異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

異形の姿とカリスの夜明け

俺は殺気を発する
部屋全体に充満させるほど濃厚な殺気を発する

シャウラは呼吸が出来なくなっていた
いや…正確には出来ているのだが、そう錯覚させるほど息が苦しくなっていた

俺の近くにいた四人に至っては気絶している
パサルとガモウはかろうじて意識を保ってる感じだ

「なに…なに本気で怒ってるのさ、たかが亜人種二人とホムンクルスが一つを芸術品にしただけじゃ……」
シャウラは必死に挑発するが

『黙れ』
俺の一言で全てが消える

俺の心臓の鼓動が早まる
アドレナリンが大量に分泌される

『お前はやってはならない事を犯した、償え』

シャウラに向かって黒い小さな炎を投げる

「は…ハハ…なによ…脅しておいてその程度の火力の魔法?笑わせるんじゃないわよ!」
シャウラは氷魔法でその黒い小さな炎を凍らせるが
氷はスグに溶けまたシャウラに近づく

「なによ…この炎……」
そうして黒い小さな炎はシャウラに触れる
すると、シャウラの全身を包み込む様に黒い炎が燃え上がる

「アァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
シャウラの悲痛の叫びが響く

『処刑魔法ー大罪を罰するは地獄の炎パニッシュメント・ヘルフレイムー』
闇属性魔法と火属性魔法の合成魔法
火属性魔法によって対象者に着弾するまでは決して消えなくなる
そして闇属性魔法によって死ぬまで…いや死んでも永遠に燃やし続ける

「私は…こんなところで…死ぬ訳には……」
シャウラが息絶えようとした、その時

『ー聖なる癒しの光ホーリー・キュアライトー』
光属性魔法の回復魔法の一つ
圧倒的回復量を有し、死や呪い以外の状態なら治すことが出来る

「なにを……」
シャウラはまた闇の炎の苦しみを味わう
「アァァァァァァァァ!!!」

そしてまた死にかけたら回復させ…死にかけたら回復させ……
それを延々と繰り返す
何十回…何百回…何千回と……

シャウラは悲鳴をあげなくなった
もう思考が停止しているのだ
こうなったら歩く事もままならない

「ユート殿…もうシャウラは息をしていないぞ…」
ガモウに言われて気づく

おかしいな……
俺は何度も回復魔法をかけるが指先一つ動かない

「もう細胞が…細胞の一つ一つが生命を維持するのを諦めたのね…」
パサルは気の毒そうにシャウラを見下ろす

そこでイリーナとリーザスは目を覚ました

しかし俺はそんな事に目もくれず
シャウラに禁忌とされる蘇生魔法をかけようとする

細胞が生きるのを諦めたとしても…こいつの罪は拭いきれない
もっとだ…もっと苦しみを…こいつに味合わせなければ…
アルカ達の魂が浮かばれない

「ユート殿…気を確かに持て…」
イリーナは俺にしがみつき俺を止めようとする

『離せイリーナ…俺はあのシャウラにもっと苦痛を与えなければ…』

「ユート殿!これ以上ユート殿のそんな姿を見たくない!目を覚ましてくれ!いつもの優しいユート殿に!」
イリーナは泣きながら俺にしがみつく

俺はそんなイリーナを引き剥がそうとイリーナに手を伸ばした時
知らない手がイリーナの頭を掴んでいた

誰の手だ…この黒くて異形な手は……

その手を辿ると…その先は…俺だった
そこで俺は今の自分の姿に気づく

肌が黒く変色し、血管が脈を打ちながら浮き出ている

『なんだよ…この姿…本当に…俺なのか?』
声が物凄く低くなっている
今の俺は例えるならば…

『鬼』であった

「ユート殿!それ以上変わらないでくれ!私達をおいてどこかへ行かないでくれ!」
イリーナは力強く俺の服を握りしめる
しかし、その手は震えていた
今の俺の姿は怖いのであろう、逃げ出したいのだろう

だが、イリーナはこう思っていたのだ
(今この手を離したら…ユート殿はどこか別の場所へ行ってしまうかもしれない…もう私は…何も失いたくない…)

『イリーナ…』
そしてリーザスも俺に飛びつく

「ユートさん!私からもお願い!帰ってきて!イリーナを…アルカちゃん達を…これ以上悲しませないで!」

『リーザス……』

そうだ…シャウラに構ってる暇は無い…
はやく…はやくアルカ達を治さなければ……

俺は全身に力を込める


すると胸の奥から声が聞こえてきた

『なんだよ…まだまだお前の怒りは収まってないだろ?』
俺の声だ…いや…正確に言えばもう一人の俺とでも言うべきか…

「もうこんな事を続けても時間の無駄だ、アルカ達を治すぞ」

『……解った、今は大人しく戻ってやろう…また会える日を楽しみに待ってるぜ』
そう言うともう一人の俺は消えていった



俺の姿が戻っていく
黒かった肌も白くなり、浮き出た血管も静まっていく

「ユート殿?戻ったのか?」
イリーナが恐る恐る俺の顔を見る

「……心配かけたなイリーナ、すまなかった」
俺はイリーナとリーザスの頭を撫でながら謝罪する

するとイリーナとリーザスは全身の力が抜け地面にへたり込む

「さてと…まずはアルカ達だな……」
俺はアルカ達の側に近づいて試しに『聖なる癒しの光ホーリー・キュアライト』を使ってみるが、何も起きない

「どうやら何かの呪いの一種の様だな…」
呪い…となれば解呪の魔法か…
しかし『解呪ディスペル』を使うも何も起きない……

「うーん…どうすれば良いんだか……」
俺は頭を抱えて悩んでいると

「教会のシスターに解呪してもらえば?シスタークラスならこの呪いを解けるかもしれないしね~」
パサルがやっと意識をしっかりと取り戻した様だ

シスターか…しかし…俺達は今お尋ね者なんだよな…シスターの知り合いなんて一人も…
あっ…いたわ…でも…いや…案外いけなくも…
だったら先にお尋ね者だという問題を解決するか

「ごめんなアルカ…ドーラ…あと…ゼロだっけな?もう少し氷像で我慢してくれ」

俺は無限収納アイテムボックスに入れようと試したところ入ったのでしばらくは入れておく事にした



俺、イリーナ、リーザス、パサル、ガモウは玉座の間の奥にあるカリス国を一望出来るテラスに出る

「……そろそろ夜明けだな」
東の方から日が差してくる

「なんだか…一瞬に思える夜だったわ…でと長くも感じる夜でも…あ~!自分でも意味が解んない!」
リーザスはそうなげいている
まぁそんな事を思うのも無理はないな
それだけ濃い夜だったのだ

「それではユート殿、今後お前らはどうするのだ?」
ガモウが俺に質問してくる

「…まだBTP作戦は終わってねぇよ、いいか?作戦ってのは全員無事に帰るまでが作戦だぜ?」
俺はガモウの方へ振り付きニヤリと笑う

そんな俺の顔を見たガモウは視線を逸らす
なんか変だなガモウの奴……

「さぁ~てと…それじゃあ、みんなで楽しくエンディングを迎える為のイベントをこなすとしますか!」

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