無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

貸し一つだからな!

「不当ではありません。アライ村長から直接、村長代理を任されたんです」
 俺の言葉に俺の容疑を語った男は眉を潜める。
 そして周囲の男達と小声で話してから俺に向き直った。

「だが我らに無礼な口答えをして捕まえた男共は、貴様がアライ村長より村長の任を受け取ったと言っていたぞ?話に齟齬があるがその辺はどうなのだ?」
 なるほど……一時的に代理で治める分には問題ないのか?
 よく分からないが話をそっちの方向で持っていくとしよう。

「それは勘違いしていたと思います。その時はウラヌス十字軍が攻めて来た事、そして俺しか村長代理の任を受けた時にその場にいなかったので情報が錯綜してしまったのでしょう」

「ウラヌス十字軍と言う事はウラヌス教国が攻めてきたという事になるが……。停戦状態の国が攻めてくるなど……そのような事があるわけがないではないか!貴様も我らをたばか……「ブルーム団長!村外の壁沿いを調べていたところ大規模な軍の野営の後が」……」
 村外に出ていたであろう騎士の一人が報告をしている。
俺と会話をしていたブルームという男が、報告にきた男と俺を交互に見てから思案顔をした後に――。

「……場所はどこだ?そこに案内しろ!」
 ――と命令をしている。
 報告にきた騎士は、眉元を寄せながら俺を見てくる。

「ハッ!してその少年は?」
 気になったのだろう。
 ブルームに確認をしている。

「お前が知らなくてもよい!」
 ただ、ブルームは正直に答えないが、それで納得するのだろうか?。

「ハッ!」
 納得しているよ……。
 それでいいのか?突っ込みどころ満載だろ!?

「お前ら、そいつを馬に乗せて私の後についてこい」
 ブルームの指示に騎士達は動き出す。
 両腕を縛られている俺はそのまま騎士に担がれて荷物のように乗せられた。
 俺が乗せられた馬にブルームも騎乗してくる。
 そしてブルームは。
「……余計な事は言うなよ?いいな?」
 と俺にだけ聞こえる声の大きさで忠告していく。
 俺はその言葉に頷く。
 きっと色々、あるんだろうな。
 上手くすれば貸しとして利用できるようになるかもしれないな。

「分かっているならいい。くれぐれも2人の人間を我らが預かってる事を忘れるなよ?」
 ブルームはそれだけ言うと馬を走らせる。
 後ろを見ると7人ほど騎乗して着いてきていた。
 アライ村の南門を抜け掘りに掛かっている石橋を渡る。
そして堀沿いに半周してからウラヌス十字軍が野営していた北の陣地へと到着する。

そこには、雪が解けた事で露わになっている大軍が過ごしていた事が分かる残骸であるゴミや狩って食料にした動物の骨などが大量に転がっている。

「なるほど、満更嘘でもないようだ」
 ブルームは振り返り同じ馬に乗せられている俺を見る。
そして、自身の髭に手を当てて思案した後に、俺を馬から下ろした。
 そして体の後ろで括られていた縄をナイフのような物で切る。

「おほん!ユウマくん、私は最初から君がおかしいとは思っていなかった。だが、これは必要な事だったんだ。分かってくれるな?」

「……あ、はい」
 俺の返事にブルームは、何度も頷く。

「私も最初からおかしいと思っていたのだ。村長を追放するような人間が我らの前にノコノコと出頭するわけがないからな?」
 こいつは最初から俺の事を疑って言ってきたのに何を言っているんだ?
 まったく……。
 まあ、話しを合わせておくか……。

「ソーデスネ」
 俺の色よい返事で機嫌を良くしたブルームはさらに話しを続けてくる。

「そうなると、男2人から聞いた、エメラダ様が来られたというのも本当なのか?」
 俺はブルームの言葉に頷きながら――。

「はい、来られました。白銀の髪はとても綺麗でしたね」
 ――とエメラダ様の特徴を端的に伝える。
 すると。

「そ…そそ……そうなのか?アハハッハ、そうかそうか……」
 と言った後、突然、ブルームが俺の肩を抱き寄せて顔を寄せてきた。

「ユウマ君。村人を拘束した事と君に縄をかけた事は、くれぐれもエメラダ様には言わないでくれ。これは些細なすれ違いが生んだ悲しい出来事だったんだ。分かるだろう?」

「まあ、いいですが。貸し一つですよ?」
 俺の言葉に、ブルームは「分かった」と即答してきた。
 その後、ブルームは周囲を見渡すと大声で怒鳴った。

「貴様ら!いつまで遊んでいるつもりだ!さっさと全員、村に戻って我らに協力して頂いたお二人を解放してこい!」
 ブルームさんの怒号で付いてきた兵士が全員、村の方へ戻って行った。
 そしてその姿が見えなくなると……。

「エメラダ様には絶対に言わないでください。お願いします本当にお願いします。まだ死にたくないんです。家族がいるんです」
 あまりの必死さに。

「あ、はい」
 と思わず頷いてしまっていた。
 それよりも気になっていた事があった。

「少し、聞いておきたい事があるんですけどいいですか?」
 俺の言葉に――。

「はい!何でも聞いてください。ですからエメラダ様には今回の事は内密にお願いします」
 ――と即答してきた。
 どれだけ必死なんだよ。、
 それよりも、エメラダ様は普段どんな風にブルームに接しているんだろうか?
 気になって仕方ないな……。




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