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第六十一章 グラフ樹海の軍隊

グラフ樹海
大森林を抜けた先に広がる瘴気が立ち込める森
ある者は幻に纏わされ、ある者は死者と出会う
グラフ樹海には近づくな、あそこは死の森だ

             グラフ幻想譚
                          
            ◇

グラフ大森林で無事戦闘訓練という名の虐殺を終えた俺達はグラフ樹海に移動していた
フーキが言っていた目印を探すため入り口で周りを見回す

「それで?先組が用意してる目印ってどれのことだ?」

フーキは少し周りを見渡すと木に赤いペイントを指さす

「あれやね、一定間隔事に木にペイントがしてあるんよ」
「これはまた親切な・・・でもこれがあるとゲーム攻略の醍醐味が無くなりそうだな・・・」
「目印無しで行っても良いけど数か月かかるよ?」
「よし皆!この目印を頼りに進むぞ!」

正直こんな陰気な場所にそんな長く居たくない
苦笑しながら俺の後ろをついてくるフーキがグラフ樹海の説明を続ける

「樹海のモンスターは基本大森林と同じなんよ、そこの茂みに隠れとるフォレストウルフみたいにっと!」

少し苔の青いフォレストウルフがフーキ目掛けて飛び出してくる
事前にわかっていたフーキは軽く避けるとガントレットでフォレストウルフをぶん殴る
グシャリという内臓が潰れたような嫌な音と共にフォレストウルフは粒子になって消える

「ちなみに名前がフォレストウルフLv5みたいになっとる」

新たに羽音を響かせて近寄ってきたフォレストビーの名前をよくみる
なるほど、フォレストビーLv4と表示されている
近づいてきたフォレストビーの羽を風精霊のかまいたちで切り裂き、地面に落下したところをバーナーで焼き切る

「じゃあここのモンスターで注意する事は基本ないんだな」
「基本はね、行動パターンが一部増えてるのと・・・極稀に大森林とは別の個体が出るけど1%もないから心配せんでええと思うよ」

一応新モンスターがいるにはいるのか
新たにフォレストウッドLv8×2が出現して会話を中断する

ただでさえ強くなったフォレストウッドの枝の中から大量のフォレストビーが出現してくる
フォレストビーがフォレストウッドの枝に体当たりしながら粉を撒き散らしてくる
何をしようとしているかは知らないが俺達は粉の範囲外に逃げる・・・姉以外

「あれー?なんで皆んな後ろに下がるのー?」

粉に触れた姉が睡眠状態になる

「睡眠粉か・・・厄介だな」

樹海の風精霊の量では粉を戦闘範囲外に吹き飛ばす事は出来そうにない
睡眠粉を全身に浴びたフォレストビーが突進してくる

「っく!」

粉まみれのフォレストビーをバーナーの火で迎撃する
火が触れた瞬間フォレストビーを中心に大爆発が起こる
爆風に吹き飛ばされながら連鎖的に粉を纏っていた敵エネミーが爆発していくのを確認する
けたたましい爆発音の後、静寂の中困惑の声をあげる

「な・・・なんだなんだ!?」
「一種の粉塵爆発みたいなもんやない?」

いつの間にかアレクとAKIHOを安全圏に避難させていたフーキが姉を担ぎニヤリと笑みを浮かべる

「これでフォレストビーとフォレストウッドはアズに任せれるね」

こいつ・・・爆風で吹き飛ばされる俺の気持ちにもなってくれ・・・
溜息を吐きながら姉を担いで歩くフーキの後ろを歩く

「それにしてもここは死体が多いな」

白骨死体にくさりかけの死体等様々である
そんな死体の中で一つHPゲージを見つける

「あれ?フーキ!あそこになんかHPゲージがあるぞ?」

フーキが怪訝な顔をしながら俺の視線を追い・・・

「フォレストゾンビやと!?」

叫び声をあげる

「なんだ?珍しいのか?」
「こいつが入る前に言っとった厄介な大森林とは別の個体や!」

おおおおおおおおおおおおおおおお!

フォレストゾンビが雄たけびをあげると周りの死体が一斉に動き出す
その数は尋常じゃない

「皆んな!戦闘開始!」

指示を出しながら近くにいたゾンビを殴ると、肉片を撒き散らしながら腕が吹き飛ぶ
あれ?厄介っていう割には弱くないか?
確かに見た目はグロイが・・・
追撃をかけようと踏み込んだ俺は何かに足を引っ張られその場で転倒する

「な・・・なんだ?」

足下には先程のゾンビの腕が俺の足を掴んでいる

「うわ!気持ち悪!」

急ぎ払いのけるとゾンビの腕はひとりでに本体の方に這っていき結合する
再生能力持ちか!

ならばと杖の先端をゾンビに向け活性化させたバーナーで焼き尽くす

はっはっは!再生能力を持っていようが跡形もなくけし・・・て
炭になったゾンビがどんどん人型に戻っていく

「新しくポップした・・・わけじゃないよな・・・?」

俺が呆然としているとゾンビを押しのけながらフーキが補足をいれる

「こいつらは不死属性持ちで・・・リーダーのフォレストゾンビを倒さんと倒せんのよ」

まじかー・・・
フォレストゾンビの周りには大量のゾンビがひしめいている
正直あれを突破するのは相当難しいだろう

フーキが言っていた厄介な敵の意味に納得する
流石のアレクやAKIHOも無敵に近い敵を相手に苦戦しているようだ
バラバラになった死体に拘束され徐々に動きが鈍くなってきている

どうすれば良い!?

「きゃあー!」

誰かやられたのか!?
突如戦闘中に上がった悲鳴のほうに視線を向けると
安全な場所に捨て置かれていた姉が目を覚まし悲鳴を上げている
無理もあるまい・・・ゾンビなんて普通の女子が見たらトラウマものだ

「大変だよひろ!この人たちすごい怪我!」

どうやら姉は例外で普通の女子では無いようだ
そんな姉は心配そうにゾンビに近寄り回復魔法をかける

「ばか!そいつらはモンスターで!」

あああああああああ!?

「何事!?」

ゾンビが断末魔をあげながら粒子になって消える
・・・こうかはばつぐんだ!
どうやら他のゲームよろしくゾンビに回復魔法は天敵らしい

回復魔法を使った姉を中心に、一部のゾンビが嫌な物を避けるように姉から遠ざかっていく
そう、聖職者の光を恐れた闇の住人のよう・・・
いや!あれはまるで小学校で屁をこいた相手を避けるような感じだな

姉とフォレストゾンビの間のゾンビが逃げていく
そうだ!一日数回しか使えない回復魔法だがここは・・・

「姉さん姉さん!その一番怪我がひどい人を治療してあげたほうが良いんじゃないかな?」

姉は本当に心配そうな表情でフォレストゾンビの前に立つと

「今治療するからねー!」

掛け声と共にフォレストゾンビを粒子に変える

「あれー?消えちゃったー」

姉が不思議そうにフォレストゾンビのいた所を眺めている
フォレストゾンビが消滅したことによりゾンビ達がどんどん機能を停止していく
一部のゾンビは機能が停止する前に森の中に走り去っていったが今頃死体に戻っているだろう

「まさかこんな攻略法があるなんてね」

全身に返り血を浴びたフーキが近寄ってくる
正直あんまり近寄って欲しくないなぁ・・・
距離をとる俺に気づいたフーキが心なしかションボリしている

フーキが樹海の中に不自然に開けた場所を見る

「そんで・・・いよいよボス戦やよ」


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