無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

暗躍する死神四魔将

 ネイルド公爵邸の地下に存在する一室で男達は談笑していた。
 部屋内の空気は、淀んでおり締め切られている事もあり空気の流れがない。
 その事がより一掃、室内の空気を悪くしていた。
 ただ、それには理由があり、この部屋は特別な事に使うために作られた部屋。

 部屋の中は、壁も天井も床も全てが石材で出来ており全てに魔法陣が刻み込まれている。

 この魔法陣は、外部に言葉を通さない防音魔法の意味がある。
 そして、室内に蝋燭が揺らめく中、男達は話を始めた。

「ユリーシャ姫はいまだに見つからないのか?」

 口火を切ったのはガムルと呼ばれているであった。
 ガムルの言葉に一人の男が……ヴァルドが頷く。

「ああ、王都では少しずつ噂になっている。エルンペイア様を討伐するために、隣国のアルネ王国に使者を出すために王宮から逃げ出しとな。まぁ……噂をしたものは、エルンペイア様の近衛兵連中が殺しているらしい。ただ、その事でより一層真実味を帯びている感じだな」

 ヴァルドの話を聞いたガムルが深く溜息をつくと落胆したかのような声色で言葉を紡いだ。 

「おろかな……放置しておけばいいものを。これだから近衛兵連中は口だけの貴族だと言われるのだ」
「そういえば……マリウスの奴がフェンデイカで奴隷狩りをしている時に、ユリーシャ姫に似た奴を見つけたと声高々に高級なマジックアイテムを使ってネイルド様に報告してきたらしいぞ?」
「……」

 ラグルドは2人の話を聞きながら寡黙に両腕を組んで二人を見るだけであった。

 彼らをユゼウ王国の民は恐怖を込めてこう呼ぶ。
 最強の死神四魔将と……。
 怪力無双のラグルド、残虐マリウス、魔法師殺しのヴァルド、瞬殺の殺し屋ガムル。

 どれもが元はSランクの冒険者であり、誰もが一騎当千の能力を持つ。
 それぞれがネイルド公爵家直属の四騎士団を率いており、周辺の貴族に絶大な影響力を持っており、ネレイド公爵家を支えている。

 そんな彼らの地盤を支えるのは多くの民の血であり奴隷でもある。
 ここネレイド公爵領は、国王が代替わりしてから各国で禁止とされていた奴隷産業を作り上げユゼウ王 国内でも屈指の奴隷を産出するまでに至っている。
 国王エルンペイアとも繋がりが深く国の闇の部分をも担っている。

「それにしても見たか?ギルド職員の顔。自分たちが殺されないと思って高をくくってやがって殺される瞬間に、『力で得た物は力でいつかは踏みにじられるぞ!』とか言ってやがったんだぞ?」

「ああ、あれは傑作だったな。弱者の言い分だ、狩る側の我々にとって意味を成さないのにな」

 男は笑いながら杯のワインを飲み干す。

「弱いは悪だ。殺されるほうが悪い」

 瞬殺の殺し屋ガルムが小さく呟くとそれに ラグルドとヴァルドが頷く。
 この戦乱の時代、力が弱い者が殺されて何が悪いのか。
 力が弱い者が殺され奪われるのは当たり前。
 それが分かってない愚民が多すぎる。
 自分達は、最強の元Sランク冒険者であり、エルンペイア王やネレイド公爵家の後ろ盾もある。

 国の指示に従わない冒険者ギルド。
 巨大な組織であったがもはや我々の敵ではない。
 逆らう者は皆殺し、そして女子供は奴隷として売り飛ばす。

 先代の国王の時には出来なかった!力こそが正義!それがエルンペイア王の治世なら行う事が出来る。
 むしろそれは推奨すらされている。

「あとは、ユリーシャ姫を始末すれば面白おかしく暮らせるな」

 男達が笑いかけたところで、軽い何かが割れる音がする。
 男達は慌てて自分達の指を見た。
 すると指に嵌まっていた3つの指輪の内、一つ粉々に砕けた。
 赤い血の宝石がついた指輪は砂となって消えていく。

「おい、これは……」

 怪力無双のラグルドは、指輪が砕けたのを見て魔法師殺しのヴァルドへ視線を向ける。

「これはマリウスが殺されたな……」

 魔術師殺しのヴァルドは信じられない表情で語る。
 マリウスはつねに全力で相手を仕留める。
 どんなに相手が弱くとも過剰と思われる戦力を投入し禍根を残さず女子供までも必要なら殺す。
 そのマリウスが殺されるとは想像もつかない。
 ユリーシャ派にそれだけの力があるとも思えない。 

「ふん。所詮、やつは我らが四魔将の中では最弱。策略だけで、のし上がった奴に過ぎない。」
「た、たしかに……なら我らに抵抗する事がどれだけ無駄かを分からせる必要があるな?」

 ガムルの言葉を肯定的に捉えたラグルドは好戦的な笑みを浮かべながら話す。
 マリウスが殺された事それは即ちそれだけ強い奴がいると言う事だろう。
 なら熊ですら絞め殺す力を持つ俺様が行かなくてどうするのか?

「ひさしぶりに骨のある奴と戦えそうだな」

 瞬殺の殺し屋ガルムが席を立つとランプの光が揺れる。

「おい、ガルムさんよ? 俺の獲物だぜ?俺の豪腕で圧死させてやるよ。お前はネイレド公爵様の警護でもしていた方がいいんじゃないのか?」
「ふん、貴様のような筋肉と一緒にするな。殺しには美学が必要だ、すぐに殺したらつまらないだろう? 少しづつ肉をそぎ落とし恐怖というスパイスと絶叫と言う戦慄を奏でてこそ美学と言える」

 自己に陶酔するように揚々と語るガルムを見ながらヴァルドも話に加わる。

「マリウスは300人近い兵隊をつねに連れていたはずだ。ユリーシャ姫派でない可能性を考えるなら相手は少数精鋭の可能性が高い。もしかしたら本部ギルドの高ランク冒険者チームかもしれない。ここは一度、隠蔽の特技を持つこの私が見てきた方がいいだろう。それと魔法師であったのなら始末しておこう」

 ヴァルドの言葉に、ラグルドもガルムも一理はあると頷く。
 気配遮断の特技を持ち、相手が使う魔法陣を瞬時に解析し発動するよりも前に、自分の魔法を完成させカウンターとして返し相手を殺す技量を持つネレイド公爵領Sランク冒険者であり最強の魔法師殺しの異名すら持つ男ヴァルド。
 その異名は伊達ではなく、今まで99人の魔法師を殺してきた実績もある。

「私には簡単な仕事だと思うがちょうどキリがいいからな。悪いが私に今回は譲ってもらうぞ?丁度100人目の生贄が欲しかった所だ」

「ちっ! 仕方ねーな。そいつをどうやって殺したくらいは報告しろよ? あとマリウスの野郎が奴隷狩りに向かっていた村、フェンディカって言ったな? 国内の反抗勢力の見せしめとして皆殺し決定だぞ?」

 ラグルドの言葉に……。

「ふん。たかが人口1500人程度の村だろ?断る必要すらない。力の弱い奴は淘汰されて当然だ」
「分かっているさ、子供以外は全員皆殺しにして魔法の実験にも使わせてもらう」

 ―――さあ、狩りの時間だ。 


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