【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

ユウマVSエルフぽいの

 一人の男がウラヌス十字軍の中から駆け出してきて弓矢を俺に向けてきた。
 その男は以前、俺に長距離狙撃で攻撃してきた男であった。
 長い耳と金色の長い髪に整った顔にスラッとした長身。
 一目でエルフだと分かる出で立ちであった。

「死ね!魔王め!」
 叫びながら矢を放ってくるが。確保しろとか言われてなかったか?と俺は心の中で突っ込みながら飛んでくる矢を見る。
威力は大した物ではないと普通なら誰もが思う。
 だが、俺は知っている。あれが大木すら粉砕する威力を内包しているという事を。
 俺はすかさず自分が立っていた城壁の上から移動し矢をかわす。
 すると矢は城壁に突き刺さると同時に大爆発を起こした。

 高圧縮して作られた壁、強度だけで見ればアスファルトに迫る城壁は粉々になり辺り一面に散らばる。
 もちろん、近くに立っていた俺にも砕かれたアスファルトが飛んでくるが、全て両手で叩き落とす。

 そして土壁が破壊された部分を《土壁補修》の魔法で修復する。
 それに伴い、少しだけ軽い立ちくらみを覚えるが、すぐに《武器破壊》の魔法を使い男エルフの弓矢を破壊する。

「くっ!?壊されただと?」
 男エルフは怒りを滲ませた言葉を吐きながらも丸太を削り、蔓を加工して瞬く間に弓を作ってしまう。
 そして矢も木材を削りだして作る。
 その間、わずか10分。
俺はため息をつきながら《武器破壊》の魔法で弓と矢を破壊する。

「くそ!またか!?」
 当たり前だ、誰が使わせるものか。ほい《武器破壊》の魔法を発動。相手の弓を再度、破壊する。

「くそがあああああああああ」
 懲りない男だ。そろそろあきらめてくれるとうれしいんだけど……。
 まったくあきらめる気配がない。《武器破壊》魔法で再度武器を破壊する。

「ふざけんなよ!一生懸命作っているのに何壊してくれているんだよ!?」
 何か文句言っているが無視しながら《武器破壊》の魔法発動。

「俺は負けない!俺を信じてくれている勇者と仲間のために!」
 そうですか。がんばれ《武器破壊》魔法発動。

「いいかげんにしろおおおおおおおおお!どうして何度も何度も壊してくれているんだ!」
 ぶち切れた男エルフが俺に向かって怒鳴ってくる。
 怒鳴られても困る。
 この男エルフの攻撃力は半端ないから俺の魔力が尽きる可能性があるのだ。
 だから攻撃される前に武器を破壊しているだけ。
 別に男エルフだからって意味じゃないよ?
 どうして女エルフより先に男エルフが出てくるんだ!とも思ってないよ?
 うん。本当だよ?
それにしても、ウラヌス十字軍と戦っていて分かった事が一つある。
 それは、武器系特技は、武器に依存していて武器を持ってないと特技が発動しないという事だ。
 勇者も男エルフも武器を持っている時にか、威力の高い技を技使ってこないから、きっとその予想は当たっていると思う。

「いあ、だってお前たちは侵略者であって俺たちを殺しにきたんだろ?だったら邪魔するのとか当たり前だろ?」
 俺の言葉を聞いたウラヌス十字軍第三騎士団の面子が俺を睨んでくる。
 そして……。

「ふざけるな!お前には正々堂々と戦おうという気概がないのか!」

「これだから根暗なアース神教って言われているんだよ!」

「俺たちの武器を破壊しやがって!支給品なんだぞおおお」

「傭兵から武器と防具を奪って路頭に迷わせるつもりなのかー!」

「早く帰って畑耕したいから降伏てくれよお」
 と罵詈雑言が飛んでくる。
 俺はそれを聞きながら

「それだったら他国に侵攻してこなければいいじゃん?なんだよ、お前らさ……魔王、魔王って言う事聞かなかったら正々堂々とかいうしさ。

数千もの軍勢率いて数百人の村襲ってきておいて何が正々堂々だよ!笑っちゃうんですけど?それと魔王を使おうとか、お前らの宗教こそ他力本願すぎてどうなのよ?

至急品は壊されておこなんですか?激おこなんですか?それに路頭とか言うくらいなら戦争参加するなよな。畑耕したいならさっさと帰れ!」
 完璧すぎる俺の論破に彼らはその目を血走らせていく。
 まったく、どいつもこいつも……論破されてブチきれるとか短気な奴らだな。

「うるさい!異教徒の魔王が!俺たちは世界を救うためにウラヌス様より信託を受けているんだ!」
 一人の神官みたいな奴が叫ぶと回りの男たちが『そうだ、そうだ!異教徒の分際で正論言うとか生意気だ!』とか言い出した。
 正論なら別にいいじゃん……とか俺は思ってしまうが彼らはさらにヒートアップしていく。

