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第八十二章 死霊王VS悪魔王!

どうも、グラフ樹海の入り口からこんにちはアズです
現在俺はネクロニア目指して進行中です

グラフ大森林を何の苦もなく突破した俺はグラフ樹海の入り口でランタンを掲げています

「効果が発揮するといいんだが・・・」

そんな俺の心配をよそに、木が左右にわかれて道を作る
1PTに一個!リッチーの目玉はいかがでしょうか!
モーゼの奇跡よろしく左右に分かれた木の間を通ると、通った先から木が元の場所に戻っていく

「あのゴシックドレスを着なくても効果が発動してよかった・・・」

誰も見ていないとはいえあれを着るにはやはり抵抗がある
敬礼するフォレストゾンビを尻目に更に奥に進むと最近来たばかりの街が見えてくる

再び来ましたネクロニア
相変わらずの不気味な雰囲気に寒さを感じる

「ん?」

よく見ると自分の周りに水精霊が漂っている

「寒気の原因はお前か!?」

近づく水精霊を手で追い払って周りをよく確認する
地精霊が大量・・・水精霊と火精霊が少量・・・風精霊は極少量といった所だろうか・・・
立ち止まって周りを見ていると道行くアンデット達は怪訝な目でこちらを見ている
最初は立ち止まっているのがおかしいのかと思ったがどうやらそういうわけでもなさそうだ

「何かおかしいのかな?」

ひび割れたガラス窓で自分の姿を確認する
中で食事をしていたゾンビがビクリとしてこちらを見ているが
特に気にせず窓に映る自分を確認する

「変わった所はないけど・・・」

ゾンビだらけのこの場所に冒険者と言われるとおかしい気もする・・・

「とりあえずリッチーに合わないとな」

リッチーの場所を確認する為に家の中のゾンビに話しかける

「あのーリッチーって今どこにいます?」

ゾンビは俺の顔をじっと見る
あれ?ゾンビって喋れたっけ?

『ぁあー?うがあ?あひゃひゃ』

そんな俺の心配もよそに指を差しながらこちらを笑うゾンビ
なんか知らんが馬鹿にされてる?
俺がランタンを掲げるとゾンビが興味深そうに中身を確認して・・・
ビクリと体を震わせてネクロニアの最奥に位置する扉を指差す

「扉の向こうって事か・・・?それとも方向か・・・?」

俺がぶつぶつ喋っているとゾンビがチラリとこちらを見て逃げるように立ち去る

「なんだ?今までに無い反応だけど・・・」

そんなゾンビの後ろ姿を見送り街の最奥に位置する扉を目指して進行する
街の中は前回来た時と変わらないゴーストタウン
たまに見かける家の中ではスケルトンが鍋をかき混ぜていたり
半透明の人間が霊魂と共に空中を漂っている
俺はそんな街を観光気分で先に進む

「慣れると怖くなくなるものだ、ある意味サンドワームとかのほうが余程グロテスクだしな」

そんな感想を抱きながら扉の近くにあった一際大きな家の横を通り過ぎる
そこには地面でピンク色の光を発する大きな魔法陣

「これは・・・」

そしてその中心には見知った人影が一つ
小柄な白い肌に手術痕のような痕が残るゴスロリ服の少女、リッチー
彼女は一際大きな霊魂を上空に漂わせるとこちらを振り向き歩きながら近づいてくる

