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第三十九章 炎のPT結成

炎の魔人イベントに参加すべく知人に声をかけているアズ
普段からソロプレイが基本の為、本日何十件と個人チャットで断られ続けていた

『ごめんなさい!』
 『いやいや!気にするなって・・・トウヤも身内とPT組むの?』
 『いや・・・僕はこの前言ってたクランに入団を認められて・・・』
 『あれ・・・確か領土の入手が条件じゃあ』
 『それが先日の報告をしたらそこまで出来たなら合格としようってことで!』

トウヤが個人チャット越しに興奮して語っているのを片耳に頭を悩ませる

 まさかトウヤも駄目とは・・・
俺の少ない知人である有力クラン4つのフレンドは全員クランメンバーと行くのだそうだ
報酬が最初の1チームのみとなる為断られるのはある意味必然だった
 そう思いクラン未所属でかつ炎の魔人と因縁あるトウヤに声をかけたのだが・・・
どんなクランか知らないが幸せにな・・・トウヤ・・・

個人チャットが終わり木漏れ日荘のカウンターに項垂れながら呟く

「ちくしょう・・・」

 一人もメンバーが揃えられない・・・もうソロで行くしかないのかもしれない
 ソロでいけるぐらいのスペシャルアイテム持ってなかったかな・・・

 カウンターでアイテムストレージの中身を取り出しては置いてアルにかたずけさせる
 そんな行動を繰り返しているとアクアとルピーが横の席でアイテムの観賞をしだした

「うぴーちゃん!これなんだろう!」
 《これは食べ物じゃないです・・・それも食べ物じゃないですね!》

ルピー・・・食べ物基準でしかわからないのか・・・
不知火の大爪を興味深そうに持っているルピー
危険物だからと大爪を取り上げてアルに持たせる

戦闘面は最強クラス、食べ物を引き合いに出せばすぐ仲間になるだろうルピー

最初はルピーを仲間に炎の魔人討伐に行こうと思ったが
何をするかわからない扱いづらさ、精神的に何かしら弱点がある為却下した
子供らしく触手や高所が駄目だったのだ
ほぼ死体に近い炎の魔人も駄目かもしれない

同じく住人のグレイはランズロットから逃げる為引きこもりLvや逃走Lvが軒並み上がっており
最近では捕まえられないので声すらかけれていない
 グレイも戦闘では役にたてるレベルになりつつあるが・・・やる気の問題だろう

同じく住人の我が姉サトミ
戦力も頭の弱さも軒並み低い姉を連れていくのは抵抗があるので却下したのである
BGOで数少ないヒーラーポジだが耐久力のほうが高いので正直使いづらい

それに木漏れ日荘のメンバーでもし組んでいくとしても4人だ
 どちらにせよあと一人足りない

溜息を吐きながらアイテムの整理を続けていると
木漏れ日荘のドアが乱暴に開かれる

「・・・!ちょうどいい!アズ!ルピー!俺と炎の魔人討伐のクエストを受けてくれ!」

 急いできたのか、髪がボサボサになっているグレイ

「グレイからクエストなんて久しぶりだな・・・というより今日はランズロ」
 「行くのかアズ!?行くだろ!?」

すごい剣幕のグレイに押され思わず頷く
頷く俺に親指を立てると今度はルピーに手を差し出す

「よし!ルピーちゃん!君にはとびっきりの食事を提供しよう!」

ルピーとグレイが無言で握手を交わす
 グレイは入り口を振りまきながら叫ぶ

「そういうわけだ!俺は木漏れ日荘の皆と炎の魔人討伐に行く事になった!」
 「残念だよ・・・でも私は君をあきらめない!きっと立派な騎士になるように導くつもりだ・・・!」

いつの間にいたのか、ドアに背中を預けランズロットが不敵な笑みを浮かべている
今日グレイはランズロットの特別騎士訓練の日だった筈だが・・・
訓練が嫌で炎の魔人討伐に行くって言いだしたなこいつ
 せめてもの仕返しにジト目でグレイを見ながら話しかける

「それは良いけどこれで3人、あと二枠あいてるよね?」

グレイがびくりと固まりランズロットが笑みを濃くする
二人が再び何か言う前に上階より声がかかる

「なになにー?なんの話ー?」
 「ちょうどよかった!サトミさん!木漏れ日荘のメンバーでイベントに行きませんか?」

なるほど上手い口説き文句だ、これなら姉は断らない
朗らかな笑みを浮かべ承諾する姉にグレイがガッツポーズをする

「けれどあと一人足りないようだね・・・やはりここは・・・」
 「そうだー!私の新しい友達も一緒にイベントに連れて行きたいんだけど一緒にいけないかなー?」

まさかの姉の発言にグレイとランズロットが各々違う反応を示す
 グレイは祈るようなしぐさで姉の前にひざまずいている

「女神か・・・是非その友達もイベントに一緒に行かせましょう!」
 「仕方ないね・・・気が変わったらいつでも待っていますよ?グレイ君?」

ランズロットの発言にぶるぶる震え出すグレイ
結局ランズロットが帰るまで震えが止まらなかった
 どれだけ過酷な特別訓練を受けているのだろう
内心こっちも冷や冷やしてきたが今は他の事のほうが大事だ

