【書籍化作品】無名の最強魔法師
親類の絆(9)
「分かった。とりあえずダンジョンの事は後にしておくとしよう。それよりも――」
「ご理解いただけて幸いです。今は、お互いにとっても一刻を争う事態ですから……」
エリンフィートの言葉には一理あるが、話を途中で切り上げられた俺としては、消化不良と言った感じで。
「とりあえずリンスタットを呼んでくる」
「分かりました」
部屋の扉を開けて通路に出ると、リンスタットは宿屋通路の壁に寄りかかっていた。
扉が開いたことに気がついたのか、床の赤いカーペットに目線を落としていたリンスタットは視線を俺に向けてくると「話は終わったのですか?」と問いかけてくる。
「ああ、終わった」
彼女が心なしか落ち込んでいるようにも見えたことで話しかける。
本当は、エリンフィートと話の決着をつけられなかったことから、心の中でわだかまりが出来ていた。
だから、本当は余計なことをリンスタットを話すつもりはなかったのだが、深層心理世界に入った時に、心の安定感を無くし最初の俺みたく弾き出されても困る。
なるべく不確定要素は抑えておいた方がいい。
「すぐにリネラスの深層心理世界に行こうと思うが大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
リンスタットは俺の言葉にすぐ返答を返してきたが、大丈夫そうには見えない。
それでも、言いたくないなら無理に問いただしても意味はないように思えてしまう。
「分かった。部屋の中に入ってくれ」
「ユウマさん。親とは一体何なんでしょうか?」
部屋に入ろうとしたところでリンスタットが俺に話しかけてくるが、その内容は俺には答えられない――いや、答えることが出来るな。
物心ついた時から、この世界に存在しない無数の知識。
その中には親の定義も存在している。
ただ、それが正しいのかどうかと言われれば――。
「俺みたいな成人まもない人間に、親とは何なのか? と問われて答えられると思うのか?」
「それは……」
正直、この世界に存在するはずの無い知識で、リネラスの母親であるリンスタットを諭しても意味はないと俺は思っている。
何故なら、文化というのは歴史であり、歴史は人の営みの積み重ねだからだ。
だから、親の在り方と言うものは千差万別であり、どれが正しいかなんて誰にも分からない。
正直、俺の両親だって俺が保持している異なる世界の知識から見たら放任主義どころの騒ぎじゃすまないし。
親失格とまで言える。
だが、それを攻めるのかと言えば……まぁ、普通なら攻めるんだろうな。
問題は、俺が普通の子どもではないという点で、親にスルーされてようが放置されていようが特に気にはならない。
「そうですか……」
リンスタットは肩を落として近づいてくる。
俺は彼女を見ながら。
「ただし、客観的な事実であるなら答えることはできる」
彼女はリネラスを幼い頃に産んだ。
そして、子どもが成長するに従って親も親として成長していく。
それが出来なかったとしたら、どうだろう?
「生物の個体というのは、上位者である親が下位者である子を守ること。これが、生物の営みとしては一般的だと言われている」
「え?」
リンスタットは目を丸くしている。
「そして、集団生活をするにあたり、ルールを遵守させるために親が子に教育を施すのが一般的とされていて、何か問題が発生した場合には、その物事に対処するのが一般的ということになっているな」
「……」
俺の説明にリンスタットが固まって無言になってしまったが、俺は何か間違った説明をしているのだろうか?
ふむ……。
考えても間違ってる点はないな。
「さて、問題点としては子どもへ向ける愛情というのは、子どもを産んだときよりも、その後、育成し成長を見守っていく仮定で築き上げられていくのが一般的とされている。簡単に言うならば、男が生まれたばかりの子どもに対して中々、愛情を抱けないと考えれば分かりやすいだろう」
「ユウマさんが……何を言っているのか、サッパリ理解できないです」
「なんだ……と!?」
俺は一般的な客観的事実に基づいて説明しているに過ぎないというのに……。
もっと噛み砕いて分かりやすく説明するしかないか。
「簡単に言えば、幼い子どもの面倒を見るのが親であって、その子どもを守るのが親の役目だってことだ。それを怠ったリンスタット、お前は親失格ってことだ」
「――ッ!」
リンスタットを指差しながら「お前は親失格だ!」と言ったところで、彼女は突然、膝から崩れ落ちて泣きはじめてしまった。
俺……何か間違ったことを言ったのだろうか?