「戦わずに守りに徹するとか騎士道すら理解してない未開の人間が!」

「「「「未開!未開!未開!」」」」
 復唱し始める男たちを見て、内心こいつらうぜえと思ってしまう。
 もう仕方ないので俺は壁の上で横になりながら周囲を《探索》魔法で調べながら休息をとろうとすると。

「うああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ…………」
 濁流に飲まれたままの勇者が俺の目の前を通過していく。
 ご丁寧に大声で叫びながら余韻を残して過ぎていく。
 こいつらはただ嫌がらせをしに来たのだろうか?
 そんな事を頭の片隅に思いながら内心ため息をつき、時折、目の前を過ぎ去っていく勇者を見ながらこれからのことを考える事にした。

 勇者が堀に流され始めてからすでに4時間が経過しており、日が沈む頃になって勇者は外堀の階段に気付き堀からウラヌス十字軍側の方へ上って上がっていった。
 そして、ウラヌス十字軍はというと少し前に、森の中に入っていった部隊が戻ってきたようだ。100人近い兵士達が、どこに隠していたんだと思うほど、たくさんの物資を森から持ち帰っている。
 そしてテントを建てた後に野戦食を作っている。
 本当は食料物資を焼き払って兵糧攻めにするのが一番良いんだが、アルネ王国とウラヌス教国がどういった政治状態で絡みをしているか分からない以上、迂闊に手が出せない。
 俺は、溜息をつきながらウラヌス十字軍の動向を見る事にした。

 ウラヌス十字軍の動向を見始めてから30分ほど経過し。

「ユ、ユウマ君!こ、これは一体?」
 村の方から声に俺は目を向けた。 
 そこには、ヤンクルさんとリリナが立っていた。
 俺は城壁の上から降りると、ヤンクルさんが近づいてくる。

「ヤンクルさん、村の皆の避難はすみましたか?」
 俺の言葉にヤンクルさんは頷きつつも

「一応は村長宅付近に全員を集まってもらった。それよりこれは一体?ユウマ君がやったのかい?」
ヤンクルさんは、俺が作った城壁と堀を見て聞いて来た。。
 俺は頷きながら――。

「やはり、これだけの壁や水が流れる場所を魔法で作るのは珍しいですか?」
 ――と聞くとヤンクルさんは頷いてきた。

「冒険者時代に、こんな魔法を使った魔法師を見たことがないよ。これなら村の皆を家に戻した方がいいかもしれないね」
 ヤンクルさんの言葉に俺は難色を示す。
 現状、ウラヌス十字軍がどう出てくるのか分からないからだ。
 何か会った時に村の中心部に集まって居てくれると守りやすい。
 そんな俺の気持ちを見透かすようにヤンクルさんが話しかけてきた。

「ユウマ君が考えている事は分かるよ。ひと固まりになっていた方が守りやすいと思っているのだろう?だけど、誰も長い間、拘束されたいとは思ってないんだよ?遠征に出た時も、ずっと日常と違う状況下に置かれれば、それだけ不和の元になるから出来れば村の皆には、ユウマ君の特異性を話して壁を作ったから安全だと説明して家に戻したほうがいい。

これだけの物を作ったと言う事は、もう自分の力を隠す気はないんだろう?なら、もう腹を決めるしかないよ」
俺はヤンクルさんの言葉を聞きながら、自分の考えの甘さに気がつき――。

「わかりました、村の皆には城壁から出ないように伝える方向で、あとは水は堀から取っていただくように伝えましょう」 
 話しが一段落ついたところで、リリナが近づいてきた。

「ユウマ君。これを……」
 それだけ言うと顔を真っ赤にしてリリナは走り去ってしまった。
 俺は走り去るリリナの後ろ姿を見た後、受け取ったお弁当を開けると、今日獲ったばかりのイノシシ肉と麦粥が入っていた。

「なんか、気を使わせてしまってリリナには悪い事しちゃいましたね。今。怒っていませんでしたか?」
 最近のリリナは俺と話している時だけに。すぐに顔を真っ赤にする。
 一時は病気かと疑った時があったが、聞いたら違うよ!この馬鹿!と怒られてから俺は考えを改めた。
 きっと俺は嫌われているのだろう。
 そう考えると最近、妹のアリアも同じように俺に対して他所余所しい。
 どうやら女性に対しては、色恋沙汰のような縁はないようだ。




コメント

  • ノベルバユーザー418628

    誤字脱字はしょうがないですけど、日本語がおかしい部分がちょこちょこあるのは直して欲しいかなぁ。
    苦痛にはならないけど、え?ってなる。

    2
  • ノベルバユーザー250446

    誤字脱字はどんなに上手な人でもあります。
    物語の内容以上に大切な物は無いと思うし、間違っている所を見つけてもこう書きたいのだろうなと思いながら私は楽しく読んでいます。

    って丁寧に書いてみましたが、言える事は1つ!
    小説最高!!

    1
  • 葛餅太郎

    ななし 

    じゃぁコメント読まなきゃいいじゃん

    1
  • hera

    袋叩きで草

    1
  • HARO

    266465
    そう言うお前が試しに書いてくれよ
    まぁ~無理だろうけどww

    2
コメントをもっと見る / 書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品