魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

迷宮の出会い

さまざまな静かな鳥の囀りが聞こえてきて弥一は自分の意識が覚醒してくるのを感じ目を開ける。

「ぐっ、こ、ここは・・・」

体に走る痛みに顔をしかめつつ、両腕を使って状態を起こす。

そこは見渡す限りどこも木が生い茂る森だった。その森の中に周りの木々を放射線上に吹き飛ばし広大なクレーターができていた。

「なんとかなったか、くそっ、完全に防御できなかったか」

あの時、転移をすると同時に障壁を展開し爆発の衝撃から身を守ったのだが、ギリギリの状態で【転移魔術】を発動していたで障壁が完全ではなく、完全に威力を殺しきれなかったのである。

「いててて。あー、体が動かん・・・てか、ここどこだ?」

そうして【探査魔術】を発動するが

「げっ、【探査魔術】の範囲外かよ。どんだけ飛ばされたんだ?」

【探査魔術】の効果範囲は場所の感知だけなら500キロメートルで、その場所に加え魔力の反応、地形情報など正確な詳しい状況把握なら100キロメートルである。また【探査魔術】専用のポイントマーカーを設置した場合、その探査範囲は太陽系内までであり、この世界に来て最初に使った【探査魔術】は弥一の自宅に設置したマーカーを感知するものであった。

「とにかく東側の森に転移したことは間違いない。なら【治癒魔術】を掛けてさっさと東を目指すか。」

と今後の予定を決めたその瞬間弥一が寝っ転がっている付近の地面に亀裂が走る。

「へ?」

その亀裂は徐々に大きくなってゆき

スゴォオオーーーン!

地面が崩落。そして近くにいた弥一も崩落に巻き込まれる。

「な、なんでだぁああああああーーーーー!!!!」

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川の流れる音が聞こえててくる。二度目の気絶に弥一は目を覚ます。

「なんだ?この空間・・・うわっ、随分と落ちてきたな。」

見上げると遥かかなたに地上の光が見えたが、地上の光が徐々に小さくなってゆく

「なに!?地形の自動修復だと!?」

そしてあたりは暗い闇に染まった。

「なんてことだ、閉じ込められた。もう一度【探査魔術】を使うか。」

二度目の【探査魔術】を発動するが、

「なに?探査が妨害されて【探査魔術】が使えない・・・!」

すると天井に蛍の光のように青色の光が現れ辺りを照らす。そこは川が流れ、よくわからない模様の緑に輝く壁があり、そして奥には巨大な扉が存在していた。

「どうらやらこの壁が探査を邪魔してるわけか、そしてこの扉・・・どうやら進むしかないようだな。」

そう判断すると弥一は装備の確認をし、身体に【治癒魔術】を掛ける。そして万全の状態になったところで扉に手を掛け

「よし。いくか!」

両腕に力を込め扉を押し開け、踏み出す。

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内部は迷宮のような構造になっており所々に魔物が徘徊しており、壁にはあの模様が輝いており道を照らしていた。

『グァアアーーーー!!』

「邪魔だ!」

襲いかかってきた狼型の魔物を最小限の動きで避け、すれ違いざまに【蒼羽】で首を跳ね飛ばす。

弥一は慎重に進み、ときどき襲いかかってくる魔物は今のように【蒼羽】で一刀のもとに切り伏せる。

「魔物の強さはそうでもないっぽいが、奥に行くにつれて少し強くなってたな。」

とそんなこと言いながら横から襲いかかってくる3体の狼型の魔物を見向きもせず腰のホルスターからレルバーホーク抜き発砲、【弾速強化弾】で3体まとめて貫く。

ちなみにこの狼型の魔物、訓練場を襲撃した魔物と同じで、普通は騎士団の前衛と魔法使いの後衛の二人でようやく対応できるほどの魔物である。そんな魔物を弥一は気にすることもなく片手間で倒していく。

