異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

電光石火と思い出のロケット

「ば…ばかな…なぜ貴様が生きている、確かにこいつのナイフはお前の急所を貫いたはずだ…」
ダリウスが切り飛ばされた方の左腕を抑えながらアルカに問う

「教えて欲しいですか、これですよ」
そう言うとアルカは首にかかってたロケットをかかげる

「ばかな…そんな小さな物にナイフが当たる訳ないだろう!」 

「そうですね、確かにここに当る様に避けるのは大変でしたよ」
アルカはそう言った後にニヤける

「私の死に真似も捨てたものじゃないですね」
アルカが嘲笑しながら言うとダリウス達は怒り狂いアルカに襲いかかる

「この数は一人では捌ききれませんね…今の段階では…」
変化解除リリース

アルカの姿が変わる
元の獣人族の姿に

「テメェ!亜人種だったのか!」
襲いかかってきていた奴らは一歩距離を置く

「えぇそうですよ、逆に獣人族の人が最初から元の姿で戦うと思いますか?」
アルカはその間にデュアルパラリシスを抜き、魔法効果付与エンチャントをかける

「あなた達の様なゲスにかける情けはありません、『あなた達を始末します』」
そう言うとアルカは姿を消した

「き…消えた!」「どこに行きやがった!」
下っ端共が辺りを見渡す

「ばかやろう!上だ!」
ダリウスが部下に言うが瞬間、部下の頭と銅は二つに割れていた

「あなたで最後です」
後ろから声が聞こえる
ダリウスは背後を斬るがそこには誰もいない

「どこを見てるんですか?下ですよ」

「ばかな…このダリウスが…こんなガキに…」
最後まで言い終わる前にアルカは身体を二つに割くように斬り捨てる

「弱いですね…所詮この程度ですか…」
アルカが少し残念そうにため息を吐いた後
また変化魔法を使い、いつもの姿に戻る


「ドーラ!リリカちゃん!大丈夫ですか!」
二人の方を見ると

「大丈夫っす、いやー…アルカ様の本気って凄いっすよ、まさに電光石火の早業っすね」
ドーラが体についたホコリを払う

「ドーラの服は布の性質を持ちながら、金剛の鎧の硬度を持ってるっす、ナイフ如きじゃ傷一つつかないっすよ」

「良かった…リリカちゃんは!」
アルカはリリカの方を振り向くとそこにリリカの姿は無かった

「あんな傷で動くなんて……ん?これは……」



「はぁ…はぁ…」
リリカは倉庫を出て港のボートに乗りこの場を脱出しようとしていた

「あんな人達に殺されるくらいなら…惨めに生き延びて生き恥晒した方がマシよ…」
ボートまで後少しのところで呼び止められる

「待ってリリカちゃん!話を聞いて!」
アルカお姉ちゃんの声だ

「私達は王女様なんて殺してない!私達は王女様をこの国に返しに「解ってますよ!」…え……」
リリカの叫びが港を駆け巡る

「解ってたんですよ初めから…あなた達は王女様を殺してないって…でも…でも…あぁするしか無かったんですよ!」
リリカは半泣きになりながら声を荒らげる

「解ってたんですよ…でも…もうやめるなんて事…出来なかったんですよ…」
「私は王女様のあの死体はすぐにダリウスだと気付いてましたよ…でも…私の力じゃあいつらには適わないんですよ…」
「あなた達に解りますか…大好き人を知らない場所で…奪われる悲しみを…」
「あなた達に解りますか…大好きな人が偽物だと知っていても…苦しみ冷たくなっていく姿を…」
「あなた達に解りますか…大好きな人達をこの手で息の根を止める瞬間のあの目を…怨念がこもったあの目を…」
リリカが心の底からの叫びを発する

「解りますよ…その気持ち…」

「解りっこない!」

「解るよ…私も…そうだったから…」
アルカがリリカに近づき手を握る

「苦しかったよね…辛かったよね…逃げ出したかったよね…」
「でも…周りがそれを許さない…逃げるなって言ってくるんだよね…」

「何知ってるような口を…」
リリカが反論しようとしたその時

「もう大丈夫だよ、逃げても良いんだよ_…泣いても良いんだよ…」
アルカがリリカの頭をそっと撫でる

その瞬間、リリカの中の何かが音を立てて崩れ落ちた
「うわぁぁぁぁぁぁん…辛かった…もう逃げ出したかった…でも…私は既に色んな人を殺してきた…なのに逃げるだなんて許されなくて…エグッ…ヒッグ」
嗚咽混じりの涙を流す

「よしよし辛かったのですね…でも、もう大丈夫ですよ…」
アルカはリリカを包み込む様に抱きしめる


数分経った頃、リリカは落ち着いた

「すみません…胸をお借りしました…」
リリカは鼻をすすっている

「ねぇリリカちゃん、今回の事件の首謀者って解りますか?」

「首謀者…そう言えばあの人が王女様がいなくなってから城で一番の権限を持って、好き放題にしてる人が…確か名前は…シャウラだった様な…」
リリカがそこまで言いかけた、その時

ピピピ…ピッー…爆破まで残り十秒
リリカが着けていたチョーカーから声が聞こえる

「!?…なんの音ですか」
アルカが慌てていると

「……アルカお姉ちゃん…私、最後にアルカお姉ちゃんに会えて良かった」
リリカがそう言いながら微笑む

「え?リリカちゃん…何を言って……」

「少しの間だったけど…楽しかったよ…」
リリカがアルカを押しのけ、海の方へ這っていく

「リリカちゃん!待って!」
アルカがリリカを追いかけようとしたがドーラに止められる

「離してドーラ!リリカちゃんが!」

「もう無理っす!ドーラ達はこの場から逃げるっすよ!」
そう言うとドーラはアルカを担ぎ上げる

「リリカちゃん!リリカちゃん!」
アルカがリリカの名前を連呼する

リリカと姿が見えなくなった



楽しかったな…アルカお姉ちゃん…ドーラお姉ちゃん…
最後にいっぱい思い出をくれてありがとう…

ふと先程までアルカがいた場所にキラリと光る物が見える

「あれは…さっき撮った写真が入ったロケット…」
リリカは最後の力を振り絞り魔力を込める

「『ー冷却保存フリーズドライー』…これで、あのロケットは爆発に耐えられるはず…で…す…」
ロケットを氷の膜で守る

「お姉ちゃん達との思い出だもんね…壊す訳にはいかないよね…」

瞬間、半径二百数m程の爆発が起こった

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