覇王の息子 異世界を馳せる
VSドラゴン ③
関羽は今、ドラゴンの口内に閉じ込められた。
それはさながら、台風の夜、荒れ狂う海に投げ捨てられたようなものであった。
上下左右の感覚もなく、視界は闇に閉ざされた。
体は滑りを含む水分、唾液に覆われている。もはや、呼吸ですら困難な状態。
関羽を知る者は信じないだろう。彼の口から悲鳴の声があがる事があるなどとは……
自身の身に何が起こっているか、正確に把握しているかも怪しい。
関羽は発狂したかの如く、青龍偃月刀を振り回す。
先ほどの技とは違い、武の道理から遠く離れた出鱈目な太刀筋。
ドラゴンの口内は柔らかい。しかし、それは鉄壁を誇る外装の鱗と比べての話である。
ドラゴンは人を捕食する。(現に関羽は食べられている最中である)
当然、ドラゴンを倒して名を上げようとする愚かな人間を食べる事が多い。
ならば、その時、ドラゴンは如何にして人を喰らうのか?
その武器を奪い去ってから喰らうのか?
―――——否。
その防具を脱ぎ取ってから喰らうのか?
―――――否。
その衣服を脱がし、整理整頓と箪笥にしまってから喰うとでもいうのか?
当然ながら―—————否である。
ドラゴンはそのまま喰らう。
鋼鉄の鎧も噛み砕く。鋼の剣も噛み砕く。
そう、抜き身の剣を口内で弄んでも傷がつかない強度を有しているのだ。
万全の状態ならまだしも、場所は狭い口内であり、文字通りに足が地につかない状態の関羽の技では、ドラゴンに痛みすら与えられない。
ドラゴンは、関羽を決して逃がさんと言わんばかりに口を閉じたまま、器用に舌を動かし、関羽を歯と歯―——牙と牙の間に送り込む。
まるで人間が口を閉じたまま、食べ物を咀嚼するのと同じように……
その牙はギロチン。ただし、上下同時から落ちる。
さらには首ではなく体、その物を切断するための凶悪なギロチンだ。
僅かながら関羽に伝わる刃物に近い感覚。その感覚を、その感覚だけを頼りに関羽はドラゴンの牙を回避しようとする。
だが———
関羽の背中に熱が走る。背中から尻にまで直線に走る高熱。
それが、痛みへ変化していく。まるで背中を切りつけられた痛み。
事実、関羽の背中は、ドラゴンの牙が肉を抉り取った痕が残り、血液が流れ落ちている。
「ぬっぐ!」
関羽の口からうめき声が漏れる。
しかし、ドラゴンの舌は、再び関羽を牙の間へと送り込む。
だが、しかし―——
奇しくも、鋭い痛みが関羽を―——
前後不覚の状態まで追い込まれていた関羽を―——
覚醒させる
漆黒の闇の中、視界は不要と目を閉じる。
自身を送る地面、これはドラゴンの舌。そこから、口内の構図を想像する。
狙いは一ヶ所のみ。放つは現状態をもって最良の一撃。
ドラゴンの舌の動きに抗わず……その一瞬を持って、脚に力みを入れる。
そして
その一撃は、関羽の狙い通りの場所を打ち抜く。
人間で言うなら口蓋垂と言われる箇所。
……つまりは、のどちんこである。
それはさながら、台風の夜、荒れ狂う海に投げ捨てられたようなものであった。
上下左右の感覚もなく、視界は闇に閉ざされた。
体は滑りを含む水分、唾液に覆われている。もはや、呼吸ですら困難な状態。
関羽を知る者は信じないだろう。彼の口から悲鳴の声があがる事があるなどとは……
自身の身に何が起こっているか、正確に把握しているかも怪しい。
関羽は発狂したかの如く、青龍偃月刀を振り回す。
先ほどの技とは違い、武の道理から遠く離れた出鱈目な太刀筋。
ドラゴンの口内は柔らかい。しかし、それは鉄壁を誇る外装の鱗と比べての話である。
ドラゴンは人を捕食する。(現に関羽は食べられている最中である)
当然、ドラゴンを倒して名を上げようとする愚かな人間を食べる事が多い。
ならば、その時、ドラゴンは如何にして人を喰らうのか?
その武器を奪い去ってから喰らうのか?
―――——否。
その防具を脱ぎ取ってから喰らうのか?
―――――否。
その衣服を脱がし、整理整頓と箪笥にしまってから喰うとでもいうのか?
当然ながら―—————否である。
ドラゴンはそのまま喰らう。
鋼鉄の鎧も噛み砕く。鋼の剣も噛み砕く。
そう、抜き身の剣を口内で弄んでも傷がつかない強度を有しているのだ。
万全の状態ならまだしも、場所は狭い口内であり、文字通りに足が地につかない状態の関羽の技では、ドラゴンに痛みすら与えられない。
ドラゴンは、関羽を決して逃がさんと言わんばかりに口を閉じたまま、器用に舌を動かし、関羽を歯と歯―——牙と牙の間に送り込む。
まるで人間が口を閉じたまま、食べ物を咀嚼するのと同じように……
その牙はギロチン。ただし、上下同時から落ちる。
さらには首ではなく体、その物を切断するための凶悪なギロチンだ。
僅かながら関羽に伝わる刃物に近い感覚。その感覚を、その感覚だけを頼りに関羽はドラゴンの牙を回避しようとする。
だが———
関羽の背中に熱が走る。背中から尻にまで直線に走る高熱。
それが、痛みへ変化していく。まるで背中を切りつけられた痛み。
事実、関羽の背中は、ドラゴンの牙が肉を抉り取った痕が残り、血液が流れ落ちている。
「ぬっぐ!」
関羽の口からうめき声が漏れる。
しかし、ドラゴンの舌は、再び関羽を牙の間へと送り込む。
だが、しかし―——
奇しくも、鋭い痛みが関羽を―——
前後不覚の状態まで追い込まれていた関羽を―——
覚醒させる
漆黒の闇の中、視界は不要と目を閉じる。
自身を送る地面、これはドラゴンの舌。そこから、口内の構図を想像する。
狙いは一ヶ所のみ。放つは現状態をもって最良の一撃。
ドラゴンの舌の動きに抗わず……その一瞬を持って、脚に力みを入れる。
そして
その一撃は、関羽の狙い通りの場所を打ち抜く。
人間で言うなら口蓋垂と言われる箇所。
……つまりは、のどちんこである。
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