お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話

ただのものかき

かなちゃん…恥ずかしいよ…

「わ~…もうほんとに可愛い~」
「うう…」

休日となる土曜日の朝方。
水蓮の母である永蓮に料理を教えてもらう約束で、今、水蓮の自宅である水神家にお邪魔している涼羽。
だが、その涼羽が可愛すぎてめちゃくちゃに可愛がっている水蓮。
そんな水蓮が、めちゃくちゃに可愛がられすぎて涙目になっている涼羽に対して、さらなる要求をおねだりしてしまっている。

「も~、やっぱり涼羽ちゃん、女の子の服すっごく似合ってる~」
「ううう…は、恥ずかしい…」

水蓮が、この日涼羽を迎えた時に、何が何でもやりたかったこと。
そのうちの一つが、涼羽にかつての自分の制服を着せること。

今の涼羽は、水蓮がかつて高校生時代に着ていた制服を、そのまま着せられている。

クリーム色のセータータイプで、紺色に白のラインが入った襟のついたセーラー服。
ゆったりサイズでふわふわとした感じで、身長から考えると短めな涼羽の腕は、手の半分ほどまで袖の中に隠れてしまっている。
胸元の襟の色よりも少し明るい青のリボンタイが、女の子らしい可愛らしさを強調している。
そして、プリーツの入った紺色のミニスカート。
身長から考えると長い脚と、高い腰の位置が、もともと短いスカートをさらに短く見せてしまっており、普段からジーンズやスラックスの下に隠されている涼羽の脚が、太ももの真ん中あたりまで露になってしまっている。
さらには、もともと履いてきた黒のソックスは脱がされて、その柔らかですべすべで形のいい太ももの下辺りまでを覆う、白のニーソックスを履かされている。
もう腰の方まで真っ直ぐに伸びている、烏の濡れ羽のような漆黒の髪も、それを無造作に一つにしていたヘアゴムを外され、女の子らしさを強調するピンク色のリボンで左右一つずつに束ねられている。

今の涼羽の姿は、萌え袖、絶対領域、ツインテールと揃っている、可愛らしさ満点の童顔美少女女子高生となっている。

左半分だけが露になっている涼羽の顔は、もうその爆発してしまっている羞恥を表すかのように、恥じらいに染まってしまっており、今の自分をじろじろと無遠慮に見つめてくる水蓮の顔をまともに見ることも出来ず、ぷいと顔を逸らしてしまっている。

「もお~!なんなの!こんなにつやっつやで癖のない、綺麗な長い黒髪!」
「!ひゃっ!…」
「それに、ツインテール超可愛い!」
「あ、あうう…」
「涼羽ちゃんの腰、下手したらあたしより細いよね?これ!」
「!ひぅっ!…さ、触らないで…」
「それに何!?この綺麗すぎて、しかも長い脚!このスカートもあたしが履くより、丈短くなってるし!」
「そ、そんなの…」
「ニーソもすっごく似合ってるし!絶対領域超綺麗!それに、すべすべ!」
「!や、やっ!さ、触らないで…」

もうどう見ても女子高生…
幼さの色濃い顔と、可愛らしさ満点の装飾のおかげで、女子中学生にしか見えない涼羽を、ひたすらにぎゅうっと抱きしめて、べた褒めしながら可愛がっている水蓮。
涼羽のことがあまりにも可愛すぎるのか、興奮冷めやらぬ状態となってしまっている。

水蓮に、自分の身体に触れられる度に、可愛らしい声をあげてしまい、その度に恥じらいをその顔に重ね塗りしてしまっている涼羽。
もう恥ずかしさのあまり、ふたたび涙目となってしまっている。

「し…四之宮先生…」
「!もお!涼羽ちゃん!あたしのことは、『水蓮お姉ちゃん』でしょ!?」
「!う、うう……」
「はい、やりなおし」
「あう……す……水蓮……お姉……ちゃん……」
「うふふ~♪なあに?涼羽ちゃん?」
「も、もう…離して…」
「え~?なんで~?なんでそんないけずなこというの~?」
「だ、だって…恥ずかしくて…」
「だあめ♪お姉ちゃんね、涼羽ちゃんのことだあ~い好きで、可愛すぎてたまんないの♪」
「!そ、そんな…」
「だから、離してあげない♪」
「う、うう……」

その身をも溶かしてしまいそうなほどの恥じらいの中、必死に抵抗を試みる涼羽。
しかし、その抵抗一つ一つが、あまりにも儚げで、より涼羽の可愛らしさを強調してしまっていることに、本人だけが無自覚。

