無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

狩猟無双

 豊作ということもあり、カークスの発案により夜から村で収穫祭をすることになった。
 そして、収穫祭の食料調達のために、俺は村の連中と共に山の中を走りまわっている。

「ユウマ!本当にこっちでいいのかい?」

 パーティを組んでいる一人が話しかけてくるが俺は【探索】魔法を発動してる事もあり無言で山の中を走る。
 一人の方が遥かに効率が上がるんだが、おそらく俺の見張りを含んでいるのだろう。
 カークスに無理矢理押し付けられた。
 使える魔法が制限される事が本当に面倒この上ない。
 パーティ構成は、ベンウという男を筆頭として……シリカとアモラという女性。
 そしてと俺を含めた計4名だ。

「ああ、間違いない」

 ベンウの問いかけに答えながら、目の前に出てきたウサギの耳を掴みパーティメンバーに投げて渡す。
 少し大ぶりの獲物は誘導して【風】の魔法で強化した矢で、不信に思われない強さで放ちし止める。
 それにしても小ぶりの獲物しかいないな……。
 アライ村にいたときは、3メートル近くのイノシシや5メートルを超す熊とか出てきた。
 それが、熊はいないしイノシシも1メートル程度とこぶりばかりだ。
 後ろではベンウが、俺が狩猟した大量の獲物を死にそうな表情で引き摺って追ってくる。

「そろそろ戻るか……」

 さすがに、これ以上はベンウでは持ちきれないだろう。 
 あまり持たせてもあれだしな。

「それにしてもユウマって珍しい色の髪と瞳の色をしているよね?」
「そうか?」

 シリカが俺の髪を見ながら疑問を呈してくる。
 まぁ、たしかにと思ってしまう。
 生まれて15年間経っているが、俺のような黒髪黒目の人間を一度も見たことないからな。
 ただ、まぁ……金髪碧眼はわかる、
 だが赤や青と言った髪色を持つ奴がいるからな。
 俺は、そいつらを見た時、こいつらの遺伝子どうなっているんだ?と何度も心の中で突っ込みを入れていた。

「うん、まるで聖書に書かれている大陸に最初にきた聖女様と同じだなって思ったの」

 聖女ねぇ……たしか、ウラヌス十字軍を派遣した奴も聖女と言っていたな。
 何か繋がりがあるんだろうか?
 まぁ深く考えても仕方ないな。

「それで、何かあるのか?」
「ううん、少し気になっただけなの」

 シリカの話を聞きながら俺は、借りた弓を引き絞りながら矢に【空気抵抗軽減】【加速】と【螺旋】の3つの魔法を発動し付与し矢を放つ。
 放たれた矢は一直線にイノシシの脳天を貫き一撃で仕留めた。

「こんな木の鏃でイノシシの脳天貫くとかユウマはすげーな! それと、これまで一緒に持って帰れないぞ?」
「イノシシは俺が持っていくから帰ろう」

 俺の言葉に、「そうだね、森の中で暗くなったら危険だし帰りましょう」と、アモラさんが同意してきた。

 そして日が暮れるまでには村に戻ることができた。
 仕留めた獲物はほとんど小ぶりな物ばかりだったが、パーティメンバーは大猟と喜んでいたのだから良しとしよう。
 村に踏み入れると収穫はすでに終わっており、あれほど実っていた麦穂は全て刈り取られていた。
 俺たちが戻ってきた事に気がついたエルスが近づいてきた。

「ユウマ! そっちの収穫はどうなって……すごっ!?」

 エルスは、俺達が狩猟してきた獲物を見て驚いている。

「俺の実力だな!」
「あなたは何もしてないでしょ!」

 ベンウの言葉にシリカが突っ込みを入れている。
 俺は二人の言葉を聞きながらカークスの方へ視線を向ける。
 先ほどからずっと俺に視線を向けて来ていると言う事は用事があるのだろう。
 俺はカークスに近づく。

「俺に何かようですか?」
「ユウマを借りていくぞ?」

 カークスはそれだけ言うと俺の手を取り歩き出した。
 なるほどな……これは、ちょっと困ったな。
しばらくカークスと歩いていると村の外れまでに着いた。
 ここまで来れば、カークスに直接的に文句を言っても問題はないだろう。

「俺は女性が好きなんです。男同士とか、そう言った気持ちはないのでやめてもらえますか?」

 俺の言葉を聞いたカークスが顔を赤く染めていく。
 図星だったようだな。
 まったく……困ったやつだ。

「違う! 俺は断じてそんな事を考えてはいない! 俺が好きなのはエルスだけだ!」
「ほう? 自分の性癖が受け入れられなかったからと言ってエルスが好きという嘘で塗り固めようとしてくるなんて困ったものだな」

 まぁ、俺は男同士とそういう関係になるのはごめんこうむるが、人の性癖に関して否定はしないし肯定もしない。
だから俺は、彼の肩に手を乗せながらやさしく語りかける。

「大丈夫だ。誰にも話したりはしない、人間そう言った性癖の一つや二つは三つや10個くらいあるもんだ。俺は受け入れられないが! いつかは、お前の性癖を理解してくれる良き仲間ができるはずだ」

 俺の言葉を聞いていたカークスは肩を振るわせ始めた。
 そうか……男泣きってやつか。
 まったく、仕方がないやつだな。
 分かっているさ、お前も苦労したんだろうな。
 お前みたいな奴とは友達にはなりたくないが理解は示してやる、だから安心しろ。
 俺は何度もカークスの肩を叩いて慰めていると、あろう事かカークスは腰からブロードソードを引き抜いた。
 なるほどな……自分の性癖をばらされたくない。
 つまり証拠隠滅のために俺を殺そうってことか?
 まったくとんでもない奴だ。

「おい!なぜ逃げる!?」
「貴様の性癖、この俺がエルス達にバラしてやろう」

 先に手を出してきたのはカークスから。
 俺が理解を示してやったというのに、困った奴だ。
 お前には、社会的な死を与えてやろう。

「おい!やめろ!」
「やめろと言われて止める奴はいない!」

 俺は【身体強化】の魔法を使い移動速度を水増しする。
 カークスは必死な形相で追いかけてくるが俺に追いつける訳もないのに御苦労なことだ。



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