お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話

ただのものかき

お兄ちゃん、もっと可愛くしてあげる♪

「ひっ!…ひあっ…」

週末の休日となる土曜日。
町の少し外れのところにある、少し懐古的な趣の一軒家。
その一軒家である高宮家のリビング。

そのリビングに響く、艶に満ちた甲高い声。

「わ~、ほんとに綺麗~♪お兄ちゃんの脚、すご~い♪」

そして、その甲高い声の主に対して紡がれる、絶賛の言葉。

その絶賛の言葉を紡ぐのは、この家の長女であり、兄妹の片割れである、高宮 羽月。

その羽月の手が、実の兄である涼羽の脚に吟味するかのように触れる。

妹のお願いで、今は女子の制服に身を包み、まさに女子学生と化しているその姿。
膝上5cmほどのミニスカートからすらりと伸びている、その脚。

普段からその肌を晒すことをしないため、まず見られることのない脚。
スカートという、女性専用の衣服を着ているがゆえに、その脚がむき出しになっている今の涼羽。

実の妹である羽月ですら、見ることのできなかった部分。
それが、今は人の目に晒されている状態だ。

ある意味、本物の女の子よりも綺麗で魅力的なその脚に、羽月の興味が釘付けとなり…
それを文字通り味わうかのように、その小さな手で触り続けている。

人に触れられることが何より苦手な涼羽。
それも、むき出しになっている素肌の部分に直接触れられるなんて。

ましてや、今は女子学生としての装いになっている状態。
それによる恥ずかしさも加わって、より敏感に反応してしまっている。

触れられるごとに体がびくっと震え…
そのせいで膝の支えが利かなくなってしまい…
今では、そのままリビングの床にぺたんと座り込んでしまっている。

それも、スカートを履いていることもあり、お尻の方から座り込む…
まさに、『女の子座り』の状態になっている。

その状態で、露になっている太ももを、実の妹である羽月に執拗に触れられ…
その度に過剰な反応の見せることとなってしまっている。

「ひうっ!…は、羽月…さ、触らないで…」

男である自分が、女子の制服に身を包んでいること。
男である自分が、その脚を無防備に晒してしまっていること。
男である自分が、まるで女の子みたいに座り、女の子のような声をあげてしまっていること。

何もかもが恥ずかしすぎて…

その顔は熟れたトマトのように真っ赤に染まってしまい…
大きくくりっとしたその瞳は、うるっとしており…
妹の手が太ももに触れられるごとに、その身体が震えてしまい…

まさに、現在進行形で辱めを受けている美少女にしか見えない今の涼羽。

「お兄ちゃん、可愛い~♪」

そんな兄が可愛すぎてたまらないのか、その太ももに触れながら、じっと顔を覗き込んでくる羽月。
とうとう我慢ができなくなり、兄の華奢な身体にぎゅうっと抱きついて、その胸に顔を埋めてしまう。

「えへへ♪お兄ちゃん♪」
「…も、もう…羽月ったら…」

女子用の制服に包まれている涼羽の胸にべったりと甘えながら、上目使いでその顔を覗き込んでくる羽月。
そんな羽月に、文句を言いたげな口調になりながらも、いつもの優しい笑顔を向けてしまう涼羽。

「ねえ、お兄ちゃん。せっかくだから、もっと可愛くしてあげる♪」
「?え?…」

せっかくこの可愛すぎる兄が、こんなにも可愛らしい美少女女子学生となっているのだ。
どうせなら、もっと可愛らしくしてあげたい。

そんな欲求が際限なく膨れ上がってくる羽月。

そして、部屋着として着ている、ゆったりとしたサイズの、紺色のオーバーオールのポケットを探り、何かを取り出す。

「?羽月、それは…」
「ヘアピン♪」

取り出されたのは、花のデザインがなされた可愛らしいヘアピン。
女の子らしいデザインに、女の子らしいピンクの配色。

「じっとしててね♪お兄ちゃん♪」

せっかくの兄の美少女顔を覆い隠してしまっている感のある、その野暮ったい前髪。
その前髪を、兄の顔の左側にある分け目を基点に、左右に開く。

普段ははっきりと見ることのできない、兄の顔が、はっきりと現れる。

その開かれたカーテンを抑えておくかのように、二つあるヘアピンで左右に割れた前髪を軽く押さえてしまう。
これで、涼羽の顔の、少なくとも左半分が、はっきりと見える状態になっている。

ピンクの花のデザインのヘアピンが、より女の子らしさを強調し、より涼羽の可愛らしさを強調することとなっている。
さらには、涼羽の可愛らしい美少女顔が、はっきりと人目に映るようになっている。

「えへへ♪お兄ちゃんがも~っと可愛くなっちゃった♪」

狙い通りの効果を発揮している飾りつけに、羽月の顔に満足げな笑顔が浮かぶ。
もはやどこに出しても恥ずかしくない、完全無欠の美少女女子学生。
そんな兄を見ているだけで、嬉しくて幸せでたまらくなってしまう羽月。