「あれレー?こんな所に生きた人間がいるゾー?」
「あれ!?」

今歩いてきたよな!?気づいたら目の前にいたぞ!?
目がおかしくなったのかとこすっていると
リッチーがキョトンとした顔をしてこっちを眺める

「ボクと似た魔力を宿してるネー?なんでかナー?」

リッチーの台詞に思わずランタンを背中に隠す
隠す必要はないけど・・・なぜかランタンの中身を見せるのはまずい気がする・・・

俺はごまかすようにランタンをアイテムストレージにしまって当初の目的を思い出す

「それはそうとリッチー」
「んン?なにかナ?なにかナ?」

リッチーは何が面白いのか大爆笑しながら相槌を打つ

「実は冥府の神に会いたいんだけど」

冥府の神という単語を聞いたリッチーが笑うのをやめてこちらをじっと見つめる

「うんうン!いいよいいヨ!じゃあ動かないでネ?」

リッチーが手を前にかざして・・・
俺は嫌な気配を感じてつい一歩後ずさってしまう

「ん?」

目の前ではリッチーが名状しがたき形をした刃物を突き出している

「リッチーさんリッチーさん?一応聞いても良いかな?」
「なんだいなんだイ?見知らぬ冒険者?」
「どうやって冥府の神に合わせるつもりだい?」

リッチーは首を人間ではあり得ない程傾けると最高の笑顔を浮かべる

「そんなの死んで会うのが手っ取り早いじゃないか!」

俺は全力で街の入り口目掛けてダッシュする

「やっぱりか!?」
「アハハ!アハハ!どうして逃げるのサ?」

笑い声をあげながら歩くリッチーが謎の黒い塊をてのひらで弄びながら追いかけてくる
不意にリッチーが黒い塊を上空に投げる

「きたレ!我に贄を捧げし眷属ヨ!」

リッチーの演唱を確認した俺は咄嗟に路地裏にダイブする
後方でけたたましい牛の鳴き声と車輪の音が鳴り響く
恐る恐る後ろを振り向くと元いた道が見る影もなく破壊されている

「おいおいマジかよ・・・」
「うんうンまじだヨ?」

背後で聞こえてくるリッチーの声に押されるように破壊された道を走り抜ける

「アハハ!待て待テー!」
「なんで歩いてるのに俺と同じ速度なんだよ!?」

そんな全力で走っている俺のローブをリッチーが掴むと演唱を始める

「きたレ!我が贄を解体せし拷問器!」

リッチーの手の上で黒い塊がもぞもぞ動くと刃物のような形を作り出す

「待って!?他に方法があると思うんだ!?」

俺は悲鳴に近い声をあげながらローブを切り裂いてリッチーの攻撃を回避する

「冥府の神に会いたいんだろウ?避けるなヨ冒険者」

リッチー少しドスのきいた声に体が動かなくなる
ステータスウィンドウを確認すると麻痺の状態異常にかかっている
やばいやばいやばい!
リッチーが名状しがたき刃物のような物を振りかぶり・・・
俺の背後から飛び出してきた謎の黒マントがそれを止める

「ワハハハハハ!相変わらず考える脳が無いようだなリッチー!」

牙を剥き出しにしたヴァンプと口元だけ笑ったリッチーの間に火花が散る

「なんだヨなんだヨ悪魔の王?どうして君がここにいるんだイ?」
「ワハハハハハ!そんなもの頭の足りない屍に知恵を与えに来たに決まっておるだろう!」

高笑いをあげながらリッチーを投げ飛ばすヴァンプ
それ煽ってるだけだよね?
ヴァンプの登場に落ち着きを取り戻した俺は体制を立て直していつでも逃げれるよう待機する

「きたレ!我に贄を運びし死の軍隊ヨ!」

リッチーが笑いながら黒い塊を地面に叩きつける
すると地面から大量の死体が這い出てくる

「ほう!やる気か死霊の王!」

それを見たヴァンプが嬉しそうにマントを広げると
マントの中から大量のコウモリが出て来て死体をむさぼり始める

「きたレ!我に贄をおくりし旋風ヨ!」

いつのまにかリッチーの手のひらの上で再生していた黒い塊が弾け、周囲に霧が立ち込める
霧に触れたコウモリ達が苦しそうにうめくと次々に墜落していく

「毒ガスか!?」

俺は急いでその場を離れながらアイテムストレージを開く
何かないか!?何かないか!?

「あった!」

俺はしっとりと湿っている濡れマスクを着用する
これでよ・・・

「きたレ!我に贄を作りし拷問機!」

リッチーの演唱と共に俺の背後で何かがズドンと落ちる
恐る恐る後ろを振り向き・・・
鉄の塊が扉を開けているのを確認する
中から錆びた鉄の匂いが充満し、大量の針が待ち構えている

「あーなんだっけ?アイアンメイデン?」

鉄の塊の中から飛び出してくる腕に体を掴まれ中に引きずり込まる

「ヘルプー!ヘルプー!ヴァンプー!ヘルプー!」

そんな俺の叫びを聞いてくれたのかヴァンプがアイアンメイデンを持ち上げてリッチーに投げつける

「ワハハハハ!今は我が貴様の相手のはずだぞ死霊の王!」
「邪魔しないで欲しいナー悪魔の王!」

リッチーは飛んできたアイアンメイデンを片手で受け止めて黒い塊にすると再び演唱を始める
そんな二人の戦闘に巻き込まれないよう距離をとった俺は濡れマスクを外してアイテムストレージから焼きそばを取り出す
こんな事もあろうかと街で買っておいた焼きそば片手に観戦に回る事にした
逃げようとしたら襲われる事はわかったし・・・大人しく傍観するのが安全と判断したのだ 

