ああ、赤ずきんちゃん。
第5話「赤ずきんちゃんと大浴場」
天下一舞踏会1回戦第1.5試合は、赤ずきんの勝ちとなりました。
負けてしまったマッチ売りの少女は、痛むほっぺをさすりながら廊下を歩いています。少女とは思えない疲れた溜息が、少女の口からハァっという声と一緒に出てきました。
マッチ売り「あーあ、棚からぼたもちでCEOになれると思ったけど、世の中そう上手くはいかねえよなぁ。……まあ、今晩はこのお城に泊まれることになったから良かったけどよぉ〜」
幼子ながらも、夢を叶えるために各地を旅しているマッチ売りの少女は、毎日の住む場所もない貧しい生活を送っていました。
マッチ売りの少女はお金が無いという訳ではありませんが、出来るだけお金を使いたくないと思っているので日々の食べる物も泊まる場所も粗末でした。
全ては夢のため。
そのためならどんな事でもやる。
マッチ売りの少女は自分の目標を再確認し、舞踏会でたくさん汗をかいてしまった身体を洗い流すために大浴場へ向かいます。
マッチ売り(泊まる所も風呂も全てタダ。なんて素晴らしい!)
マッチ売りの少女はそっと笑みを浮かべます。
タダ、とは良い言葉だ。「タダより高いものはない」という言葉はよく聞くが、やはりお金を使わないに越したことはないだろう。……唯一の欠点といえば、お風呂場はマッチが使えないので完全に丸腰になってしまうことだな。
と、マッチ売りの少女は静かに考えを巡らせますが、結局『タダ』という魔法の単語に魅かれ脱衣所に入りました。
マッチ売り「ん、先客がいるな」
大浴場手前にある脱衣所。そこのカゴに衣類が入っているのを見つけます。
大浴場は今、来客用として設けられている。マッチ売りの少女は城の人にそう言われていました。
天下一舞踏会に参加している他の参加者だろうか?
そう疑問を浮かべて、マッチ売りの少女は大浴場の扉を開きます。
赤ずきん「あ、あの、白雪姫? そろそろお湯に浸かりたいんだけど……」
白雪姫「まだ駄目です! まだ、身体中の汚れが落とせていません!」
そこには、2人の少女がいました。
金色の髪と黒色の髪の幼子たち、マッチ売りの少女より少しだけ年上に見える彼女たちは赤ずきんと白雪姫でした。
マッチ売り(……彼奴らか。先に大浴場に来てたんだなぁ)
何をしているのかと見てみると、白雪姫が赤ずきんの全身を丁寧に洗っている最中でした。白雪姫は怖いくらいに真剣な表情で、赤ずきんの肌を磨いています。
赤ずきん「もう洗う部分が無いってくらい綺麗にしてもらえたと思うんだけど……どこがそんなに汚いの?」
白雪姫「何を言ってるんですか! 赤ずきんさんに汚い部分なんてあるはずがありません!!」
赤ずきん「ええ〜……」
白雪姫「女性とは常に美しくあるもの! ですから私が誠心誠意、赤ずきんさんの身体を磨きます!! 安心して任せてください!!」
……2人はまだ、マッチ売りの少女が入ってきたことに気付いていないようです。
特に関わる理由もないマッチ売りの少女は、2人を無視して大浴場の奥に進みます。
おとぎの城の大浴場は、マッチ売りの少女がこれまで見たどのお風呂よりも大きい場所でした。
マッチ売りの少女はお湯に足をつけて温度を確認しつつ、ゆっくりと全身を浸からせていきます。足首、膝、お尻、腰、胸、肩。
そうして全身をお湯に馴染ませて、マッチ売りの少女は先程とは打って変わって気持ちの良い溜息を吐きました。
マッチ売り(あぁ〜疲れた身体に染み渡る〜♪)
今日は朝からマッチを売り回り、夜は恐竜に追われたり、赤ずきんにほっぺを抓られたりと大忙しだったマッチ売りの少女。これまでの疲れを癒そうと溶けたバターのようにふにゃふにゃに脱力しています。
そしてふにゃふにゃの少女は、頭を働かせていない状態で赤ずきんと白雪姫がいる方向をぼぉーっと眺めます。
赤ずきん「それにしても、何でタオルを使わず素手で洗っているの?」
白雪姫「お肌を守るためです。タオルは汚れを落とすのに便利ですが、肌を傷めてしまうので直接手で洗ったほうが良いんですよ」
赤ずきん「そうなの?」
白雪姫「はい。決して、私が赤ずきんさんの肌を隅々まで余すとこなく触りたいから手でしているとか、そういう邪な考えで行っている訳ではないんです」
マッチ売り(……最後の台詞のせいで、彼奴のやり取りが凄く危うく感じるようになってしまったのはオレ様だけか?)
