無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

イルスーカ侯爵令嬢エメラダの奮戦(前編)

 イルスーカ侯爵家の歴史は、建国から500年近いアルネ王国において浅い。
 曾祖父の時代に、魔物の大襲撃から国王を命をかけて守った事で一介の騎士から侯爵に取り立てられた。
 ただ、周りの貴族達からの反発や妬みもあり、中央にはいられなかった。
 そして、当時のアルネ王国国王陛下を守り抜いたと言う理由でイルスーカ侯爵家は辺境の土地を与えられた。
 そこは正者の森と呼ばれる場所に面していた広大な土地であった。
 当時の曾祖父や、王国騎士団はその身を挺して定期的に起きる魔物の大襲撃のあとの荒れ果てた土地を開墾し壁を作り、人を募り多くの移住者を集い領土を富ませていったと私は教えられた。

「もう、いやです!どうしてお父様は会いに来てくれないのですか?」
 私は毎日毎日、勉強ばかりさせられていた事に嫌気がさしていた。
 どうして他の町の子供達と同じように遊べないのか。
 いつも、外を見ては私と同年代の子供が一緒に遊んでるのを見ていてうらやましく思っていた。

「エメラダ様、将来はエメラダ様も魔法師育成学校に通われるのですから、きちんと勉学にお力をいれらせませんと……「いやよ!私には魔法の才能なんて無いのは分かってるわ、なのに魔法師育成学校にいくなんて、そんなの嫌よ」……」
 私は家庭教師の言葉を遮って以前から思っていた事を口してしまっていた。
 貴族として生まれた子供は幼い頃に魔力量を調べられる。
 そして私の魔法量は初級魔法師にすら遠く及ばない程度のモノだった。

 私以外の家族は全員、中級魔法師級の魔力量を持っていというのに……。
 私だけが、魔力量つまり魔法の才能が無かった。

 だから惨めな思いをするくらいならと私は魔法師育成学校に行くのは嫌だった。
 でも……結局、私は貴族と言う理由だけで魔法師育成学校に入学をした。

 でも魔力量だけではなく、もっと重大な事に私は気が付いた。
 誰一人、私と同じような白い髪と赤い瞳を持つ人がいなかった。

 そして、人は自分と違う人を嫌う事も知ってしまった。

 彼らは言うのだ。
 まるで私の白い髪が老婆みたいだと、赤い瞳は魔物の吸血鬼のようだと。

 そして、それは連日繰り返され虐めにあった。

 過剰なまでの貴族達からの嫌がらせ。それは私がイルスーカ侯爵家令嬢だったということもある。
 数年前から正者の森から魔物が侵攻してこなくなった事もあり、イルスーカ侯爵領は他領地よりも豊な生活がおくれている。
 中央集権に絡んでいる貴族達は、イルスーカ侯爵領の経営が上手くいっていた事が気に入らなかったようで、度重なる暴言を吐かれた。
 彼らの土地は、やせ細っており村民は生きていけなくなり逃げ出してるようで税収が下がってると、お父様から聞いた事があった。
 彼らは、下がった税収をどうにかしようと高い税を民にかけてるらしい。
 その話を聞いた時に悪循環だと思った。

 そして、やはり私には魔法を行使する力はなかった。
 魔法の実習練習でも私は魔法を発動させる事はできなかった。
 貴族は魔法が使えて当たり前……それがアルネ王国の常識。
 それが出来ない私は、出来損ないの貴族と呼ばれていた。

 だから私は知識だけとは勉強をした。
 でもどんなに勉強をしても私は魔法が使えなかった。

 そして図書館に籠っていた事から、白い髪と赤い瞳の色から白髪の老婆と呼ばれていた。

 魔法師育成学校を卒業して、結婚適齢期に差し掛かっていたけど私は期待していなかった。
 魔法が使えない貴族として出来損ないで、老婆のような白い髪に赤い瞳の私なんて気持ち悪いのだろう。そんな私を娶ってくれる男性などいなかった。

 だから私は、それならばとお父様にお願いしてイルスーカ侯爵領内の騎士団に入隊させてもらった。少しでも領民の為に何かが出来ればと思ったから。

 それからは男に負けないように、必死に武器の扱い方や体の動かし方を反復し身につけていく。
 お父様やお母様にお姉さまは、私をとても心配していたようだけど、私のような欠陥品の貴族令嬢が嫁げる家なんてない。
 だから、お父様はお姉さまの事を気にしてくれればそれでいいから。
 だから私の事は放っておいてほしい。

 コンコンと扉を叩く音が昔の事を思い出していた私を現実に引き戻す。

「エメラダ様、町で不審な行動を取っている者がいた為、捕縛したと北詰め所より報告がありました」
 私は、フルフェイスのヘルメットを被りながら、椅子から立ち上がる。

「わかった。すぐに行く、馬を用意しておいてくれ」
 私は彼に告げる。
 するとすぐに廊下を走って去っていく音が耳に入ってくる。

「はあ……」
 私はため息をつきながら、先ほどまで自身が読んでいた恋愛物の小説を手にとり表紙を変えて鞄の中にしまう。
 いつか私の、この容姿を好きになってくれる人がいるのか。
 いてくれたら、この恋愛小説のように……ううん、それは高望みなのは分かっています。

 でも、それでも一度は殿方から言ってもらいたいものです。



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