覇王の息子 異世界を馳せる
これまでの曹丕 ②
「う~ん う~ん」
と関羽は馬車に揺られ、唸り声を上げる。
おそらく、曹丕がシンについて、関羽に詳細を知られなかったのは、婚約に反対されると考えたからではないだろうか?
事実、事前に知らされていたならば、関羽は反対していただろう。
年齢的には問題ないとしても、元の世界に戻る時に彼女をどうするのか?
連れて帰るのか?しかし、異国どころか異世界の者が御后とするには反対する者が多く出るのではないだろうか?
待ち受けているのは困難だと分かり切っている。ならば……
自分は祝福せねばなるまい。自分だけは、両者を祝福し障害を跳ね返す盾とならん。
1人、誰にも告げる事なく、ひっそりと関羽は誓った。
そんな関羽の気持ちを知ってか、知らずか、曹丕はいつも通りだった。
「そう言えば関羽殿。後ろの荷物に丸めた紙が入ってませんか?」
「むっ」と見れば、馬車の後方には、布で覆われている荷物らしきものがある。
その荷をまさぐって見ると、確かに紙が出てきた。
無造作に丸められた洋紙。
「……ありますな。これは何の紙で?」
「師匠が言うには、なんでも成績表だとか」
「成績表?ですか?」
関羽は洋紙を広げてみる。
成績表
曹丕 子桓
腕力 E 50
俊敏 B 199
耐久力 E 35
器用さ B 189
魔力 A 299
魔力耐久 c 属性耐久 B
総合判定 LEVEL 15 (現段階LEVELCAP到達)
「……」と関羽は無言で洋紙を見た。
意味が分からない。 いや…… 関羽も、この地で半年も過ごし、アラビア数字というものを理解した。それに、アルファベットと言われるものが数字のように成果を表現する値として使われるのは知っている。
しかし、このLEVELと言うのはなんであるか?関羽には見当すらつかない。
前から聞こえてくる「どうでしょうか?」という曹丕の言葉に「解らぬ」と関羽は短く素直に答える。
「どうやら、この世界の魔術師は、数字を使うのが好きなようなのです」
曹丕は笑いながら説明をした。
LEVELCAPと言うのは魔術師としての1段階目の到達点……という事らしい。
15 30 50 75 100
と増えていき、100に到達すれば魔術師として完成する。
ならば、曹丕は魔術師として第1段階の修行を終えたという事だ。
そこまでなら関羽は理解できた。
  魔力耐久や属性耐久というのは、執り行った儀式によって授かった恩恵だそうだ。
この世界の戦闘に使えるそうだが、こればっかりはみて見ないと関羽には想像もできない。
ともあれ、自ら『ドラゴン退治募集』の依頼を受けるくらい、自信をつけているのは確かなのだ。
そう思うと関羽は逞しく成長を重ねていく曹丕を嬉しく思う。
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