無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

湖上の戦い!魔王ユウマ VS 怪力無双のラグルド

 ここ数日間、俺は体調が悪かった。
 魔力がずっと抜けていく感じが付きまとっていたのだ。
 だらだらと村の中を回っては食事をして宿に戻って寝ては、リネラスの襲撃を受けては追い返している 毎日が続き体調が戻ったのは5日が経過してからであった。

 そして――現在、俺は村の外の池に来ていた。

「ふむ……やっぱり依頼どおりに、ほとんど水がないな……」

 これでは2週間で枯れてしまうだろう。
 仕方ないな……すこし池を拡張してから水を作り出す用意をするとしよう。
 人口が1500人もいるのだ。
 それに相応しい湖にすればいいな。
 俺は、まず地面に手をつく。
 そして、地殻操作のために頭の中で巨大なくぼ地を想像する。
 貯水量は今の50倍くらいにしておくか。

 そして、【地殻練成】の魔法を発動させる。

 発動した魔法によりあっという間に、大地の構成物質が大気に還元されていき巨大な大穴が出来上がった。
 次に発動させる魔法は、雨だけだと枯渇する可能性があるので、地下水を取り入れられるように魔法を発動させる。
 最後に、湧き水だけだと水が貯まるのに時間がかかるので周囲の元素を水素分子に変換させ結合させる。
 そして空から膨大な水が大穴の中へ流れ込んでいく。

 これで大体の作業は終わりだな。
 降り注ぐ水量が多すぎるせいで音が酷い。
 これだと誰かが落ちても分からないが、まぁ俺が見ていた限り特に何もいなかったからな!問題ないだろう。
 さすがに大きく穴を作りすぎたせいで水が貯まるまで、まだ時間がかかりそうだ。
 朝飯でも食ってから、またあとで見にくるとしよう。
 俺は町に向かっていった。



 俺の名前は怪力無双のラグルドだ。
 初めて冒険者になった日、俺は絶望した。
 俺には武器を扱う才能がまったくなかったのだ。
 だが、俺はそれでも諦めたくはなかった。
 いつか最強の男になるために力を手に入れる事、それだけを目標に生きてきた。
 ある日、俺は奇妙な遺跡を発見する。
 風化状態から見てかなり昔の遺跡だと言うのは一目で分かった。
 そしてそこで薬を手に入れた。
 冒険者ギルドで鑑定してもらった所、それは肉体を強化する薬だと言うことであった。
 そう肉体を強化するための薬。
 武器が使えるやつらにとってはいらないのかもしれない。
 だが俺にとっては喉から手が出る程、欲しいものであった。

 そして……俺はそれを飲み変わった。
 どんなに歩いても走っても疲れない体。
 ワイルドベアーと呼ばれる熊と正面から組み合える強靭な肉体。

 次々と魔物を殺しては俺は自分の力を確信していく。
 これは、武器を扱う才能が無い俺に与えられた物だと。

 そして俺はとうとう、ワイバーンを長時間の戦いを経て首を折り殺した。
 俺は念願のSランク冒険者になったのだ。
 誰もが俺を羨望の眼差しで見てくる。
 誰もが媚び諂ってくる。
 そう、俺の時代がようやく幕を開けたのだ。

 そんな時、冒険者Sランク全員に国に貢献をしている君たちに報償を与えたいと王城への招待状が届いた。
 王族からの招待状、農民出身の俺にとっては別の世界の話だ。
 だが今の俺には大して魅力的には思えなかった。
 だが冒険者ギルドに所属してる以上、どうの言葉には逆らえない。
 ギルドマスターに頼まれ仕方なく、王城へ向かった。

