リワールド・フロンティア-最弱にして最強の支援術式使い〈エンハンサー〉-

国広 仙戯

●23 隠しステージといえば






 隠しステージ。

 事前に行った作戦会議のとき、フリムはこの空間に対する考察をそんな言葉で言い表した。

「ここは多分〝隠しステージ〟ってやつよ」――と。

 根拠は次の通り。

 詳しい条件はわからないが、当初は閉鎖されていて、ある時を境に解放されたこと。

 第一一一層と言う【いかにも】な数字の階層であること。

 何よりドラゴンという破格のSBに、超巨大なフロアマスターが配置されていること。

 以上三点。これらを総合的に考えれば、ここはゲームによくある〝隠しステージ〟に相当する階層に違いない――と何故かフリムは熱く語った。

 他の遺跡に同様のものがあるかどうかはわからない。最初から存在しないかもしれないし、まだ見つかっていないだけかもしれない。あるいは、誰かが見つけたけどそこで命を散らしてしまったのかもしれないし、クリアはしたが危険すぎるので広めないよう黙っているのかもしれない。

 何にせよ、公式的にはこれが世界初――いや史上初の発見ということになるだろう。

 無論、【僕達が生きて戻ることが出来れば】、の話だが。

 フリム曰く、ゲームにおける〝隠しステージ〟とは通常のものより難易度が高かったり、特殊な仕掛けがあったり、厳しい制約がついていたりするものらしい。

 このルナティック・バベル第一一一層は、まさしくその特徴に合致した場所だった。





「――でぇぇりゃぁあああああああああああああああッッ!!」

 フリムの振り上げた『ジャイアントハンマー』が飛竜の頭を殴り飛ばし、続けて雷光を迸らせる戦闘ブーツが『ライトニング・ペネトレイター』と発声し、別のドラゴンの背中へ槍のごとく突き刺さる。

 羽の付け根をぶち折られたそいつが地上へ落下するのも見届けず、

「ほらほらこっちこっち! 追いつけるものなら追いついてみなさいよ!」

 スカイレイダーの靴底から紫の微光を発し、他のドラゴンを煽りながらフリムは高空を駆け回る。

 漆黒の戦闘ブーツが何も無い空間に一歩を刻む度、足裏からピュアパープルに光る球体が生まれていく。卵ぐらいの大きさのそれは、そのまま空中に浮揚したまま置いて行かれ、フリムが走った軌跡を残すようにズラズラと連なっていく。

 やがて、フリムを追いかけてきた飛竜の鼻先にその一つが当たった。

 爆発。

 出し抜けに爆音が轟き、衝撃と爆炎が飛竜の顔を呑み込む。それだけじゃない。一つの爆発が他の光球へ誘爆し、爆裂が連続する。哀れ、爆発の嵐に巻き込まれた飛竜はそのまま全身をズタズタに引き裂かれた。

 付与術式〈エアーマイン〉――〈バンクマイン〉が『地雷』だとすれば、これは『空中機雷』だ。宙を高速で駆けるフリムはその一歩毎に術式機雷を撒き散らし、追いかけてくる飛竜をことごとく爆砕していく。

 その一方、地上では。

「はっ! やっ! たぁっ! はぁあぁっ!」

 アシュリーさんの【ドラゴンブレスの軌道を捻じ曲げる】という凄まじい絶技が惜し気もなく披露されていた。彼女に襲い掛かった駆竜のブレスが突如、急カーブを描いて矛先を変え、味方であるはずの他のドラゴン達へと叩きつけられる。そして、そのまま刀身に吸収した術力を、

「――〝解放抜刀〟ッ!」

 駆竜の体の一部に突き刺し、解き放つ。圧縮し濃縮されたエネルギーが爆ぜ、堅固なドラゴンの肉体を鱗ごと吹き飛ばした。

 アシュリーさんの強化係数は八倍。力も速度も通常の八倍で稼働できる彼女は、もはやそれ以上の効率で戦える。

 ドラゴンのブレスを切り払い、吸収、解放。この一連の流れを優雅に、しかし高速のサイクルで繰り返していく。強化係数八倍といっても、それはただの八倍ではない。僕のような総合評価Dランクのエクスプローラーと違って、アシュリーさんはトップクラスタの幹部を務める猛者なのだ。

 蒼いロングジャケット姿が疾風と化し、駆竜の合間を縫うように駆け抜ける。

「はぁあああああああああッ!」

 ブレスを利用して戦うだけが能ではない――そう主張するかのごとく、蒼き双刃が煌めいた。赤金色の尾を引く疾風が駆竜の脇を通り過ぎた瞬間、そいつは全身を切り刻まれ、傷口から青白いフォトン・ブラッドを噴き出しながら地面に転がる。今やその剣閃は、竜の鱗などものともしなかった。

『GGGGGRRRRRRAAAAAAAAAA――!?』『UUUURRRRRRRRRYYYYYYYYYYYYYY――!?』『WWWWWWOOOOOOOOOOOOOOOOOOWWWWWW――!?』『GGGGGGYYYYYYAAAAAAAAAA――!?』

 女傑二人によって次々とドラゴン達が戦闘不能に追い込まれていく中、しかしまだまだ数が残っている奴らは攻撃の手を緩めない。

 多種多様なブレスが天空を飛び交い、巨大な足が地をどよもし、重複する悲鳴や咆哮が耳を劈く。

 無茶苦茶な乱戦だった。

 もはや形勢がどちらに有利に傾いているのかもわからない。誰も彼もが目の前にいる敵と、死に物狂いで戦っていた。

 混迷極まる戦場の片隅で、ニエベスもまた一人で戦っている。

「うぉぉぉぉオラオラオラオラオラオラァッ! 喰らえ喰らえ喰らえぇぇぇぇ――――――――――ッ!!」

 彼の右手に握られた片手剣から紫の閃光が鞭のごとく伸び上がり、連続で駆竜の首や胴体を斬りつける。

『GGGGGRRRRRRRAAAAAAAAA!』

 致命傷にこそ届かないが、硬質の鱗を砕き、肉を断つ裂傷をドラゴンは無視できない。己の〝触角〟よりもリーチの長い攻撃に翻弄され、怒りの唸り声を響かせる。

 どこか剣術式〈ヴァイパーアサルト〉を彷彿とさせる攻撃を可能とさせているのは、フリムの試作品である片手剣〝クラウソラス〟の特殊機構だ。ちょうど彼女が振り回しているドゥルガサティーと同じ機構メカニズムが組み込まれているクラウソラスは、見ての通り使用者のフォトン・ブラッドを流用して光の刃を形成することが出来る。

 が、あれはあくまで試作品であるため消耗が激しく、本来であればニエベスのフォトン・ブラッドなどすぐに使い果たしてしまう代物だった。その問題点を回避フォローしているのが、鉄色の柄に挿げられている銀色のカートリッジである。あの金属の筒の中にはフリムのフォトン・ブラッドが封入されていて、クラウソラスはそちらのエネルギーを活用して稼働しているのだ。光刃の色が紫なのはそのせいである。

