公爵令嬢は結婚したくない!
出張手当はつきますか?(5)
私とレイルさんが話していたところで、「レイル隊長! 大変です!」兵士の人が執務室に入ってきた。
「トーマス、どうかしたのか?」
「はい! それが……。ミトンの町で原因不明の病が広がっています」
「原因不明?」
「薬師ギルドでは、原因が分からないらしく、悪化の一途を辿って……」
「……まさか……」
トーマスさんの声が小さくなっていくのを聞いて、私は椅子から立ち上がる。
「ミューラさんも病に?」
トーマスさんは、「……はい……」と、私の問いかけに答えてきた。
ということは、事態はかなり深刻なのでは……。
「トーマスさん、町では、どのくらいの人数が病に感染しているのですか?」
「詳しくは分かりませんが、少なくとも200人は……」
「200人!?」
私は、驚く。
200人も症状が出た患者がいるということは、日本の厚生省がHIVの患者を調べた際に産出した計算方式を用いるなら最低でも潜在的に病人の数は10倍に膨れ上がる。
つまり、ミトンの町は、人口1万人の都市。
五人に一人はすでに病に蝕まれているということになる。
「大声を上げて、どうかしたのか?」
レイルさんが、椅子から立ち上がった私を見て話しかけてくるけど、なんて答えていいか迷ってしまう。
それよりも……。
「トーマスさん、その病は、どのような物なんですか?」
「――どのような物とは?」
「熱が出たり、嘔吐や便意と言った症状などです」
「いえ……、それが……熱は出るのですが、そのまま意識を失って目を覚まさないのです」
「そのような症状に心当たりなどは?」
私の問いかけに、トーマスさんもレイルさんも首を横に振って答えてくる。
つまり原因が不明ということ。
「やっぱり私が……」
途中まで口に出したところで、私は自分の考えを否定する。
私の回復魔法は、人間の細胞増殖をメインに発動していて、それは本来の意味で言うところの回復魔法ではない。
どちらかと言えば地球の医学体系を基礎に置いた回復魔法であり、この世界の回復魔法とは基礎から異なる。
自分だけなら、肉体強化の魔法で一時的に新陳代謝を強化して病を処理することは出来るけど、それを他人に掛けられるのかと言えば、答えは否。
何せ、自分の肉体だからこそ肉体強化が出来るわけで、回復魔法も細胞増殖という方法を取っているから外傷を治せる。
つまり、私が使える魔法の中には、本当の意味で病に対処する魔法がない。
「……どうすれば……」
私が独り言を呟いたところで「そういえば、カベル海爵の家系は昔から船医だったような……」と、レイルさんが呟いてきた。
「船医ってあれですよね? 船に乗っていた薬師――」
「ああ、海洋国家ルグニカは、元々、海賊だったからな。その名残かどうか知らないがカベル海将も病には精通しているらしい」
「なるほど……」
私は両腕を組む。
現在、起きている病の原因、病魔、感染源ともに不明。
まぁ感染者が出たのは、エメラダと決闘してかららしいから、そう考えると決闘前後で不審者が病をばらまいたと考えるのが自然だけど……。
「レイルさん、それでカイル海将というのは、どちらに?」
「衛星都市エルノの総督府を治める人物だな」
「……それって……」
私は、レイルさんの言葉に不信感を募らせる。
「ああ、衛星都市エルノの冒険者ギルドが、お前に依頼を掛けてきた事といい、繋がっているだろうな……」
「でも、受けないという選択肢は……」
「ないだろうな……」
レイルさんが私の言葉を引き継ぐような形で、話し合いを締めくくった。
そして、私は仕方なく溜息をつく。
「早急に衛星都市エルノに向かいます」
時間が経てば経つほど病にかかっている人が増えていく。
一刻の猶予もないと考えるのが自然だろう。
「トーマス、どうかしたのか?」
「はい! それが……。ミトンの町で原因不明の病が広がっています」
「原因不明?」
「薬師ギルドでは、原因が分からないらしく、悪化の一途を辿って……」
「……まさか……」
トーマスさんの声が小さくなっていくのを聞いて、私は椅子から立ち上がる。
「ミューラさんも病に?」
トーマスさんは、「……はい……」と、私の問いかけに答えてきた。
ということは、事態はかなり深刻なのでは……。
「トーマスさん、町では、どのくらいの人数が病に感染しているのですか?」
「詳しくは分かりませんが、少なくとも200人は……」
「200人!?」
私は、驚く。
200人も症状が出た患者がいるということは、日本の厚生省がHIVの患者を調べた際に産出した計算方式を用いるなら最低でも潜在的に病人の数は10倍に膨れ上がる。
つまり、ミトンの町は、人口1万人の都市。
五人に一人はすでに病に蝕まれているということになる。
「大声を上げて、どうかしたのか?」
レイルさんが、椅子から立ち上がった私を見て話しかけてくるけど、なんて答えていいか迷ってしまう。
それよりも……。
「トーマスさん、その病は、どのような物なんですか?」
「――どのような物とは?」
「熱が出たり、嘔吐や便意と言った症状などです」
「いえ……、それが……熱は出るのですが、そのまま意識を失って目を覚まさないのです」
「そのような症状に心当たりなどは?」
私の問いかけに、トーマスさんもレイルさんも首を横に振って答えてくる。
つまり原因が不明ということ。
「やっぱり私が……」
途中まで口に出したところで、私は自分の考えを否定する。
私の回復魔法は、人間の細胞増殖をメインに発動していて、それは本来の意味で言うところの回復魔法ではない。
どちらかと言えば地球の医学体系を基礎に置いた回復魔法であり、この世界の回復魔法とは基礎から異なる。
自分だけなら、肉体強化の魔法で一時的に新陳代謝を強化して病を処理することは出来るけど、それを他人に掛けられるのかと言えば、答えは否。
何せ、自分の肉体だからこそ肉体強化が出来るわけで、回復魔法も細胞増殖という方法を取っているから外傷を治せる。
つまり、私が使える魔法の中には、本当の意味で病に対処する魔法がない。
「……どうすれば……」
私が独り言を呟いたところで「そういえば、カベル海爵の家系は昔から船医だったような……」と、レイルさんが呟いてきた。
「船医ってあれですよね? 船に乗っていた薬師――」
「ああ、海洋国家ルグニカは、元々、海賊だったからな。その名残かどうか知らないがカベル海将も病には精通しているらしい」
「なるほど……」
私は両腕を組む。
現在、起きている病の原因、病魔、感染源ともに不明。
まぁ感染者が出たのは、エメラダと決闘してかららしいから、そう考えると決闘前後で不審者が病をばらまいたと考えるのが自然だけど……。
「レイルさん、それでカイル海将というのは、どちらに?」
「衛星都市エルノの総督府を治める人物だな」
「……それって……」
私は、レイルさんの言葉に不信感を募らせる。
「ああ、衛星都市エルノの冒険者ギルドが、お前に依頼を掛けてきた事といい、繋がっているだろうな……」
「でも、受けないという選択肢は……」
「ないだろうな……」
レイルさんが私の言葉を引き継ぐような形で、話し合いを締めくくった。
そして、私は仕方なく溜息をつく。
「早急に衛星都市エルノに向かいます」
時間が経てば経つほど病にかかっている人が増えていく。
一刻の猶予もないと考えるのが自然だろう。
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