【書籍化作品】無名の最強魔法師
進撃のアリア
私は、お兄ちゃんがあまり好きじゃなかった。
どこか掴みどころが無くて、無邪気なところが嫌いだった。
ある日のこと……。
お母さんが、『お兄ちゃんは?』と聞いてきた。
お兄ちゃんは、お母さんが止めるのも聞かずに森によく遊びによく行っていた。
何でも数年前までは、ここは魔物の大群が連日押し寄せてくる危険な所だったらしい。
だからお母さんは、お兄ちゃんに何度も危険だから行ったら駄目と言っていた。
でもお兄ちゃんは、お母さんの言う事を聞かずに森の外に遊びに行っては、ワイルドボアやレッドボアって魔物を村の中まで連れてきていた。
そのたびに村の皆で総出で魔物を討伐していたのを私は小さい頃見た。
そんな馬鹿な事ばかりしてるお兄ちゃんを見て私は思った。
どうして静かにしていられないのだろう?
どうしてあんなに無邪気なんだろう?
どうして皆はお兄ちゃんを嫌いにならないんだろう?
どうして……お兄ちゃんは私を見てくれないんだろう?
「知らない!お兄ちゃんなんて知らない!どうしてお母さんはお兄ちゃんに甘いの?もっときちんと叱らないとだめだよ!」
私は普段から思っていたことを口にした。
お母さんの返答は、『男の子ってそういうものだから』だった。
分からない。
分からないよ。
私を見てくれないお兄ちゃんなんて大嫌い!
私はずっとずっとお兄ちゃんが嫌いだった。
私が5歳の時、友達と二人で村の南西にある川まで水浴びに行った事があった。
その時、友達の女の子が悲鳴をあげながら走って近づいてきた。
後ろを見ると、そこには体長10メートル近い灰色のワイバーンいて空を滑るようにして私たちに近づいてきた。
私たちはとっさに座る。
ワイバーンは私たちの頭の上を通過したけど、遅れてやってきた風で身動きが取れない。
風が止んだ時に立ち上がろうとしたけど腰が抜けて立てなかった。
一緒に遊んでいた友達を見ると友達は一心不乱に村へ走って逃げていく。
大声で叫んでも友達は振り返ってもくれない。
ワイバーンが地面に降りゆっくりと私に近づいてくる。
少しづつ迫ってくるその巨体に私は恐怖を感じた。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
でも奇跡なんか起きない。
ワイバーンが大きな口をあけて私の飲み込もうとした時だった。
「汚ねえ手で妹に触るんじゃねええええ」
声が聞こえたと同時にワイバーンが口を明けたまま吹き飛んだ。
そう文字通り吹き飛んでいった。
10メートルはある巨体が地面の上を転がりながら何本も木々を圧し折って止まる。
起きた事は理解できなかった。
ワイバーンを蹴りだけで吹き飛ばした事を。
お兄ちゃんがどうしてここにいるかという事を。
お兄ちゃんはがどうしてこんなに怒っているのかという事を。
「大丈夫だったか?」
お兄ちゃんは私の頭の上に手を置いてきた。
その手は小さかったけど何故かとっても安心した。
「すぐに片付けてくる。だから待っていろ」
お兄ちゃんが私に背中を見せた後、ワイバーンに近づいていく。
吹き飛ばされたワイバーンは、食事の途中を邪魔されたのか怒りくるいながらお兄ちゃんに襲い掛かった。
そしてワイバーンはお兄ちゃんに粉々に破壊された。
舞い散る骨に臓物、降り落ちる血に私は、お兄ちゃんの凄さを感じた。
「かっこいい……」
私のお兄ちゃんは、すごかった。
「という事があったんですよスラちゃん、えへへへっ」
私は脅して契約を結んだスライムにお兄ちゃんを好きになったエピソードと、カッコイイ出来事を纏めたお兄ちゃん列伝第一話を話した。
もちろんお兄ちゃん列伝は9800話まである。
毎日話しをしても20年以上は語り聞かせられる大ベストセラーだ。
「(もう3周目なんだが……)」
スラちゃんが困ったような意識を飛ばしてきます。
もう分かってないですね!