当然ながら、そんな涼羽を水蓮が離してくれるはずもなく、むしろ、よりべったりと抱きついてきてしまう。
それどころか、恥ずかしさのあまり逸らしっぱなしの涼羽の顔を自分の方に向けようと、自身の綺麗な手で挟みこんで、無理やり自分の方へと向けさせてしまう。

「や、やめて…ください…」

水蓮の視線の方へと無理やり自身の顔を向けられてしまう涼羽。
それでも、目線だけは回避しようと、必死に逸らし、言葉での儚い抵抗。
そんな悪あがきばっかりする涼羽も可愛すぎて、すでにゆるゆるになってしまっている水蓮の顔が、ますますゆるゆるになってしまう。

そして、涼羽の露になっている左頬に、優しく自らの唇を落としてしまう。

「!な、何を…」
「うふふ♪涼羽ちゃんにちゅーしちゃった♪」
「そ、そんなこと…」
「あら、なあに?」
「…し、しのみ…」
「水蓮お姉ちゃん」
「!…す…水蓮お姉ちゃんみたいな…綺麗な女の人が…」
「!うふふ、嬉しい」
「…ぼ、僕みたいな男に…気安くそんなこと…」
「そんなこと?そんなことって、どんなこと?」
「!そ、それは…」
「ねえ?どんなこと?ちゃんと言ってくれないと、あたしわかんないな~」
「それは…」
「それは?」
「うう……」

もう完全に、恥ずかしがりやで反抗期な妹に無理やり構ってもらおうとする姉のような水蓮。
恥らう涼羽が可愛すぎる。
困った顔を見せる涼羽が可愛すぎる。
もう、どんな涼羽も可愛すぎる。

涼羽が可愛すぎて可愛すぎてたまらなくなってしまい、とにかく涼羽のことをいじめて、困らせて、可愛がってしまう。

「…ぼ、僕みたいな男に…き…気安く…ちゅ…」
「うふふ、気安く?」
「…ちゅ……ちゅー……なんて……したら……」
「え~?なんでこんなに可愛い涼羽ちゃんに、ちゅーしたらだめなの~?」
「!そ、それは…」
「それに~、涼羽ちゃんどこからどう見ても女の子なんだし~」
「!ち、違います…僕…」
「え~、じゃあ涼羽ちゃんって、男の子なのに、女の子の服着て、女の子になっちゃう趣味あるの~?」
「!こ、これは……し、しのみ…」
「水蓮お姉ちゃん」
「!す…水蓮…お…お姉ちゃんが…無理やり…」
「ええ♪だって涼羽ちゃんは可愛い女の子なんだから、ちゃ~んと可愛い女の子の服装じゃないと♪」
「!~~~~~~~~~」

自分の中から湧き上がるマグマのように、際限なく膨れ上がっていく羞恥をこらえながら、どうにか儚い抵抗を続けるも、そのことごとくを水蓮に切り返されてしまう涼羽。

切り返される度に、どうしようもなくなって恥じらいに顔を染めるしかなくなってしまう涼羽が本当に可愛くて可愛くてたまらず、ついつい意地悪な返しをしてしまう水蓮。

「も…もう…知りません…」

とうとうそんな状況に耐えられなくなってしまったのか、拗ねたように視線だけぷいと逸らして、その可愛らしさ満点の顔を膨れさせてしまう涼羽。

さすがに水蓮の意地悪が過ぎてしまったのか、あきらかにぷりぷりと怒っている様子が、見えてしまっている。

「(ああ~もお!ほんとにほんとに可愛いんだから!)ごめんね、涼羽ちゃん」
「……………」
「お姉ちゃんね、涼羽ちゃんが可愛くて可愛くて、大好きで大好きでたまんないから、ついつい意地悪しちゃったの♪」
「……………」

ふくれっ面のまま、無言でそっぽを向いている涼羽も可愛くて、ますます水蓮の心がくすぐられてしまう。
が、さすがにやりすぎた感は否めないこともあり、今度は、涼羽のご機嫌取りに回る水蓮。
まさに反抗期の妹に構って構ってなお姉ちゃんになってしまっている。

