【書籍化作品】無名の最強魔法師
フェンデイカ村 最大の危機(ゼノンSide)
煌びやかな調度品が並べられており、およそ執務室とはかけ離れた部屋でネイルド公爵家当主エイゼン・フォン・ネイルドは怒りを押さえらずにいた。
「どういうことだと聞いている!」
エイゼンは、報告に来たマリウスの部下であるゼノンに自身が飲んでいたワインが入ったままの盃をなげつけた。
まだ銀製の盃はゼノンの額にあたり、ゼノンの額から血が流れ赤色の絨毯の汚していく。
「マリウスがたった一人の魔法師に殺されただと? 貴様らは何をしていた!200人以上もその場にいた兵士は飾りか? しかも手を出したら私を殺すだと? ふざけてるのか?たかが魔法師一人でどうにか出来ると思っておるのか!こちらには、怪力無双のラグルドに魔法師殺しのヴァルド、そして瞬殺の殺し屋ガルムが控えているのだぞ? この私がたかが魔法師一人に屈したなどと思われるなど屈辱の極みだ!」
「ですが、エイゼン様。ユウマと言う男は普通の魔法師ではありません。ここは慎重に事を運んだ方がよろしいかと思われます」
ゼノンの言葉にエイゼンは何を馬鹿な事と見下す。
そして畏まっていたゼノンの頭を踏みつける。
「何が慎重にことを運んだほうがいいだと? もうよい! 貴様は隊に戻って軍を纏めいつでも出陣できるようにしておけ。 残りの4魔将で我がネイルド公爵家をコケにしたユウマと言う男を殺してやろう!」
エイゼンは、執務室の扉を開けると部屋から出ていく。
その後を、ゼノンは追いかける。
「お待ちください! あの者は危険です。先ほどもご報告しましたが20人の騎士が一瞬で殺されたのです」
「それがどうした? なら公爵家の全軍1万5000の軍勢を持ってして攻めればいいではないか? 個人の武勇が、どれほど優れていようと古来より数に勝る事はない!」
エイゼンの言葉にゼノンは顔色を変えた。
個の武勇?あれが?
エイゼン様は勘違いしておられる。あれは……そんな生易しい物ではない。
ゼノンがエイゼンを如何にして思いとどまらせようと考えていると、ネイレド公爵家に仕えている一人の騎士が、走り寄ってくるとネイレド公爵当主エイゼンの前で片膝をつく。
「エイゼン様、ガムル様より重要なお話があるとの事です」
「なんだ?」
エイゼンは苛立ちを抑えようともせずに騎士に怒りの眼差しを向ける。
矛先が若い騎士に向かう所で青い髪をした片目の男が姿を現した。
「ネイルド様、火急に申したい事ができましてお伺いしました」
「ガルムか? どうかしたのか?」
現れた男の姿を見るなりエイゼンは少しだけ落ち着きを取りもどした。
「マリウスに続きまして、ヴァルドとラグルドまでユウマと言う男に返り討ちに会いました」
ガムルの言葉に室内が静寂に包まれる。
ゼノンはやはりと思う。
あれは、一人で何とか出来る存在ではない。
恐らく万全な状態でネイレド公爵家の戦力をぶつけても勝つことは難しかったはずだ。
「――そ、それは本当なのか?」
ゼノンの前に慌てふためき樽のような腹をしたエイゼンが後ろによろめくと椅子にその体を預けた。
「間違いありません。おそらくユウマと言う男、他国の冒険者ギルドの者だと思われます。おそらくは本部の冒険者ギルドの可能性も……」
「ばかな!? 冒険者ギルド本部が干渉してくるだと? 先の大戦でも中立であっただろうに!」
「わかりませんが、こちらが冒険者ギルドマスターを殺している事が露見した可能性があります。こうもSランク冒険者が返り討ちに合っている事を考えますとそれしか考えられません」
ガムルの言葉にエイゼンは歯軋りをする。
冒険者ギルド本部が保有しているSランク冒険者は、各国の冒険者ギルドに所属しているSランク冒険者10人分の力があるという。
「ガムル、もし本部のSランク冒険者ならば勝てるか?」
エイゼンの言葉に、ガムルは頷く。
「はい、公爵家の全兵力と寄り子である貴族家全ての兵力3万を当て消耗したところで私の瞬殺剣で首を刈れば問題ないかと」
ガルムの提案にエイゼン公爵は自己の保身を考えてしまう。
もし身を守る者が減ればユリーシャ派の抵抗軍に攻められる可能性もある。
「だ、だが……それでは私を守るものが……」
「そこに使えない男がいるではありませんか? ゼノン、貴様でも公爵様を守るくらいは出来るな?」
ゼノンは考える。
間違いなく、ユウマと言う男は冒険者ではない。
そして、あれと正面から戦って勝てるとは光景が思い浮かばない。
ならここは、頷いておいたほうがいい。
「はい、お任せください。それと一人だけですと警備に支障があります。先のマリウス様が連れていった200人の兵士は、この館の守備に専念させて頂けませんでしょうか?」
ゼノンは、部下だけでも助けたかった。
あれに挑んでは数の優位性など意味がないと理解出来てしまうからだ。
「よかろう。ゼノンよ、先ほどの話聞き届ける。私と公爵邸の警備を任せたぞ」
「はっ!この一命に代えましても……」
頭を下げたままゼノンはホッと一息つく。
これでまだ長生きできると……。
「それでは、私は軍編成を行いすぐにでも、ユウマと言う冒険者を始末してきます」
ガムルは部屋から出ていくとすぐに兵士を集めるために指示を出していく。
支配下にある貴族家から兵士を召集し軍を編成する。
目指す場所は、ネイルド公爵領北部に位置する人口1500人程度の村フェンデイカ。