お兄ちゃん列伝は現在も更新中で、一日10話づつ増えているのですよ?
一日24時間毎日、お兄ちゃん列伝を聞いて暗記できるくらいじゃないとお兄ちゃんが大好きな妹としての使い魔は勤まらないのです。
「大丈夫です。スラちゃんがきちんとお兄ちゃんの凄さが理解できるまで毎日教えてあげますから、安心してください。それにスラちゃんがお兄ちゃんに殺される所を、私の命令を聞くって約束で助けたんですからきちんと仕事してくださいね」
「(……)」
「さて、それではお兄ちゃんも村を出たことですし私たちもお兄ちゃんの後を追うとしましょう!」
「(まて!いいのか?ここはお前の生まれた村だろう?愛着とかそういうのはないのか?さっきも教えただろう?ここの村はこれから大変になると)」
「え?何を言ってるんですか?お兄ちゃんが居ないのに、こんな村に価値なんてあるわけないじゃないですか?きちんとお兄ちゃん列伝を聞いてましたか?」
どうもスラちゃんは私の使い魔としての自覚が足りないようです。
私は、正論を説いてるスラちゃんにきちんと伝えるにする。
「いいですか?スラちゃんがどんなに正論を言ったとしても、それは余所のお家の話なんです。余所は余所なんです。余所の常識を家庭内に持ち込むのは良くないことなのです。分かりましたか?」
「(う、うむ。それなら我が眷属を少し多めに村を守る為に…じゃなくてユウマが戻ってきた時のために残していっていいだろうか?)」
お兄ちゃんのためですか……。
少しはスラちゃんも理解してきてくれたようですね。
「仕方ありませんね、どのくらいかかりますか?」
「(5日ほどだな)」
スラちゃんはいつもマージンを取る癖があります。
つまりもう少し早くできるかも知れません。
「分かりました。3日でお願いしますね」
「(!?)」
さて、お兄ちゃんを追いかける旅に出るとしましょう。
どこか掴みどころが無くて、無邪気なところが嫌いだった。
ある日のこと……。
お母さんが、『お兄ちゃんは?』と聞いてきた。
お兄ちゃんは、お母さんが止めるのも聞かずに森によく遊びによく行っていた。
何でも数年前までは、ここは魔物の大群が連日押し寄せてくる危険な所だったらしい。
だからお母さんは、お兄ちゃんに何度も危険だから行ったら駄目と言っていた。
でもお兄ちゃんは、お母さんの言う事を聞かずに森の外に遊びに行っては、ワイルドボアやレッドボアって魔物を村の中まで連れてきていた。
そのたびに村の皆で総出で魔物を討伐していたのを私は小さい頃見た。
そんな馬鹿な事ばかりしてるお兄ちゃんを見て私は思った。
どうして静かにしていられないのだろう?
どうしてあんなに無邪気なんだろう?
どうして皆はお兄ちゃんを嫌いにならないんだろう?
どうして……お兄ちゃんは私を見てくれないんだろう?
「知らない!お兄ちゃんなんて知らない!どうしてお母さんはお兄ちゃんに甘いの?もっときちんと叱らないとだめだよ!」
私は普段から思っていたことを口にした。
お母さんの返答は、『男の子ってそういうものだから』だった。
分からない。
分からないよ。
私を見てくれないお兄ちゃんなんて大嫌い!
