覇王の息子 異世界を馳せる

チョーカー

曹丕、関羽と対峙す

 右手に宝剣

 左手のナイフは魔剣

 両手に武器を構え、関羽に立ち向かう曹丕。

 その心は、後悔の念に覆われていた。
 もう取り消せない。もう戦わざる得ない。
 なぜ、自分が関羽どのと戦いと思ったのか?
 手にした武器は、抜き身の刃。相手を殺傷するための道具に他ならない。
 おそらく、自分も振るえば、関羽どのも振るうであろう。
 『一手、ご指南をお願いします』と言ってが、これから始まるのは殺し合いになる。
 なぜ、こうなった?どうしてこうなった?
 自問自答が繰り返されるも答えはでてこない。
 答えは、自分自身でも理解し得ない。
 だが———

 「戦わなければならない。そう思いました」

 それはまぎれもない本心。
 戦いたい。心から湧き出て止まらぬ感情。
 それは、ひょっとしたら……
 関羽どのとドラゴンの戦いに触発された、一時的な感情なのかもしれない。
 だが、やる。

 「いま、戦わねば、曹丕は曹丕でなくなる。そう思いました」

 その声は叫び声。  
 それに応じるように関羽が動く。青龍偃月刀を曹丕に向けた。
 関羽の表情から、心情を読み取ることはできない。
 関羽が、何を考え、どう状況を理解し、戦うのはわからない。
 ……そう戦いが始まるのだ。それだけが事実。
 関羽対曹丕。
 それが、どのように始まり、どのように終焉を迎えるのか?




 ――― 半年前 ―――

 曹丕は、1人で雪山を進んでいた。
 装備は軽装。準備不足だったわけではない。
 体を包んでいるマントは、熱の放出を防ぐと同時に、熱をため込んでくれる品物。
 曹丕の服装は、全て雪山を登るための優れものを揃えている。
 だからと言っても、簡単に登れる山ではなかった。
 吹雪で視界は閉ざされている。体に纏わりつく雪は、想像以上に体力を消費させていく。
 曹丕はふところから補給食を取り出し噛み砕く。
 栄養素が高く、体を動かすために必要な熱量が大量に含まれている。

 「……不味いですね」

 そう独り言を呟くと、強張った体が脱力し、少し楽になった気がする。
 数日間、人と出会わず、雪山で過ごしていると独り言が多くなってしまっていた。
 下山しても、独り言が癖になってしまわないか?
 そんな事を考えながら、歩みを進めていく。
 暫く、進むと視界が開けてくる。どうやら、激しかった吹雪も落ち着いてきたようだ。
 そして、目的地も見えてきた。
 そこは雪山に相応しい山小屋。 木造の作りで飾り気はない。
 そして煙突からは煙が排出されていて、人がいる事が示されている。
 この人物に会うために、曹丕は、雪山を登ってきたのだった。

 

    
 

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