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第二十四章 ランクマッチ


初日のドラゴン討伐に失敗した冒険者一同は
しばらく情報集めの後作戦会議を行う事になった

個人で行っても勝ち目がないから仕方ない
そんな訳で二日目はランクマッチに挑む事にした

メニューからPVPを選ぶとランクマッチという欄が増えている
それを押すと専用フィールドに移動し
現在ランクマッチに参戦している人とランダムで当たる方式になっている

<対戦マッチング中>
<対戦相手が見つかりました>

画面が暗転し観客席に誰もいないコロシアムに立っている
目の前には幸薄そうな小柄な男性がはにかんでいる

「あはは・・・よろしくお願いします、僕はトウヤって言います」

随分と儚い感じのする相手だが容赦はしない
コロシアムには土精霊多量と火精霊中量、風精霊少量
障害物は無く自然調和も意味をなさないかもしれない

分析していると少年が申し訳なさそうに呟く

「えと、多分盗賊職の方ですよね?隠れても、速くても、僕が勝ちますんで、ごめんなさい」

盗賊職ではないんだが?
そういえば今は盗賊のチュニックを着ていたな
注意深く少年を見ていると少年が消えた

「!?」

どこに行った!?
周りを探すが先程の少年がどこにも見当たらない
ドスッという音と共に腹部に暖かい感覚
少し大きめのナイフを少年が刺しているのを目視
鬼の短剣でトウヤを斬りつけながら距離をとる

画面が赤色になっている
出血状態、処置しない限りHPが減少し続ける状態異常だ

だが処置している暇はない
今度は見失わないようトウヤを睨む
だが確かに目の前にいたトウヤが消えた
首に暖かい感覚、今度は赤い画面に紫色が混ざる

「毒状態に出血状態・・・同時ダメージに加えて姿が見えないとか・・・チートだろ・・・」

再び姿を消すトウヤ、だが今度は違和感に気づく
普通に見たなら見つからないだろう
精霊が、まるで人間を避けているように点在している場所がある
そこに向けてロックランスを放つが継続ダメージで足に力が入らず少し逸れる

「すごいですね、まさか僕の不可視の者のスキルを見破るなんて」

姿を現した少年が驚きながらこちらに歩み寄る

「貴方となら楽しめたかもしれないけど残念です、HPがもう残ってないみたいですね」

トウヤはナイフを手に呟く

「せめてもの情けです」

動かない体にナイフを突き立てられる
一気にHPが削りきられ視界が暗転
元いた場所に戻ってきている

目の前には<LOSE>というウィンドウが出ている
何もわからないまま終わってしまった
PVP・・・思った以上に恐ろしい所かもしれない

かと言って負けっぱなしは気に入らない
二度目のランクマッチに挑戦
画面が暗転し再びコロシアムに

今度は大柄な筋肉男、キンニクンさん

「ガハハハハ!なんでぃ!次は随分弱そうなやつじゃねぇか!」

弱そうで悪かったな!今度は先制攻撃すべく風を自分に当て加速、杖の先端に火精霊を集中
キンニクンの目の前で一気に射出しようとした所でキンニクンが大胸筋を突き出す

「マッスル!ライト!」

瞬間筋肉が眩い光を放ち視界が真っ暗らになる
目がぁ!目がぁ!
腹部に衝撃を感じ、目を開けるとキンニクンがニヤリと笑みを浮かべている

腹にモロにパンチをくらい息ができない
風を思い切り自分に当て後方に吹き飛ぶ

「ゴホッゴホッ!」

十二分に距離を取った所で息を整える
遠くでキンニクンが叫ぶ

「マッスール!ソニックパンチ!」

30Mはあった距離を一瞬で詰め寄られ再び腹部に衝撃

「マッスール!ラッシュ!」

見えない程の速度で何発か殴られると
視界が暗転し元いた場所にいた
目の前には<LOSE>の文字

「・・・」

チクショー!
どうやらPVPを舐めていたらしい

今度はコロシアムに入場と同時に隠密と自然調和を発動する
目の前にはいつぞやの赤髪

「くぁぁ!めんどくせぇ!ドラゴンには散々な目に合わせられるし!ってああん?誰もいねぇじゃねぇか?」

隠密で隠れた俺は赤髪の背後に周り杖を構える
風精霊をありったけ集めて竜巻を、その中にありったけの火精霊を混ぜて・・・
炎の竜巻が赤髪を中心に巻き上げる

「のわぁぁぁぁ!また炎かよぉぉぉ!」

炎の竜巻から逃げ出そうとする赤髪の足に自然調和で岩を巻きつけ動きを封じる
よろけて手をついた赤髪の腕にもついでに岩を巻きつける

「だぁぁぁ!うごけねぇぇぇ!あちぃぃぃぃ!」

絶叫と共に赤髪のHPが0になるのを待つ
HPが0になった瞬間画面が暗転し元いた場所に帰還

目の前には<WIN!>と出ている

今日初めての黒星にニヤケながら一日中ランクマッチを行い、勝率4割で終わる事になった

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