「どうしたどうしたぁ! そらそらそらソラァァァアアアアアアアアッ!」

 元々トップ集団に所属できるほどの実力を備えていたニエベスである。支援術式で倍加した力もあって、彼はたった一人でも準ゲートキーパー級である下兵類ドラゴンを足止めするという素晴らしい働きを見せていた。

 勿論、他の二人と比べれば、見劣りはするけれども。

 というより、いくら強化されているとはいえ、ドラゴンの集団を相手に単身で互角以上の戦いを繰り広げているフリムやアシュリーさん達の方が異常なのだ。両者共に本人の能力もさることながら、所有している武具が逸品であるおかげだとは思うのだけれど。

『――GGGRRRRAAAAA!』

 チクチクと伸長する光刃の連撃に業を煮やした八本足の駆竜が、大きく飛びずさってブレスを吐く体勢をとった。獰猛な牙を生やした口が、がばり、と大きく開き、喉奥に渦巻く土砂が発生する。

「チッ――!」

 大きく舌打ちしたニエベスが、クラウソラスと同じくフリムに貸し与えられた黄金色の円盾ラウンドバックラー〝オハン〟を構え、竜の顎門に向けて押し出した。このオハンもまた、クラウソラスと同じく特殊機構が内蔵されている。

 次の瞬間、土竜のブレスが発射された。それはまさしく山の土砂崩れがそのまま襲い掛かってくるような恐ろしい光景だ。しかしブレスの発射と同時に、オハンの丸い縁から紫色の輝きが噴き出し、ニエベスの前面に巨大な壁となって立ちはだかった。

「この――クソがぁぁあああああッ!」

 迫り来る質量の暴力にニエベスは腰を落とし、真正面から迎え撃った。果たして岩石交じりの土竜のブレスは〈スキュータム〉にも似た光の壁に二分され、ニエベスの左右を勢いよく通り抜けていく。ブレスが切れるタイミングを見計らったニエベスは即座に飛び出し、一気に間合いを詰め、

「オラァァアアアアアアアアアッ!」

『GGGGGGRRRRRRRAAAAAA――!?』

 猛然とクラウソラスを振り上げ、光の斬撃を見舞う。開いた口の中を斬り付けられた駆竜が、苦悶の叫びを上げて身を仰け反らせた。





 そんな風に即席のパーティーメンバーが奮闘している中、僕は僕で、巨大な双頭蛇を相手に死闘を繰り広げていた。

「づぁあああああああああああああッ!」

 空中を〈シリーウォーク〉で駆け回り、ウロボロスの視線の照準から外れる。奴の死角に回り込み、

「――〈ドリルブレイク〉ッ!」

 早くも十回目となる攻撃を放った。狙うは右首の喉元。高速回転するディープパープルのドリルが唸りを上げ、大気を貫く。一発のライフル弾と化した僕は、迅雷の速度でウロボロスの顎下に大剣を突き刺した。

 確かな手応え。白銀の刀身を覆うドリルが玉虫色の装甲を穿ち、ガリガリと根元まで埋まる。だけど、

『VVVVVVVRRRRRR!!』

 ウロボロスは歯牙にもかけない。触覚センサーで僕の位置を検知した左首が弾かれたように反応し、金色の瞳を輝かせ牙を剥いた。

 カッ、とその口から閃光が迸る。

「――!」

 僕は即座に横っ飛び。〈シリーウォーク〉の足場を壁のように蹴って、跳弾のごとく逃げる。

 危機一髪、僕がさっきまでいた空間を、列車かと見紛おうほど太いオレンジ色の熱光線が通り過ぎた。一拍遅れて空気の焼き焦げる音と匂いが生まれる。

 それだけじゃない。光のブレスが回避されたと見るや否や、ウロボロスの左首はその長大な身をうねらせ、高速で飛び掛かってきた。シャアッ、と尖った牙が僕を噛み砕かんと迫る。橋の支柱ほどもある牙から迸る透明な液体は、おそらく毒液だ。

「――〈スキュータム〉!」

 咄嗟に防御術式を発動。右脚の臑に術式シールドを展開させ、十五枚のそれを皿のように重ねた。

 上空から影が覆い被さってきて、僕の体がウロボロスの口内に呑み込まれそうになる。

「――だッ!」

 脚を振り上げ、僕から見て左上にある長く鋭い牙へ、重層〈スキュータム〉を全力で叩き付ける。

 硬いもの同士が激突する快音が鳴り響き、薄紫のシールド五枚を犠牲にウロボロスの牙がへし折れた。

 牙に内包されていた毒液が盛大に飛び散るけれど、咄嗟に残った〈スキュータム〉を広域展開。体に降り掛かるのをどうにか防ぐ。

 反動が足に戻ってきた瞬間、僕はそれすらも味方にして稲妻のごとく宙を奔った。

 大剣を構えて飛び込むのはウロボロスの口の外――【ではなく】、その逆。死中に活を求め、口腔内――喉の奥へと敢えて突き進んだ。

「〈ボルトステーク〉!」

 一言で十五の攻撃術式の音声セキュリティを解除。〝SEAL〟のスロットに装填し、大剣の刀身に叩き込む。そして、

「――〈ドリルブレイク〉ッ!」

 再びフォトン・ブラッドが螺旋衝角を形作り、猛烈に回転する。五重の重ね掛けによって膨れ上がったドリルに、背中から噴出するフォトン・ブラッドの加速。

 攻撃術式と剣術式の掛け合わせ――『サンダーブレイク』。

 僕は稲光と化し、突撃する。

「ッぁぁああああああああああああああああああああッッ!!」

 突き出した切っ先がウロボロスの体内を抉り削り打ち砕く。鉄色の内部構造をバキバキメキメキと破壊しながら、雷神インドラの槍よろしく頭から腹の半ばまでを一直線にぶち抜いた。

 ウロボロスが身をくねらせていたため、中途半端な場所から装甲を食い破って外へと飛び出す。

 陽の光を浴びると同時、僕は頭上を振り仰いだ。

「――だめか……ッ!」

 けれど期待は裏切られ、思わず歯噛みする。

 喉を穿たれ、腹の中をグチャグチャにかき回されたはずなのに、ウロボロスは平然としていた。

 それだけじゃない。

 与えた損傷が、瞬く間に【再生していく】。

 もしかしたらとは思っていたが、この双頭の蛇もまたヘラクレスと同じく、再生能力を有していたのだ。

 しかもヘラクレスよりもずっと速い。あいつより装甲が柔らかくて破壊しやすくはなっているけど、その分だけ再生速度が上がっている。ヘラクレスなら一~二セカドはかかっていた傷が、ウロボロスだとほんの瞬き程度の時間で元通りになってしまう。単純計算でも十倍以上の再生速度だ。

 今だって、喉と腹に空いた穴がもう塞がってしまっている。まるで液体金属を相手にしているような手応えと修復速度だった。これじゃまだ力押しで倒せた分、ヘラクレスの相手の方がよっぽど楽だったように思える。

「――っの……!」

 だけど僕は諦めず、再び〈シリーウォーク〉の足場を蹴って飛び上がる。

 ゲートキーパーだろうとルームガーディアンだろうと、つまるところはSBセキュリティ・ボットだ。SBには共通の弱点がある。体のどこかに必ずコアカーネルがあって、そこに直接ダメージを与えられれば、それだけで活動停止シャットダウン、もしくはコンポーネントそのものを消滅させることができるのだ。それがSBの鉄則だ。

