クラウンクレイド
[零13-1・仮想]
【零和 拾参章・かの地で旗を掲げるは】
0Σ13-1
クニシナさんは「クラウンクレイド」についてを語る。
五感に関する神経に電気信号刺激を与える事で、従来のそれと比較にならない程の非常に高い没入感を可能とした「Full Immersion Virtual Reality」技術とそのマシン。FIVRをゲームに利用し2070年代に発売され世界的なヒットを巻き起こしたのが「Massively Multiplayer Online Game-大規模ユーザー参加型オンラインゲーム・クラウンクレイド」であった。
ゲーム・クラウンクレイドは2019年にゾンビパンデミックが起きた世界が舞台になっている。そのネットゲーム上の仮想世界へとプレイヤーはFIVRによってダイブし、ランダムに設定されたキャラクターのアバターの姿となる。ゾンビ溢れる世界で、与えられたアバターのキャラクターそれぞれの人生を歩んでいく事となる。全てのプレイヤーが同じ仮想世界に存在することで、他のプレイヤーの行動がリアルタイムに反映されていくゲームである。
それらを維持する為にクラウンクレイドのサービスは高度な演算機能によって提供されており、それにより形成された世界はそこで起きる事象全てが現実世界の法則をなぞってリアルという言葉では形容出来ないほどであった。
そしてこれに付随して特徴的なのがキャラクター達の造形と設定である。
高度な演算能力によって創造された仮想世界は、世界の再現といっても良かった。キャラクター達に与えられているのは単なる設定ではなく、高度なシミュレーターによる疑似人格。故にゾンビに直面した時に取る行動一つとってもどのキャラクターもそれぞれ違う。その疑似人格から導き出された行動を行う。
それ故に、プレイヤーは仮想世界において人生を積み重ねてきた「誰か」になる事でリアルなパンデミック体験が出来る。誰が「Non Player Character」なのか分からない程に人間らしく振る舞う中で、「プレイヤーキャラクター」側もまた、真にゾンビ世界そのもの登場人物となることが楽しみの一つとなる。
プレイヤーのアバターたるキャラクターはランダムに決定される為、一般人から軍関係者、政治家、科学者、果ては一国の大統領までなれる可能性がある。その立場や特性、人間関係、身体関係を利用して生き延びて、最終的にはゾンビ溢れる世界を救う事が最終ミッションとなる。
「それがクラウンクレイドというゲームなのです」
そんな説明を受けて、私は困惑したままだった。この世界にはクラウンクレイドというゲームがあった。そしてドウカケ先生は私にそのワードを探せと言った。
そしてクニシナさんが語るのは私の知らない時代のゲームの話であって、それは現実世界の事でなくて。
「この世界で2019年にゾンビパンデミックは起きていません、しかしクラウンクレイドというゲームの中でなら確かに2019年にゾンビパンデミックが起きている。世界各国で同時に感染が拡大したという設定で。そして祷さんと私はそのゲーム内で間違いなく会っています」
「ちょっと……待ってください……」
「私がプレイした時に設定されたキャラクターは鷹橋という30代の男性キャラクターでした。身体能力に優れた格闘技経験者の一般人。その身体能力を活かしてゾンビから逃れる内に他の生存者と出会い行動を共にしていた。その中にはNPCである加賀野桜というキャラクターもいて彼女の力に助けられながら私達はホームセンターと呼ばれる2010年代には存在していた商業施設に辿り着き、そこで拠点を作った時に私は祷茜というキャラクターに会っている。間違いなくあなたに会っているんです」
一気にまくしたてられて、私は理解が追い付かなくて。
ゾンビパンデミックが起きた世界でサバイバルするFIVRMMOゲーム、クラウンクレイド。クニシナさんはそれをプレイし鷹橋さんという男性キャラクターになっていてそこで私と会っているという。
ドウカケ先生が私にクラウンクレイドを探せと言ったのは私の語った記憶が、2019年にゾンビパンデミックが起きて私は其処で生き延びたという話がそのゲームの内容に酷似していたからという事か。いや違う。
私はそんなゲームをプレイした記憶はない、そもそも私の見てきた現実がゲームの中であったなんて言われても意味が分かる筈もない。クニシナさんは私と会っているとも言う。
目眩がして足元がふらついて、壁に私はもたれかかる。そんな私を見てレベッカが口を開く。
「つまり……クニシナさん達はそのゲームをプレイしていて、ゲームの中で会ったことがあると言う事ですか?」
私が今まで見てきたのはゲームをプレイしてきた記憶だとでも言うのか。
しかしクニシナさんはそれを否定する。
「違う、違うのですレベッカ。私が困惑したのはもっと違う理由で。私は祷茜という人物がプレイしていたキャラクターに会ったのではなく、祷茜というキャラクターに会っている。
クラウンクレイドは2019を舞台にした仮想世界でのゲームです。つまりそこに登場するキャラクターは、仮想世界における2019で生きていると設定されたキャラクターであると言う事なんです。その名前や外見、性格や地位はプレイヤー側から設定するわけではない、仮想世界で設定された生きているキャラクターを『アバター』としてプレイするゲームなのです」
「それってつまり……」
「祷茜というゲーム内のキャラクターが、現実世界に居るという事になる。2019年を舞台にした仮想世界に生きていたキャラクターが、2080年の現在の現実に」
0Σ13-1
