無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

魔法で教会を作ろう!

どこまでも広がる青空!
 風は冬の到来を予感させるかのように少しだけ肌寒くとても澄んでいる。
 そして、秋から冬に変わる境目の季節でもあった。

 現在アライ村では、冬に向けて祭りをしていた。
 たくさんの捕獲されてきたクマやイノシシなどの肉が弱火でこんがりと焼かれ官能的なまでの匂いを辺りに漂わせている。
 多くの村民がこれから到来する厳しい冬に向けて不安を払拭するかのように食して踊り歌う。

 そう誰もが一時の幸せを謳歌していた。

「ユウマ!手が止まっているぞ!」
 親父が俺に向けて叫んで来る。

「……はい」
 ただし、俺だけは汗だらけになりながら、たった一人その幸せの時間を謳歌できずにいた。
 プレハブ小屋状態であったアース教会の建物を建てなおす為に、《建物構築》の魔法を発動させて大まかに作ったところで、漢字魔法で左官用のこてと、モルタル入りのバケツを作る。
そしてせっせと、建物の細かい部分に手入れしていた。

 魔法の発動方法を親父に教えた際に、数々の俺の過去の問題点が暴かれた事で、両親は俺をウカル司祭様に売り渡しのだ。
そして、ウカル様から提示された罰は、教会を建て直してくださいという内容であった。

当然、俺は『そのままで今は問題ないでしょう?信仰が建物の良し悪し程度で揺らぐのですか?』と説得したが村の大半がアース教徒になっていた事もあり俺の意見は当然の事ながら却下された。
 まことに遺憾である。
 誰かの陰謀すら感じる。
 話によるとポンプ付きの井戸をウカル様が作ったという話で、神秘的だという話になり信仰度が上がったらしい。
 まったく……だれだよ、あんな余計な物を作ったのは……。

 何はともあれ教会を建て直すという話は覆らなかったわけで、村の皆も『ユウマが一人で建て直すなら別にいいんじゃね?』と他人事のように言ってきたのがとても腹立たしい。

 俺は、丁寧にプレハブ小屋っぽいアース教会の建物を解体していく。
 実は一度、魔法で建物をブチ壊して更地にしようとしたら、そんなバチあたりな!と怒られた。

「それよりも……」
 俺は指をビシッと男に向けて指す。

「……ブルーム騎士団長さん、どうしてまだ帰らないんですか?」
 彼の役目はもう終わったと言っていい。
 村の現状を報告するだけの材料は、この一週間で集めきっているのだ。
 それなのに帰ろうとせずに村に滞在している、
 俺が《探索》の魔法を発動させて探し出して必死に狩ってきたイノシシや熊の肉をおいしそうに食べている。
 俺とかまだ一切れも食べていないのに!
 ブルームさんと話をしながら黙々と作業を続けること、古い教会からの護符や飾りなどを付与うすることができた。。

 それにしてもブルームさんと話していて色々とわかった事がある。
 イルスーカ侯爵領以外は、領地では特に目立った特産物もなく土地は痩せていて農作物の収穫量も少ないらしい。
 ちなみにアライ村を北上すると正者の森と呼ばれる魔物の領域があるらしい。
 そのために魔物領域に面している村々から被害が絶えないとの事。

出てくる魔物は、話しを聞く限りではゾンビを含むアンデットを含む魔物らしいが、アライ村も正者の森に面しているのにそんな魔物は見た事がない。
 せいぜい強いのと言ってもワイバーン程度だな。
 俺は、作業が一段落して肉を食べながら休んでいると……。

「おにいちゃん!」
 ……妹が抱きついてきた。
 2週間以上、家に帰れない事もあり妹も寂しかったのだろう。
 頭の上に手を載せ撫でる。

「おにいちゃん、今日は一緒に寝れるってことだよね?」

「アリア、俺は前から思っていた事があるんだ。そろそろアリアも11歳だ。一緒に寝るのはそろそろ止めないか?」
 もうすぐ妹も俺に甘えるのは止した方がいいだろう。
 妹の将来を思って提案してみたが……。

 妹が顔を真っ青にして体を震わせながら俺から離れて数歩引き下がった。

「どうして?どうしてなの?お兄ちゃんには私が必要なの!どうして突然、そんな事を言い出すの?どうしてどうしてどうしてどうして……ドウシテ?」
 そこで妹が言葉を何かを思いついたように俺に視線を向けてきた。
 その瞳からは光が消えていて淀んでいた。
 これは妹が苦悩している時に見せるものだ。
 歩き出そうとした妹の腕を掴む。

「アリア。聞いてくれ」
 俺の言葉に妹がうつむいたまま反応してくれないが聞いていると信じて話しを続ける。

「いつまでも兄妹で同じ布団で寝ているのはおかしいだろ?そういうのは結婚をした男女がするべきなんだ」
 俺の言葉に妹が頷く。
 よかった、理解してくれたか。
 なら後もう一押しする必要があるな。
 あと数年でアリアも大人の仲間入りだ、そうすれば結婚の話もあがってくるだろう。
 兄としては寂しいが妹のためと思えば大丈夫だ。

「だからアリアが成人するまで待ってほしい。この意味が分かるな?」

「……分かった。私、結婚するまで我慢するね!」

「ああ!アリアはえらいな!!」
 妹の頭を撫でると気持ちよさそうに俺に身を預けてきた。
 相変わらず妹は素直で助かる。
 頭を俺に擦り付けてくるのを見ていると本当に甘えん坊な妹だなと心配になった。
 そんな俺と妹を見ていたブルームさんが――。

「将来、血が舞う未来しか見えないな」
 ――と。焼かれた肉を食べながら何か呟いているが、妹のアリアがそんな事するわけないだろ?
 まったく心配性だな。

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コメント

  • ノベルバユーザー69968

    ユウマが守った街なのにユウマ一人祭りに参加させないのはどうなの。薄情すぎない?

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