「それで姉さん、新しい友達って?」
 「うんー木漏れ日荘で待ち合わせてるからもう来ると思うよー?」

 知らないうちに姉が交友関係を広げていて驚きだ
 そしてこの地雷PTで炎の魔人に行く事になるとは・・・

「せめて最後の一人が常識人で強ければなぁ・・・」
 「あんらぁん?おまたー?」

 紫の髪をかき上げ腰をくねらせながら木漏れ日荘に入ってきた人物を見て頭をかかえる

「アリスさーん!みんなでお祭りに行くことになったんだー!一緒にいこー!」
 「あらぁん!たのしそぅ!いかせてもらうわぁん!」

 常識人?で強そうな人だけどさぁ!
 歩く精神破壊兵器のほうに向き直り疑問をぶつける

「アリスさんって一応NPCでGM側の人間ですよね?公式の戦闘イベントだけど大丈夫なんですか?」
 「あんらぁ!まさか炎の魔人のことぉん?構わないのよぉん!あれは私達でも対処しなくちゃいけないからぁん」

そう言いながら街の外に出てくるよう促すアリス
街の外の離れた所に出てきた俺達を確認すると満足そうに頷く
大量のブルーラットの中アリスが腰をくねらせ右手を頭の後ろに左手を前に突き出す

「そぉしてぇん・・・戦力面だったわねぇん!いくわよぉん!」

そこから巨大な人形の手だけが出現して周囲のモンスターを一振りでなぎ倒す
SAN値を削りながら物理ダメージを与えるとかまじチートじゃないですか
仲間のSAN値も直葬するのさえ目を瞑ればな!

 「アリスさんや、そのポーズはなんとかならないの?」
 「あんらぁん!私のセクスィーポーズはアズちゃんにははやかったかしらぁん?」

こんな嬉しくないセクシーポーズ耐えられるのはドルガさんか数十年生きた賢者ぐらいだろう

「とりあえず気持ち悪いからやめろ」
 「てれちゃってもぉん!」

クネクネするアリスを見て更にSAN値が減っていく
 ゲンナリしているとルピーがメモを見せながらアリスのモノマネをしてくる

[私のセクシーポーズ、どうでしょうか?]

うん、セクシーじゃないな、ルピーには数年早いかもしれない
 だがここで本音を言ったらルピーが傷つくかもしれない
頭を撫でながら無難な答えを導き出す

「胸がないから仕方ないよ」

ルピーが衝撃を受けたようによろめいている
上手くフォローできただろうか?

 「ねぇねぇひろ!こっちこっち!」
 「やらせねぇよ?」

 真似しようとしていた姉の腹に圧縮した精霊をぶつけて黙らせグレイのほうを見る

「・・・アズさん?なんでこっち見るんだい?」
 「いや、この流れだからさ、遠慮しなくて良いよ?」
 「遠慮してねぇよ!頼まれてもしねぇよ!」

なんだ面白くない

 アリスの戦力を確認した俺達は村雲城に出発することになった

 しかし前回トウヤと村雲城に向かった時はそこまでエンカウントしなかったが・・・
隠密PTだったからか今が目立つPTだからか
今は歩けば敵とエンカウントする
 その度にアリスがグロポーズで敵を倒すから安心して旅が出来るのだが

「ところでアリス、ぬいぐるみの複数召喚ってどうやるの?」

アリスは同時に数十のぬいぐるみやぬいぐるみの一部だけを召喚したり出来る
俺も出来るようになるのなら是非覚えたい

「このスキルはねぇん!人形師の極意を学んだ人が使えるのよぉん!」
 「へぇ、それはどうやって学ぶの?」
 「わたしが一から教えた子だけ使えるのよぉん!」

なるほど、覚えてヒャッハーするには地獄を通り抜けなくてはならないらしい

「アズちゃんなら教えても良いのよぉん?」
 「考えさせてください」

 覚えては見たいがその前に心の準備が必要そうだ
目を閉じ葛藤していると姉が肩を揺する

「ひろ!あれ見て!」

なんだ?アリスは見たくないんだが?
 姉が指差す方向を見ると村雲城の辺りから煙が上がっている

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