 だから、このフロアマスターだって、そこだけは例外ではないはずなのだ。

 この馬鹿でかい図体のどこかに必ずあるコアカーネルを攻撃することさえ出来れば、耐久力を奪いきるよりも早く、ウロボロスを倒すことが可能なはず。

 だけど問題は――

「――〈ヴァイパーアサルト〉ォッ!」

 大剣の刀身から深紫の輝きが伸び上がり、光刃と化す。一気に六メルトル以上も伸長したそれを横薙ぎに払うと、斬撃が鞭のような円弧を描いて奔った。〈ヴァイパーアサルト〉の烈光がウロボロスの右側の下腹部に直撃し、毒色の装甲に荒々しい裂け目を刻む。

 ――問題は、肝心のコアカーネルがどこにあるかわからないことだ。ヘラクレスの時は腹に風穴を空け、そこを中心に重複〈フレイボム〉を喰らわせることで体内のどこかにあったであろうコアカーネルごと全身を吹き飛ばした。だけど、ウロボロスの体は大きすぎる。どうやったってまとめて吹き飛ばすなんて真似は出来そうもない。いや、もしかすると先刻フリムと力を合わせてやった攻撃術式の嵐なら――駄目だ、フリムは僕とウロボロスの一騎打ちを邪魔させないよう飛竜の群れと戦っている。とてもそんな余裕なんてない。

『VVVVVVVVRRRRRRRRRROOOOOOOWWWWWWW!!』

 二つの蛇頭が吼え猛る。奴は巨躯に刻まれた傷など意にも介さず――事実、裂傷が入るしりから再生していく。水溜まりに斬りかかっているような気分だ――、そのまま攻撃態勢へ入った。二つの口が大きく開き、熱閃のブレスを吐こうとする。

 僕は回避行動を取りながら、心の中に再び決意の旗を立てる。

 ――とにかく、ウロボロスの全身をあちこち攻撃しまくってコアカーネルの場所を探るしかない!

 それだけが唯一の攻略方法。短時間でこの巨大な怪物を倒す、たった一つの手段。

 だから僕は戦いが始まってからずっと、奴の全身にこれでもかと穴を空けまくっていた。二つの頭から撃ち出されるブレスをくぐり抜けながら。

 噛みしめる。

 本当に、全く以て本当に――フリムの言った通りだと。

 ここはルナティック・バベルの〝隠しステージ〟。

 そこのボスであるフロアマスター〝ウロボロス〟は、やはり一筋縄ではいかない。いくはずがなかったのだ。

 僕は支援術式を発動。フルエンハンスを重ね掛けして、強化係数を五一二倍へと跳ね上げる。

 そうして、ウロボロスがブレスを吐くよりも速く動く。

「〈ドリルブレイク〉ッ! 〈ズィィィィィィ――――――――!!」

〈ヴァイパーアサルト〉を発動させたままの大剣に、さらに剣術式をおっかぶせた。長大な光の剣にこれまた巨大なドリルが覆い被さり、竜巻のごとく膨れあがる。荒れ狂う龍にも似たそれを腰だめに構え、僕は叫ぶ。

「――スラァァアァアァアァアァアァアァアァァァシュ〉ッッ!!」

 本来ならナイフや小太刀のような短めの武器で放つ剣術式を、ほぼ力尽くで発動させる。五〇〇倍以上の強化係数で稼働している肉体だからこそ出来る荒技だ。

 渦巻く深紫の光刃を振り上げ、振り下ろす。それだけでなく、勢いそのまま下方へ向かい、大気を蹴って駆け出した。

「――ぁあああああああああああああッッ!!」

 本来『Z』の字を描くはずの斬撃が下方移動によって軌道が歪み、落雷にも似たジグザグの軌跡を刻んだ。

 左上から右下へ。折り返し、今度は左下へ。またも折り返し、再び右下へ。

 紫紺の斬閃がウロボロスの全身を切り刻み、巨体を七つに分割する。

『VVVVVRRRRRRRRRRRROOOOOWWWWW――!?』

 これまでにない膨大な損傷に流石のウロボロスも面食らったのか、撃ち出しかけていたブレスをキャンセルして悲鳴をあげた。

 ――これでどうだ!?

 地面に着地して、ウロボロスの巨体を見上げる。

 奴の体をいくつかのパーツに分断してやった。すぐに再生するのはわかっているが、しかし【修復の順番】からコアカーネルの位置が特定できるはずだ。

 コアカーネルは名前の通り、SBの核であるコンポーネントのさらに核にあたる部分だ。攻撃行動にせよ回避行動にせよ、そして再生修復にせよ、全ての処理は必ずコアカーネルを通る。

 つまり、ウロボロスが傷を再生する時、コアカーネルに近い部位から再生が始まるはずなのだ。そこから逆算すれば、コアカーネルのおおよその位置が判明する。

 果たして――

「……ッ!?」

 目に映った信じがたい光景に思わず息を呑んでしまった。

 ウロボロスの二本の首――そのすぐ下、斜めに斬り裂いた喉あたりの断面が、【ほぼ同時】に再生を始めた。

 ――そんな馬鹿な……!?

 あり得ない。通常、左右どちらかの頭部にコアカーネルがあるのなら、そちら側の首から順に回復していくはずだ。二つの部位が揃って修復されるとしたら、二匹の蛇が融合している球体にコアカーネルがあるときぐらいしか考えられない。だけど、そこは既に一度破壊している。あの球体にコアカーネルがないことは確認済みだ。それに、球体にコアカーネルがあるのなら『下から上へ向かって』順に再生していくはず。でも今は、どう見ても『上から下へ向かって』順番ずつ傷が塞がっていっている。しかも、左右の胴体の修復速度に大した差もないまま。

 ということは、つまり――

「――コアカーネルが、二つある……!?」

 それしか考えられなかった。おそらくはウロボロスの二つの頭、そのどちらにもコアカーネルが存在するのだ。だから、片方の頭を〈ドリルブレイク〉でぶち抜かれても平然としていた。一つでもコアカーネルが残っていれば、再生能力によっていくらでも修復が可能だから。

