公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

エマージェンシー!婚約者襲来!

 女子寮に入った私を出迎えたのは大量の蜘蛛の巣。
 それを見ながら私は、魔法式を空中に書きこんでいく。
 この世界に転生してから、気になっているのはこの魔法式の所々には漢字が使われていると言う事。
 ただ、その周囲に無数の解読不可能な言語式が使われている事から、解読には至ってない。

 両手を頭上に掲げる。
 それに合わせて私の腰まである黒い髪がフワリと広がり光を帯び始める。
 体内の生命力を魔力に変換して、それを呼び水にして大気の魔力を体に取り込み魔法式へと組み込む。
 それに合わせて体から力が抜けていくのは分かる。

「来たれ水の精霊ウィンディーネ! 私が求めるは水流! 天恵の力を持って、力を貸し与えたまえ」水を編み出す魔法を唱える。
 攻撃魔法ではなく、あくまでの生活魔法であり本来ならこんな仰々しい魔法式を利用した魔法陣を展開したり詠唱を必要としないけど、私が無詠唱で魔法を発動させるとトンデモない威力になってしまう事から、ウラヌス公爵により魔法陣、魔法式、詠唱の3つで私の魔法には制御がかけられている。

「アクアクリエイト!」
 私の言葉と同時にバケツ一杯分の水が作り出され私の元にぷかぷか浮かんで近づいてくる。
 アクアクリエイトで水を球状形成させながら、今日泊まる予定の部屋を決めて、魔法を持続したまま掃除に使う
 そのまま、掃除をしているとアクアエリエイトで作った水が汚れてくるので、また作りだして掃除を続ける。
 掃除は2時間ほどで済んだので、次は玄関と台所とお風呂場を掃除していく。
 どこも、とても汚い。

 掃除が終わったのは、午後5時を過ぎていた。
 私は、魔法行使により疲れた事もあって掃除をした自室に戻る。
 そしてベッドはあるけど、掛け布団も枕も無い事から壁に体を寄せてそのまま眠りにおちた。

 昨日は余程疲れていたのだろう。
 気が付けば、もう朝。
 私は、手ぐしで髪の毛を纏めると購買部に向かった。

 購買部には、寮で暮らしていく上での生活用品が売られているとパンフレットに書いてあったのだ。
 購買部の場所は本校舎つまり校長の部屋がある真下の場所。
 時間が早かったので人はまだおらず購買部は空いていた。

「いらっしゃいませ」
 女性は、眠そうな目で私を見ている。
 私は、そんな視線を無視しながら生活用品を見ていく。

 必要なのは、片手鍋に歯ブラシにお皿とコップと下着とフリーサイズの制服3着でいいかな。
 あとは石鹸にタライとタオルと……あとはトイレットペーパーのようなやわらかい紙を購入してと……。

「すいません。これ全部お願いできますか?」
 私は、新しく生活する上で必要な物を全部購入する事にした。
 全部で、日本円換算として10万円くらい。
 女性は多少驚きながらも、持ち帰りかお届けかを確認してくる。

「お届けでお願いします。それとベッド関係のカタログが欲しいんですけど?」
 私の言葉に女性は、慌てながらカタログを差し出してきた。
 カタログを受け取ると、そこには金貨最低100枚つまり100万円から1000万円までの豪華なベッドが書かれている。
 1000万円とか天蓋つきとかになっており、とてもじゃないけど……頭おかしいとしか思えない。

「それじゃこの金貨100枚のベッドセットの発注をお願いします」
 ただ私はどこでも寝られる体質なので、豪華なベッドなんて必要ない。
 むしろせんべい布団でもいいくらい。

 私が注文すると、夕方までに届くと言われた。
 購買部から出て、歩いて教室に向かうと廊下は昨日よりも喧騒に包まれていた。
 そして教室の前まで行くと、なるほどと納得できた。
 私の教室前にクラウス王子が来ていた。




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