無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

絡み合う思想と想い(29)




「はぁー。本当、どう言う事なのか説明して欲しいのだけれども」

 エリンフィートが、溜息をつきながらサマラ達を見て俺に食って掛かってくる。
 迷宮から無事に帰還したと言うのに酷い言われようだ。

「ありのまま起こった事を話すぞ? ダンジョン内でサマラ達を鍛えようとして放置したら4年が経過していた。以上だ!」
「以上だ! って! おかしいわよね? 私は鍛えて欲しいとは頼んだけど! 暗殺者を育成して欲しいとは一言も言っていないわ!」

 やれやれ――。
 育成を俺に任せると言った癖に文句を言うとか土地神であるエリンフィーとは随分と面倒くさいな。

「言っておくがな。俺は、暗殺者として育てないとは一言も約束してないぞ?」
「――え!?」
「そもそも戦闘に特化した修行をすれば相手を倒すんだから殺気を放つのは当たり前だろうに――」
「――で、でも! 殺気どころか目つきは鋭いけど目の前にサマラ達が居ても存在が感じられないのだけれども! そこは、どういうことなの?」
「やれやれ――」

 俺は両手を上げながら、テーブルを挟んで座っているエリンフィートに向けて丁寧に説明することにする。

「何よ! その、何もコイツ分かってないな! って態度は!」

 どうも俺の態度が気にいらなかったらしい。
 神様の癖に、つくづく怒りの沸点が低い奴だ。

「言っておくがな。存在を感じさせないというのは、狩りをする上で必要な技術だぞ? 山に入って獲物を狩る時に自分の存在が獲物に知られたら逃げられたら、その日の収穫はゼロだ。何もせずに食料が届くお前と違って猟師は大変なんだよ」
「だから、サマラ達はあんなふうになったって言うの!?」

 エリンフィートの言葉に俺は頷きつつ溜息をつく。

「――とりあえずだ。サマラ達が相手していたのはレッドドラゴンやワイバーンになる。そいつらの嗅覚と聴覚は普通の動物や魔物の比じゃない。そいつらを狩るために精進してサマラ達も成長したんだ。そこは、苦労を労ってやるところだろう? ただでさえ精霊眼で、盗み聞きや盗み見をしていたんだから。これ以上、お前の株を下げてどうするんだ?」
「あんたに言われたくないわよ!」

 テーブルを、エリンフィートが力いっぱい叩くと俺に怒鳴りつけてくる。
 
「だいたい、ユウマ! 貴方が適当にダンジョンを作って適当に仕様を設定しているからこうなっているのでしょう? サマラ達が集落に戻った時に、どう思われるのか少しは考えて行動しなさいよ!」
「その言葉は、そっくりそのままお前に返しておく」

 俺は、サマラが注いでくれたお茶を飲みながら冷静に言葉を返す。

「お兄ちゃん! スラちゃんが押し留めている王国軍に人外の力を持ったモノが合流したって言っているよ!」
「ふむ、ユゼウ王国軍とユリーシャが引き入る反乱軍も動きだしたようだな」
「それで、どうするの?」
「そうだな……」

 俺は顎に手を当てながら今後の行動を考える。
 そんな俺を見て「貴方との話はまだ終わってないのだけれど? 私の話を聞きなさいよー!」と、エリンフィートが何やら言ってきているが、面倒だからスルーでいい。
 それよりも問題は、こちらの戦力をどうやって振り分けるかだ。

「サマラ」
「はい」
「お前達は、ユリーシャが支配下に置いているフィンデイカ村の開放をしてくれ。相手の生死は問わない」
「了解しました!」
「アリアは、サマラ達が乗るための足を用意してやってくれ。フィンデイカ村までは距離があるからな。レッドドラゴンかワイバーンを用意を! それと、アリアはスライムに正面から来るユゼウ王国軍の侵攻を遅らせるように伝えてくれ。別に倒してしまってもいいからな」
「分かったの!」
「後方から来るユリーシャ軍と、ユリーシャの体内に救っている従属神は俺が相手するとして……、あとは飛行船だが――。これは、ドラゴンを大量に捕獲して時間稼ぎしてもらうのがベストだろうな」
「ちょっと私の話を聞きなさいよ!」

 俺が完全に無視しているとエリンフィートが半泣きで抗議してきたが、放置でいいだろう。 




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