無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

親類の絆(15)

「しかし、それにしても……」
「どうかしたのですか?」

 リネラスとリンスタットが手を取り合って歩いている姿なんて、そういえば、エルフガーデンに来てから見たことが無い。 
 どこか余所余所しいか距離感があるような印象を、今の目の前を歩いている二人を見ると受けてしまう。

「いや、二人とも仲がいいなと思ってな……」
「そうですね。それは親子だからでしょうね」

 俺の答えにエリンフィートは、眉一つ動かさずに答えてくる。
 ただ、彼女の言葉には何か含みがあるような感じがあるような気がしてならない。
 それは、直感というかほんとうに何となくだが……。

「親子か――」

 そういえば、俺の家はどうだっただろうか?
 もともと、俺が生まれた時には両親はアライ村に住民で、今、思えば両親の親には会ったことが無い。
 あまり気にしたことがなかったが、人間の営みというのは歴史の積み重ねであり、そこから派生する多様性が生活圏を作り出していく。
 そういえば、リリナも元はイルスーカ侯爵家が治めるイルティアの町で住んでいたと聞いたことがあった。
 そこから、俺が小さい頃――まだ、魔法が使えないときにリリナは村に移住してきたわけだが、その事を特に気にしたことは無かった。
 そのころは、まだ5歳前だったし、肉体に精神が引き摺られていることもあり深く考えずにいつも行動していた気がする。
 そして――。
 農村ということもあり、親からは放って置かれていた機がする。

「ユウマさん?」

 思わず「親子か――」と呟いた言葉にエリンフィートは、反応し俺の名前を呼んできた。
 彼女は、リンスタットが若い頃着ていたと思われる白いワンピースを身に纏っており緑色の髪と、エメラルドグリーン色の瞳は、陽光を淡く反射しており、とても魅惑的に瞳に映るが――。

「いや、なんでもない」
「そうですか? 何か気になっていたと思ったので話しかけたのですが……」
「それも、土地神としての力か?」

 俺の問いかけにエリンフィートは、頭を振って否定してくる。

「いいえ、そうではないんです。長く生きていますと、人がどうやって苦悩し考え答えを出していくのかを分かってしまうのです。ただ、ユウマさんは……」

 途中まで言葉を紡いでいた彼女が俺を一瞬だけ見たあとに、口を閉じた。
 その反応が少しだけ気になる――が……。

「俺がどうかしたのか?」
「いえ、ユウマさんは、上手くは説明できないんですけど、聖人ではないことは理解いたしました。そしてユウマさんは自分を魔王と言っていることも知っています。ただ……私には、どうしても分からないことが……」
「分からないこと?」
「ユウマさんの魔法は――」
「エリンフィート様、ユウマさん到着しました」

 俺の問いかけに答えようとしていたエリンフィートの言葉を遮るかのようにリンスタットが大きめの声を発してきた。
 リンスタットが歩いていた前の方を見ると、そこには何度も深層心理世界でループした時に泊まった冒険者ギルドのエルフガーデン支部が、存在していた。

「――ん? リンスタットにリネラス戻ったのか?」
「お父さん、今、戻りました」
「ただいまー」

 リネラスの祖父と思われる男性が家から出てくると、リネラスとリンスタットに声を掛けていた。
 そこで俺は目を見開く。

「エリンフィート!」
「分かっているわ」

 俺とエリンフィートの前で、リンスタットの容姿が若くなっていたことに今さながら気がついた。

「これは、どういうことだ?」
「おそらく、役割を担う仮初のリンスタットは、本物のリンスタットが居ると存在できないの。つまり――」
「本物が来たから仮初に代役を任せたと言うことか?」
「その可能性は否めないわ」

 おいおい、冗談だろう?
 それは、つまり一時的かどうか知らないが、リネラスの深層心理の世界にリンスタットが囚われた事を意味するのであって――。

「でも、まずいわね。他人の記憶や深層心理に囚われるなんて、どれだけ思いが強いのか――」
「そうなのか?」
「ええ――。かなり危険な兆候だと思うわ」

 眉根を潜めながら真剣な表情で答えてくるエリンフィートを見て、俺は一歩前へと出る。
 とりあえず完全に呑み込まれる前に、リンスタットを確保した方がいいと思い、手を伸ばすと横から伸びてきた別の手に腕を掴まれる。

「待って! 下手に干渉すると精神崩壊の引き金にも成りかねないわ」
「なら、どうするんだ?」
「幸い、リネラスは私の事を知らないはず。だから、こちらまでは干渉できないと思う。しばらくは様子を見て置いたほうがいいわね」
「そうなのか……」

 俺は、エリンフィートの言葉を聞きながらも釈然としない。
 何故なら……。

「だが、このまま行くと、リンスタットがリネラスを拒絶した場面を再現させることになるんだぞ? それは不味いんじゃないのか?」
「そうね……。でも、それが彼女の望みなら?」
「まさか……」

 エリンフィートは、ゆっくりと頷く。

「リネラスさんは、自分の母親の気持ちを確かめようとしているのかもしれないわ」


 

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