一人焼きそばを食べる俺を尻目にヴァンプが距離を詰めてリッチーを殴り飛ばす
グシャリという音と共にリッチーが巨大扉に叩きつけられる

「ワハハハハハ!その程度か死霊の王!まぁそれなりに楽しめたぞ!」

ヴァンプが高笑いをあげながらリッチーに近づく
リッチーはそんなヴァンプに笑いかけながら黒い塊を扉の奥に投げる

「きたレ!我が贄の集まりし死霊龍ザ!ハーク!!!」

大地が揺れ異音を放ちながら扉が少し開く
扉の向こうではとてつもない大きさの円形の物体が黄色い光を放っている
更に大地が揺れ、扉が開くにつれその全容があらわになっていく
黄色い光を放っていた物・・・それは龍の目にあたる所だった!
なんだあれ!?地震のせいで折角の焼きそばが地面に落ちてしまったではないか!

「ワハハ・・・これは流石にマズイな!」

ここに来て初めてヴァンプの口から弱音が漏れる
やはりあんなやつ相手じゃいくら悪魔王でも無理なのか!?
焼きそばを落として意気消沈の俺は包丁片手にブルーラットの肉を解体する

「アハハ!どうだイ悪魔の王!これがボクのきりふぎゃん!」

宣言しようとしたリッチーの頭を悪魔王が叩く

「こんなもの現世に召喚できるわけないだろう!だから頭が足りないと言っているのだ!」

あ!そっち!?
バーナーで生肉を炙りながらお手製の調味料を振りかけると香ばしい匂いが漂い始める

「アハハ!ならばザ!ハーク!扉の向こうからブレスで攻撃ダ!」

リッチーの声に反応して口から瘴気を放つ死霊龍
瘴気に触れた場所がどんどん腐っていく
腐っていく・・・もしかして!?
俺は急ぎ豆科の植物を取り出して瘴気にあてる
豆はどんどん腐って砂のように地面に落ちる

「発酵食品を作るのはまだ難しそうだな・・・」

ガックリと膝を折る俺にリッチーとヴァンプがなんとも言えない表情を向けてくる

「ふぅむ、なかなか神経が太い人間種だな」
「アハハ!ハーデウス様に後でボクの友達にしてもらえるように交渉しようかナ!」

不満気な顔をしながら二人を睨む

「しかし死霊の王よ?そのハーデウスがいないのにどうやって合わせるのだ?」
「え?いないの?」

キョトンとする俺にヴァンプが満足そうに頷く
本当かとリッチーの方を見るが・・・
一番キョトンとしているのはリッチーだった

「何を言ってるのかナ?ハーデウス様がいなイ?」
「うむ!その事に関して話し合いに来たのだが・・・言ってなったかな?」
「「言ってないよ!!!」」

大急ぎで扉の向こうに駆け出すリッチーを眺めながらヴァンプに礼を言う
兎にも角にも命の危機は脱したようで

「おかげで助かったよヴァンプ」
「なに、我は古き契約で動いたにすぎんよ」
「契約?何のことだ?」
「ワハハハハ!そんな事はどうでも良い!我はハーデウスの件について死霊の王と話にきたついでに契約を果たしたに過ぎん!」

首をかしげる俺にヴァンプが高笑いをあげて頭をワシャワシャ撫でてくる

「それより美味そうな肉が焼けているな!」

ヴァンプが俺の作った串焼きを興味深そうに見つめている

「よかったら食べるか?」
「ワハハハハ!我はもう少し血が滴る肉の方が好上手いな!!」
「ほんト!ボクはもう少し腐ってる方が好みだと思ったけドなかなか美味しいネ!」

いつのまにか帰ってきたリッチーが嬉しそうに串焼きを頬張っている

「それで?死霊の王、ハーデウスはいたか?」
「リッチーで良いよ!悪魔の王!それが本当にいなかったヨ!困ったナー!」

少しも困った風に見えないリッチーが首だけこちらに向ける

「というわけデ!不本意だけど君をハーデウス様に合わせる事が出来なくなっタ!ごめんネ!」

笑顔でそう伝えるリッチーを見ながら俺はこれからどうするか悩む事になるのであった

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