無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

絡み合う思想と想い(30)




 迎え撃つ準備を始めてから一刻が経過した。
 すでにレッドドラゴンとサッサードラゴンの数は十分に揃っている。
 その数は、レッドドラゴンだけで100匹を超える。
 1匹のレッドドラゴンだけで2000人の大軍と戦えるとサマラは言っていたが足りないよりはいいだろう。

「ユウマ! これ、迷宮から連れてきたの!? ねえ! 私を無視しないでよ!」
「なんだよ」
「何だよって何よ! 一応、私はエルフ族の長なのよ! それに!」

 はいはい、土地神だと言いたいんだろ?
 俺は近寄ってくるエリンフィートの額を手で押さえて近寄らせなくする。

「サマラ。レッドドラゴンの足なら、フィンデイカまでは3時間もあれば到着できるはずだ。攻撃の時間は、リネラスが指示を出す」
「分かりました」
「リネラス。精霊眼でフィンデイカ村を攻略するエルフの動きと俺がユリーシャと対決する時間を調整しろ。相手は従属神だ、何が起きるか分からん。先にユリーシャ率いる軍と従属神が不利になったらどういう行動を取るか予想がつかないからな」
「うん。でも大丈夫なの? ユウマ一人でウラヌス教国の神の従属神を複数相手にするなんて」
「ああ、それなら問題ないと思うが……、何か起きたら困るからコイツを連れていく」
「痛い痛いから!」

 暴れているエリンフィートの額を掴むと肩に乗せる。

「エリンフィート様をですか? 族長を連れていってどうするのですか?」
「気にしなくていい。サマラは、フィンデイカ村の開放を念頭に動いてくれ。こいつも働きたくてウズウズしているようだからな」
「アンタ、何を言っているの!?」

 どうやら、協力は望めそうにないが連れていって従属神の中に放り込めば少しは牽制になるだろ。
 一応、土地神なんだから従属神ごときに遅れはとる事はないはず。

「アリア、お前は誰かエルフを連れていって空中戦艦の足止めをドラゴン達と行ってくれ。敵の戦力は未知数だからヤバイと思ったら即戻ってこい。いいな?」
「分かったの! でも、お兄ちゃん! 別に倒してしまっても構わないのだろう?」
「お前は、そんな言い回しをどこで覚えたんだ?」
「お兄ちゃんが良く言っていたの!」
「……そ、そうか……」
「それとスライムにはユゼウ王国軍の足止めを指示しておいてくれ」
「ぷるるん」
「――!?」

 一瞬、スライムがぷるるんってしゃべったような気がしたぞ?
 
「ぷるるん」
「……アリア……」
「えっと……、お兄ちゃんがこうした方が喜ぶかなって!」
「そ、そうか! なら仕方ないな!」
「うん!」
「おかしい。ユウマの妹と私の体格は似ているのに、どうしてここまで扱いに差が……」

 肩に乗せているエリンフィートぶつぶつ言っている。
 まったく可愛い妹と何百年以上も生きている化石エルフを同列扱いするわけがないだろうに。

「セレンとセイレスは、エルフガーデンのエルフの避難に当たってくれ」
「それとサマラ」
「ハッ!」
「お前は、一時避難所になるダンジョンで非戦闘員を護衛するメンバーの選出を行ってくれ。さすがに戦闘技能を持たないエルフをレッサードラゴンやレッドドラゴンが生息する場所に送るわけにはいかないからな」
「へー。ユウマも、そのへんはきちんと考えているのね」

 すごい上から目線でエリンフィートが耳元で呟いてくるがスルーする。

「ユリカ。イノンのことを頼めるか?」
「は、はい。ダンジョンに連れていけばいいんですよね?」
「ダンジョンには俺が連れていく。ただ、そのあとの面倒を見てやってほしい。どうなるか分からないからな」

 正直、イノンの精神世界で話した従属神だが、どこまで信用していいか判断がつかない。
 だが、ユリーシャとは何らかの確執があるのは分かる。
 それがどの程度かは分からないがユリカはアイテム鑑定スキルなどを持っているから何か問題があれば些細なことでも見逃すことはないだろう。

「それじゃ作戦開始だ!」

 一斉に動きだすのを見て俺はすぐにイノンが寝ている部屋に向かう。
 そしてとりあえず邪魔なエリンフィートを部屋の隅に投げ捨てる。当然、エリンフィートは「私、土地神なのよ! もっと大事に扱いなさいよ!」と言ってくるが無視してイノンの寝ているベッドごと持ち上げる。

「あとで修理すればいいか」

 どうせイノンは寝ているからなと思いながら【風刃】の魔法で壁を破壊。
 中庭までの直通の通路を作ったあと迷宮階段下まで運び通路にベッドを置く。

「ユウマさん。何人かエルフを見繕いましたので私達はフィンデイカ村へ向かいます」

 サマラが部下を3人置いていく。
 ふむ……。
 どこかで見た顔だと思ったらエルフガーデンの樹上で接待してくれたエルフたち。

「それじゃ頼むぞ?」
「「「イエッサー!」」」
「……」

 エリンフィートは暗殺者だと言っていたが、どちらかと言えば軍隊だな。




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