「ご理解いただけて幸いです。今は、お互いにとっても一刻を争う事態ですから……」
エリンフィートの言葉には一理あるが、話を途中で切り上げられた俺としては、消化不良と言った感じで。
「とりあえずリンスタットを呼んでくる」
「分かりました」
部屋の扉を開けて通路に出ると、リンスタットは宿屋通路の壁に寄りかかっていた。
扉が開いたことに気がついたのか、床の赤いカーペットに目線を落としていたリンスタットは視線を俺に向けてくると「話は終わったのですか?」と問いかけてくる。
「ああ、終わった」
彼女が心なしか落ち込んでいるようにも見えたことで話しかける。
本当は、エリンフィートと話の決着をつけられなかったことから、心の中でわだかまりが出来ていた。
だから、本当は余計なことをリンスタットを話すつもりはなかったのだが、深層心理世界に入った時に、心の安定感を無くし最初の俺みたく弾き出されても困る。
なるべく不確定要素は抑えておいた方がいい。
「すぐにリネラスの深層心理世界に行こうと思うが大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
リンスタットは俺の言葉にすぐ返答を返してきたが、大丈夫そうには見えない。
それでも、言いたくないなら無理に問いただしても意味はないように思えてしまう。
「分かった。部屋の中に入ってくれ」
「ユウマさん。親とは一体何なんでしょうか?」
部屋に入ろうとしたところでリンスタットが俺に話しかけてくるが、その内容は俺には答えられない――いや、答えることが出来るな。
物心ついた時から、この世界に存在しない無数の知識。
その中には親の定義も存在している。
ただ、それが正しいのかどうかと言われれば――。
「俺みたいな成人まもない人間に、親とは何なのか? と問われて答えられると思うのか?」
「それは……」
正直、この世界に存在するはずの無い知識で、リネラスの母親であるリンスタットを諭しても意味はないと俺は思っている。
何故なら、文化というのは歴史であり、歴史は人の営みの積み重ねだからだ。
だから、親の在り方と言うものは千差万別であり、どれが正しいかなんて誰にも分からない。
正直、俺の両親だって俺が保持している異なる世界の知識から見たら放任主義どころの騒ぎじゃすまないし。
親失格とまで言える。
だが、それを攻めるのかと言えば……まぁ、普通なら攻めるんだろうな。
問題は、俺が普通の子どもではないという点で、親にスルーされてようが放置されていようが特に気にはならない。
「そうですか……」
リンスタットは肩を落として近づいてくる。
俺は彼女を見ながら。
「ただし、客観的な事実であるなら答えることはできる」
彼女はリネラスを幼い頃に産んだ。
そして、子どもが成長するに従って親も親として成長していく。
それが出来なかったとしたら、どうだろう?
「生物の個体というのは、上位者である親が下位者である子を守ること。これが、生物の営みとしては一般的だと言われている」
「え?」
リンスタットは目を丸くしている。
「そして、集団生活をするにあたり、ルールを遵守させるために親が子に教育を施すのが一般的とされていて、何か問題が発生した場合には、その物事に対処するのが一般的ということになっているな」
「……」
俺の説明にリンスタットが固まって無言になってしまったが、俺は何か間違った説明をしているのだろうか?
ふむ……。
考えても間違ってる点はないな。
「さて、問題点としては子どもへ向ける愛情というのは、子どもを産んだときよりも、その後、育成し成長を見守っていく仮定で築き上げられていくのが一般的とされている。簡単に言うならば、男が生まれたばかりの子どもに対して中々、愛情を抱けないと考えれば分かりやすいだろう」
「ユウマさんが……何を言っているのか、サッパリ理解できないです」
「なんだ……と!?」
俺は一般的な客観的事実に基づいて説明しているに過ぎないというのに……。
もっと噛み砕いて分かりやすく説明するしかないか。
「簡単に言えば、幼い子どもの面倒を見るのが親であって、その子どもを守るのが親の役目だってことだ。それを怠ったリンスタット、お前は親失格ってことだ」
「――ッ!」
リンスタットを指差しながら「お前は親失格だ!」と言ったところで、彼女は突然、膝から崩れ落ちて泣きはじめてしまった。
俺……何か間違ったことを言ったのだろうか?
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