無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

死の都ローランへの招待

「すごい人だな……」

 俺は目の前の人数を見て思わず声が出ていた。

「はい、一応は貿易の中継点だった都市ですから……」

 ランは少しだけ悲しそうな目をして俺の問いかけに答えてきた。

「貿易の中継点か……」

 俺は一人呟きながらも、ランが誘導してくれる通りに帆馬車を移動していく。
 もちろん帆馬車は大通りには向かわずに右手にある馬車などを止める場所へと移動して停める。

「ここで大丈夫です。冒険者ギルドカードをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ああ……」

 俺は懐から冒険者ギルドカードを取り出すとランに差し出す。
 ランは俺から冒険者ギルドカードを預かると建物の中に入るとすぐに戻ってきた。

「えっと滞在費として一日金貨3枚分を御引き致しました。町の中ではこの町で利用できる硬貨しか扱う事は出来ませんがいかがいたしましょうか?」
「それなら、金貨100枚分を交換してもらえるか?」
「わかりました」

 ランは俺の言葉に頷くとすぐに建物の中に入っていき、大き目の袋を両手で抱えるようにして持ってきた。

「さすがに金貨100枚分は重いですね。えっと……それでは、こちらが金貨100枚分の硬貨となります。よい湯治を……」
「ああ、助かった」

 ランは袋を俺に渡すと門の方へ戻っていく。
 俺は、その後ろ姿を見ながら何か引っかかっていたが、今はとにかく……。

「おい! お前ら起きろ!」

 俺は帆馬車に足を踏み入れてリネラスの肩を揺さぶる。

「ユウマどうしたの? また何か問題でも起きたの?」
「おい! 俺がいつも問題ばかり起してるような言い方は止めてもらおうか!」
「うるさいですねー! ところでユウマは何をしてるの?」
「……ハァ。お前はなー。とりあえず、ローランって町についたから皆に食事をだな」
「なるほど……海産物ばかりで飽きてましたから」

 俺は必至に海の迷宮リヴァルアで摂ってきた海産物さん達を、飽きたとかひどい言い方をする奴だな。

「ユウマ、先に降りてますね」
「ああ、気をつけるんだぞ。あと、従者の席には袋にお金を換金して入れておいたからとっておけよ」
「わかった!」

 リネラスは、それだけ言うと帆馬車から下りていく。
 俺は、溜息をつきながらセイレスとセレンの肩を揺さぶる。

「二人とも、町についたから起きろ!」
「うう~ん、お兄ちゃん?」
「セレン起きたか……セイレスは……と」

 セイレスの方を見ると黒板にササッと文字を書いて俺に見せてきた。
 そこには「夜這いですか! 夜這いですよね!?」と書かれている。
 駄目だ、コイツ……早くなんとかしないと……。

「二人とも町についたから従者席に課金したお金を置いておいたから好きにとって町で食事でもしてこい。宿は俺が取っておくから、あとでここで合流な?」
「わかったの!」

 セレンが元気よく頷くと、セイレスの手を引いて帆馬車から下りていった。
 あとはイノンとユリカだけか……。

「イノン、起きろー」

 イノンの名前を呼びながらイノンの肩を揺さぶると、うっすらとイノンは目を開けてきた。

「あれ? ここは……知らない天井です」
「その、お約束はいいから! とりあえず町についたから食事でも皆でしてくるといいぞ。従者席に換金したお金を置いておいたから取っていくといい。宿は俺の方で手配しておくから、ここ集合な」
「わかりました」

 イノンはそのまま帆馬車から下りていく。
 さて、あとはユリカだけだな……。

「ユリカ起きろ! 町についたぞ!」

 何度もユリカの肩を揺するがなかなか起きない。
 まったく寝起きが悪いのか?
 しばらく揺すっているとようやくユリカがうっすらと目を開けて俺を見てきた。

「ユウマさん……」
「お、ようやく目が覚めたか?」

 俺の名前を呼んできたユリカに安堵して従者席に向かおうとすると洋服の裾をユリカに掴まれた。
 ユリカは意識がはっきりしたのか眉を顰めて俺を見てきている。

「どうしたんだ? ユリカの言うとおり進んだら町があったぞ? 皆、もう外で待っているか食事に言ってるはずだが?」

 食事と言う言葉を聞いたユリカは勢いよく起きあがる。

「ユウマさん、忘れていました。良く聞いてください」
「ん? どうしたんだ?」

 ユリカがいつにもなく真剣でいて焦った表情を俺に見せてくる。

「ユウマさん、思い出したんです。【メモリーズ・ファミリー】は、人がかつて暮らしていた町にだけ生える特殊な花だったんです!」
「な!? それってつまり……」

 俺は帆馬車から外に出る。
 帆馬車の外にいるはずのリネラス、イノン、セレン、セイレスの姿が見当たらない。
 そして町の方へ視線を向けると、そこは先ほどまで活気があった場所とはまったく別種。
 廃墟となった街並みがずっと続いていた。






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