こうして特に苦戦することなく進んでゆきたどり着いたのは大きな扉。

「ここから強い魔物の反応がするな・・・よし。入ってみるか。」

扉を蹴飛ばして突入。そこは広い空間で真ん中には先ほどの3倍くらいの大きさの狼型の魔物が存在していた。

『ワォオオオーーーーーーン!』

狼は弥一を確認すると遠吠えをする。すると狼の足元から10体の狼型魔物が出現し一斉に弥一に襲いかかる。

弥一は胸元から黄色の宝石を取出して砕き唱える。

「《光弾・第一門から第十門開放・発射》!」

弥一の前に十個の魔術陣が展開、そして弥一が左腕を振ると魔術陣から光の弾丸の弾丸が打ち出され魔物を殲滅する。後には全身を光の弾丸に貫かれた魔物の死骸があった。

「すごい!【弾門】が十門まで発動できた。前は二門が限界だったのに・・・!どうやらレベルが上がって補正の強さが上がったのか。」

そうこうしている間に大型の狼魔物は、配下の魔物が殺されたことも気にせず弥一に襲いかかる。

「ふっ!」

そんな狼を弥一は避けず側面をぶん殴る!

『グルァアッ!?』

さすがの狼も避けるのではなく殴られるとは思わず牙を数本砕かれ、対応できないまま吹き飛ばされる。

その間に弥一は胸元から赤、青、緑の宝石を取出し砕き頭上に投げる。すると投げた左手に三重の魔術陣が展開、急速に回転し始める。

狼は危険な雰囲気を感じたのかすぐに逃げようとする。だが

「《絡め捕れ》」

殴りつけた時に張り付けておいた呪符が発動し透明な鎖が狼を逃がさないように絡め取る。

「悪いな。実験に付き合ってくれ。」

そして唱える。

「《輝く三つの宝石よ・砕き・秘めたる力を解放せん》!!」

弥一の左手から発生した白き輝きが円陣を通過するごとに加速・肥大し巨大な光の柱となって狼に直撃。そのことごとくを吹き飛ばした。

「ふー。こんなもんか。流石に魔力を使いすぎた・・・」

と戦闘の反省を考えていると部屋が明るくなり最初に狼が立っていた場所の床が開き階段が姿を現す。

「・・・。まさかこれ、まだあるのか・・・・・・・」

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あれから数時間が経過した。あのあと一四回のボスとの戦闘を繰り広げた弥一はさすがに疲れたので休憩できるところを探して彷徨っていた。

「はぁ~。流石に疲れた・・・どっかいいところは・・・ん?あれ?」

何かを発見したのか弥一は壁に歩み寄る。

「ここの壁、模様もないし光っていない。それに材質が違う。こんなこと今までなかったな。」

そこの壁は周りの壁のように光っておらず、材質も違うようだった。

気になった弥一はその壁に向け【解析魔術】を使う

「これは・・・扉か?登録された魔力パターンを読み込んで開くタイプだな。」

そう判断すると弥一は扉に手を当て魔術式に介入するため弥一の魔力である蒼い魔力を奔らせる。ものの数分で魔術式の介入が完了。扉の術式を発動させると扉が消える。

そこは一つの部屋で。さまざまな色の光が浮かび幻想的な雰囲気の空間だった。

「ここは、いったい何の部屋だ?魔力の濃度が高くて純度も高い。」

そういって辺りを見回しながら部屋の中に入ってゆき、そして見つけた。

そこにはキリストのように巨大な水晶の柱に両手両足を飲み込まれて拘束されている少女がいた。

少女は弥一の魔力の色と同じ綺麗な長い蒼色の髪をしており、その髪の隙間から髪の色と同じ蒼い目を覗かせ弥一を見つめて、少し枯れた声で呟いた。



「あなたも私を殺しに来たの・・・」


そう呟いた少女の声は強く、でもどこか弱く感じた。


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コメント

  • ノベルバユーザー602508

    タイトルに惹かれて読ませてもらいました。
    とても面白い作品でした。

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