赤ずきん「さっすが白雪姫! やっぱり可愛い女の子は身体のケアにも気を遣っているのね!」
マッチ売り(……どうやらオレ様だけのようだな)
すると、白雪姫が急にもじもじと照れ始めました。
白雪姫「そ、そんな可愛いだなんて……! 私より赤ずきんさんの方が可愛いですよッ!」
赤ずきん「いやいや、白雪姫って色白で綺麗だし、国で1番の美人さんって言われても納得できる見た目よ? 私なんかじゃ敵わないわ」
白雪姫「か、敵わない!? あり得ません!! この白玉のような肌! 金糸のような髪! 吸い込まれそうな碧い瞳! 全てに於いて赤ずきんさんより美しい人などいませんよ!!」
白雪姫が割れんばかりの大声で断言しました。まるで自分の信じている神様を否定されたかのような本気さで、赤ずきんに赤ずきんの美貌の素晴らしさを伝えます。
赤ずきんは、そんな白雪姫に対して若干戸惑った表情で、
赤ずきん「そ、そうかしら? そう言われると私も嫌な気分ではないけれど……」
白雪姫「そうなんですッ!! もう可愛くて可愛くて!! 城中の金品を売ってでも買い占めたいくらい大好きっていうか!!」
赤ずきん「私は非売品だよぉ〜……」
……そんな2人の様子を、マッチ売りの少女は黙って見つめていました。
マッチ売り(……実際、あの2人は可愛いよなぁ。町に出れば誰もが振り向くくらい良い容姿しているし……金になりそうだ。カメラでも持ってくれば良かったなぁ〜、そうすればその写真を売って儲けられたのに)
などと邪なことを考えながら妄想を膨らませています。
マッチ売りの少女が考えることは、いつもお金のことです。自分がいくら儲けられるか、彼女にとってそれが一番大事でした。
マッチ売り「……オレ様も容姿には割と自信があったんだが、流石にあの2人には見劣りするか?」
??「そんなことありまへんって、あんたも負けないくらい素敵なお顔をしてはりますよ?」
マッチ売り「フォローどうも。まあ容姿ってのは大事だぜ、オレ様もか弱い女児のふりをして馬鹿な連中から金を巻き上げたりしてるし。保護欲を刺激させるっていうの? ああいう技が使えるんだから、やっぱ可愛い女子は得…………」
バッ!! と。
マッチ売りの少女は驚いた表情で、声がした方を振り向きます。
見るとそこには、20代くらいの腰まで届く長い黒髪をした女性がお湯に浸かっていました。
マッチ売り「え、お前……ゴホンッ! ……お姉さん、誰ですか?」
マッチ売りの少女は、突然現れた女性に対し、口調を可愛らしい女の子のものに変えます。知らない人には取り敢えず笑顔、幼い少女が身に付けた処世術でした。
かぐや「うちは今夜の舞踏会の参加者や。名前は『かぐや』って言います。よろしゅうたのんまっせ」
かぐやは、マッチ売りの少女に愛想良く微笑みます。
マッチ売り「……へぇー、かぐやさんも出場者なんですね」
かぐや「まあな。突然呼び出されて何事かと思って国をまたいで来てみれば舞踏会に参加せえって言われてほんまにたまげたわ。うち、ダンスなんて踊ったこともないのに」
天下一舞踏会はガチンコバトル。仮に踊れなくても参加は可能です。
しかし、このかぐやという人物が戦えるのかが甚だ疑問でした。
細身の身体、肩幅の狭さ、箸より重いものは持てなさそうな手。
とても世界中から集められた屈強な女性陣の1人には思えない、とマッチ売りの少女は訝しげな表情でかぐやを見つめます。
かぐや「もう、そんなあつ〜い瞳でうちを見んとき。惚れてしまいそうやわぁ」