「――ならっ……!」

 呆然としかけた精神に活を入れ、歯を食いしばる。今、時間は宝石よりも貴重だ。動揺や周章などしている余裕なんてどこにもない。

 コアカーネルが二つあるのなら、どちらも一挙に潰してしまえばいい。一つ目のコアカーネルを破壊し、それが再生される前にもう一つを潰す。それで終わりだ。

 だけど、今の僕のスピードじゃ多分間に合わない。強化係数をもう一段引き上げて、〝アブソリュート・スクエア〟の領域に踏み込まなければ――

 と覚悟を決めようとしたその時、

『――ってこらハルト! アンタ何考えてんのよっ!』

『ッ!? フ、フリムッ!? な、なな何っ!?』

 見計らったようにフリムの声がルーター越しに飛んできて、僕はビックーンと大きく肩を跳ねさせた。

『何、じゃないわよ! 今の気配で気付かないとでも思ってんの!? アンタまた【ヤる】気だったでしょ! 〝アブソリュート・スクエア〟はダメって言ったじゃない!』

 どうやら完全に内心を見透かされてしまっているらしい。フリムは僕の心の声が聞こえてきたかのようにダメ出しをする。

 実を言うと、僕はさっきの作戦会議でフリムから〝アブソリュート・スクエア〟禁止令を出されていたのだ。

『アンタの全力全開は体力消耗するのもそうだけど、肉体の深い部分にダメージが残るかもしれないんだから! よっぽどの時じゃないとダメよ! 絶対に!』

 頭の中に響く声で怒られながら、僕はウロボロスの戦意を嗅ぎ取り移動を始めた。離れるのではなく、奴の足元というか腹元へ駆け寄って死角に潜り込む。

『で、でも、あいつを活動停止シャットダウンさせるにはそれしか――』

 念話でもモゴモゴと言い訳じみた喋り方になってしまう僕に、フリムは通信の向こうで不敵に笑った。

『大丈夫よ、アンタのでっかい独り言ならこっちにも聞こえてたから。要はあのデカブツのコアを二つ同時に潰せばいいんでしょ? ほんと【そういうとこ】、すっごく〝隠しステージ〟よね全く!』

 我知らず口に出した言葉だったけれど、無意識に念話でもルーターネットに垂れ流してしまっていたらしい。フリムはウロボロスのコアカーネルが二つあることを理解してくれていた。

『というわけよアシュリー! アタシちょっと席外すから、後よろしく!』

『把握しています。そちらが正しいと私も判断します。直接の手助けは出来ませんので、あなた達も周囲の飛竜に気をつけて下さい』

 フリムがルーターを介して呼び掛けると、すかさずアシュリーさんからの返答があった。

『え、えと……? ど、どういうこと……?』

 トントン拍子で話が決まっていく中、いまいち理解しきれず置いてけぼりの僕は頭を捻ってしまう。

『――決まってんでしょ!』

 ズドン! と頭上で凄まじい打撃音が生まれた。仰ぎ見ると、そこには『チェインスターフレイル』と『ジェット・ファイア』のコンボで三体の飛竜をまとめて殴り飛ばしている幼馴染みの姿がある。彼女は地上にいる僕へアメジストの視線を向けると、ウィンクと共に威勢良くこう言い放った。

『アンタとアタシの二人で、あのデカブツのコアを吹っ飛ばすのよ!』





 一つわかったことがある。

 思い返せばヘラクレスもそうだった気もするが、こいつらは損傷を修復している間は攻撃の手を止めるのだ。

 リソースのほとんどを回復に費やしているせいだろう。防御行動を取ることはあっても、攻撃態勢に入ることはまずない。

 と言っても当然、再生が終わればすぐにでも襲いかかってくるのだけど。

『要はその隙に叩き潰せばいいって寸法よ!』

 目敏いことに、フリムは飛竜の群れと戦いながら僕とフロアマスターの戦闘を観察していて、その特徴に気付いたのだという。

 リアルタイムで蓄積していく〝SEAL〟の戦闘ログによれば、さっきの七分割攻撃によってウロボロスが完全に停止していた時間は五セカドほど。再生が完了し、再び戦闘態勢に移行するまでが三セカドほど。合計、八~九セカド程度の隙が生まれた計算になる。

 だが、それだけあれば十分だ。その僅かな間だけで僕とフリムは息を合わせて奴の双頭を同時に砕くことができる。

 だから僕達は、まず余裕を確保するためフリムに群がる飛竜を片付けることにした。僕も〈シリーウォーク〉で再び上空へ舞い戻り、そこらを飛び交うドラゴンを活動停止させていく。

 さっきと一緒だ。強化係数を五〇〇倍以上に跳ね上げた僕の速度に、奴らは全くついてこれない。明後日の方向を見ている間に羽を斬り飛ばし、腹を貫き、首を落とす。フリムがど派手に暴れて注意を引き寄せ、その隙に僕が飛竜を屠っていく。そんな連携を繰り返し、着実に障害になるであろうドラゴンの数を減らしていく。

 一方。

 僕らに距離を取られ、結果的に無視される形となったウロボロスは、しばしの間こちらをじっと観察していたようだったが――

『VVVVVRRRRRRROOOOOOOWWWWW――!!』

 突如、体を盛大に分割された怒りを思い出したかのように、二つの口から大音響をがなり立てた。二対の金目が明星がごとき輝きを放ち、剥き出しになった牙からその興奮を表すかのごとく大量の毒液が噴射される。

 次の瞬間、ウロボロスの二つ首が大きく躍り、口から高熱のブレスが吐き出された。狙いなどつけていない、ほとんどやけくそな攻撃だ。一直線に伸びる二本の熱閃を剣のように振り回して、双頭の蛇は天空と大地を――空間そのものを切り刻もうとする。

 光と熱が荒れ狂った。

「――ッ!」

 僕とフリムはそれぞれの力場を蹴って素早く回避。アシュリーさんは冷静に軌道を見切って安全地帯へ。

「――お、おおおおおおおおおお!?」

 一人、ニエベスだけが狼狽の極みを見せ、無様に転げ回り、しかしどうにかブレスの乱舞から逃げ切った。いや、結果的には見事に躱しているので優秀と言えば優秀なのかもしれない。あの人、見た目と結果が釣り合ってないところがちょっと勿体ないと思うと同時に、何だか親近感も湧いてくる。僕も似たようなものだから。

 ウロボロスが無秩序に振りまいた熱閃ブレスは、味方であるはずの飛竜や駆竜さえも巻き込んでいた。鱗に術力系の耐性があるはずのドラゴンですら、一撫でされただけで断末魔の声をあげる暇もなく焼失していく。フリムやアシュリーさんが言う『設計者デザイナー』の意向や嗜好とでも言うのだろうか。ヘラクレスと同じく、攻撃力だけは本当に桁違いだった。

 だけど、ウロボロスは墓穴を掘った。奴は自身の護衛を担っていた竜達をも自ら一掃してしまったのだ。

『――今よハルトッ!』

『うんっ!』

 降って湧いたような好機にすかさずフリムが合図を飛ばし、僕も即座に頷いた。

 まずは奴の動きを止めるため、再生を促すほどのダメージを与える!

