無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

エルフガーデン(12)


「――!?」

 エリンフィートは俺の言葉を聞いて驚いた表情を見せてくる。
 そして目を細めると。

「それなら、その態度が妹のアリアさんに報告されても出来るといいですね?」
「ふっ――あまいな、エリンフィート!」
「甘いですか? これは使いの者を立ててユウマさんが起こしてきた問題をこと細かく妹さんに伝えないとダメでしょうか?」
「――な、なんだと!?」

 エリンフィートは、最初であった頃とは全く別人のような顔で俺を見上げてきている。
 その表情は、絶対的優位性をとった強者のような弱者を見下すような表情。
 はっきり言って気に食わないが――。。
 【流星】の魔法でエルフガーデンを消し飛ばすような真似はできない。
 俺も無差別に攻撃を仕掛けているわけではないからな。
 そうなると、取れる手段は限りなく少なくなる。

「あらあら! ユウマ様は、聖人とか煽てられて! いい気分になったりしてたんですか!? 問題行動ばかり起こしておいて自覚せずに? これは酷いマッチポンプですね?」

 エリンフィートは、右手で口元を隠すと「くすくす」と笑っている。
 今なら分かる。
 こいつ性格が非常に腐ってやがる。
 ただ、こいつの情報の出所が、考えてもまったく分からない。

 そんな俺の考えを読んだかのように「私は、ユゼウ王国を守護する土地神ですから、厳密に言えばエルフではありません。ですから――ユウマ様が、この国で何をしてきたかもぜーんぶ知っています。たいへんですね? 私のお願いを聞いて頂けないと、少し口が軽くなって世間様にお話しを流布するかも知れません」

「……お、お前――」

 俺は、絞り出すように目の前に座っているエリンフィートを睨みつける。
 目の前に座っているのはエルフでも何でもない、ユゼウ王国の土地神。
 しかも、かなり正確がひん曲がっている神様だ。
 人の弱みにつけ込んで、相手を無理やり言う事聞かせるようなやり方とか最低の奴のする事だぞ!

「さて、ユウマ様。それとも聖人様と呼びましょうか? お力をお貸し頂けますよね?」
「分かった。だがな……お前、そういうことばっかりしていると、いつか大変な事になるぞ?」

 神を倒したことがないが何時か――。
 ただし、悔しいが今はこいつの話を聞くしかない。
 俺を尊敬している妹とかに話をされて幻滅されるとあれだからな。


「依頼を受けて頂けるようで助かりました。実は最近のエルフが抱えている精霊を視る事が出来るエルフが減ってきている件です。その事を改善してもらいたいのです」

 エリンフィートの頼みと言うのは、エルフが精霊眼を持たずに生まれてくることを示唆していた。
 ただし、生まれた子供のエルフが精霊眼を持たずに生まれてくる不完全さについてはリンスタットさんと話をしていている時にある程度、改善方法は分かっていた。
 まぁ、問題は改善方法が分かっていても実行できるかどうかは別物だ。 

「それなら男エルフに戻ってきてもらえばいいだろ? 他種族と婚姻して男エルフが生れないんだろう? つまり、女エルフしか生まれていないと言うことは、女エルフの劣化コピーが作られてる事だと俺は考えているんだが? それか遺伝子が劣化してきている可能性もあるな」

 俺の言葉を聞いたエリンフィートは、しばらく考えた後に「それでは、その対策をユウマ様に依頼致します。報酬は、貴方が過去に行ってきた問題行動を妹さんに知らせないってことでいいですよね?」と語りかけてきた。
「お前……本当に良い性格しているよな」

 エリンフィートは、俺の皮肉に微笑むと。

「はい、よく言われています。特に歴代の聖人様達には言われました。それではよろしくお願いします。何か必要な物がありましたら遠慮なく言ってください」

 エリンフィートの言葉に、溜息をつきながら「分かった」と、俺はしぶしぶ頷く。

「それじゃまず、やりたい事がいくつかある。協力を要請したい」

 俺の言葉にエリンフィートは頭を傾げてくる。
 態度を見る限り人間というかエルフと変わらないんだが――いや、俺の過去の所業を知っている時点で、もう普通ではないな。

「知り合いの女性エルフから、森の生態系が変わってから問題が起きたと聞いた。その時の詳しい情報を知りたい」
「わかりました。それでは、森の生態系変化に詳しい者がいますので、その者をユウマ様の元へ派遣致します」



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