マッチ売り「あははは、からかわないでくださいよ」
かぐや「ほんまほんま。お嬢ちゃん可愛いから、お茶の一つにでも誘いたいくらいや」
冗談めかした台詞に、マッチ売りの少女は苦笑を浮かべます。
かぐや「あ〜でも、今日はいかんな。このあと大事な用事があるし」
マッチ売り「舞踏会ですよね。やっぱり、かぐやさんも優勝して願いを叶えてもらうのが目的なんですか?」
マッチ売りの少女はそうでした。
かぐや「うーん、せやなぁ。最初はうちもそのつもりで参加してたんやけど……なんや願い事を叶えてもらう前に目的達成してしもうたから、それもええわ」
マッチ売り「……?」
マッチ売りの少女が首を傾げていると、かぐやは不意に向こう側を眺め始めました。
そこには、未だ身体を洗い続けている赤ずきんと白雪姫がいます。
??「ハァ〜♪ それにしても、ほんまに綺麗なお人やなぁ〜♪ やはりあの子こそが、うちの理想の君……」
マッチ売り「え」
??「あーダメや待ちきれん! うちはもう行くでぇ!!」
そう言うと、かぐやはお湯から上がりました。大浴場の中を歩いていき、まっすぐ2人の少女がいる場所へ向かいます。
赤ずきん「……あれ、お姉さん誰?」
かぐや「うちはかぐやって言います。今日は赤ずきんはんにお願いがあって来ました」
赤ずきん「私に?」
かぐや「赤ずきんはん」
かぐやは一瞬だけ言葉を切ると、その後意を決したように喋り出しました。
かぐや「初めて見た時から好きでした! うちと結婚してください!!」
……………………。
…………。
……。
赤ずきん&白雪姫&マッチ売り「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!」」」
大浴場の中から、幼い少女達の叫び声が上がりました。
次回、第6話「シンデレラと昔話」。ご期待ください。
負けてしまったマッチ売りの少女は、痛むほっぺをさすりながら廊下を歩いています。少女とは思えない疲れた溜息が、少女の口からハァっという声と一緒に出てきました。
マッチ売り「あーあ、棚からぼたもちでCEOになれると思ったけど、世の中そう上手くはいかねえよなぁ。……まあ、今晩はこのお城に泊まれることになったから良かったけどよぉ〜」
幼子ながらも、夢を叶えるために各地を旅しているマッチ売りの少女は、毎日の住む場所もない貧しい生活を送っていました。
マッチ売りの少女はお金が無いという訳ではありませんが、出来るだけお金を使いたくないと思っているので日々の食べる物も泊まる場所も粗末でした。
全ては夢のため。
そのためならどんな事でもやる。
マッチ売りの少女は自分の目標を再確認し、舞踏会でたくさん汗をかいてしまった身体を洗い流すために大浴場へ向かいます。
マッチ売り(泊まる所も風呂も全てタダ。なんて素晴らしい!)
マッチ売りの少女はそっと笑みを浮かべます。
タダ、とは良い言葉だ。「タダより高いものはない」という言葉はよく聞くが、やはりお金を使わないに越したことはないだろう。……唯一の欠点といえば、お風呂場はマッチが使えないので完全に丸腰になってしまうことだな。
と、マッチ売りの少女は静かに考えを巡らせますが、結局『タダ』という魔法の単語に魅かれ脱衣所に入りました。
マッチ売り「ん、先客がいるな」
大浴場手前にある脱衣所。そこのカゴに衣類が入っているのを見つけます。
大浴場は今、来客用として設けられている。マッチ売りの少女は城の人にそう言われていました。
天下一舞踏会に参加している他の参加者だろうか?