しかし、涼羽の方は無言のまま、視線を合わそうともせず、ただただふくれっ面のままの抵抗を続けている。

「涼羽ちゃん、お姉ちゃんのこと、許して?」
「………」
「ね?涼羽ちゃん?」
「………」

涼羽の頬にそっと唇を落としながら、その頭を優しく撫でて、どうにかご機嫌を取ろうとする水蓮だが、当の涼羽は以前、徹底抗戦の姿勢を崩そうとしない。

これはさすがにやりすぎてしまっただろうか。
そんな不安感が、水蓮の心に浮かんできてしまう。

そして、そんな時だった。



「ん~……!あ!りょうおねえちゃん!」



起き抜けで少し眠そうな顔をして、可愛らしい動物キャラの柄が入った寝巻きを着たままの香奈が、自分の寝ていた部屋から出てきたのは。

そして、涼羽の姿を見た途端、その寝ぼけ眼がぱっちりと開き、嬉しそうな表情を浮かべて、涼羽のところへとぱたぱたと可愛らしい足音を立てて近寄ってくる。

「えへへ~♪りょうおねえちゃんだ~♪」

そして、自身の母である水蓮にべったりと抱きつかれたままの涼羽の腰に、べったりと抱きついてくる。

「かなちゃん、おはよう」
「おはよう!りょうおねえちゃん!」

そんな香奈に、ふくれっ面だった涼羽の顔に、優しげな笑顔が浮かんでくる。
そして、水蓮の抱擁から逃れるように、香奈と目線をあわす為にしゃがみこむと、その優しい笑顔を香奈に向けて、起き抜けの香奈に朝の挨拶をする。

そんな涼羽の挨拶に、本当に嬉しそうな表情で挨拶を返す香奈。
そして、一度涼羽から離れると、自分と目線を合わせるためにしゃがみこんでくれた涼羽の胸にべったりと抱きついてくる。

「りょうおねえちゃん、すっごくかわいいの!」

そして、水蓮によって完全に女子の装いになっている涼羽を見て、その大きくくりっとした目をきらきらと輝かせて、じっと涼羽のことを見つめ続ける。

「べ、別にそんなこと…」

香奈の言葉に思わず顔を赤らめながら、儚い言葉での抵抗をしてしまう涼羽。
どうしても、『可愛い』という言葉に抵抗を感じてしまうようだ。

「りょうおねえちゃん、やっぱりすかーとはいて、ちゃんとおんなのこのかっこしてるのが、いちばんにあってるの!」

可愛い女の子だから、可愛い格好するのは当たり前。
そう言わんがごとく、今の涼羽の姿が一番だと嬉しそうに言い切る香奈。

もともと、香奈が涼羽と初めて会った時、涼羽は美鈴に女子高生の格好をさせられていたのだから、香奈から見れば、今の姿が一番涼羽に似合っていると思っているのだろう。

「あ、うう……」

そんな香奈の純真無垢な言葉に、何も返せず、ただただ恥らうことしかできなくなってしまう涼羽。
ただでさえ、今の格好が恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないのに、その格好が一番などと言われてしまっては、余計にその恥じらいも膨れ上がってしまう。

「…えへへ~♪」
「あ…あんまりじろじろ見ないで…」
「はずかしがってるりょうおねえちゃん、す~っごくかわいいの~♪」
「う…うう……」

恥じらいに身を焦がされそうになってしまっている涼羽のことを、じ~っと見つめる香奈。
そして、しばらくじ~っと見つめているうちに、また嬉しそうな笑顔が浮かんでくる。

そんな香奈の視線がまた恥じらいを刺激されてしまうのか、思わず香奈から視線を逸らしてしまう涼羽。
しかし、そんな涼羽がまた可愛らしくて、ますます香奈の幼い顔に、嬉しそうな笑顔が浮かんでくる。

「りょうおねえちゃん、かなのこと、みて?」
「!そ、それは…」
「かな、りょうおねえちゃんのかわいいおかお、みたいの」
「!で、でも…」
「りょうおねえちゃん、かなのこと、きらい?」
「!………」

恥じらいに頬を染めっぱなしの涼羽に、容赦なく向けられる香奈のおねだり。
純真無垢な香奈のおねだりなだけに、思わず首を縦に振ってしまいそうなのを懸命にこらえて、どうにかこの場をやり過ごそうとはするものの…
少し不安げな表情で、可愛らしく自分のことが嫌いかどうかを聞いてくる香奈を見て、もう落城間近まで追い詰められてしまっている涼羽。

もちろん、香奈のことを嫌いだ、などと、涼羽が言えるはずもなく…



「ううん…かなちゃんのこと、大好きだよ」



こんな風に、香奈が喜ぶであろう言葉をしっかりと、声に出すのだが…



「じゃあ、かなのこと、みて?」



と、可愛らしくおねだりをしてくる香奈。

もうこの時点で、涼羽の負けは決定となってしまったようなもの。

際限なく膨れ上がってくる恥じらいから生まれる抵抗感に必死に抗い、さらに膨れ上がってくる恥じらいに頬をさらに染めながらも、どうにか香奈の方を見ることに成功する涼羽。

