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第五十ニ章 海賊対冒険者軍団!

「エネミー反応なし」

定期連絡を仲間の船団に送るアズは潮風にあたりながらのんびりとした船旅を満喫していた

          ◇

今回俺は初の集団戦闘だ
他の冒険者は炎の精霊使い戦でやったことはあるらしい
俺は参加出来なかったからなぁ・・・
運営に文句を言っても問題ないんじゃないか?
今からでもメールを送ろうとしていた所にクルーから声をかけられる

「船長!お昼の準備が出来ました」

俺を呼びに来たクルーの後ろについていき昼食を待つ
現在俺達冒険者は一人あたりオクトリア兵30人が割り振られている

1船辺り30人なので強豪揃いの冒険者は各船団の船長に抜擢された
船長気分が味わえるという事で断る冒険者も少なく・・・
かくいう俺もノリノリで承諾した

思えば最近は自分で作ってばかりで誰かのご飯を食べる事が少なくなってきた気がする
久々の外食にわくわくしながら運営にメールを送るべくメニュー画面を開き
マップの赤い点が船を囲んでいる事に気がつく
マップにエネミー反応!?

「皆!気をつけろ!敵がいる!」

俺の声に周りの兵士が臨戦態勢に入り共に甲板に出る
だが・・・敵影が・・・ない?
まさかマップの不具合?いや・・・これはまさか!

「上からくるぞ!きをつけろ!」

声を張り上げると同時に海の中から海賊が飛び出て船員に襲いかかる

『うわぁぁ!どこから出てきた!?』
『海だ!敵は水泳スキル持ちだ!』

次々とオクトリア兵に海賊が襲いかかる
真っ赤になった顔をうずくまって隠しながら横目で状況を見ながら呟く

「・・・今の聞こえなかったよね?」

誰に聞くでもない俺の呟きに返事はない
というのも海から出てきた海賊に押し倒されているオクトリア兵達はすでにHPが半分
戦意を喪失しつつあるのだ

急ぎ杖に跨りミサイルのように飛行して海賊達を船の外に弾き飛ばす
体制を立て直したオクトリア兵から順に海に落ちた海賊にとどめを刺していく

「皆んなは俺が守る!だが・・・油断せずに行こう!」

『せ・・・船長・・・!』
『船長万歳!』
『うおー!子供船長万歳!』

どうやら聞こえてなかったようだな・・・!
歓声に適当に手を振りながら急ぎメールを送る

[敵は海の下にあり!]

送ったメンバーからすぐにメールが返ってくる

[あぁバレバレやったけどね]
[あんなの引っかかる奴おらんぜよ]
[お腹がすきました]
[皆、海の漢らしい良い体をしていた]

・・・

『海賊船確認!』

口をムニムニさせていると敵船発見の報告を受けてクルーの視線を追う

「・・・まるで一つの島だな」

船と船が梯子で繋がれ、まるで一つの陸のような巨大な島・・・船があった
予想以上の風景に呆然としていると敵船の上に見覚えのある海賊を発見する

「あいつ!あの時の誘拐犯!」

下半身が動かないのか椅子に座りこちらを見てにやつく海賊帽
海賊帽が片手をあげて何か叫ぶと船の一部に火精霊が集まるのが見える

「面舵いっぱい!」
『『『アイアイサー!』』』

船が旋回、ギリギリで飛来してきた黒い球を避けると
休む間もなく海賊船から矢の雨が降り出す

「盾班前!」

兵士が並び掛け声と共に前と後ろに盾を構え矢の雨を防ぎ、けたたましい金属音が反響する

盾の隙間から空中の精霊の位置を確認して風を操ると
矢の雨をズラしたところで言ってみたかった台詞を一つ

「今です!」

俺の合図と共に船団から次々と魔法が放たれ矢の雨の勢いを削ぐ

「いいぞ・・・このままいけば攻勢に入れ・・・」

パアン!という音と共にこちらの盾班の兵士がうずくまる

「しまった!あれがあった!」

マスケット銃を構えた海賊帽が盾を持つ兵士を次々と撃ち抜く
海賊帽を止めるべく動こうにも矢と銃弾が飛び交いとてもじゃないが飛翔できない

どうすることもできず海賊帽を睨むと
海賊帽が口角を吊り上げて片手をあげ何かを叫ぶ
敵船団の中心辺りに大量の水精霊が集まっていく
何をする気だ・・・!?

