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第十七章 いざ迷宮都市へ


「いや不可抗力やってん!道端で満腹度0で今から死にますって感じやってん!!」

これ以上何か言うと逆に自分の首をしめそうな気がするが・・・
そんなフーキを片目に今も尚姉に抱きしめられながら飯を食べ続けるルピーに視線を向ける
今日は和装にボディアーマー装備

あぁ、多分好きなだけ食べさせて自分のR全部使い果たしたな
そんな視線を感知違いしたのか姉が小声で

「そんなに羨ましそうにしなくても後でぎゅーってしてあげるよー?」

誰も頼んでないしそんな事しようものならLV差に物を言わせて即狩る

未だ弁明を続けているフーキに助け舟を出す

「まぁフーキなら仕方ないか」
「みき君なら大丈夫だねー良かったー」

姉もフーキという事で安心したようだ、しかし

「姉さん、ゲームの中ではゲーム名で呼ぶのがネチケットだよ」

姉は頭にはてなを浮かべているとフーキが補足する

「ネチケットっていうんわネットのルールみたいなものやねん、んでネットではリアルネームで呼ぶのはあかんくてわいの場合フーキ、青姉さんの場合はサトミさん、ひろの場合はアズみたいな感じやね」

ほへーっと半分わかってないような姉はわかったように頷いている

「じゃあルピーちゃんも本名は別にあるんだねー」

いくらキラキラネームありきのご時世でもルピーと名付けるのはなかなかの猛者だろうに

「そういう事、ところで姉さん、BGOの、感想はどう?」
「んー!すっごいねー!まるで海外旅行に来た気分だよー」
まぁまぁの好感触のようだ、このまま布教を続けてこの前の過ちを繰り返さないようにしなくては

「じゃあこのままブルーラット討伐に行こう!戦闘もこのゲームの醍醐味なんだよ!」

戦闘と言う言葉に姉が少し悩んだ顔をしたが
オンラインゲームで戦闘しないってのもなかなか味気ない

「それなんやけどアズ、西の町に迷宮都市があるのは知っとる?」

全くの初耳だ、俺はこの街近辺しかまだ行ったことがない

「1日1回入場可能なんやけど、その迷宮ダンジョンやと皆んな入る時レベル1になるんや、スキルはそのままでステータスが今の能力をLV1にした時の数字になるねん、簡単にいうと不思議のダンジョンみたいな感じやね」

それは面白そうだ

「けど隣町に行くには大分時間かかるんじゃないか?」
「一回行ったことがあるメンバーがいたら転移ポータルで一瞬やで」

つまりフーキは行ったことあるのか

「面白そうだな・・・kwsk」
「まずそのダンジョンは階層ごとにモンスターが違うんや、ブルーラットに慣れたわいらと一緒ならわいらも楽しみたい。それに装備品はレアな物が出ることが多いんや、金欠な今そこで一攫千金をねらいたいんや」

恐らく後半が本音だろう
だがなかなか魅力的な提案ではないか

「いいね!じゃあ俺、サトミ姉、フーキの三人で行こうか!」
「わたしはー二人についてくよー」

姉がのほほんと言う、姉の装備も落ちると良いんだが
そこで袖をクイクイと引っ張られる
ルピーがメモを持ってこちらに見せている

[私も一緒に行きたいです、ダメですか?]

断る理由なんてない

「もちろ・・・」
「あったりまえだよー!ルピーちゃんは私が守るよー!」

俺の決め台詞を取った姉
多分姉が守られる事になるんだろうけどなぁ

「じゃあフーキ、移動ポータルへの案内頼んで良いかな?」
「かまへんよ、はなからそのつもりやったし」

死屍累々の酒場を抜け出し街中を歩く
露店地帯では姉が興味津々といった感じなのでショッピングがてら先に進む

「あんらぁ!アズちゃんじゃなぁい!今日は大所帯ねぇん・・・」

耳にねっとりしたボイスが聞こえてくるので冷たく返事をする

「どうも、人形の修理お願います、あとちゃんはやめろ」
「珍しいもんやね・・・人形屋・・・知っとる所やとわいらしか会った事ないで、この人」
「ここの人形も可愛いー!・・・あれ?店員さん・・・どこかで会ったような」

姉が頭をかしげている

「この前のリアルでの買い物の時じゃないの?」
「うーんそんな最近の事じゃなくて・・・思い出せないからいっかー」

なんだ、この前の事ではないのか、というよりやっぱりあの時あの後の事が思い出せないな

[食べ物を作れる人形はありますか?]

隣の金髪っ子に関しては平常運転だ、色気より食い気といった所か?

「ざんねんだけどぉん、それは育て主次第よぉん」

ルピーが目を輝かしている、育て方によっては作れるって事だもんな
アイテムストレージを開いてションボリしている、さっきのクイーンとしての仕事で全財産使い果たしたなこの子

アリスアルとジローを受け取ると
手早く裁縫道具を取り出し耐久値をMAXにする

「かんせいよぉん!」

ピカピカになった二体をアイテムストレージに戻し礼を言う

「最近惚気メッセージがうざいんでやめてください」
「いやぁん!のろけなんてぇん!はずかしぃん!」

アリスがクネクネしだす、これが俺からの最大級の礼だよ、ほんとメッセージはやめてくれ
アリスをその場に残し露店通りから離れた所で他の三人が変な表情をしている

「まぁあんなんだけど良い人なんだよ」

三人は頭に?を浮かべている
ん?おかしなこと言ったかな?

「なんやろ・・・なんや意識が朦朧としとんねん」
[頭グルグルします]
「うえーお姉ちゃんなんだか疲れちゃったみたいー」

三人とも人込みに寄ったのか?少し休みながら行くか
露店通りを抜けた空き地で少し三人を休ませ再び移動ポータルに向けて歩き出す

初日に入門した門の、監視小屋につく

「ここの監視小屋に移動ポータルがあるんやけど」
「あるんだけど?」
「そういや一人20R必要やったわ」

フーキを見るとお金がないアピール、ルピーはもちろん0、姉は持っているだろうが初心者に出させるのは言語道断
溜息をつきながらフーキに80R渡す

「ちょうど大森林クエストと厨房クエストで余ってるから使って良いよ」
フーキが「堪忍な」と小声でつぶやき、門番に話しかけると中に入れてもらえる

中は狭い空間、足下に魔法陣が白く発光している
これは胸熱だ
ワクワクしながら魔法陣に乗る俺を姉が微笑ましく見ているが好奇心には勝てんのだ
四人が魔法陣に乗ると厳かなローブを着た魔術師が現れる

「準備はよろしいかな?」

皆んな一斉に首を縦に降る

「よろしい・・・他に客はいないようだな、では・・・」
ゴクリと喉がなる

「若き旅人達に幸あらん事を」

魔術師が杖で魔法陣を叩くと視界が真っ白に染まり浮遊感に襲われる
思わず目を閉じ、目を開けると別の空間にいた
紫の魔法陣の上、石造りだった部屋から木造の部屋に
ブーメランパンツにマントをつけた魔術師が杖を片手に某ゾンビゲームの武器商人の如く言う

「ウェルカム!」

どうやらまずはこの露出狂を倒す事から始めなくてはならないようだ

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