無名の最強魔法師(WEB版)

なつめ猫

ユウマの宣言

 ウラヌス十字軍の数は数千。
 いくら堀が皇居並みに作られているとはいえ、このままでは渡ってくる可能性が高い。
 まずは、川の流れを早くし渡りにくくさせるために魔法を発動させる。
 魔法は、水に干渉し停滞していた堀の中の水が流れ始めた。そのことで、村を円状に囲っていた堀の中の水が循環し始めた。
 水が循環した事で、堀を越えなければ城壁は攻略できない。

 しかも一つ目の堀を渡り城壁を破壊したとしても2つ目の堀と城壁が存在している。
 簡単に突破はできないだろう。

 今回は、領主であるイルスーカ侯爵様が来るまで持ち堪えればいいので橋や道を作らなくてもいい。
 それにもうすぐ冬で収穫も終わっている。
 丁度、立て籠るにはいい時期だ。
 持久戦に持ち込んで、相手が根を上げればいい。
 俺は堀の中を見る。
 《水流》の魔法で干渉操作した堀の水は、時速40キロメートルの速さで流れている。
 それに堀の中の水深は、3メートルあり幅も50メートルあることから簡単には突破できないだろう。

 そして城壁は、高圧縮した土を使って作られている。
 強度はアスファルトと同等。素手ではまず破壊はまず不可能だと思う。
 それに、高さ6メートルほどの土壁を登れば、また幅50メートルの水が逆回転して侵入者を待ち構えている。
 最後の壁なんて1メートルの厚さがあるから武器を持たない軍隊では突破できないだろう。

 俺は城壁の上から、森から出てきた数千のウラヌス十字軍を見る。
 見渡す限りウラヌス十字軍は、武器を持たずに整列を始めている。
 しばらくすると、ウラヌス十字軍の集団の中から、赤いマントをつけた騎士達を連れた初老の男が進み出てきた。
 俺は男を見降ろしながら思いだす。
 たしか……ベンアウードという名前だったはずだ。
 俺に攻撃指示を出してきた男だったはず。

「これを行ったのは貴様か!?」
 その声色からは何かを期待するような感情が見て取れる。

「……そうだったら、なんだんだ?」
 俺の言葉にベンアウードはしばらく考えた後に。

「貴様は魔物を扱う事が出来るか?」

「さあな?馬鹿正直に答えると思っているのか?それより他人に何か聞く前に名前を名乗るのが筋だろう?」
 どちらにせよ。相手は名乗ってもこないのだから、こっちが素直に答える必要はないし……。
 たが、俺の言葉に怒りを露わにしたのはベンアウードではなく赤いマントをつけた騎士達であった。

「―――貴様!不敬であるぞ!この方をどなたと心得る!ウラヌス教大司教ベンアウード・クルド様だぞ!そしてウラヌス十字軍総指揮官であるぞ」
 身長190cm近くある体格のいい筋肉隆々の男が俺に向かってイラだった声色で怒鳴ってきた。
 服装の形は同じ。ただ色合いが青と違う。きっと赤色の方が高貴だとウラヌス教では決まっているのかも知れない。
 まぁ相手も名乗ったんだし、こちらも名乗るのが礼儀というものか。
 俺は城壁の上で立ち上がると名乗り返す。

「俺は、強大な魔法を操りし魔王ユウマだ!」
 俺の宣言にウラヌス十字軍は、動揺を見せた。
 壁や堀を瞬時に作った魔法に、彼らの武器を破壊した魔法。
 そして名乗りがあるなら、他の村を攻めるような事はしないだろう。
 その分、俺がいる村を攻めてくる可能性が上がるが……。

「なるほど……たしかに魔王と見まごう魔法の行使だが……聖女様の予言があったのが11年前。いまのお前はどうみても11歳には見えないがどういうことだ?」 
 ベンアウードが俺の容姿と年齢が合わないと告げてくるが……。

「分かってないな。矮小な人間よ。貴様らごとき人の身で我を理解しようなと1000年は速いぞ?」
 俺の言葉にウラヌス十字軍から感じる雰囲気が変わる。
 ただ、ベンアウードや騎士風の格好をしている男達からは歓喜の感情を何故か感じられた。

「なるほど、どうやら私達にも知らない事が多いようですね。ですがこれで聖女様の予言通りだった事が判明したわけですね」
 ベンアウードは、顔に笑顔を貼りつけて俺に語りかけてくる。

