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第二十八章 ちっちゃくないよ!


無事棺桶から姉を救い出したアズは
1Fで食事中だったルピーもろともサトミに拉致され
現在ショッピング中である

[無事に勝ったよ、青姉さんはどうや?]
[元気過ぎて困るぐらいだ、今はルピーのファッションショー中だよ]

二人の方を見るとルピーが死んだ魚の目をしている
さっきまで俺もあんな目をしていたがルピーの着せ替えの方が楽しかったのだろう
姉のヘイトは完全にルピーに固定されている

現在俺達三人は早々にフーキの物も含め四人の浴衣、甚平まがいの物を購入
途中ずっと眼を輝かしていた姉によりルピーは姉の着せ替え人形と化している

ルピーの事だから何か食べ物でもあげたら喜びそうだし何か買ってあげるとしよう

現在花火イベント前期間という事で多くの生産職冒険者が普段見ない露店や色々な屋台を並べている

日本人が多いBGO、並べられているものも必然的に日本の屋台でよく見かける物が多くなる
素材は違うが味は大体同じだ
たこ焼きや焼きそば等食べ物を買ってはアイテムストレージに入れていく

「この焼きそば・・・ジン魚で作られてるのか!ルピー食べれるかな?」

ルピーの方を見ると捨てられた子犬のような目をしているので食べ物をチラつかせる
現在犬耳と尻尾をつけられているルピーの尻尾が大きく左右に揺れる

すごいな、あのアクセサリーはどうやら本体と連動するらしい
チラッと見せるとパタパタ揺れて隠すとションボリする
何度かやっているとルピーが目尻に涙を浮かべてこちらを睨んでいるのに気がつく

どうやらやり過ぎたようだ
メッセージで焼きそばを送ると尻尾を振って喜んでいる

「さてルピーのご機嫌も取れた事だし」

再び屋台を物色
屋台の一角が盛り上がっている

<ランダムキャンディー 一個3R>

祭りの定番のおみくじ
ランダムキャンディーの効果によって運勢を占うというものらしい
周りには「HPが回復したー」とか「このキャンディーで風邪が治りました」とかで女子が盛り上がっている
毒や出血、各種状態異常で床に倒れている冒険者達は見ないことにしよう

3つ買って9R、丁度一段落したであろう二人と合流する
死んだ魚の目をしていたルピーは焼きそばを食べてご満悦、尻尾をパタパタさせている

「って買ったの!?」
「うん!ルピーちゃんの余りの可愛さにお姉ちゃんつい・・・」

決して安くはなかったはずだが・・・
ダンジョンやら行った割にRを使ってないからか?

[周りの冒険者の人がお金をくれました]

ルピーのメモを見て周りを見ると男性冒険者達が良い笑顔で親指を立てている
お巡りさんはどこかな?

「ルピー?怪しい人からRを貰ったら駄目だよ?何を要求されるかわからないから」

ルピーは頭にハテナを浮かべてコクコク頷いている

「姉さんも・・・良い歳なんだから気を付けてよ?」

姉は指を立ててチッチッチと口で言っている

「可愛いは正義!ってあの人達が言っててねー、その言葉に感動しちゃってー!」

姉も変質者だったか

白い目で姉を見ているとルピーがランダムキャンディーをジーっと見ている

「ルピー?食べ物を貰っても知らない人についていっちゃいけないからね?」

言い聞かせながら二人にランダムキャンディーを渡す

「ちょっとした運試しに使えるみたいだよ?面白そうだったから三人で食べてみようと思って」
「おもしろそー!じゃあまず私から!」

姉が受け取ったキャンディーをパクリ

「おー!なんかすっごく頭が良くなった気がする!」

その台詞がすごく残念な人にしか思えない
PT欄には知力+の状態異常がついている
中吉?みたいな感じかな?

ルピーを見るとキャンディーを口の中でコロコロしながらメモを見せる

[レベルが上がりました!]
「おお!レベルが上がる効果まであるのか!」

これは間違いなく大吉だろう
徐々にレベルが上がりづらくなるのはゲームの仕様
これはすごい情報だ
俺達の近くにいた冒険者達が一気に露店の方に走っていき誰もいなくなっている

余談だが
今日を境に高レベル冒険者が一気に低レベル帯での活動を余儀なくされる
上がることあれば下がるのも必然である

「もうちょっと買っとけば良かった」

俺はワクワクしながらキャンディーを口に投げ込む
ボフッという煙の音
すぐさま自分の状況確認
特に状態異常には掛かってない
HPの増減も無し
あれ?何もないっていうのもあるのか?

「俺はハズレかな?まぁバッドステータスよりはましだから小吉かな?」

二人を見ると目をまん丸にしてこちらを見ている
というか二人共大きくなった?

「か・・・可愛いー!」

姉が叫び声と共に俺を抱きしめ・・・もとい持ち上げる
ばかな!?これでも割と平均並みの身長と体重だぞ!?姉の力で軽々持ち上げられる程軽くはない!
姉の魔の手から逃れるべく手を振り回すが届かない

「くっ!?一体何が起きているんだ!?」

俺が叫んでいるとルピーが手鏡を向けてくる
そんな物も買っていたのか!
やっぱり女の子だもんな・・・
少し感動しながら手鏡を見て思考が停止する

幼くなった俺が目に入ったのだ
髪と目の色はそのままに
元々中性的だった見た目がより性別がわからなくなっている
鬼のローブはダボダボになっており、小学生レベルのサイズだろうか?ルピーよりも背が低い
BGOは12歳以下はプレイ不可なのだが12歳以下の見た目になってしまっている

思考停止したまま呆然としていると、姉が頬を擦り付けてきて正気に戻る
これはマズイ状況だ!頭の中で警報が鳴っている

「や・・・ヤメロォ!離せ!近づくな!」

精霊を纏い姉の手から脱出、人混みの中に逃げ出そうとした俺の前に残像を残しながらルピーが立っている

「ル・・・ルピーさん?さっきは見て見ぬ振りしてごめんね?でも焼きそばあげたよね?」

ルピーの目が怪しく光っているのを見て直感でわかる
姉と同じ雰囲気を漂わせている!?
久しぶりに精霊を自身にぶつけ加速するがルピーの速さに敵うわけもなくアッサリ捕獲される

「ねぇねぇー!ルピーちゃん!これも似合うと思うの!」

コクコク頷くルピーの手には新撰組が着てそうな和服

「いいえ!私の見立てではメイド服を着せるべきかと!」

どこから現れたのか、いつの間にかメアリーさんが加わっている
この人はメイド服がそんなに好きなのか?
いや、今はそんな事はどうでも良い、重要な事じゃない

三人の着せ替え人形になっている俺はステータス欄に状態異常がない事
何かのタイマー的なものがない事を確認して察する
これは・・・永続効果だろう

「俺・・・どうなるっていうんだ・・・」

虚ろな目で屋台の光を見ながら呟くのであった

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