「〈ヴァイパーアサルト〉ッ!」

「サティ! グランドアックス! トリプル・マキシマム・チャージッ!」

 二人同時に攻撃準備の声を上げた。僕の大剣から深紫の光刃が伸び上がり、『グランドアックス』と合成音声を吐き出した白銀の長杖の先端で、ピュアパープルの流体が渦を巻く。次いで、

『マママキシマム・チャージ』

 比率が明らかにおかしい巨大な戦斧を形作ったドゥルガサティーが、壊れた音声ファイルを再生したかのように音を三重に被らせた。〝トリプル〟の名の通り、三連続の『マキシマム・チャージ』によってフリムの輝紋から紫の流星がいくつも迸り、『グランドアックス』に吸収されていく。アメジストに煌めく斧がさらに力強く光を放った。

「〈エアリッパー〉ッ!」

 負けじと僕も攻撃術式を多重発動。長く伸び上がった〈ヴァイパーアサルト〉の刀身に、十五連の風刃の力を重ね合わせる。深紫の光刃の周囲を風が巻き、唸りを上げる。

 僕とフリムの踏み込みはほとんど同時だった。

「「でやぁぁああああああああああああああああああああああッッ!!」」

 声を重ね、動きを合わせる。

 ウロボロスの右頭の近くにいた僕は、奴の左半身の下部に向かって。

 反対に左頭の周辺に位置していたフリムは、そこから右半身の下部めがけて。

 それぞれの斬撃を放ちながら疾走した。

 僕の斬撃。鞭のごとくしなる光の刃が玉虫色の装甲に食い込み、風の力を解放する。固体空気の刃が傷口を荒々しく削り上げ、威力を何倍にも高めた。

 フリムの『グランドアックス』もまた轟雷にも似た撃音を響かせ、力任せにウロボロスの装甲を断裂させていく。唸りを上げて輝く戦斧が火花を狂い咲かせた。

 そうして最初に僕が、少し遅れてフリムが、地上に着地する。

 アシュリーさんやニエベスから見れば、僕達の斬撃の軌跡が交差し、大きな『X』を描いたように見えただろう。

『VVVVVVVRRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAAA――!?』

 体を五分割されたウロボロスの絶叫を尻目に、僕は着地したその足で地面を蹴って再び空中へと舞い戻る。今の状態だと僕の方がフリムより足が速い。

 もう一度ウロボロスの頭上に位置をとり、奴の頭の天辺を見下ろした。さっきのフリムと立ち位置を入れ替えて、僕は奴の左顔を照準。大剣の切っ先を向けて、構えをとる。

『VVVVVVVVVRRRRRRRRRROOOOOOOO……!!』

 既にウロボロスの再生は始まっている。奴は恨みがましい金色の目で僕とフリムを睨みつけ、唸り声で大気を震わせる。だが攻撃してくる気配はない。やはりフリムの読み通り、再生中はそちらに集中する習性があるのだ。

「〈ドリルブレイク〉――!」

 全身の力を骨へ捻りこむように身を撓め、僕は静かに術式の起動音声を呟いた。重ねるのは十五枚のアイコン。その全てが回転する衝角となって、大剣の刀身に覆い被さる。

「――〈フレイボム〉……!」

 これがとどめの一撃――そう判断した僕は、初めて〈フレイボム〉を剣術式に重ね合わせた。あの馬鹿でかい頭を一気に砕くには、これまで以上の威力が必要になる。〈プロテクション〉の加護下にあるこの大剣なら、〈フレイボム〉十連鎖程度ならば耐え切れるだろう。十連〈フレイボム〉と十五重〈ドリルブレイク〉の組み合わせ――これで間違いなく奴の頭部を粉々にできる。

 この時点で、既にウロボロスの再生が始まって二セカドが経過している。残り時間、あと六セカド。

 地上からフリムが放たれた矢のごとく急上昇してきて、あっという間にウロボロスの右頭の真上に位置取った。

『準備はいいハルト!』

 ルーター越しに威勢よく聞いてくる幼馴染に、僕はしっかと頷いた。

 残り五セカド。

『いけるよフリム!』

『オッケ! タイミング合わせていくわよッ!』

 そう言い放つと同時、フリムは空中に立ったまま腰を落とし、戦闘ブーツ〝スカイレイダー〟に必殺を命じた。

「レイダー! オクタプル・マキシマム・チャージ!」

 先程の三連続を遥かに超える、まさかの八連続チャージ。

『ママママママママキシマム・チャージ』

 スカイレイダーがリズムを取るように歪んだ音声を吐き出した。フリムの全身の輝紋から大量に紫の閃光が迸り、その全てがスカイレイダーの右脚へと吸収されていく。通常の八倍だけあってかなりの量のエネルギーが戦闘ブーツへ注入され、装甲の表面を走る幾何学模様が猛獣にも似た唸りを上げて激しく輝きだした。フリムの右脚全体が猛烈な紫光に包まれる。

 残り四セカド。

 刹那、フリムと目があった。

 引き伸ばされた一瞬の中で、僕はアメジスト色の瞳と見つめ合う。

 もはや言葉は必要なかった。

 何故そう確信できたのか、自分でもよくわからない。

 でもこの瞬間、アイコンタクトだけで僕達は何もかも通じ合った。

 フリムの呼吸、心臓の鼓動、重心の位置――全てが手に取るようにわかる。

 だからタイミングを完全に合わせることが出来た。

『ライトニング・グラビトン・ドリル・クラッシュ』

 スカイレイダーがてんこ盛りすぎる攻撃音声を発した。

 フリムの攻撃が始まる。彼女のすらりと伸びた右脚が〈ドリルブレイク〉よろしくフォトン・ブラッドの螺旋衝角に覆われる。猛烈に回転を始めるそれから、青白い雷光が弾け飛ぶ。スカイレイダーの各所から紫色に光る粒子が噴き出し、ロケットブースターと化した。

 残り三セカド。

 加速する。

「喰 ら え ぇ え ――――――――――――――っっ!!」

 雄叫びを上げたフリムのツインテールが天を突く。巨大な鏃のようになったその全身が、真下にあるウロボロスの頭頂めがけて真っ逆さまに撃ち出された。

 それは端から見れば一瞬のことだったろう。

 だけど強化係数五〇〇倍の世界に意識の速度を合わせている僕には、まるで水の中を進んでいるかのように鈍く見えた。

 粘つく時間の中、慎重にタイミングを見極め、

「――――――――――――――ッ!」

 ここだ。

 一時停止させていた背中の噴射を解除。十五段重ねの〈ドリルブレイク〉によるスラスターが一斉に解放され、爆発する。アフターバーナーのように噴き出したフォトン・ブラッドが僕の体をサッカーボールみたいに蹴っ飛ばす。

 一直線。

 大剣に纏ったドリルの切っ先を真っ直ぐ突き出し、ウロボロスの眉間めがけて突撃する。

 果たしてフリムの『ドリル・クラッシュ』と僕の〈ドリルブレイク〉の先端がウロボロスに届くのは、ぴったり同時だった。

「「づぁぁあああああああああああああああ――――ッッ!!」」

 二人の声が重なる。

 轟雷が炸裂した。雷霆と超重力を帯びたドリルが、ウロボロスの右頭の天辺に突き刺さり、岩盤を割り砕くようにしてめり込んでいく。そのまま一気に顎の下まで貫いた。

 爆音が天を劈く。玉虫色の眉間に大剣の根元までが深々と突き刺さり、〈ドリルブレイク〉の先端から〈フレイボム〉十連鎖のエネルギーが迸った。通常の一〇二四倍に増幅された爆発力がウロボロスの左頭の内部でバースト、瞬く間に膨張して――

 次の瞬間、ウロボロスの双頭がまったく同時に、粉々に砕け散った。

 ――やった……!