「ウラヌス教国では、魔王たる君に協力を取り付けたいのだが?一度、聖女様へ会ってもらえるか?」
 俺は頭を振る。
 会えば俺が魔王ではない事が分かってしまうではないか。
 そうなれば妹に危害及ぶ。
 それだけは看過できない。
 妹に危害が及ぶくらいなら俺が魔王として彼らの前に立ちはだかろう。

「悪いな。俺はお前達に力を貸す気がないな。それにお前らのような狂った宗教に力を貸すのも忌避感を抱くからな。だから俺に協力を得るのは諦めてさっさと本国に帰るんだな」
 俺の言葉に、ベンアウード・クルド大司教が何やら衝撃を受けたような表情で叫んでいる。周りの騎士達も俺のあまりの言いようにブチ切れているようだが……別にどうでもいいな。

「クルド様!落ち着いてください。ここが魔王の本拠地ならもっと魔物がいるはずです!」
 ベンアウードの周りを固めていた騎士達以外に、近づいてきた騎士が頭に血が上ったベンアウードを語りかけている。 
「……だが、しかし……」
 ベンアウードに冷静に戦況を分析し説明している男を俺は見る。
 その男は、ウラヌス十字軍第三騎士団ユーガス=ガルウと前に名乗った男だった。
 だが、ユーガスそれは悪手だぞ?
 俺は一人、心の中で突っ込みながらベンアウードに向けて大声で叫ぶ。

「貴様らは何も分かってないな!魔物がいない?違うな!俺には魔物なんて必要ないんだよ。これだけの建造物を瞬時に作り出す魔法を使う俺に魔物が必要だと思うか?」
 俺の言葉にユーガスは唇を噛みしめている。
 せっかく抑えたベンアウードが暴走すると思っているのだろう。

「お前ら、魔王ユウマを確保しろ!」
 案の定、聖女や教会第一のベンアウードが暴走してウラヌス十字軍全軍に指示をだしてきた。
 それと同時にウラヌス十字軍の連中が近づいてくる。
 武器を破壊したはずなのに何故か、ユーガスは剣を手に持っている。
 ユーガスの周囲を固めている男達も武器をもっており、俺は首を傾げる。
 どう考えても、彼らが持っている武器は鉄製に見える。
 つまりどこかに予備の武器を隠していたという事になるが……。
成るほど。
 森の奥に向かったのは武器を取りに言っていた為か?
 まったく厄介だな。
 俺はすぐに金属結合を解き彼らの武器を破壊する。

「うああああああ、俺の武器があああああああ」

「ユーガス様、武器が次々と破壊されていきます!」

「おのれ!異教徒の悪魔どもがあああ」

「―――ぼ、ぼくのセカンド伝説の剣がああああああああああ」

「きゃあああああ、勇者様しっかりしてください!」
 などなど、色々と悲鳴が聞こえてくる。
 っていうか何だよ?セカンド伝説の剣って、そんなに何本も伝説の剣があるのかよ。
 突っ込みどころ多すぎだろ。

「くそ!よくも僕の伝説の剣を2本もだめにしてくれたな!!」
 金髪の美形ハンサムが怒りのあまり俺に向かって一直線に向かってくる。
 その表情は、絶対許さない!僕の愛剣を返しやがれ!という怒りに燃えているのが分かる。
 実際、勇者といわれていた男は俺を睨み付けて。

「このユークラトス=ジャックバウアーの名にかけて魔王ユウマ!貴様をたおうあああああああああああああ」
 叫びながら堀の中に落ちて濁流に流されていった。

「ゆるざない!ぎざまだけはがぼぼぼぼぼ」
 そのまま水に流されて俺の前から勇者ユークラトスは姿を消した。
 鎧は、破壊しておいたから沈むことはないだろう。
 外側には上がれるように段差つけておいたし。

「勇者様!?貴様何という事を!!非道だとは思わないのか!?」
 何人もの男達が抗議の声を上げてくる。
 俺は、それを聞きながらため息を吐いた。

「全然、非道だとは思わないな。だってお前らもその人数で他国進攻してきたじゃん!それに俺とか魔王だし……魔王が勇者をいたぶるのは普通だろ?」
 まぁいたぶってすらいないけどな。
 勇者が勝手に突っ込んできておいて堀に落ちて自滅しただけだけどな……。

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コメント

  • ポリプロピレンs

    次はサード伝説の剣かな?w

    1
  • あんころ

    セカンド伝説の剣は草(笑)

    14
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