 そこでエルンペイア王と会談した。
 食事を振舞われた後、俺達にエルンペイア王は言った。

『君たちは今のこの世界に不満を持たないか?優れた者が劣った人種に扱われる事に苛立ちを感じた事はないか?たしかに君たちはSランク冒険者だ。だが、それだけに過ぎない。所詮はギルドの駒に過ぎない。だが、どうだろう?冒険者ギルドを廃し君たちの手で新たなる時代を作ってみては?もちろん私も力を貸そう。この世は無駄な人間が多すぎる。本当に優れた人間だけに統治されるべきなのだ』
 と、誰もが感銘を受けた。
 そうだ、俺たちはSランク冒険者には成れたが俺たちが使われる立場だった。
 なら今度は俺たちが使う立場になるなら?
 いつもは用心深い俺にもその言葉が素晴らしいものだと理解できた。

 そして俺達はギルドマスターを襲撃し殺した。
 元Sランク冒険者だろうが、現役の俺様の敵ではなかった。
 それから理想の国を、俺達の理想を作るために殺して殺して殺した。

 魔物を殺すよりずっと面白い。
 泣き叫ぶ、命乞いをする、そんなやつらの感情が表情がとても堪らない。
 粛清を始めてから3年が経過した日、ユリーシャ姫が逃げたと話を聞いたが俺にはそんな事はどうでもよかった。
 強い相手と戦ってみたい。
 それだけが俺の渇望であった。

 そんな折、マリウスを殺した奴がいると聞いた時に俺は驚いた。
 だがマリウスはSランクと言っても俺達の中では最弱だ。まだ俺様が動くに値する獲物じゃない。
 そして、ヴァルドまでもが敗れた。
 正面から戦うならヴァルドは弱いが、奇襲を得意とする奴が負けるということは、そこそこ強いという事だ。
 俺は、ガルムにいつか殺す予定のネイルド公爵の護衛を任せフェンデイカに向かった。

 そして、部隊の者に調べさせた結果マリウスを殺したというのは黒髪のガキだった。
 何でも魔方陣を使わずに魔法を使う奴らしいが、そんなのはありえない。
 話半分に聞いておいたほうがいい。
 数日間、男の様子を見ていたが動きが素人丸出しで到底強いとは思えない。俺は失望した。
 この程度の雑魚相手なら正面から名乗る必要もないだろう。
 冒険者ギルド時代に遺跡で手に入れたあらゆる探索魔法を無効化する隠蔽ハイディングマントで近づき首を追ってやろう。
 何もできずに死ぬ事を後悔するがいい。

 俺は、ユウマというガキがフェンデイカの水源である池に到着したのを見計らい跳躍する。
 距離は300メートルほどだが、3回の跳躍で十分だろう。
 そして地面を踏みしめようとしたところで足元の地面が消えていた。

「……あ?」

 俺はそのまま何十メートルも地下に落下していく。
 だが鍛え抜かれた俺の肉体がこの程度で傷つくわけがない!
 壁を這い登り奴を殺してやがぼぼぼぼぼぼぼぼ。
 息が……息ができない。
 なんだ?この水圧は?奴の魔法なのか?水圧で体中が切り刻まれていく。
 くそが!まさか?奴はこっちの動きを全て察知していた上で魔法を組んでいたと言うのか?

 こちらが観察していたように奴もこちらを観察していた?
 なるほど、ヴァルドの奴もやつの策略に嵌められたのか……。

 まさか…奴の、この数日間見てきた行動は俺を油断させる演技だったとはな。 
 敵ながらやるではないか?
 この私を倒すとは……。


 朝食を食べて戻ってきた俺を待っていたのは巨大な湖であった。
 思ったより早く湖が出来たからなのか川が形成されつつある。
 俺は、すぐに魔法を停止させた。
 すると上空から降り注いでいた水の滝が消滅する。

 俺は村に被害が出る前になんとか出来てよかったと溜息をついた。
 これで村に被害が出ていたら大変な事になる所だった。
 だが、これで依頼は達成だな。

 膨大な水を湛える巨大な湖を見て俺は頷く。
 遠くでは、お腹を満腹にさせた巨大な鳥が羽ばたいているのが見えた。

「さて、冒険者ギルドに報告しにいくかな」

 俺は、一人呟くとその場を後にした。


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