クニシナさんは「クラウンクレイド」についてを語る。
五感に関する神経に電気信号刺激を与える事で、従来のそれと比較にならない程の非常に高い没入感を可能とした「Full Immersion Virtual Reality」技術とそのマシン。FIVRをゲームに利用し2070年代に発売され世界的なヒットを巻き起こしたのが「Massively Multiplayer Online Game-大規模ユーザー参加型オンラインゲーム・クラウンクレイド」であった。
ゲーム・クラウンクレイドは2019年にゾンビパンデミックが起きた世界が舞台になっている。そのネットゲーム上の仮想世界へとプレイヤーはFIVRによってダイブし、ランダムに設定されたキャラクターのアバターの姿となる。ゾンビ溢れる世界で、与えられたアバターのキャラクターそれぞれの人生を歩んでいく事となる。全てのプレイヤーが同じ仮想世界に存在することで、他のプレイヤーの行動がリアルタイムに反映されていくゲームである。
それらを維持する為にクラウンクレイドのサービスは高度な演算機能によって提供されており、それにより形成された世界はそこで起きる事象全てが現実世界の法則をなぞってリアルという言葉では形容出来ないほどであった。
そしてこれに付随して特徴的なのがキャラクター達の造形と設定である。
高度な演算能力によって創造された仮想世界は、世界の再現といっても良かった。キャラクター達に与えられているのは単なる設定ではなく、高度なシミュレーターによる疑似人格。故にゾンビに直面した時に取る行動一つとってもどのキャラクターもそれぞれ違う。その疑似人格から導き出された行動を行う。
それ故に、プレイヤーは仮想世界において人生を積み重ねてきた「誰か」になる事でリアルなパンデミック体験が出来る。誰が「Non Player Character」なのか分からない程に人間らしく振る舞う中で、「プレイヤーキャラクター」側もまた、真にゾンビ世界そのもの登場人物となることが楽しみの一つとなる。
プレイヤーのアバターたるキャラクターはランダムに決定される為、一般人から軍関係者、政治家、科学者、果ては一国の大統領までなれる可能性がある。その立場や特性、人間関係、身体関係を利用して生き延びて、最終的にはゾンビ溢れる世界を救う事が最終ミッションとなる。
「それがクラウンクレイドというゲームなのです」
そんな説明を受けて、私は困惑したままだった。この世界にはクラウンクレイドというゲームがあった。そしてドウカケ先生は私にそのワードを探せと言った。
そしてクニシナさんが語るのは私の知らない時代のゲームの話であって、それは現実世界の事でなくて。
「この世界で2019年にゾンビパンデミックは起きていません、しかしクラウンクレイドというゲームの中でなら確かに2019年にゾンビパンデミックが起きている。世界各国で同時に感染が拡大したという設定で。そして祷さんと私はそのゲーム内で間違いなく会っています」
「ちょっと……待ってください……」
「私がプレイした時に設定されたキャラクターは鷹橋という30代の男性キャラクターでした。身体能力に優れた格闘技経験者の一般人。その身体能力を活かしてゾンビから逃れる内に他の生存者と出会い行動を共にしていた。その中にはNPCである加賀野桜というキャラクターもいて彼女の力に助けられながら私達はホームセンターと呼ばれる2010年代には存在していた商業施設に辿り着き、そこで拠点を作った時に私は祷茜というキャラクターに会っている。間違いなくあなたに会っているんです」
一気にまくしたてられて、私は理解が追い付かなくて。
ゾンビパンデミックが起きた世界でサバイバルするFIVRMMOゲーム、クラウンクレイド。クニシナさんはそれをプレイし鷹橋さんという男性キャラクターになっていてそこで私と会っているという。
ドウカケ先生が私にクラウンクレイドを探せと言ったのは私の語った記憶が、2019年にゾンビパンデミックが起きて私は其処で生き延びたという話がそのゲームの内容に酷似していたからという事か。いや違う。
私はそんなゲームをプレイした記憶はない、そもそも私の見てきた現実がゲームの中であったなんて言われても意味が分かる筈もない。クニシナさんは私と会っているとも言う。
目眩がして足元がふらついて、壁に私はもたれかかる。そんな私を見てレベッカが口を開く。
「つまり……クニシナさん達はそのゲームをプレイしていて、ゲームの中で会ったことがあると言う事ですか?」
私が今まで見てきたのはゲームをプレイしてきた記憶だとでも言うのか。
しかしクニシナさんはそれを否定する。
「違う、違うのですレベッカ。私が困惑したのはもっと違う理由で。私は祷茜という人物がプレイしていたキャラクターに会ったのではなく、祷茜というキャラクターに会っている。
クラウンクレイドは2019を舞台にした仮想世界でのゲームです。つまりそこに登場するキャラクターは、仮想世界における2019で生きていると設定されたキャラクターであると言う事なんです。その名前や外見、性格や地位はプレイヤー側から設定するわけではない、仮想世界で設定された生きているキャラクターを『アバター』としてプレイするゲームなのです」
「それってつまり……」
「祷茜というゲーム内のキャラクターが、現実世界に居るという事になる。2019年を舞台にした仮想世界に生きていたキャラクターが、2080年の現在の現実に」
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