無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

コーデル商会

 いつものとおりクエスト完了の報告をする為に村の中を通っていると多くの人に声をかけられた。
 俺が植物プラントを倒してクエスト完了した場所は隣の町に続く街道だったそうだ。
 おかげで明日から街道を通れると言っていた。

 あとは俺が作った湖はすでに村では知らない人がいないらしい。
 まあ、あれだけの音だったからな。
 魔法で隠蔽もしていないのだから情報が漏れるのも仕方ないだろう。

「ユウマ君、これ食べな」

 屋台のおばさんが俺にリンゴを差し出してくる。
 俺はリンゴを受け取ると齧りながら冒険者ギルドに向かった。
 『冒険者が集う場所フェンデイカ支部』と看板に書かれている建物の両開きの扉を開けて中に入ると、冒険者ギルドには見慣れない男たちが何人もいた。

「あ、ユウマ。おかえりなさい」

 リネラスは、相変わらず砕けた口調で俺に話しかけてきた。
 もう少し公私混同を弁えた方がいいのではないだろうか?

 それよりも……男達はリネラスの言葉に反応して俺を見てきた。
 その目には俺を見極めようとしてくる意図が見え隠れしているように見える。

「リネラス、クエストが終わったから確認して欲しい」

 俺は冒険者ギルドカードを取り出してリネラスに渡す。
 リネラスは冒険者カードの記録を確認した後に、金貨の袋を手に取った。

「ユウマはすごいね。たった1日であの干上がった池を何とかしちゃうなんてね。壁のクエストが終わったらユウマはSランク冒険者だよ? そしたら私をもらって……「すこしいいか?」……むっ!?」

 リネラスの言葉遮り男達が俺に話しかけてきた。
 俺は男達の言葉を無視してリネラスと話す事にする。

「リネラス、お金は全部貯金で頼む」
「えっと……分かったわ」

 俺の言葉にリネラスは頷くと金貨の詰まった袋が消えた。
 ふむ、相変わらずどんな原理になっているかよく分からないな。
 これこそが本当の魔法だと俺は思ってしまうんだがなと思いながら、俺はリネラスのとの会話を途中で遮ってきた男を見る

「何かようか?」
「少し場所を移したい。ついてきてくれないか?」
「断る」

 どうして俺がそんな面倒な事をしなければならないのか?
 第一、ここで話せないってことはギルドの仕事を通さない仕事だろう?
 ギルドを通さないと言う事は面倒な事に巻き込まれたときにギルドが後ろ盾にならないと言う事を意味する。

「あの!ここでそういう勧誘じみたお話はやめてください! 申し込むなら冒険者ギルドを通じて……「うるさい!たった一人しかいない。何の力もない冒険者ギルドの職員が黙ってろ!」……」

 リネラスは男にどなられて俯いてしまう。
 まあ実際、男が言ったとおりユゼウ王国の冒険者ギルドは壊滅状態なのは事実なのだが。
 だが。今の男の発言は気にいらない。

「お前は俺を頼ろうとここに来たんだよな?」

 俺の雰囲気が変わった事に気がついたのか男はたじろぐ。

「そ、そうだが……」
「こいつら全員仲間なのか?」

 俺は冒険者ギルド内にいる8人の男達へ視線を向けながら話す。

「そうだ。全員護衛だがそれがどうした!」

 それがどうしただって?こいつらは何も分かってないな。

「お前らが今いる場所はどこだ? ここは冒険者ギルドの敷地内だぞ? なら依頼は冒険者ギルドを通して依頼するのが筋道だろう」
「だが、こいつらには何の力もな!?」

 俺が男の襟を掴んで持ち上げると男は小さく悲鳴を上げてきた。

「もう一度言うぞ?俺に仕事をして欲しいなら冒険者ギルドを通せ。まあ貴様らの依頼は受け付けんがな」
「……な、なぜだ?我々はコーデル商会の者だぞ? 国をまたいで商売をしている大商会だぞ? 伝手が出来るなら貴様にも悪い話ではないだろう? 死霊の森を抜けるのに力のある冒険者が必要なのだ。金なら払う」
「金の問題じゃないんだよ。お前らは、この国で商売をしていて冒険者ギルドがどんな立場に置かれているのか理解しているんだよな? ギルド職員って立場だけで命が危険に晒されているのに、たった一人になってまで冒険者ギルドを存続させているコイツに力がないだって?たしかにコイツは戦う力は無いかも知れないな。だがな、コイツは何年も誰かのために支えになるために無償で頑張ってきたんだ。自分の命が危険に晒されると分かっていてもな。それに引き換えお前らは、誰かの力を頼るだけか? 俺から見たらお前らの方がずっと弱く見えるぜ」

 俺は持ち上げていた男の体を、護衛達の方へ放りなげる。
 男達は、コーデル商会の人間を受け取ると腰から刃物を抜いてきた。

「なるほど……力で言い聞かせるつもりか?」

 俺が投げ飛ばした男が咳き込みながら俺を見てくる。

「よくもやってくれたな!コイツを痛い目にあわせろ!」

 俺は斬りかかられる前に男達に問いかける事にする。

「冒険者ギルド内で刃物を抜くのは100歩譲っていいとしよう。だが俺に刃物を向けるってことは殺されても文句が言えないという事なんだが理解しているんだろうな? 俺は手加減なんてしないぞ? 敵になった瞬間に貴様らは全員殺す。その覚悟があるのか? あるなら掛かってこい」

 俺の発言に一触即発の雰囲気が流れる。
 いつでも戦闘に入れるように俺は【身体強化】の魔法を発動させる。
 すると……。

「ハインツさん!やめてください。ユウマさんはAランク+の冒険者なんですよ!」

 リネラスの言葉で彼らの動きが止まった。

「な、なんだと?」

 ふむ、コーデル商会のこの小太りの中年はハインツと言うのか。
 ハインツはリネラスの言葉を聞いて俺とリネラスを交互に見ている。

「さっき、こやつが冒険者Bランク+だと言ったではないか!」
「言いましたけど先ほど、Sランクのクエスト終わらせてきましたからAランク+になりました」

 リネラスはシレッと言っているが……ふむ。
 俺は冒険者カードを見てみる。
 ふむ、たしかにAランク+と書かれているな。
 さすがSランクのクエストといった所か?

 そして……俺がAランクの冒険者だと気がついたハインツは逃げるように冒険者ギルドから逃げていった。

「ユウマさん。ありがとうございます」
「……勘違いするなよ? 怪しい仕事を引き受けたくないだけだ。リネラスの為ではないからな」
「はい!わかっています!」

 リネラスは笑顔を浮かべながら俺に話しかけてきた。


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