公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

私の自己紹介に期待するなんて間違っています。

 入学式が終わった後、それぞれの教室に向かう人ごみに右往左往しながら教室に到着した。
 教室内に入ると、すでにグループが出来上がっているのが分かる。
 あれだ、入学早々事故にあって友達が作れずにボッチになるそんな感じ。
 今の私はまさしく、そのまんまボッチロードを進んでいる。
 まるで前世の自分をトレースしたみたいな!

 まぁ、別にボッチでもいいんですけどね……。
 私は、自分の名前が書かれている机を見つけると、椅子を下げて座る。
 席は窓側つまり校庭側に面していて一番前の席。

 つまり昼寝が出来ない場所と……。
 そうこうしている内に青い髪、短髪、長身筋肉ムキムキな男性教師? が教室に入ってきた。
 どうやら、私達の教室の担任らしい。
 今日は初日と言うこともあり自己紹介から始めるようで……。

 廊下側の席順から自己紹介がスタートしていく。
 誰も彼もが男爵以上の爵位を持つ家の子供であった。
 そしてひとつに気になっていた事があった。
 先ほどから一般入試の方の――貴族の子供以外の自己紹介がない。
 それと、担任の名前はタフネスと言うらしい。

「ユウティーシア・フォン・シュトロハイムさん、自己紹介してください」

「はい」
 私は席から立ち上がる。
 誰もが私に視線を向けてきている。
 やはり公爵家と言う事でお近づきになりたい貴族もいるのだろう。

「わたくしの名前は、ユウティーシア・フォン・シュトロハイムと申します。これから6年間よろしくお願い致しますわ」
 私は、それだけ言うと席に座った。
 教室内の空気が先ほどまでと打って変わって凍りついているように思える。
 周りを見ると「え? それだけ」という視線を感じるけど、それに答える必要性があるかと言えば……ないかな?

 そして全員の自己紹介が終わり、今日は入学式だけという事もあり私は寮に向かった。
 寮は結構、おしゃれな感じで赤い屋根に、土台は茶色のレンガが積まれていて壁は白く塗られている。
 私は、女子寮の両開きの扉を開けて中に入ると……そこは蜘蛛の巣が張っていた。

「あれ?」
 私は女子寮から出る。
 外からみる。
 外見はとても綺麗。
 建物に入る、
 中身はとても汚い。

「あれ? ここ女子寮だよ……ね?」
 私は不思議に思う。
 こんなに中が汚くてもいいのだろうか? と……。
 中を見て、外を見て、を繰り返していると、一人の女性が私の方へ近づいてきた。

「あれ? 貴女はここに住むのですか?」

「はい、そうですけど何か?」
 私の言葉に彼女の目が開かれる。

「ここは危険よ! 止しなさい!」
 彼女は私の肩を掴んで話をしてくる。

「何が危険なんですか?」
 私の言葉に彼女は目を伏せると……。

「ここは出るのよ!」

「出る?」

「そう、透明な何かが出たりするの!」
 ほー。
 それは面白そうですね。

「でも。わたくし、実家には帰りませんって出てきましたから……」
 私の言葉を聞いて、女性が頭を撫でてくる。

「大変だったのね!」
 いえ、実際それほど大変というわけでも……。
 思い浮かべる。
 改善提案資料を作るのに3日寝ずに仕事をした日々を……。
 魔法練習をした際に、あやうくウラヌス公爵邸を消し飛ばしそうになったことを……。
 事前に察知したウラヌス卿が放った氷の塊を後頭部に受けて気絶した事を……。

「はい、毎日が大変でした」

 そう、貴族同士のセッションを取り持つために色々考えたり。
 販促路とか契約内容とか商業内容とか梱包とか生産性を上げるための土壌魔法とか……。
 私って纏めてみると結構がんばってた。

「それじゃ、ここでは無い女子寮に案内するわね」と、言うと女性は私の手をとって歩き始めた。突然の事に驚いて、「あの、ここだって、パンフレットに書いてあるんですけど?」と。尋ねると女性は振り返って私を見て来た。

「女子寮は移転したのよ? 今から案内するわね」
「そうなんですか……」

 私の不安そうな顔を見て何かを察したのだろう。

「そんなに不安な顔をしなくても大丈夫よ? 私はリメイラール教会のシスターをしているからね」
「……そうですか」

「ええ、メイと呼んでくれればいいからね!」と、言いながら女性は私の手を掴んだまま歩き始めた。
 そして……貴族学院の敷地内を3分近く歩かされ建物が見えてきた。
 目の前に見えて来たのは先ほどの女子寮とまったく同じ建物だった。




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