そう疑問を浮かべて、マッチ売りの少女は大浴場の扉を開きます。
赤ずきん「あ、あの、白雪姫? そろそろお湯に浸かりたいんだけど……」
白雪姫「まだ駄目です! まだ、身体中の汚れが落とせていません!」
そこには、2人の少女がいました。
金色の髪と黒色の髪の幼子たち、マッチ売りの少女より少しだけ年上に見える彼女たちは赤ずきんと白雪姫でした。
マッチ売り(……彼奴らか。先に大浴場に来てたんだなぁ)
何をしているのかと見てみると、白雪姫が赤ずきんの全身を丁寧に洗っている最中でした。白雪姫は怖いくらいに真剣な表情で、赤ずきんの肌を磨いています。
赤ずきん「もう洗う部分が無いってくらい綺麗にしてもらえたと思うんだけど……どこがそんなに汚いの?」
白雪姫「何を言ってるんですか! 赤ずきんさんに汚い部分なんてあるはずがありません!!」
赤ずきん「ええ〜……」
白雪姫「女性とは常に美しくあるもの! ですから私が誠心誠意、赤ずきんさんの身体を磨きます!! 安心して任せてください!!」
……2人はまだ、マッチ売りの少女が入ってきたことに気付いていないようです。
特に関わる理由もないマッチ売りの少女は、2人を無視して大浴場の奥に進みます。
おとぎの城の大浴場は、マッチ売りの少女がこれまで見たどのお風呂よりも大きい場所でした。
マッチ売りの少女はお湯に足をつけて温度を確認しつつ、ゆっくりと全身を浸からせていきます。足首、膝、お尻、腰、胸、肩。
そうして全身をお湯に馴染ませて、マッチ売りの少女は先程とは打って変わって気持ちの良い溜息を吐きました。
マッチ売り(あぁ〜疲れた身体に染み渡る〜♪)
今日は朝からマッチを売り回り、夜は恐竜に追われたり、赤ずきんにほっぺを抓られたりと大忙しだったマッチ売りの少女。これまでの疲れを癒そうと溶けたバターのようにふにゃふにゃに脱力しています。
そしてふにゃふにゃの少女は、頭を働かせていない状態で赤ずきんと白雪姫がいる方向をぼぉーっと眺めます。
赤ずきん「それにしても、何でタオルを使わず素手で洗っているの?」
白雪姫「お肌を守るためです。タオルは汚れを落とすのに便利ですが、肌を傷めてしまうので直接手で洗ったほうが良いんですよ」
赤ずきん「そうなの?」
白雪姫「はい。決して、私が赤ずきんさんの肌を隅々まで余すとこなく触りたいから手でしているとか、そういう邪な考えで行っている訳ではないんです」
マッチ売り(……最後の台詞のせいで、彼奴のやり取りが凄く危うく感じるようになってしまったのはオレ様だけか?)
赤ずきん「さっすが白雪姫! やっぱり可愛い女の子は身体のケアにも気を遣っているのね!」
マッチ売り(……どうやらオレ様だけのようだな)
すると、白雪姫が急にもじもじと照れ始めました。
白雪姫「そ、そんな可愛いだなんて……! 私より赤ずきんさんの方が可愛いですよッ!」
赤ずきん「いやいや、白雪姫って色白で綺麗だし、国で1番の美人さんって言われても納得できる見た目よ? 私なんかじゃ敵わないわ」
白雪姫「か、敵わない!? あり得ません!! この白玉のような肌! 金糸のような髪! 吸い込まれそうな碧い瞳! 全てに於いて赤ずきんさんより美しい人などいませんよ!!」
白雪姫が割れんばかりの大声で断言しました。まるで自分の信じている神様を否定されたかのような本気さで、赤ずきんに赤ずきんの美貌の素晴らしさを伝えます。
赤ずきんは、そんな白雪姫に対して若干戸惑った表情で、
赤ずきん「そ、そうかしら? そう言われると私も嫌な気分ではないけれど……」
白雪姫「そうなんですッ!! もう可愛くて可愛くて!! 城中の金品を売ってでも買い占めたいくらい大好きっていうか!!」
赤ずきん「私は非売品だよぉ〜……」
……そんな2人の様子を、マッチ売りの少女は黙って見つめていました。
マッチ売り(……実際、あの2人は可愛いよなぁ。町に出れば誰もが振り向くくらい良い容姿しているし……金になりそうだ。カメラでも持ってくれば良かったなぁ〜、そうすればその写真を売って儲けられたのに)
