異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

運命の出会いと一触即発

金剛玲華が佐藤優翔と出会ったのはあの事故から3年前の七月、暑い夏の日であった

「毎日毎日熱くて頭がおかしくなりそう…」
「人混みを避けて行こ…」
玲華は夏の暑さにうんざりしており、そこにうじゃうじゃと人がいる場所を通れば頭から煙が出ると思っていたので人通りが少なそうな裏路地から刀を研ぎに行く事にした

裏路地を歩いていると何処から男のでかい声が聞こえてくる
「テメェ!何涼しげな顔してんだこらぁ!」

玲華はその性格柄、人が困ってそうなら助けないと気が済まないのだ
声が聞こえた方への向っていると次に聞こえてきたのは人が何かに勢い良くぶつかる時に出る音が聞こえてきた

「間に合って…」
玲華は先程の声は恐らく道行く人に不良がカツアゲしようとして裏路地に連れてきたのだろうが早く金を出さない為殴り飛ばされたと思った

「大丈夫!今助けるか…ら…」
玲華は最後の曲がり角を曲がり腰に携えていた刀に手を掛け出てくるがその光景に目を疑った

先程の声の主と思わしき巨体の男はゴミ箱に頭から突っ込まれ気を失い、その舎弟と思わしき三人は仲良く床で寝て、一人は被害者の男によって顔を掴んで持ち上げていた

「あー…もしかして俺を助けに来てくれたみたいな感じか?」
「なら大丈夫だ、見ての通り俺一人で片付けたから、ここまで来るのお疲れ様」
その男は中学生だろうか、片手をポケットに突っ込んで玲華をジッと見つめる

「その人を離しなさい、もう充分痛めつけたでしょ」
持ち上げられている不良は既に腕の骨が何本か折れているのだろうか、顔は手で隠れて見えにくかったが涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている

「断る、こういうのはちゃんと心にトラウマ持たせる程後悔させないとまた同じような事を繰り返すだろ?」
「これ以上被害者を出させない為にはこいつにはもう少し痛い目にあってもらわなくちゃ」
被害者の男の瞳に光は無く、言っている事は真っ当そうに聞こえるが
その本音としては何かに暴力という名の八つ当たりがしたいだけに見える

「もう一度だけ言うわ…その男を離しなさい」
玲華は内に秘めたる獣のオーラで男を威圧し命令に従わせようとするが

被害者の男の答えは
「嫌だね、それに俺より弱い奴が命令するな」

被害者の男がそう答えてる内に視界は180度反転して頭から地面に激突した

「これで満足?あなたその格好からして中学生ね?あまり大人に大きな態度しない方が良いわよ」
玲華は不良を掴んでいた手を掴みあげて投げ飛ばしたのだ

「うるせぇ奴だ…」
その男は起き上がり玲華に襲いかかるが玲華は攻めに対し軽々と受け流したり小突いたりなどで対処している

「……ムカつく…何で当たらねぇ」
被害者の男はどんどん攻めの手を増やしたり一つ一つの手が鋭く強靭な物に成長していく

「この子…世に言う天才って奴か…成程ね」
玲華は再度被害者の男の腕を掴み、背負い投げの姿勢に入るが被害者の男はあえて飛び上がり玲華が投げ終わる前に地面に着地して逆に玲華の腕を掴みあげて地面に振り下ろす

玲華は顔面から地面に激突し鼻血が出てくる
「いっつ~…」

「何だこいつ…初めてだ…俺がキメにいったのに全然効いてねぇ…」
被害者の男は狼狽えていた
普段から喧嘩でも格闘技でもこの男がキメに行けば必ず仕留めていた

しかし、玲華はキメに行った攻撃を受けてなお立ち上がり余裕の表情を見せているのだ

「君名前は?」
玲華は鼻血を拭き取り優翔に尋ねる

「優翔…俺の名前は佐藤優翔だ」


これが玲華と優翔の初めての出会いであり
これから続く長い戦いの幕開けとなった



そんな出会いから一ヶ月程経ったある日の事
玲華がいつもの様に誰もいない道場の雑巾がけをしていると道場の表の扉から誰かが入ってくる

「君は…確か佐藤優翔君ね」
玲華は掃除の手を一旦止めて優翔の方を向く

優翔は道場の庭が一望出来る縁側に案内され寛いでいる様に言われ素直に座って待っていた時にふと疑問に思っていた事を口に出す

「なぁ、なんで掃除なんかしてんだ?誰もいないんだしサボっても怒られはしないだろ」

「さぁ何でかな…別に気にした事無かったからなぁ…日課ってやつ?」
玲華はお茶を汲んで持ってくる
その表情は優翔は初めて見る温和な顔をしており、つい優翔は視線を逸らしてしまう

玲華は優翔の隣に座りお茶をすす
そして少しの間空を見つめた後玲華は優翔に質問する

「ところでこんな辺鄙へんぴなところになんの用かな?」

玲華の道場は優翔が住む東京から遠く離れた県の山奥にひっそりと佇んでいるのだ
たまたま近くを通ったからという決まり文句は通用しない

「お前…何であの時本気でやらなかった」
優翔は玲華の質問に素直に答える

「本気って…一体何の事よ、私はいつだって本気の本気で…」
玲華は図星を突かれたのを誤魔化すようにお茶をすす

「あの時…お前は腰の刀を使わなかった…俺は本気で戦うに値しないってかよ」
優翔は道場の奥の刀掛けに掛けてある刀を指差しながら玲華に問いかける

「いやそういう訳じゃ…」
玲華は話を逸らそうと色々と話を持ちかけるが優翔は全てを突っ張って聞いてくる

「…だって…丸腰の相手に武器カタナを使うなんてズルじゃないか」
玲華は諦めたように正直に話す

「じゃあ俺も武器を持てばちゃんとやりあうんだな?」
優翔はそう言いながら立ち上がる

「え?まぁそうなるけど…」
玲華は状況が飲み込めず優翔を黙って見つめている

すると優翔は道場の奥に置いてある竹刀を持ってきて構える

「これでお互いに武器を持って対等だろうが…本気でやれ…勝負をつけないで逃げるつもりかよ」
優翔は意地になっていたのだ
初めて地面に頭をつけられた感触
そして初めて相対した自分と対等…いやそれ以上に殺り合えるかもしれない相手を見つけたのだ

「ちょっと待ってよ、君武器を使った戦いは初めての筈でしょ?構え方変だし」
基本的に剣道では中段の構え又は上段の構えが普通だろう
しかし優翔の構えは普通の試合なら決して見ないと言われている『下段の構え』をとっているのだ

「これからやるのは剣道の公式試合なんかじゃないんだよ」
優翔はそう言うと濃厚な殺気が道場内を充満させる
仮に一般人がこの近くを通ったら殺気に当てられ気絶するレベルだろう

「…解った…但し条件がある、先に相手に一撃与えた方の勝ちという事にしましょう」
玲華はそんな優翔の殺気を間近で強く感じ感化された
しかし流石に優翔は竹刀なので玲華も竹刀を取ろうとするが

「何やってんだよ、お前は自分の愛刀使えよ…本気でこいって俺は言ったんだ」
優翔は鋭く睨みつけ玲華の行動を中止させる

「……はぁ~…解った解った…だけど…後悔しないでね」
玲華は刀掛けに置いてあった刀を持ち構えた

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