2度目の転移はクラスみんなで(凍結中)

AdieuJury

五話

「さっきの言葉、一体どういうことなんだろ...それに、あのいじめを受けてたのに事情があるって...」
「へっ、きっと自分より強い聖剣だったから、僻んでんだろうよ。それにきっと小さな事情だろ?」
「信宏くん、でも...」

それにしては何か悲しい顔をしてたような...

その時ラルは口を開いた

「彼の言葉の意味を、知りたいですか?それと、なにが彼をあんなふうに変えたのかを...」
「「「え?」」」
「もっとも、私が話せるのは、彼から聞いた極わずかな話ですがね...多分三割くらいでしょう」
「それでもいいです!教えてください!」
「私も...彼と出会ってから少ししか時間は経ってないけど、あそこまで張り詰めている理由を知りたいです」
「今俺が言った理由じゃないんだな?なら教えてくれよ、真実ってやつをさ」

ラルは少し悩んで

「......わかりました、ご友人のあなた方には言っておいた方がいいでしょう。では約束してください。このことは誰にも話さないでください。私の話を聞いたあと、彼に詳細を聞くのは構いません。ですが考えてからにしてください。知りたいから聞く...それが理由なら絶対に彼にこの話はしないでください。約束できますか?」
「はい!」
「は、はい!」
「おうよ!」

ラルの約束に三人は快く同意した
その後ラルは話し出した

「この話は、彼...ジン兄が召喚されたところから始まります」
「ジン兄?」
「あ、こう見えてわたし十二歳ですから、みなさんより確実に年下ですよ?」
「「「え!?」」」
「まぁそんな話は置いといて...」

あんまり置いとけないんだけどな...
十二歳でその胸って...

「私たちの世界では四年前、ジン兄と彼女・・はこの世界に召喚されました」
「彼女...ってことは召喚されたのは二人だったの!?」
「はい、名前は刈谷零かりやれい、ジン兄やコウキ君と同じ聖剣使いでした。」
「うそっ!?刈谷零って...私や仁と幼稚園からの幼馴染みじゃない!!」
「そうなの(まじで)?」
「えぇ、でも二年前に行方不明になってから、まだ見つかってないわ...そういえば、その頃から仁の様子もおかしくなったのよ。昔はあんなに元気だったのに...いつの間にか暗くなって、いじめられるようになって...」
「まぁレイ姉が見つからないのも、ジン兄がそうなるのも無理はないでしょう」
「どういうこと...?」
「まだわかりませんか?レイ姉はここ、ラウスヘルムで死んだのです。丁度召喚されてから一年後でしたかね...」
「「「死んだ!?」」」
「えぇ、魔族によって殺されたのです。その時ジン兄とレイ姉は二手に別れて行動していたそうです。ジン兄は竜の群れと、レイ姉はB級の魔物の群れと戦っていたらしいです。あ、ちなみにランクはF~SSまであります。Bランクの魔物自体は、それほど強敵ではありません、でも...そこに魔族が五人も現れたのです。それでジン兄がレイ姉のところについた時には、既に虫の息だったそうです。そのままジン兄の腕に抱かれながら、死亡したと私はジン兄から聞きました。その後は怒りに身を任せたジン兄はレイ姉を殺した魔族を殺すために、根絶やしにするために、魔王を殺すために、前よりより一層強くなることに執着しました。そして一年後、ジン兄は私たちと一緒に魔王を倒し、レイ姉の仇をとりました、ジン兄はその一年後にあなた達の世界に帰っていきました。なんでか一年は戻れなかったそうで...これが私の知っている真実です。」
「「「......」」」
「二人はとても仲が良かった、誰が見ても、とても幸せそうでした。だからこそレイ姉が死んでしまったことは、とても辛かったでしょう。それにあの時のジン兄はまだ力を使いこなせていなかったので、使うことを躊躇してました。レイ姉が死んだ後、ジン兄の目は確実に死んでいました。何をするにしても、修行以外には興味が無いように...仇をとったあとも大して変わりませんでした。それもそうです。魔王を殺したからといって、人が蘇る訳では無いですから。そのままの状態で帰れば、そのようなことになるのも当然だと言えます。そちらの世界でレイ姉が行方不明になっているのはこちらの世界で死んだことが原因です」

あいつにそんなことがあったなんて...

