さん…許さんぞォォォォ!!!」
ガストロはそう言って懐にしまっておいたナイフを構えてシオンに襲いかかろうとした時

「『いい加減にしろ!!!』双方落ち着くのだ!」
「ガストロ、貴様をこの場に置いているのは此度のユートを貴族とする事に反対派の代表として一応いさせているだけだ!これ以上この場を汚す様であれば貴様の爵位を全て剥奪するぞ!!!」
ディオニスは先程から黙っていたが我慢の限界を迎えて怒鳴りつける

「す…すみません!!!」 
ガストロはディオニスに一喝されると大人しくまたディオニスの隣に座る

「イリーナ夫人…非礼を詫びよう…すまなかった」
ディオニスはそう言ってイリーナに頭を下げる
それを見たイリーナは慌ててディオニスを止めるがディオニスは止めなかった

「頭を下げるのはごく当たり前な事だ」
「私が同席させた者が犯した事だ…私が謝るのは本当にごく当たり前な事なのだ…否、そうしなければ私の気が収まらない」
ディオニスがそう言うとイリーナは謝罪を受け入れなんとかディオニスを止めさせた

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