私はずっとずっとお兄ちゃんが嫌いだった。
私が5歳の時、友達と二人で村の南西にある川まで水浴びに行った事があった。
その時、友達の女の子が悲鳴をあげながら走って近づいてきた。
後ろを見ると、そこには体長10メートル近い灰色のワイバーンいて空を滑るようにして私たちに近づいてきた。
私たちはとっさに座る。
ワイバーンは私たちの頭の上を通過したけど、遅れてやってきた風で身動きが取れない。
風が止んだ時に立ち上がろうとしたけど腰が抜けて立てなかった。
一緒に遊んでいた友達を見ると友達は一心不乱に村へ走って逃げていく。
大声で叫んでも友達は振り返ってもくれない。
ワイバーンが地面に降りゆっくりと私に近づいてくる。
少しづつ迫ってくるその巨体に私は恐怖を感じた。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
でも奇跡なんか起きない。
ワイバーンが大きな口をあけて私の飲み込もうとした時だった。
「汚ねえ手で妹に触るんじゃねええええ」
声が聞こえたと同時にワイバーンが口を明けたまま吹き飛んだ。
そう文字通り吹き飛んでいった。
10メートルはある巨体が地面の上を転がりながら何本も木々を圧し折って止まる。
起きた事は理解できなかった。
ワイバーンを蹴りだけで吹き飛ばした事を。
お兄ちゃんがどうしてここにいるかという事を。
お兄ちゃんはがどうしてこんなに怒っているのかという事を。
「大丈夫だったか?」
お兄ちゃんは私の頭の上に手を置いてきた。
その手は小さかったけど何故かとっても安心した。
「すぐに片付けてくる。だから待っていろ」
お兄ちゃんが私に背中を見せた後、ワイバーンに近づいていく。
吹き飛ばされたワイバーンは、食事の途中を邪魔されたのか怒りくるいながらお兄ちゃんに襲い掛かった。
そしてワイバーンはお兄ちゃんに粉々に破壊された。
舞い散る骨に臓物、降り落ちる血に私は、お兄ちゃんの凄さを感じた。
「かっこいい……」
私のお兄ちゃんは、すごかった。
「という事があったんですよスラちゃん、えへへへっ」
私は脅して契約を結んだスライムにお兄ちゃんを好きになったエピソードと、カッコイイ出来事を纏めたお兄ちゃん列伝第一話を話した。
もちろんお兄ちゃん列伝は9800話まである。
毎日話しをしても20年以上は語り聞かせられる大ベストセラーだ。
「(もう3周目なんだが……)」
スラちゃんが困ったような意識を飛ばしてきます。
もう分かってないですね!
お兄ちゃん列伝は現在も更新中で、一日10話づつ増えているのですよ?
一日24時間毎日、お兄ちゃん列伝を聞いて暗記できるくらいじゃないとお兄ちゃんが大好きな妹としての使い魔は勤まらないのです。
「大丈夫です。スラちゃんがきちんとお兄ちゃんの凄さが理解できるまで毎日教えてあげますから、安心してください。それにスラちゃんがお兄ちゃんに殺される所を、私の命令を聞くって約束で助けたんですからきちんと仕事してくださいね」
「(……)」
「さて、それではお兄ちゃんも村を出たことですし私たちもお兄ちゃんの後を追うとしましょう!」
「(まて!いいのか?ここはお前の生まれた村だろう?愛着とかそういうのはないのか?さっきも教えただろう?ここの村はこれから大変になると)」
「え?何を言ってるんですか?お兄ちゃんが居ないのに、こんな村に価値なんてあるわけないじゃないですか?きちんとお兄ちゃん列伝を聞いてましたか?」
どうもスラちゃんは私の使い魔としての自覚が足りないようです。
私は、正論を説いてるスラちゃんにきちんと伝えるにする。
「いいですか?スラちゃんがどんなに正論を言ったとしても、それは余所のお家の話なんです。余所は余所なんです。余所の常識を家庭内に持ち込むのは良くないことなのです。分かりましたか?」
「(う、うむ。それなら我が眷属を少し多めに村を守る為に…じゃなくてユウマが戻ってきた時のために残していっていいだろうか?)」
お兄ちゃんのためですか……。
少しはスラちゃんも理解してきてくれたようですね。
「仕方ありませんね、どのくらいかかりますか?」
「(5日ほどだな)」
スラちゃんはいつもマージンを取る癖があります。
つまりもう少し早くできるかも知れません。
「分かりました。3日でお願いしますね」
「(!?)」
さて、お兄ちゃんを追いかける旅に出るとしましょう。
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コメント
ウォン
進撃のアリア笑笑
ノベルバユーザー141148
×きちんと伝えるにする。
○きちんと伝える事にする。 です。
(ㆀ˘・з・˘)