【書籍化作品】無名の最強魔法師
冒険者ギルドの営業(後編)
飛翔中に、魔法により斬り裂かれたワイバーンは地面に落下し落下音を辺りに響かせる。
俺は後ろを振り返りながら「終わったぞ?」と宿屋入り口付近のカウンター席に座っているリネラスに伝える。
するとリネラスは宿屋から出てくると、ワイバーンを一目見た後。
「さすがユウマです! これで目的は達成ですね!」
――と、リネラスは、とても嬉しそうな表情で俺に話しかけてくると弾むような足取りでハインツに近づいていく。
リネラスが近づいてきた事に気がついたコーデル商会ハインツは肩を落としている。
「ま、まってくれ……護衛も失って荷馬車も積み荷もなくしたら私は……私は……商会長になんと弁明すればいいのか……」
「え? そんなの知りませんよ! 私は、約束して契約した通りにお支払いをして頂くだけですので! それとも……なんですか? お約束を破ると? そうなると、二度と冒険者ギルドに護衛を含む全ての依頼が出来なくなりますけど……それでもいいんですか? その方が商会長さんに怒られると思いますけど?」
ハインツの懇願を、リネラスは切って捨てている。
何と言うか、ひどいな……。
それ以外に、形容する言葉が見当たらない。
ハインツは、帆馬車から下りていく。
どうやら観念したようだな。
「それでは、ハインツさん。契約の通りに帆馬車と積み荷はすべて頂きます」
「やっ……やっぱり! ま、まってくれ! 全部、持っていかれたら本部の人間にどんな仕打ちをされるか分からないんだ!」
「そんな事、私の知った事ではありません。契約は契約ですので……」
そう言うと、リネラスは、契約書を高々と掲げると知らない言葉を紡ぐ。
すると帆馬車が消えハインツだけがその場に残った。
「はい、これで契約は完了しました。これからも『移動式冒険者ギルド宿屋:安心と信頼のリネラス店』のご利用をお願いします」
「もう2度と利用しねーよ!」
ハインツが両手を上げて叫んでいるが、リネラスと言えばどこ吹く風状態。
まったく……恨みを買っても知らないぞ?
「おつかれ」
「うん、初めての交渉だから疲れちゃた」
リネラスは俺に体を預けてくる。
なるほど、初めての交渉だからこそ手加減が出来なかったのか。
まぁ、それでも酷い交渉を見た。
「とりあえず、宿屋に戻って少し休むか?」
「うん!」
リネラスは俺の言葉に頷く。
そして俺とリネラスは宿屋の中に入る。
すると――。
「お、おれの財布が消えているぞ!? どうなっているんだ?」
突然、ハインツが叫び出した。
俺は、寄りかかっているリネラスに視線を向ける。
「リネラス……お前……」
「はい! 私はしっかりと言いましたよ? 帆馬車と積んである荷物すべてと。そこにはもちろん装備とかお金からお財布まですべて含まれているに決まっているじゃないですか? さすがに裸だとかわいそうなので洋服だけは残してあげました。フェンデイカの村までは、徒歩で4時間の距離ですし大丈夫ですよ。さて、休憩にしましょう。初めての交渉で喉が渇いてしまいました!」
俺はリネラスの言い分に額を抑えた。
これだと詐欺師と変わらないのではないのかと。
「なあ、大丈夫なのか? 恨みを買ったりして報復されないのか?」
「それは大丈夫です。きちんとした契約ですので! 冒険者ギルドに喧嘩を売ればどこのギルドも相手にしてくれなくなります。冒険者を雇用できないと言う事は、魔物からの素材も手に入らないという事になりますので大変な損失になりますから! ですから何の問題もありません」
相手の弱みにつけ込む手法とか……あくどいと言うか何と言うか。
本当にヤクザな商売だな。
――それから1時間ほど休憩した後、俺達はハインツから譲り受けた馬車に乗る。
 そして海の港町カレイドスコープへと旅立った。
俺は後ろを振り返りながら「終わったぞ?」と宿屋入り口付近のカウンター席に座っているリネラスに伝える。
するとリネラスは宿屋から出てくると、ワイバーンを一目見た後。
「さすがユウマです! これで目的は達成ですね!」
――と、リネラスは、とても嬉しそうな表情で俺に話しかけてくると弾むような足取りでハインツに近づいていく。
リネラスが近づいてきた事に気がついたコーデル商会ハインツは肩を落としている。
「ま、まってくれ……護衛も失って荷馬車も積み荷もなくしたら私は……私は……商会長になんと弁明すればいいのか……」
「え? そんなの知りませんよ! 私は、約束して契約した通りにお支払いをして頂くだけですので! それとも……なんですか? お約束を破ると? そうなると、二度と冒険者ギルドに護衛を含む全ての依頼が出来なくなりますけど……それでもいいんですか? その方が商会長さんに怒られると思いますけど?」
ハインツの懇願を、リネラスは切って捨てている。
何と言うか、ひどいな……。
それ以外に、形容する言葉が見当たらない。
ハインツは、帆馬車から下りていく。
どうやら観念したようだな。
「それでは、ハインツさん。契約の通りに帆馬車と積み荷はすべて頂きます」
「やっ……やっぱり! ま、まってくれ! 全部、持っていかれたら本部の人間にどんな仕打ちをされるか分からないんだ!」
「そんな事、私の知った事ではありません。契約は契約ですので……」
そう言うと、リネラスは、契約書を高々と掲げると知らない言葉を紡ぐ。
すると帆馬車が消えハインツだけがその場に残った。
「はい、これで契約は完了しました。これからも『移動式冒険者ギルド宿屋:安心と信頼のリネラス店』のご利用をお願いします」
「もう2度と利用しねーよ!」
ハインツが両手を上げて叫んでいるが、リネラスと言えばどこ吹く風状態。
まったく……恨みを買っても知らないぞ?
「おつかれ」
「うん、初めての交渉だから疲れちゃた」
リネラスは俺に体を預けてくる。
なるほど、初めての交渉だからこそ手加減が出来なかったのか。
まぁ、それでも酷い交渉を見た。
「とりあえず、宿屋に戻って少し休むか?」
「うん!」
リネラスは俺の言葉に頷く。
そして俺とリネラスは宿屋の中に入る。
すると――。
「お、おれの財布が消えているぞ!? どうなっているんだ?」
突然、ハインツが叫び出した。
俺は、寄りかかっているリネラスに視線を向ける。
「リネラス……お前……」
「はい! 私はしっかりと言いましたよ? 帆馬車と積んである荷物すべてと。そこにはもちろん装備とかお金からお財布まですべて含まれているに決まっているじゃないですか? さすがに裸だとかわいそうなので洋服だけは残してあげました。フェンデイカの村までは、徒歩で4時間の距離ですし大丈夫ですよ。さて、休憩にしましょう。初めての交渉で喉が渇いてしまいました!」
俺はリネラスの言い分に額を抑えた。
これだと詐欺師と変わらないのではないのかと。
「なあ、大丈夫なのか? 恨みを買ったりして報復されないのか?」
「それは大丈夫です。きちんとした契約ですので! 冒険者ギルドに喧嘩を売ればどこのギルドも相手にしてくれなくなります。冒険者を雇用できないと言う事は、魔物からの素材も手に入らないという事になりますので大変な損失になりますから! ですから何の問題もありません」
相手の弱みにつけ込む手法とか……あくどいと言うか何と言うか。
本当にヤクザな商売だな。
――それから1時間ほど休憩した後、俺達はハインツから譲り受けた馬車に乗る。
 そして海の港町カレイドスコープへと旅立った。
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