 派手に弾け飛んでいくウロボロスの破片を眼前に、僕は確かな手応えを得る。

 間違いない、これでウロボロスのカーネルコアを二つとも撃破した。

 これで終わりだ――と。

 僕は思わずフリムの方へ視線を向け、今なお凄まじい勢いで下降中の彼女と目が合い、互いに会心の笑みを浮かべあって、



『SSSSSHHHHHHHHHHAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!』



「「――!?」」

 思わぬ所から発生した奇声に度肝を抜かれた。

 残り二セカド。

 一体どこから聞こえてきたのかと思えば、それは足元――否、地上だ。

 ウロボロスの二つの体を繋いでいる接合点。やや膨らみ、球体となっているその上部中央に――いつの間にか、大きな一つ目が開いていた。

「ッ!?」

 愕然とする。何だそれは。どういう変化だ。毒色としか言いようがない深淵を思わせる真円の瞳が、無感情に僕とフリムを凝視している。

 いつからだ。あの目はいつからあそこにあった。いや、問題は【そこ】じゃない。【何故だ】。何故あそこに目が開いている。コアカーネルは二つで、それは双頭にあったんじゃないのか。今その二つを打ち砕いたのだから、コイツはもう活動停止シーケンスに入って消えていくだけなんじゃないのか。

 そのはずなのに。

 ――まさか……!?

 嫌な予感が肺腑を凍らせる。フリムも僕と同じ結論に至ったのか、笑顔を強張らせて蒼白に染めた。



『TRANSFORMATION』



 ぼう、と丸い目に青白い燐光が灯り、甲高い電子音が意味不明な鳴き声ではなく、意味のある言葉を吐いた。その音声に記憶野を刺激され、戦慄がさらに加速する。

 ――まさか、まさか、まさか……!?

 あれはそう、ヘラクレスだって使っていた――古代の術式。

 大きな目の周囲に〝SEAL〟の輝紋によく似た幾何学模様が青白く浮かび上がる。

 ――コアカーネルは二つだけじゃなかった……!? あそこに【三つ目】があったっていうのか……!?

 残り一セカド。

 僕達が頭部を破壊したウロボロスの右半身と左半身が、揃って急激な動きを見せた。

「――!?」

 一つ目の開いた球体――目がついているということは即ち〝眼球〟か?――が時計回りに回転し、それに合わせて、長く伸びた右半身と左半身がリールに巻き取られるように引き寄せられていく。

 回転が止まるとそこには、鍋敷きかあるいは地上絵か――渦を巻いて【ぺったんこ】になった、奇妙なオブジェクトが出来上がっていた。中央の〝眼球〟はそのままなので、巨大な一つ目の怪物のようにも見える。

 僕とフリムはほとんど同時に、大気に靴底をひっかけてブレーキをかけた。ドリフト走行のように大きく滑り、立ち止まった瞬間、ウロボロスの再生による硬直時間の残りがゼロになる。

 だけど、奴の変化は止まらない。

 皿のような円盤状になった後、その外縁部の一部が、ぼこり、と盛り上がった。瘤のように膨らんだ箇所は合計で九つ。それぞれが等間隔を空けて並び、一見して渦巻きが歯車になったかのように思える。

 玉虫色の装甲が膨らんだ九箇所――そこに、まるで最初からそうなるように設計されていたかのごとく九つの〝穴〟が開いた。

 次の瞬間、毒々しい装甲が変形して生まれた穴から、青白い光が一斉に溢れ出す。

 ――なんだ、あれ……!?

 我知らず生唾を嚥下した。空いた穴――否、〝口〟から噴き出した光の奔流は、勢いそのまま大蛇のように空中を躍りながら伸び上がっていく。その太さは、先程巻き取られたウロボロスの胴体と同程度、いや、下手をするとそれよりも太いかもしれない。

 もしかして――と最悪の事態を想起しかけた時、

「――レイダー! もっかいオクタプル・マキシマム・チャージ!」

『ママママママママキシマム・チャージ』

 フリムが叩き付けるように叫び、スカイレイダーがそれに応えた。今度は左脚に紫の煌めきが集中し、膨大な光を放つ。

『ライトニング・グラビトン・ドリル・クラッシュ』

 何らかの変化を為そうとしているウロボロスの中央――淡く青白い光を纏う〝眼球〟に向けて再び必殺の一撃が撃ち出された。フリムの体が彗星のごとく尾を引き、高速で落下する。

「さ せ る か ぁ ぁ あ あ あ ――――――――――――――っっ!!」

 コアカーネルが二つだろうが三つだろうが関係ない、何かやろうとしているのならその前に踏み潰す――そう言うかのごとき電光石火の攻撃。

 相手が何をしてくるかわからない上での即断即決――エクスプロールの定石からは外れるけれど、行動力旺盛なフリムだからこそ出来る速攻だった。

 超重力で威力を何倍にも増した、稲妻を孕むドリルが巨大な眼球に突き刺さる。激突の瞬間からグラインダーで金属を削るような音が生まれ、噴水よろしく火花が一斉に噴き上がる。

 しかし。

「――あれは……!? 防御シールド……!?」

 どこか〈スキュータム〉にも似た薄く青白い〝膜〟が〝眼球〟を覆っていた。フリムの攻撃はそのシールドに阻まれ、わずか〝眼球〟に届いていない。

 にわかには信じられなかった。僕から見てもフリムの攻撃は並大抵ではない。きっとあのヘラクレスの装甲だって撃ち貫くほどの威力があるはずだ。彼女が豪語した『アタシのこの〝ドゥルガサティー〟と〝スカイレイダー〟があれば、ゲートキーパーだってイチコロよ』は決して嘘じゃない。

 なのに。

 ドリルの切っ先が、一ミリトルたりとも先に進まない。

 そうこうしている間にも奴の【変化】は進行し、九つの口から伸び上がった太い光条が実体化を始めた。青白い光の塊が、根元から先端へ向けて順に物質へと変換されていく。

 ギンヌンガガップ・プロトコルで圧縮されていた物質が解放され、膨大な質量が忽然と顕現したことで大気が大きく動いた。

 強い風が吹く。

「――――」

 最悪の予想が的中してしまった。

 ヘラクレスに〝ハーキュリーズ〟という真名があったように、ウロボロスにもやはり別の真名があるのだろう。そしてそれは、間違いなく双頭の蛇ウロボロスではない。

 僕が馬鹿だった。何故気付かなかったのか。

 この第一一一層は〝隠しステージ〟。

 隠しステージといえば、やはり隠し要素が必然だ。

 他の階層では出現しないドラゴンがポップする上、ゲートキーパーは超巨大。しかもそいつのコアカーネルは一体いくつあるのかわからない。

 本当にやってくれる。

 かつて僕は、古代術式を駆使して能力を倍加し、腕を六本に増やしたヘラクレスを前にこう思ったものだ。

 このゲートキーパーを設定した古代人は、間違いない、絶対に悪魔だ――と。

 今ここで、それを訂正しようと思う。

 このルナティック・バベルの設計者は――【悪魔以上の何か】だ。悪魔よりも悪辣で、悪魔よりも意地悪で、悪魔よりも残酷な【何か】だ。そうに違いない。



『SSSSSHHHHHHHHRRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――!!』



 【九つの頭】が一斉に雄叫びを上げる。

 奴の術式の音声――『TRANSFORMATION』の通りだった。変身、変形を意味するその言葉通り、奴は別のものへと変化したのだ。

 九つの頭を持つ大蛇――〝ヒュドラ〟へと。

「――――ッ!!」

 やばい、と理性と本能が揃って警鐘を打ち鳴らした。全身に電流が走る。

 まずい、フリムは〝眼球〟を潰すために奴の懐深くまで入り込んでいる。あの数で一斉に襲われたら、ひとたまりもない。

 このままじゃ危険だ、何とか、何とかしないと――!