村を守る壁すら存在しない村へ3万を超える大軍が進軍を開始した。
「どういうことだと聞いている!」
エイゼンは、報告に来たマリウスの部下であるゼノンに自身が飲んでいたワインが入ったままの盃をなげつけた。
まだ銀製の盃はゼノンの額にあたり、ゼノンの額から血が流れ赤色の絨毯の汚していく。
「マリウスがたった一人の魔法師に殺されただと? 貴様らは何をしていた!200人以上もその場にいた兵士は飾りか? しかも手を出したら私を殺すだと? ふざけてるのか?たかが魔法師一人でどうにか出来ると思っておるのか!こちらには、怪力無双のラグルドに魔法師殺しのヴァルド、そして瞬殺の殺し屋ガルムが控えているのだぞ? この私がたかが魔法師一人に屈したなどと思われるなど屈辱の極みだ!」
「ですが、エイゼン様。ユウマと言う男は普通の魔法師ではありません。ここは慎重に事を運んだ方がよろしいかと思われます」
ゼノンの言葉にエイゼンは何を馬鹿な事と見下す。
そして畏まっていたゼノンの頭を踏みつける。
「何が慎重にことを運んだほうがいいだと? もうよい! 貴様は隊に戻って軍を纏めいつでも出陣できるようにしておけ。 残りの4魔将で我がネイルド公爵家をコケにしたユウマと言う男を殺してやろう!」
エイゼンは、執務室の扉を開けると部屋から出ていく。
その後を、ゼノンは追いかける。
「お待ちください! あの者は危険です。先ほどもご報告しましたが20人の騎士が一瞬で殺されたのです」
「それがどうした? なら公爵家の全軍1万5000の軍勢を持ってして攻めればいいではないか? 個人の武勇が、どれほど優れていようと古来より数に勝る事はない!」
エイゼンの言葉にゼノンは顔色を変えた。
個の武勇?あれが?
エイゼン様は勘違いしておられる。あれは……そんな生易しい物ではない。
ゼノンがエイゼンを如何にして思いとどまらせようと考えていると、ネイレド公爵家に仕えている一人の騎士が、走り寄ってくるとネイレド公爵当主エイゼンの前で片膝をつく。
「エイゼン様、ガムル様より重要なお話があるとの事です」
「なんだ?」
エイゼンは苛立ちを抑えようともせずに騎士に怒りの眼差しを向ける。
矛先が若い騎士に向かう所で青い髪をした片目の男が姿を現した。
「ネイルド様、火急に申したい事ができましてお伺いしました」
「ガルムか? どうかしたのか?」
現れた男の姿を見るなりエイゼンは少しだけ落ち着きを取りもどした。
「マリウスに続きまして、ヴァルドとラグルドまでユウマと言う男に返り討ちに会いました」
ガムルの言葉に室内が静寂に包まれる。
ゼノンはやはりと思う。
あれは、一人で何とか出来る存在ではない。
恐らく万全な状態でネイレド公爵家の戦力をぶつけても勝つことは難しかったはずだ。
「――そ、それは本当なのか?」
ゼノンの前に慌てふためき樽のような腹をしたエイゼンが後ろによろめくと椅子にその体を預けた。
「間違いありません。おそらくユウマと言う男、他国の冒険者ギルドの者だと思われます。おそらくは本部の冒険者ギルドの可能性も……」
「ばかな!? 冒険者ギルド本部が干渉してくるだと? 先の大戦でも中立であっただろうに!」
「わかりませんが、こちらが冒険者ギルドマスターを殺している事が露見した可能性があります。こうもSランク冒険者が返り討ちに合っている事を考えますとそれしか考えられません」
ガムルの言葉にエイゼンは歯軋りをする。
冒険者ギルド本部が保有しているSランク冒険者は、各国の冒険者ギルドに所属しているSランク冒険者10人分の力があるという。
「ガムル、もし本部のSランク冒険者ならば勝てるか?」
エイゼンの言葉に、ガムルは頷く。
「はい、公爵家の全兵力と寄り子である貴族家全ての兵力3万を当て消耗したところで私の瞬殺剣で首を刈れば問題ないかと」
ガルムの提案にエイゼン公爵は自己の保身を考えてしまう。
もし身を守る者が減ればユリーシャ派の抵抗軍に攻められる可能性もある。
「だ、だが……それでは私を守るものが……」
「そこに使えない男がいるではありませんか? ゼノン、貴様でも公爵様を守るくらいは出来るな?」
ゼノンは考える。
間違いなく、ユウマと言う男は冒険者ではない。
そして、あれと正面から戦って勝てるとは光景が思い浮かばない。
ならここは、頷いておいたほうがいい。
「はい、お任せください。それと一人だけですと警備に支障があります。先のマリウス様が連れていった200人の兵士は、この館の守備に専念させて頂けませんでしょうか?」
ゼノンは、部下だけでも助けたかった。
あれに挑んでは数の優位性など意味がないと理解出来てしまうからだ。
「よかろう。ゼノンよ、先ほどの話聞き届ける。私と公爵邸の警備を任せたぞ」
「はっ!この一命に代えましても……」
頭を下げたままゼノンはホッと一息つく。
これでまだ長生きできると……。
「それでは、私は軍編成を行いすぐにでも、ユウマと言う冒険者を始末してきます」
ガムルは部屋から出ていくとすぐに兵士を集めるために指示を出していく。
支配下にある貴族家から兵士を召集し軍を編成する。
目指す場所は、ネイルド公爵領北部に位置する人口1500人程度の村フェンデイカ。
村を守る壁すら存在しない村へ3万を超える大軍が進軍を開始した。
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