などと邪なことを考えながら妄想を膨らませています。
マッチ売りの少女が考えることは、いつもお金のことです。自分がいくら儲けられるか、彼女にとってそれが一番大事でした。
マッチ売り「……オレ様も容姿には割と自信があったんだが、流石にあの2人には見劣りするか?」
??「そんなことありまへんって、あんたも負けないくらい素敵なお顔をしてはりますよ?」
マッチ売り「フォローどうも。まあ容姿ってのは大事だぜ、オレ様もか弱い女児のふりをして馬鹿な連中から金を巻き上げたりしてるし。保護欲を刺激させるっていうの? ああいう技が使えるんだから、やっぱ可愛い女子は得…………」
バッ!! と。
マッチ売りの少女は驚いた表情で、声がした方を振り向きます。
見るとそこには、20代くらいの腰まで届く長い黒髪をした女性がお湯に浸かっていました。
マッチ売り「え、お前……ゴホンッ! ……お姉さん、誰ですか?」
マッチ売りの少女は、突然現れた女性に対し、口調を可愛らしい女の子のものに変えます。知らない人には取り敢えず笑顔、幼い少女が身に付けた処世術でした。
かぐや「うちは今夜の舞踏会の参加者や。名前は『かぐや』って言います。よろしゅうたのんまっせ」
かぐやは、マッチ売りの少女に愛想良く微笑みます。
マッチ売り「……へぇー、かぐやさんも出場者なんですね」
かぐや「まあな。突然呼び出されて何事かと思って国をまたいで来てみれば舞踏会に参加せえって言われてほんまにたまげたわ。うち、ダンスなんて踊ったこともないのに」
天下一舞踏会はガチンコバトル。仮に踊れなくても参加は可能です。
しかし、このかぐやという人物が戦えるのかが甚だ疑問でした。
細身の身体、肩幅の狭さ、箸より重いものは持てなさそうな手。
とても世界中から集められた屈強な女性陣の1人には思えない、とマッチ売りの少女は訝しげな表情でかぐやを見つめます。
かぐや「もう、そんなあつ〜い瞳でうちを見んとき。惚れてしまいそうやわぁ」
マッチ売り「あははは、からかわないでくださいよ」
かぐや「ほんまほんま。お嬢ちゃん可愛いから、お茶の一つにでも誘いたいくらいや」
冗談めかした台詞に、マッチ売りの少女は苦笑を浮かべます。
かぐや「あ〜でも、今日はいかんな。このあと大事な用事があるし」
マッチ売り「舞踏会ですよね。やっぱり、かぐやさんも優勝して願いを叶えてもらうのが目的なんですか?」
マッチ売りの少女はそうでした。
かぐや「うーん、せやなぁ。最初はうちもそのつもりで参加してたんやけど……なんや願い事を叶えてもらう前に目的達成してしもうたから、それもええわ」
マッチ売り「……?」
マッチ売りの少女が首を傾げていると、かぐやは不意に向こう側を眺め始めました。
そこには、未だ身体を洗い続けている赤ずきんと白雪姫がいます。
??「ハァ〜♪ それにしても、ほんまに綺麗なお人やなぁ〜♪ やはりあの子こそが、うちの理想の君……」
マッチ売り「え」
??「あーダメや待ちきれん! うちはもう行くでぇ!!」
そう言うと、かぐやはお湯から上がりました。大浴場の中を歩いていき、まっすぐ2人の少女がいる場所へ向かいます。
赤ずきん「……あれ、お姉さん誰?」
かぐや「うちはかぐやって言います。今日は赤ずきんはんにお願いがあって来ました」
赤ずきん「私に?」
かぐや「赤ずきんはん」
かぐやは一瞬だけ言葉を切ると、その後意を決したように喋り出しました。
かぐや「初めて見た時から好きでした! うちと結婚してください!!」
……………………。
…………。
……。
赤ずきん&白雪姫&マッチ売り「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!」」」
大浴場の中から、幼い少女達の叫び声が上がりました。
次回、第6話「シンデレラと昔話」。ご期待ください。
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