「全軍に通達!でかいのくるぞー!」

俺の掛け声と共に海賊船の中心部から天に向かって大量の水が噴き出る
敵船と敵船の間、梯子の下に激流が走り
その上には小型のパイレーツシップが見える
加速した小型のパイレーツシップはウォータースライダーのようにこちらに流れてくる

『ヒャッハー!汚物は消毒だ!』
『海の上で海賊に勝てると思うな!』
『トランザム!』

何あれ楽しそう!?
急接近してきたパイレーツシップが冒険者の船団に衝突していく
またも敵の奇襲を受けた俺達は船に乗ってきた海賊と戦闘を開始する
このままでは敵の奇策と統率のとれた動きに翻弄されてこちらの被害が増えるばかりだ
打開策は・・・!?
海賊のサーベルを捌きながら周囲を確認する

「あれは!」

海賊船から仲間の狼煙が上がっている
海賊のサーベルを避けながら合図の狼煙をあげると、海賊船から炎が巻き上がり敵船が炎上していく
炎は海賊を巻き込みどんどん燃え広がっていくが火の手が強すぎるのか仲間の船にまで燃え広がろうとしている

「やっと俺の出番ってわけだな!」

味方の船団に炎が燃え移らないよう火精霊と風精霊を調整する
味方船の先端にある杖に風精霊をぶつけていき風の膜をはっていく

「あとはちょうど良い具合の風を当てて・・・!」

海賊船がまるでキャンプファイヤーのようにメラメラと燃え出す

『ひゃあ!こんな船の上にいれるか!俺は逃げるぞ!ひべし!?』
『俺は水泳スキル持ちだ!なめへぶ!?』

炎から逃げ出そうと海に落ちた海賊達を矢や魔法が一掃していく
船に乗り込んできた海賊を捌きながら海に落ちる海賊を殲滅していくと
海賊の勢いがピタリと止まり海賊が降参していく
終わったか・・・?

「ああああああいああああ!いあああ!」

一際大きな海賊の悲鳴が聞こえる
そこには焼けた足を引きずりながら呪文を唱える海賊帽の姿
海賊帽はマスケット銃を俺に向ける
まだ反撃する気か?
油断せず睨んでいると海賊は糸が切れたかのように海に落ちていく

『や・・・やったか!?』
『うぉぉぉ!勝ったぞー!』

勝利を確信した俺達は歓声を上げ上空にある違和感に気付く
青々としていた空が今では嵐が来る前のような灰色に染まり雷鳴を鳴らしている

「・・・なんだ?」

明らかな異常気象に他メンバーから次々メールが送られて来る

[なんやろ・・・嫌な予感するわ]
[お腹がすきました]
[きいつけろ!海底に何かいるぜよ!]

まさかまだ海賊の残党が!?
急ぎ船の下を見る

「・・・?なんだあれ?」

海底には海賊討伐船10隻分の大きい影が揺れている

「まさかこれ・・・魔物か!?」

雷が鳴り響き海底が照らされる
大きく揺らめくそれは体中に吸盤をつけている・・・

「触手・・・!」

敵の正体がわかった時には海原が揺れて討伐船10隻が一瞬で木っ端微塵になる
あの船団にはルピーとフーキが乗っていたはずだ!

「る・・・ルピー!フーキ!」

俺の叫びに反応するかのように次々と巨大な触手が現れ船団を壊滅させていく

『我らが主の誕生だ!』
『いいぞ!やれやれ!』

縄で拘束された海賊が叫ぶ中に混ざってクルーの誰かの声が聞こえる

『く・・・クラーケンだー!』

海人種でもトップクラスの魔物
海の悪魔クラーケンとの戦闘が開始する

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