早瀬川はその話を聞いて涙を流した
自分ならそんな事があったら、耐えられるはずがない。
それに、今ここに来て昔の友人が死んでいたことを知り、深く傷ついていた
自分が一緒にいれば...その場に自分がいたら...運命は変わっていたのか
そんなことを考えながら泣いていた

そんな時、信宏が口を開いた

「ごめん、ラルさん。俺、あんたの前で最低なことを...」
「いいんです、もう過ぎた話ですから...」
「黒崎くん...そんな苦しいことが...」
「あいつ...そんなに悲しいことをかかえてたんだな...」
「なんとかしてあげないと...」
「でも、こればっかりは本人の問題でしょうか...」
「あぁ、俺達にはどうにもすることが出来ない」
「でも!」
「やめとけ早瀬川」
「なんでよ!!」
「お前は仁の心の傷の深さがわかってないのか!」
「そんなの...さっきの話を聞いて...」
「それだけじゃねえ!俺達は知らなかったとはいえ、あいつがいじめられないように心変わりを強要したんだぞ!それがあいつの心をどれだけ苦しめたか...それをわかってんのか!」
「っ!?」

そうだ
私達はなんて無責任だろう
私達は彼をいじめから守っている気になっていた
彼が心変わりすることは必要なことだと思っていた
自分なら、彼のことをなんでもわかってあげられると思っていた
でも現実は違った
私達は彼を守っていたのではない
ましてやわかってあげられたわけでもない
ただ、苦しめていたのだ
大切な人を失って傷ついた彼の心を抉るように毎日を過ごしていた
絶対に他人には話せない、親友にも話せない、幼馴染みにも話せないことを、一人で抱え続けて...それなのにいじめられて...私たちが声をかけても、話せないことなのだから余計に心苦しくなるだけ
いじめられないように守ってあげた
それも心の傷を増やすだけ
心変わりするように説得した
それは彼女を忘れろと言っているようなもの
心の傷は増える一方で、結局なんの意味にもなってないのだ
この世界に来て、昔の仲間達にも会えたからか、少し昔のやんちゃばかりしていた彼に戻ってはいる
でも、彼が彼女のことを乗り越えない限り、彼は元の世界に戻っても、今のままだろう
でも、今の私たちにはどうすることも出来ない
だって、今まで私達は彼のことを傷つけすぎたから
今更どう話せばいいかわからない
何が正しいのかわからない

「じゃあどうすれば...」
「今はそっとしておくのがいいと思うぜ?」
「そうですね...残念だけど、それしかできないね」
「そうしてもらえると助かります、今彼の心を壊されるのは困りますから、絶対にこの話を彼の前では話してはいけない...いいですね?」
「「「はい...」」」
「よし、じゃあそろそろ帰ろうか、そのまま背負われたままだとコウキ君が可哀想だ」
「「「あっ!?」」」

すっかり忘れてた!
まずは洸樹君を休ませないと...


仁...待ってなさい
私が何とかしてあげるから
今は何も出来ないけど...
力をつけて、あんたの隣に立ってやるんだから!
零ちゃんには負けないんだからね
零ちゃんもそうだったけど、私だってアンタのこと...
まぁ、今はそんなこと気にしなくてもいい
零ちゃんのことはそう簡単に忘れられないよね...
だからせめてすこしでも和らげるように
私がいることで少しでも笑顔になれるように
ちゃんと気持ちを伝えられるように
仁の隣にいて、恥ずかしくないように
強くなるから

「見てなさいよ...絶対に強くなって、支えてやるんだから...」

誰にも聞こえないような声で、美里はそういった......














......といいつつも

白「美里ちゃん...」
織「全部声に出してるし...本人気づいてないけど」
白「そうだね」
織「まぁ俺は黒崎のことはどうでもいいけどな」
白「私は...支えてあげたいな」
織「それってどういう...」
白「ん?そのままの意味だもん。わたしだって...」
織「そっか...頑張れよ」
白「うん!」

その後、洸樹を休ませてから

美「あ、そうだ!この話は洸樹君にはしないでおきましょ?」
白&織「「え?なんで?」」
美「だって、そんな事言ったらすぐ口に出しちゃうし、どうせご都合主義だから、その上でジンのことを注意しそうだし...例えば『いつまでも過去に囚われているんじゃない』とかね?」
白「確かにそうだね、正しいことだとは思うけど、今は心傷つけるだけだもんね。黒崎君の伝言だけ話して、それ以外は黙っておきましょうか」
織「お前ら...何気に洸樹の扱いひどくね?」
美&白「「え?普通でしょ?」」
織(...洸樹、強く生きろよ...)

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