 気付いたときには体が勝手に動いて、僕は飛び出していた。

 空中を滑り落ちていくように疾走する。

 ウロボロスもとい、ヒュドラを攻撃するため――ではなく。

 フリムを守るために。

『SSSSSHHHHHHAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――――!!』

 金色の目を激しく明滅させて、玉虫色の蛇が揃って攻撃態勢に入った。九つの鎌首が〝眼球〟に攻撃を仕掛けているフリムを狙う。大きさの相対比を言えば、まるで一匹の蟻に九匹の象が群がっているかのような光景だ。

『――フリム逃げてッッ!!』

〈シリーウォーク〉の足場を全力で蹴っ飛ばしながら念話で絶叫する。僕の声に反応したフリムが身の危険を察知し、すぐさま『ドリル・クラッシュ』をキャンセルした。素早くその場を飛び退き、上昇して逃げだそうと――ピタリ、と何故かその動きが中途半端なところで停止する。

 同時、ビー、という不穏な音がスカイレイダーから発せられた。

 ――故障!? こんな時に限って……!?

『――嘘……?』

 切羽詰まった状況に、意外なほど静かな声でフリムの思考が呟いた。最悪すぎるタイミングで起きた不具合を、すぐには信じられなかったのかもしれない。そこから先に起こるであろう運命を、脳が理解するのを拒んだのかもしれない。

 考えてみれば当たり前の話だった。あれだけの威力の攻撃を二連続で繰り出したのだ。負荷がかかっていないわけがなかった。

 オーバーロードしたスカイレイダーの緊急停止によって、フリムの体が宙に浮かぶとっかかりを失う。空中に立つ機能を失った戦闘ブーツはもはや重石以外の何物でもなく、フリムは階段を踏み損なったかのように体勢を崩し、どうしようもなく重力に囚われる。

 無防備に落下を始めた彼女へ、九つの蛇頭が一挙に群が

 ――させるかそんなことッッ!!

 支援術式を発動させるのに何の迷いもなかった。僕は空中を走りながらフルエンハンス、強化係数の最後の一段を跳ね上げる。

〝アブソリュート・スクエア〟。

 全身の〝SEAL〟が猛烈に励起して、深紫の光が雷電のごとく迸った。

 五一二倍から一〇二四倍へと一気に上昇した強化係数に頓着することなく、僕は爆発的に加速する。大気の壁をぶち抜き、矢よりも弾丸よりも稲妻よりも速く馳せる。

 フリムの元へ。

 同時に彼女に向けて〈プロテクション〉を重複発動。いざという時のために防御力だけは最大まで高めておく。

 巨岩のようなヒュドラの頭が群れをなして襲いかかってくる最中、ふとフリムが僕の方を見た。

 超高速移動によって極端に狭まった視野の中、僕とフリムの目が合う。そのアメジストの瞳がこう訴えていた。

 来ちゃダメ――と。

「――ッッッ!!!」

 聞けるわけがなかった。ふざけるなと思った。奥歯が割れるんじゃないかってぐらい歯を食いしばった。

 ――僕が、この僕が……【お姉ちゃん】を助けないわけないだろッ!

 純白の怒りに支配されて、僕はさらに加速。

 加速して、加速して、加速した。

『SSSSSSSSHHHHHHHHHHHRRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAA――!!』

 ヒュドラの九つ首がそれぞれの口を開き、牙を剥く。大量の毒液が飛散する。フリムの小さな体を呑み込もうと我先にと突っ込んできた頭の一つが、まさに今――

「――ぁぁああああああああああああああああッッッ!!!」

 間に合った。

 ギリギリだった。

 間一髪のところでヒュドラの口とフリムとの間に滑り込み、

 ――ごめんっ!

 左手でフリムの胸を突き飛ばし、右手の大剣を蛇の鼻面に叩き付けた。

 双方共に確かな手応え。胸の中央を押し出したフリムの体はヒュドラの頭ひしめく隙間を抜け、アシュリーさんがいる方角へかっ飛んでいく。けっこうな勢いで吹っ飛んでいくけど、彼女には防御術式をかけてある。無傷とまではいかないが、大怪我するようなことはないだろう。

 一方、力任せに叩き付けた大剣もまた勢いよくヒュドラの鼻先へ食い込んでいき、毒々しい装甲を切り裂いていく。

 だけど。

「――ッ!?」

 突如、ガギン、という不吉な手応えが生まれた。その途端、刃の進みが滞る。

 ――しまった……!?

 負荷に耐えかねて内部で刀身が折れたのだ。おそらく、さっきの十連〈フレイボム〉の負荷が祟ったのだろう。装甲に食い込んだまま折れてしまったせいで、そこから押すことも引くことも出来なくなってしまう。

『SSSSSHHHHHRRRRAAAAAAAAAA!!』

 せっかく狙っていた獲物を――と言わんばかりにヒュドラが咆哮し、猛然と突っ込んできた。片手ではその勢いに抗しきれず、肩から硬い装甲に激突する。

「ぐぁっ……!?」

 衝撃に体勢を崩す。足を踏ん張り〈シリーウォーク〉の足場に靴底を引っかけるけど、それでも奴の突進は止まらない。強化係数を最大にしているというのに、どうしようもない重量差もあって完全に力負けしていた。

『SSSSHHHAAAAAAAAAAAAAAA!!』

「ぐっ――ぁあああっ!?」

 さらに押し込まれ、もう抗うことも出来なくなる。体が浮き――既に浮いているのでこれは変な言い方だけど――重心が制御不能になった。そのままジェットコースターみたいな勢いで押し寄せるヒュドラの頭に連れ去られ、背中で空気の壁を貫きながら宙をかっ飛ぶ。

 出し抜けに、クン、とベクトルが上向きになった。かと思うと、とんでもない速度で上空に向かって力任せに撥ね上げられた。

 その瞬間、大剣の刀身が完全に砕け、ヒュドラの装甲に引っかかっていた部分がすっぽ抜けた。

 放り投げられた石みたいに勢いよく空へ上昇する。

 と思いきや、

「ッ!?」

 背中に衝撃。ひどく硬いものに激突した――と思ったら、それはヒュドラの別の頭。そいつが額で僕の体を受け止め――否、上昇中の僕を殴るように頭突きをかましたのだ。

「がっ――はっ……!?」

 高速で走る車同士が正面衝突したようなものだった。肺腑から空気という空気が抜けるほどの衝撃が全身を貫き、一瞬、目の前が真っ白に染まった。手から柄だけになった大剣が飛んで行く。