「こ、これでいい?かなちゃん…」

今の、女装して恥じらいに満ち溢れた自分の顔など、見て欲しくない。
そんな状態で、目を合わせたくない。

しかし、それでも、香奈のことを無視したくはない。
香奈のことを、嫌いだなどと言いたくない。

どこまでも他を優先するがゆえに、甘えさせたくなってしまう年下の子供には本当に弱い涼羽。
もう、顔が茹蛸のように真っ赤になっており、際限なく膨れ上がってくる恥じらいが、ぞくりとするような言いようのない感覚さえ、与えてくる。

「えへへ~♪かわいいりょうおねえちゃんのおかお、い~っぱいみれるの~♪」
「うう…」
「おかおま~っかにしてはずかしがってるりょうおねえちゃん、す~っごくかわいいの♪」
「は…恥ずかしいよ…」
「りょうおねえちゃん、だあ~いすきなの♪」
「か、かなちゃん…」
「かなのこと、ぎゅってして、なでなでしてほしいの」
「う、うん…」

涼羽の胸にべったりと抱きついたまま、下から涼羽の顔を見上げてくる香奈。
そして、いつものように甘えてくる。

そんな香奈のお願いを、素直に聞いて、優しく香奈の小さな身体を抱きしめると、同じように優しく、香奈の頭を撫で始める。

「えへへ♪りょうおねえちゃんにぎゅってして、なでなでしてもらうの、だあ~いすきなの♪」

涼羽にべったりと甘えるのが本当に好きな香奈。
もう、これでもかと言わんばかりの幸せそうな笑顔を浮かべ、目一杯、涼羽の甘やかしを堪能している。

「ふふ…」

相変わらず、今の自分をじっと見つめられることに恥じらいを感じているものの…
自分の胸の中でべったりと甘えてくる香奈が可愛くて、ついつい笑顔が浮かんでくる涼羽。

「りょうおねえちゃん」
「なあに?かなちゃん?」
「だあ~いすきなの♪」
「ありがとう、かなちゃん」
「りょうおねえちゃんは、かなのことすき?」
「うん、大好き」
「えへへ~♪りょうおねえちゃんだいだいだいだいだあ~いすきなの~♪」

傍から見れば、歳の離れた姉妹がべったりと寄り添って触れ合っているようにしか見えないその光景。
可愛い盛りの甘えん坊な幼い妹を、少し歳の離れた可愛らしい姉がまるで母親のように甘えさせているその姿。

そんな二人の姿を、傍から見ていた水蓮が、これ以上我慢できるはずもなく…



「もお~!涼羽ちゃんも香奈も、なんて可愛いの~!」



自分も混ぜて、と言わんばかりに香奈もろとも、涼羽のことをぎゅうっと抱きしめて、べったりと寄り添ってくる。

「!ひゃっ!…」
「えへへ~♪おかあさんもぎゅってしてくれる~♪」

いきなり抱きつかれて、可愛らしく甲高い驚きの声をあげてしまう涼羽。
そんな涼羽とは裏腹に、母である水蓮にもぎゅうっとされて、非常にご満悦な様子の香奈。

もともと水蓮も香奈も、親子仲は非常にいいため、こういう触れ合いは日常茶飯事であり、常日頃、二人が好んでしていることだからだ。

「も~涼羽ちゃんも香奈もほんとに可愛い~♪」

二人の可愛らしさにもう抑えが利かなくなってしまっている水蓮。
涼羽と香奈の頬に、交互にキスの雨を降らせてしまう有様と、なってしまっている。

「は、恥ずかしいです…」
「えへへ~♪おかあさんがちゅーしてくれる~♪」
「涼羽ちゃんはお姉ちゃんがう~んと可愛がってあげるし、香奈もお母さんがう~んと可愛がってあげるからね!」
「や、やめて…」
「おかあさん、だあいすき♪」
「だあめ、やめてあげない♪お母さんも香奈のこと、だあい好きだからね~♪」

美少女女子高生というには幼い、美少女女子中学生となっている涼羽と、最愛の娘である香奈を包みこんで、めちゃくちゃに可愛がる水蓮。

そんな水蓮に、非常に嬉しそうで幸せそうな笑顔を向ける香奈。
そんな水蓮に、思わずそっぽを向いてしまうも、結局は水蓮の手によって水蓮の方を向かされてしまう涼羽。

涼羽だけにとっては悪循環で、水蓮と香奈にとっては良循環なこの触れ合いは、当然のことながら涼羽が涙目になってもやめてはもらえず、水蓮と香奈の気が済むまで繰り返されることと、なるのであった。

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