覇王の息子 異世界を馳せる
ミノタウロスがそこにいた
西行法師。
かつては武士であった。その腕前はかなりのものだったとか……
だが、彼は刀を捨て、家族を捨て、俗世を捨て、僧侶になった。
その理由はわかっていない。
そんな彼が歴史に名を残しているのは、偉業を達成したわけでも、語り継がれていくような武の持ち主というわけでもなかった。
彼の才は芸術面で花開く。歌人として後生に広く名を残したのだった。
新古今和歌集。その中で、最も多くの和歌が選ばれたのが西行である。
そんな彼には伝説がある。
山に篭っての修行中。孤独に絶えかねた彼は禁忌を犯す。
それは―――
『死者蘇生 反魂の術』
その名の通り、死者を蘇らす秘術。
暗い洞窟の奥深く、集めたのは人骨。
それを人間の形に整え、秘薬を塗りたくる。
それだけの簡単な術……だったはず。しかし、その術は失敗に終わる。
焚いていたお香が原因だといわれている。
できたモノは人間と遠く離れた存在。 こちら側で言うところの―――
ゾンビであった。
「失礼ながら、何を行っているのでしょうか?」
曹丕は一歩、前に出る。
「はて?何といわれましても……理解できるかどうか…」
そんな西行の態度に思うところがあったのか、関羽が声を荒げる
「そなたの様子は、見るからに常軌を逸脱しておる。説明を」
関羽の声に反応したの、西行よりも周囲の魔物たちだった。
生気を失っている瞳が一斉に関羽に向く。
それぞれの魔物が威嚇行為に及ぶ。
それらは生前の記憶によるものか?死してなおも本能がさせているのか?
 さっきまで大人しかったのが幻のようだ。
彼等は魔物として、人を襲うという本能を取り戻したかのように見える。
関羽は、武器を構えるも、それを曹丕が止める。
一方、魔物たちも西行が片手を上げ制止させる。
「私、人の心を探ってましてね。こうして、無の存在に感情が生まれるのならば、森羅万象に感動を分け与えれるはずだと、試しているのですよ」
「……何を言ってる」と関羽の声は困惑に満ちていた。しかし、その一方で―――
「なるほど、なるほど、よくわかります。私の弟にもいましたよ。感情を行動で吐き出さないと狂ってしまう者が」
……と曹丕が頷く。
「ほう、お若いのに、理解が早くて助かる。よくお解かりで」
「―――だが、貴方の行いで困っている人がいる。速やかに御止めください」
空気が強張る。
関羽は青龍偃月刀を構える。
曹丕は宝剣と魔剣を構える。
西行法師は、腰に帯びた刀に手を伸ばす。
だが、3人の予想外の事が起きる。
響いたのは破壊音。
突如として破壊された壁の破片が曹丕達を襲う。
立っていた場所から3人は素早く逃避し距離を取る。
立ち上がる砂煙。視線は効かない。
しかし、砂煙の中に何かがいる。それだけはわかる。
次の瞬間、ソイツは雄たけびを上げた。空気が波打つような雄たけび。
そして、雄たけびの声音だけで、舞い上がっていた砂煙を吹き飛ばした。
曹丕は見る。……その姿を。
それは、神々がいた時代にのみ許された生物。
決して人間が持つ事は許されない蛮性を持ち、決して獣が持つ事は許されない静けさを持っている。
そんな矛盾の存在。
野生を秘めた獣と知性を有す人間のハイブリッド。
ミノタウロスがそこにいた。
かつては武士であった。その腕前はかなりのものだったとか……
だが、彼は刀を捨て、家族を捨て、俗世を捨て、僧侶になった。
その理由はわかっていない。
そんな彼が歴史に名を残しているのは、偉業を達成したわけでも、語り継がれていくような武の持ち主というわけでもなかった。
彼の才は芸術面で花開く。歌人として後生に広く名を残したのだった。
新古今和歌集。その中で、最も多くの和歌が選ばれたのが西行である。
そんな彼には伝説がある。
山に篭っての修行中。孤独に絶えかねた彼は禁忌を犯す。
それは―――
『死者蘇生 反魂の術』
その名の通り、死者を蘇らす秘術。
暗い洞窟の奥深く、集めたのは人骨。
それを人間の形に整え、秘薬を塗りたくる。
それだけの簡単な術……だったはず。しかし、その術は失敗に終わる。
焚いていたお香が原因だといわれている。
できたモノは人間と遠く離れた存在。 こちら側で言うところの―――
ゾンビであった。
「失礼ながら、何を行っているのでしょうか?」
曹丕は一歩、前に出る。
「はて?何といわれましても……理解できるかどうか…」
そんな西行の態度に思うところがあったのか、関羽が声を荒げる
「そなたの様子は、見るからに常軌を逸脱しておる。説明を」
関羽の声に反応したの、西行よりも周囲の魔物たちだった。
生気を失っている瞳が一斉に関羽に向く。
それぞれの魔物が威嚇行為に及ぶ。
それらは生前の記憶によるものか?死してなおも本能がさせているのか?
 さっきまで大人しかったのが幻のようだ。
彼等は魔物として、人を襲うという本能を取り戻したかのように見える。
関羽は、武器を構えるも、それを曹丕が止める。
一方、魔物たちも西行が片手を上げ制止させる。
「私、人の心を探ってましてね。こうして、無の存在に感情が生まれるのならば、森羅万象に感動を分け与えれるはずだと、試しているのですよ」
「……何を言ってる」と関羽の声は困惑に満ちていた。しかし、その一方で―――
「なるほど、なるほど、よくわかります。私の弟にもいましたよ。感情を行動で吐き出さないと狂ってしまう者が」
……と曹丕が頷く。
「ほう、お若いのに、理解が早くて助かる。よくお解かりで」
「―――だが、貴方の行いで困っている人がいる。速やかに御止めください」
空気が強張る。
関羽は青龍偃月刀を構える。
曹丕は宝剣と魔剣を構える。
西行法師は、腰に帯びた刀に手を伸ばす。
だが、3人の予想外の事が起きる。
響いたのは破壊音。
突如として破壊された壁の破片が曹丕達を襲う。
立っていた場所から3人は素早く逃避し距離を取る。
立ち上がる砂煙。視線は効かない。
しかし、砂煙の中に何かがいる。それだけはわかる。
次の瞬間、ソイツは雄たけびを上げた。空気が波打つような雄たけび。
そして、雄たけびの声音だけで、舞い上がっていた砂煙を吹き飛ばした。
曹丕は見る。……その姿を。
それは、神々がいた時代にのみ許された生物。
決して人間が持つ事は許されない蛮性を持ち、決して獣が持つ事は許されない静けさを持っている。
そんな矛盾の存在。
野生を秘めた獣と知性を有す人間のハイブリッド。
ミノタウロスがそこにいた。
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