 当然、ヒュドラの攻撃はそこで止まらない。

 直上から打ち下ろされる拳にも似たヒュドラの頭突きは、僕を額に埋め込んだまま真っ逆さまに落ちる。

 あっという間だった。暴走する列車の先端に張り付けたかのような気分だった。咄嗟に体の前面に五枚の〈スキュータム〉を発動させるのがやっとだった。

 恐るべき速度で目の前の景色が激変を続け――ついに巨大な蛇の頭が、隕石よろしく地面に突き刺さった。

 視界が真っ暗になる。

「――!!」

 何がどうなったのかわからない。とにかく全方位から凄まじい衝撃があったはずだ。――はずだ、と言っている時点でもはや自分が受けたダメージすら認識できていない。前後も上下左右もわからなくなった。自分が今どこにいて、どんな状態なのか。生きているのか死んでいるのか、意識があるのかないのか、そんな当たり前のことすらもわからなくなった。

「!? !? !?」

 気付けば地面の上に仰向けに転がっていて、雲一つない大空を背景に、高い位置から僕を見下ろす九匹の蛇の顔が見えていた。

「っ――ぁっ――」

 体の感覚がまるでなかった。首だけで地面に転がっていたとしても不思議ではなかった。夢の中にでもいるかのように目に映る景色に現実感がなかった。全身に分厚い膜がかかっているようで、全ての感覚が鈍くなっていた。

「――――」

 苦しい。

 僕は今、ちゃんと呼吸できているのだろうか? そう疑問に思ってから、ようやく自分の〝SEAL〟にバイタルチェックのリクエストを出せばいいことに気付いた。

 すぐにリプライがきた。呼吸運動は微弱、肉体の欠損箇所はなし。どうやら五体満足ではあるらしい。骨に罅が入っている箇所が複数、内臓にもいくらかの損傷――幸い破裂しているものはないようだ。流石は強化係数一〇二四倍の頑丈さとでもいうべきか。それとも、そんな破格の防御力をもってすらここまでダメージを与えてくるヒュドラのパワーを恐れるべきか。

 ――とにかく〈ヒール〉を……

 のろくさと思考を回して、その結論に行き着く。〝SEAL〟を励起させて治癒術式を発動させる。たちまち傷の修復が始まるけど、未だショックに痺れる四肢には全く感覚がなく、とても動かせそうにない。

 ふと、僕の視界を黒く染めるものがある。何かと思えば、それは新たに近付いてくる馬鹿でかい蛇の頭だった。

『SSSHHHHHRRRRRRRAAAAAAAAAA!!』

 目の焦点が合わない。どちらかの目がやられている――右目か左目か、それすらも今の僕には判別できない――せいで、距離感が全くわからない。ぼやけた視野に黒い丸が広がっていくようにしか見えなかった。

 ほとんど反射的に〈スキュータム〉を十枚重ねで発動させた。

 激突。

「――!」

 目の前が真っ暗になり、轟音が耳を劈く。感覚ではなく類推から、新たな頭突きを喰らったのだと察せられた。五体がバラバラに引き裂かれるような、突っ張る感覚が体のあちこちに駆け巡る。術式シールドはあっさり砕かれてしまい、まともに機能しているかどうかも怪しいものだった。

 目に光が戻り、再び空が見える。一撃を加え終えた蛇頭が戻っていったのだろう。

 この時になってやっと〈イーグルアイ〉のことを思い出し、そちらの視覚を確認した。その結果、僕はえらく巨大なクレーターの中心で、大の字になって埋まっている自分を発見した。ヒュドラの頭突きによって、ここまで深いところまで沈められてしまったのだ。クレーターはもう、僕の身長よりも深くなっている。

 そして。

『SSSSHHHHHAAAAAAAAA!!』『SSSSHHHHHHRRRRRRR!!』『SSSSSSHHHHHHYYYYYAAAAAAAA!!』

 ヒュドラの追い討ちは高速で連続した。なにせ頭が九つもあるのだ。交代交代で入れ替わりながら、流星群のごとく突進の雨を降らせる。僕はその度に脊髄反射で〈スキュータム〉を重複展開するのだが、マシンガンのように連発される超重打撃の前には単なる緩衝材にしかならなかった。殴られる都度に砕け散り、また新しいシールドを展開するのを繰り返す。着弾の度に地鳴りが轟き、間欠泉のごとく土煙が噴き上がる。

 ――駄目だ、このままじゃジリ貧だ。動いて、距離を取って、反撃しないと……!

 頭ではそう思う。だけど体を動かすとっかかりがまるでない。全身に与えられたダメージが深すぎる。しかも、現在進行形でそれは積み重ねられていっているのだ。

 無限に続くかと思える連続攻撃で次第に地中深くへと埋め込まれていきながら、それでも僕は諦めずに歯を食いしばる。

 ――そうだ、諦めてなるものか。あの時、誓ったのだ。もう二度と諦めたりなんかしない。絶対に目を背けたりなんかしない。どんな状況になろうと、どんな危地に陥ろうと、最後の最後まで前を見続けると。

 息絶えるその瞬間まで、戦って戦って戦いきるのだ――!

 再び空が見えた瞬間、僕はかっと目を見開いた。

「――ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 喉から咆吼が迸る。我ながら自分の声ではないかのようにひどく嗄れている。

 回復途中の負傷を度外視して、気合だけで体を動かした。上体を起こし、飛び跳ねるように立ち上がり、またもや頭上から打ち下ろされてくる蛇頭の突撃に立ち向かう。

 手元に武器はない。ストレージから取り出している暇もない。

 拳しかなかった。

 右手を硬く堅く固く握り込む。

 無意識にロゼさんの教えを反芻する。

 円、回転、螺旋。

 骨に力を乗せる。

 無我の境地で、ただ拳を振り上げた。

 強化係数一〇二四倍の拳撃。

「――っぁあああああああああああああああッッッ!!!」

 雄叫びと共に、太陽光を遮り僕を押し潰さんと圧倒的な勢いで落ちてきた蛇の鼻先に、握り込んだ拳を叩き込む。

「!!」

 激突の瞬間、両足の裏からなにか得体の知れない力が昇ってくるのを感じた。足の骨を中心として、その周りを螺旋を描きながら【何か】が駆け上がってくる。覚えのある感覚だ。それは足首から膝、膝から腰で合流し、腰から背筋を抜け、振り上げた右肩からさらにその拳の先へ。

 竜巻のごとく突き抜けた。

 刹那、頭の天辺から全身の骨がまるごと飛び出していくみたいな、不思議な感覚がした。

 僕の右拳がヒュドラの装甲を紙のように突き破り、めり込み、埋まり――

 衝撃が破裂する。

 怒濤のごとき波動がヒュドラの鼻先から首へ、首から長大な胴体へ、胴体から根元の〝眼球〟まで――一気に稲妻のように伝播して、紫で玉虫色の装甲に卵の殻みたいな罅割れを無数に刻み込み、

 その首の一本が、クッキーみたいに砕け散った。

 どこから、ではなく、全体が一挙に爆ぜるようにして。

 ――やっ……た……?

 自分で自分のしでかしたことに呆然としながら、爆破されたビルみたいに崩れ落ちていく破片をただ眺める。

「――――」

 そして、間髪入れず突っ込んできた別の首の一撃に、僕は無防備なまま叩き潰された。




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