無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

月夜の女神との契約

 内側の掘りの水の流れを完全に停止させることが出来た頃には、すでに深夜帯を過ぎていた。
 エメラダ様が言っていた魔法を発動させる魔力という単語。
 魔力が回復したことで常時発動できるようになった《探索》の魔法が後ろから近づいてきてい人間の存在を俺に教えてくれている。
 振り返るとそこには、騎士の鎧を着込んだエメラダ様が立っていた。
 すると――。

「信じられん事だが、かなりの魔力が回復したようだな?」
 ――エメラダ様は俺に語りかけてきた。。
 フルフェイスのナイトバイザーで頭を覆っているせいかエメラダ様の表情が見る事ができない。
 先ほど、エメラダ様と分かれた時に交わした言葉を思い出す。
 正直、先ほど頭を踏みつけられた事と無理な話を振ったこともあり気まずい。
 俺は、なるべく心の内の動揺を悟られないように気持ちを抑えて言葉を紡ぐ。

「はい、かなりの魔力が回復しました。これも全部、エメラダ様のおかげです」
 俺の言葉に。

「……う、うむ……」
 どうやら、エメラダ様も先ほどの俺とのやり取りを思い出してくれていて気まずいと感じているようだ。
 どうしたものか……。

「……」
 エメラダ様が無言になってしまったので俺も無言になってしまった。
 相手の顔が見えないと話しづらいな。
 こう話の取っ掛かりが掴めないというか何と言うか。

「エメラダ様、失礼を重々承知しておりますが一つ宜しいでしょうか?」

「―――な、なな、なんだ?言ってみろ。平民」
 平民呼ばわりされてしまった。
 これって、もしかしてかなり怒っていらっしゃるのでは?
 やっぱり一介の庶民が貴族に何か言ったらいけないとかあるんじゃなかろうか?

「いえ、特に何にもないです」
 俺は立ち上がり歩き出そうとすると腕を捕まれた。
 しかもすごい力で掴んでくる。
 金属部分が皮膚に減り込んですげー痛い。

「用件を聞こうじゃないか!」

「いえ、やっぱりなんでもないです」

「―――用件を言わないのか?そうか……」
 俺の腕を掴んではいない開いている右手でエメラダ様は、器用に腰のサーベルを抜こうとしてって!?半分まで抜いている!

「いいます!言わせてください!」
 怖いわ、この人。
 あれだな、お話しようよと言いながら暴力振るってくるタイプの人だな。
 極力、怒らせないようにしないと俺の首が飛んじゃう。

「ふむ、それで何を言いたかったのだ?」
 エメラダ様は、腰の鞘にサーベルを戻しながら俺に聞いてくる。

「えっと実はですね。村の中までそんなフルフェイスのナイトバイザーを装着してるのは息苦しいのではないかと思いまして、せっかく綺麗な髪や愛くるしい顔に美しい瞳をしているのですから隠すのは勿体ないなと……「貴様……」……」
 やばい、お世辞だったつもりが『貴様』呼ばわりされるほど、怒らせてしまったようだ。
 その証拠に全身を震わせて怒っていらっしゃる。

「―――ユウマ!」

「はいいいい」
 エメラダの大声に俺は直立不動の構えを取る。
 殴られるくらいないいけど、斬られるのは痛いからやだなと思いながらすぐに回復魔法を使えるように心構えをする。

「ユウマさんはじゃなくてユウマ!貴様はこの私の老婆のような白い髪や吸血鬼のような赤い瞳が皆から忌み嫌われていると知って尚そのように言ってくるのか!?」
 何を言っているのだろうか?
 アルビノなんてとても綺麗じゃないか?
 すこしこの人もリリナと同じく自分自身を卑下しすぎじゃないのか?
 まあ人間だれしもコンプレックスがあるし、エメラダ様の機嫌を取っておけば後で俺の待遇も良くはなるかも知れないからヨイショしておくか。

「エメラダ様!」
 俺は膝をついてから上を見上げる。
 フルフェイスに隠れていてエメラダ様のご尊顔を拝謁する事はできないが、それはいいとしておこう。

「―――な、なんですじゅなくてなんだ?」
 やはりコンプレックスを曝け出した事で、エメラダ様は動揺しているようだ。。
 俺だって自分のコンプレックスを知られたらと思うと仕方ないと思う。
 そのくらい秘密を他人に知られるのは、とても辛いモノなのだ。
 だから俺は、エメラダ様の辛さが完全に分かるとは言えないが少しは共感が出来る。

「俺は、エメラダ様の銀色の髪はとても美しいと思います。月明かりに照らされて輝くその色はまるで月の女神だと思いました。そして、赤い瞳も俺には宝石のルビーを思い浮かばせるほど綺麗だと思います。それにエメラダ様はとても女性的ですばらしいお方だと思っております。ですからそのような無粋な兜など、ここでは着けてほしくは無いと俺は思いました」

「……」
 反応がない。
 すこし褒めすぎたのだろうか?
 それとも、兜を脱げといった言葉に怒ったのだろうか?
 もしかしたら、騎士の誇りを怪我したな!この下郎が!とかバッサリと逝かされたりして?

「あ、すいません。調子にのり……「わかった。たしかに村にいるのに兜をつけておくのは無粋なのかもしれないな」……」

「――あ、はい」
 途中で話を切られてしまったが、エメラダ様は納得してくれたようだ。
 やはり侯爵家のご息女になると度量が違う。
 エメラダ様は、俺が見ている前で兜を外すと俺をまっすぐに見つめてきた。

「ユウマさん……責任は、とってくださいね?」
 やはり、エメラダ様は兜を外すと女性らしさを見せてきてくれる。
 エメラダ様が何を言っているのか俺には、よく分からない。
 ただ、コンプレックスがあるのは分かった。
 彼女のコンプレックスが解消される手伝いくらいお安いものだ。

 今はまだエメラダ様に、何があったのかハッキリとは分からない。
 違う。人の気持ちなんて人生なんてそんなに簡単に理解できるものじゃない。
 簡単に分かりあえるものじゃない。
 そんなのは俺の中にある知識が教えてくれているじゃないか?
 でも、だからこそ……力になれるんじゃないのか?
 だからこそ、俺は……。

「わかりました。エメラダ様、俺がかならずエメラダ様のコンプレックスを解消してあげます」
 俺の言葉にエメラダ様は、目から涙をぽろぽろと零し始めた。

「……はい、よろしくお願いします」
きっと一人で大変だったのだろう。
 自分で銀色の髪を老婆のような白髪というくらいだからな。
 この世界ではたぶん先天的なメラニン欠乏の遺伝子疾患であるアルビノは理解されていないのだろうな。
 ここは村民としてそして知人としてエメラダ様に自信を取り戻させてあげたい。
 こんなに綺麗な女性なのだから、自信さえ持てば多くの男性から好かれるはずだ。



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コメント

  • ノベルバユーザー232154

    ところどころ、言葉の間違いがあります。

    0
  • ノベルバユーザー227692

    不自然。

    0
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