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第五十章 海上の戦い

外の海賊を見ながら溜息をつく

「少なくとも3人・・・見張りもいるだろうし・・・5人くらいかな?」

残りの敵戦力を計算する

「そんな数・・・大丈夫なのか?アズ」

なぜか樽部屋からついてきたアレクが疑問をぶつける

「倒すのは無理だけど・・・時間稼ぎはできるからな・・・三人の事は任せた」

アレクの頭を撫でドア越しに海賊が近づいてくるのを待つ
ここさえクリアすれば後はどうにでもなる
ドア越しに息を整え近づいてきた海賊に奇襲をかける

『ふぁぁ暇だ?』

ドスッという音と共に杖で後頭部を殴る
後頭部を殴られた海賊は何が起きたかもわからないまま海に転落する

「まず一人!」

だが他の海賊には見つかってしまったようだ

『な・・・!なんだおめえ!?』
『敵襲!敵襲!』

船上に笛の音が響き海賊の叫び声と共に8人の海賊が新たに出現する

「10人か・・・思ったより多いな」

心の中で舌打ちをしながら杖を回し近くにいた海賊の顎を撃ち抜く
頭の上に星マークを浮かべ海賊がスタンする
仲間がスタンしたのを確認した小柄な海賊がサーベルで切りかかってくるのを上空に飛翔して回避する

『弓だ!弓で叩き落せ!』
『おちろ!かとんぼ!』

甲板の海賊達が上空の俺に一斉に矢を放つが当たる前に風で叩き落す
数は予想外だったが強さはたいした事ない
これなら大分時間が稼げそうだ
甲板の上はお祭り騒ぎのような騒がしさだが上空はのんきなものである

「お次はっと」

どうやって救援を呼ぶか考えていると船上から声がかかる

「大丈夫か!アズ!」
「アレク!?」

そこには杖を構え海賊に殴りかかるアレクの姿
小柄な海賊と良い勝負をしているが・・・
上空から小柄な海賊に攻撃を加え気絶させる
アレクと背中を預ける形で海賊に対峙する

「なんで来たんだ!」
「甲板が騒がしくなっていたからね!君だけに危ない橋は渡らせない!」
「そうじゃなくて!」

俺に向けて放たれる海賊のサーベルを捌くアレク

「僕は皆を無事に家まで送り届けると言った!それにはもちろん君も入っている!」

アレクが力強く叫ぶと杖で海賊を吹き飛ばし海に落とす

『新手か!?』
『やっちまえー!』

アレクは二人がかりで斬りかかってきた海賊のサーベルを杖で受け止めると、腰に巻いていた短剣で片方の海賊の喉元を切り裂きもう一方の海賊を蹴り飛ばす

・・・アレクって意外と強い?
ダメージもそこそこに手数で海賊を圧倒している
俺は再び上空に飛翔すると空中からアレクの援護を行う

決して近接戦闘技術が負けたと思ったわけではない
そっちのほうが効率が良いからだ・・・良いんだよ

小柄な海賊を杖に跨ったまま突進して海に落とす

「よし!この調子なら!」

いける!そう思った瞬間船上に海賊の叫び声がこだまする

「動くな!」

なんだ?不利になったからっ・・・て
そこには首元にサーベルを突きつけられ口元をふさがれているアレクがいた
後ろには樽部屋に避難させていた3人の子供達が泣いているのが見える

「こいつらの命が惜しかったら大人しく降伏ふるんだなぁ!」

ドクロのマークがついた海賊帽をかぶる男がそう叫ぶ

ここまで・・・か・・・
杖を地面に置き両手を挙げ降参する
その様子を見た近くの海賊が笑みを浮かべサーベルを構える
万事休す・・・か!
覚悟を決め目を閉じると一瞬の静寂の後
ザパァン!と大きな音が響く

体中に水を浴び目を開けると
海から飛沫が上がり巨漢が船上に躍り出てくるのが目に入る
片手には巨大な斧を持ち、日焼けでコンガリ焼けた肌にボブショート
イッカクさんが交渉につれて来た海王が立っていた

