【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

親類の絆(20)

「まて、さっき言っていたことと矛盾していないか? 精神感応物質は、つまり精神エネルギーなんだろう? それが集まって魔物が生まれるということは十分に世界の事象に干渉してることに繋がると思うんだが?」
「私は、言いましたよね? 一箇所に集まればと――」
「たしかに言ったが、一度拡散したものが集まって魔物になるのなら、もとから存在していた精神感応物質から直接魔物が生まれないのはおかしくないか?」
「…………驚きました。ユウマさんは、思ったよりも頭がいいんですか?」
「おい――」

 エリンフィートのあまりの言い様に、かなりイラッときたが自分を抑える。

「そこは、私も詳しくは教えてもらってはいないのですが、元々、精神感応物質というのは、この世界には無かった物らしく、それを作り出した者が消滅した時点で物体として、存在する形になっているそうです。ですから、魔物が生まれる理由は、自然的に拡散される精神感応物質が拡散され再度集まるときだけと聞いています」
「……お前も、実はよく分かっていないということか……」
「……あぅ――」

 俺の言葉にエリンフィートは俯きながらも言葉を続ける。

「そして、ここからが本題となるのですが、魔法というのは精神エネルギーを集約し世界に干渉し奇跡を起こす事を意味します。そして、魔法を使うということは、受け入れる器が必要ということであり、そのためには複雑な魔法陣と詠唱と魔石と呼ばれる触媒が必要になります。ちなみにエルフの場合は、魔力つまり精神エネルギーを目視することが出来るため、複雑な魔法陣と魔石は必要ありません」
「それって……なんてチート……」

 俺よりチートじゃないか?
 詠唱だけで魔法使えるとか――。
 俺の魔法は、どうやって魔法が発動するのかをイメージしてから、漢字と呼ばれるキーワードを頭の中で思い描き発動させている。
 そうなると、俺の方が工程は多い気がするし、何より俺が明確にイメージ出来ないことは魔法として発動させることすら出来ない。
 たとえば、空を飛ぶ魔法なども、飛行制御だけではなく空気力学や航空力学も必要になる。
 そんな物まで、俺の謎知識がカバーしてるのかと言えばカバーしてないわけで、俺の魔法は万能のように見えて実は万能ではない。
 おかげで回復魔法とか、肉体の細胞を増殖させて修復させることしか出来ないし、免疫力を高めて毒に対抗するしか術がない。
 そういうこともあり、海も迷宮リヴァルアでは毒に対抗するために免疫力を高めて抗体を多く作りだした。
 そして肉体は、細胞増殖からの修復を行っていたため、筋力などがつねに痛めつけられ超回復してる状況に晒されたことで超人的な肉体を手に入れている。
 本物のチート魔法ではないからこそ、起きた副産物だとも言えるが……。

「チート? 時々、ユウマさんは分からない言葉を使いますね」
「ああ、すまん。俺の出身の村で流行っていた言葉なんだ――」

 真っ赤な嘘である。
 俺の中にある謎知識を引っ張りだしてきたに過ぎない。

「そうですか――」

 納得した!?
 そういえば、エリンフィートは配下のエルフ達がいない場所では力を使う事が出来なかった。
 そして、アライ村ではエルフはいなかったわけで……。
 騙されるのも致し方ないのか?
 いや、一瞬クスリと笑った気がしたからたぶん、気がついてる可能性もありそうだ。

「まぁ、いい。それよりも、問題はどうして、この世界を俺が作っているかなんだが……」
「魔法を使う上で必要なのは器であり、どれだけの精神エネルギーを肉体に取り入れることが出来るかどうかなんです。そしてエルフは無意識にそれを行うことが出来ます。そしてリネラスさんは魔力を見ることが出来るようになりました。そして人の精神というものと、世界を満たす精神エネルギーはとても似ていて……」
「つまり、魔法得意な種族は本来持っている精神エネルギーの蓄積量が少ない?」
「ご名答です。つまり、本来、人が持ってるはずの精神エネルギーを妖精の目を開眼したことでリネラスさんは持っていないのです。そして、異世界――今、私達がいる場所を、これだけ正確に作る場合には、普通は持っていてはならないほどの精神エネルギーが必要となります」
「それでどうして、俺になるんだ? 俺だって魔法が得意な部類に入るんだが?」







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