「・・・またせた」

聞こえるか聞こえないかの小さな声でつぶやくと斧を振りあげる
海王が斧を一振りすると三人の海賊が吹っ飛びライフが白く染まる
その光景に驚いた海賊帽がアレクにサーベルを突き付ける

「お・・・おい!こっちには人質が・・・」

海賊帽が叫ぶが海王は止まらない
斧を回転させながら新たに二人の海賊を吹き飛ばす
海王の全く動じない姿に焦った海賊帽はアレクを担いで小舟に乗り込んだ

「アレク!」

小舟から水飛沫が上がり高速で海原に走り出す
小舟であの速度かよ!?
残された子供達を安全な位置まで移動させると海王が背後に斧を向ける

「ここは・・・まかせろ・・・」

つられて後ろを振り向くと海賊の増援が後方に迫ってきているのが見える
どこからこんなに・・・でもさっきの戦いを見た感じ海王ならこの程度の人数軽く倒せそうだし・・・
杖にありったけの精霊を集中させ上空に飛翔する

・・・目標捕捉!
小船を見つけた俺は加速しながら急降下していく

「アレクーーーー!!!」
「ちい!しつこい野郎だ!」

海賊帽がマスケットを取り出す

「げえ!?そんなのありかよ!?」

轟音と共に弾丸が頬をかすめる
あたったら即死レベルじゃないかこれ!?
顔面蒼白になりながらも小船に接近する

「死ね死ね死ね死ねーーー!」

小船からは海賊が叫び声をあげながら弾丸を絶え間なく撃って来る
あの高速運転しながらこっちを狙い撃ちするとかあの人実は相当な強さなのでは・・・?

近づくにつれ精確さが増す弾道に冷や汗をかきながらギリギリまでタイミングを見計らう
10m・・・9m・・・8m・・・7m・・・

「この近さなら・・・外さねぇぜ!」

海賊帽が口を歪ませ銃口をこちらに向ける
パァン!という音と共に俺は杖のバーナーを着火する
バーナーから火精霊が噴出、火精霊を活性化させロケットのように加速させると
そのまま小船の海賊帽に突進する

「ブースト・・・ファイアー!!」

海上に火柱を立てながら小船を真っ二つに焦がす
海賊帽は下半身を巻き込まれ苦痛に顔を歪める
真っ二つになった船の残ったほうからアレクを救い出すと
海賊帽は下半身を焼かれ憎しみに満ちた目でこちらを見ながら逃げ出す

「すまないアズ・・・」
「良いよ、無事でよかった」

ここで深追いするべきではないだろう
アレクを背に乗せ海路を戻る
捕まっていた船はオクトリアの国旗が掲げられたガレオン船に包囲されている

<クエスト:誘拐された子供をクリアしました>

                   ◇
     海上の戦いアフター

「くそ!くそ!最悪だ!」

組織に戻った俺は壁を殴り悪態をつきながら床を這う
這っていた手が何かにあたり上を向くと最悪な人間がいた

「あ~あ~情けなえなぁ!」

上から俺を覗き込む赤髪が馬鹿にしたような笑みを浮かべ俺の頭を踏みつける
クラン赤金の鷲のクランマスターだ

「ひひ!おめえには期待してたんだが残念だよ」

続いて隣で笑うクラン赤金の鷲のサブマスター
整った顔立ちを醜く歪ませレイピアを俺の目に突き付ける

「兄貴!こいつどうします?」
「落ち着け兄弟・・・チャンスをやろうじゃねえか」
「あ~あ!あれを渡すんですかい?ヒヒ!」

赤髪の言葉に金髪は笑いながらレイピアをしまう

「てめぇの落とし前はてめぇでつけな」

赤髪が何かの呪文書を手渡してくる

「思い描くのはてめぇの想像する最強の魔物だ・・・じゃあな」

赤髪の言葉を半分に
俺は不思議な呪文が描かれたこの呪文書から目が離せなくなっていた

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