当の涼羽からすれば、今のこの状態はどこに出されても恥ずかしすぎてたまらないのだが。

「あ、あの…羽月…」
「なあに?お兄ちゃん?」
「顔、出てると、恥ずかしい…」

普段からその前髪で顔の上半分を覆い隠している涼羽。
その涼羽からすれば、こんな風に顔を露出してしまうことに強烈な抵抗感を感じてしまう。

そして、その抵抗感が際限なく羞恥へと変換されてしまう。

そんな涼羽の恥らう姿の、なんとも可愛らしいこと。

そもそもが、今は女子の服装に身を包んで、女子の装飾をしているだけの状態なのだ。

それなのに、どこからどう見ても清楚で可憐な美少女にしか見えないという、この完成度。
顔はもともとの造詣が、美少女そのものだし…
身体つきも男らしさ、男くささがまるで感じられないし…
今、頭の後ろで結っている髪も、自身のものだし…

ほとんどが天然素材なのに、あまりにも自然に美少女と化してしまっているこの現実。

これでいくら男だなんだと言っても、まるで説得力など皆無と言えるだろう。

そんな涼羽を見て、羽月の顔からは満足げな笑顔が絶えない状態だ。

「お兄ちゃん、今はせ~っかく女の子してるんだから♪その可愛いお顔、ちゃ~んと見せて♪」
「や、やだよ…恥ずかしいよ…」
「えへ♪恥ずかしがってるお兄ちゃん、本当に可愛い♪」

あまりにも可愛らしい姿を見せ続ける兄に、たまらなくなってぎゅうと抱きついてしまう羽月。

ふんわりとして、ほのかに甘い匂い。
それが、羽月の鼻腔をくすぐる。

そんな兄の匂いを嗅いでいたくて、自然と羽月の鼻の動きも活発になってしまう。

「うう……」
「お兄ちゃん♪だあい好き♪もっと可愛くしてあげるね♪」

そう言って、羽月の手がまたもオーバーオールのポケットを探る。
ポケットから、羽月の手が再び飛び出てくる。

その手に握られているのは、ピンク色のリボン。

「お兄ちゃんの綺麗な髪、これでまとめてあげるね♪」

そう言うと、羽月はすっと立ち上がり、未だ女の子座りになっている兄の背後にまわる。
そして、飾り気のないヘアゴムを取り去ってしまう。

瞬間、涼羽の伸びっ放しの長い髪が霧散し、重力に従ってふわりとその背中に静かに落ちていく。

「お兄ちゃんの髪、伸びたね~」

気がつけば、もう背中まで伸びている涼羽の髪。
烏の濡れ羽のような艶のいい、漆黒の髪。
さらりとして手触りもよく、真っ直ぐでくせのない髪。

「も、もう切りにいかないと…」

涼羽自身、髪を伸ばすつもりもなかったのだが…
普段が家事の一切合財を担当しており、さらにはこの妹、羽月の面倒を見なければならないこともあって、なかなか切りに行く時間が取れなかったのだ。

さらには、コンピュータという趣味が増え、そちらにも時間を取るようになり、そのおかげでまるで気にすることもなく、結果この状態になるまで放置していたのだ。

だが、さすがに今の髪の状態を自覚させられる、妹の一言。

もうすぐにでも切りに行こう。
そう思って発した、涼羽の言葉。

その言葉に、思わぬ反応が返ってくる。

「!だめ!切っちゃだめ!」

髪を切る、という涼羽の言葉に強烈な反対の姿勢を見せるのは、実の妹の羽月。

「!?え!?え!?」

そんな妹の強烈な反対に、驚きを隠せない涼羽。

「なんで切っちゃうの!?こんなに綺麗なのに!?」
「い、いや…いくらなんでも伸びすぎだし…」
「だめ!!こんなに綺麗な髪、切っちゃうなんてだめ!!」
「え、え~…」

思いもよらなかった羽月の強烈すぎるほどの反対意見。

涼羽からすれば、自分は男だし、こんなに伸ばす趣味もない、というだけのことなのだが…

羽月から見れば、涼羽の髪は非常に綺麗で、『女の子としても』素敵なものなのだ。
それも、クセらしいクセもなく、こんなにも綺麗に伸びているし、手入れもしっかりとされていて美しいのに。
こんなにも綺麗な髪を切るなんてもったいない。

その思いから出てしまった、強烈な反対。

「お兄ちゃん!だめ!だめだからね!絶対に切っちゃだめ!」
「あ、あの…羽月…」
「お兄ちゃんの髪は、このままが一番いいの!!」
「わ、分かったから落ち着いて…」

半ば勢いに押されるように、髪を切ることを諦める涼羽。

こっそりと切りに行くことは可能だけれど…
結局、切った後を見られたら泣かれたり怒られたりで、面倒なことになることは避けられない。

この妹がここまでの反応を示すということは、そういうことなのだ。

それなら、自分が髪を伸ばし続けるだけでいいのなら構わないか。

という思考に落ち着き、髪を切ることを断念することにした涼羽。

「!ほんと!?」
「う、うん」
「ほんとに切ったりしない!?」
「う、うん」
「えへへ~♪」

涼羽の判断が正しかったことが、羽月のこの反応で証明されたことになる。
ただ、切らないと言っただけで、満面の笑みを浮かべる羽月。

とことん妹に弱い涼羽からすれば、面倒ごとにならずにすむなら髪を伸ばし続けることくらい構わない、ということなのだ。

基本的にきっちりとしていてマメな性格なので、伸ばしている髪のケアも決して怠らない。
切りに行く時間は作れなくても、ケアするくらいはできる。

他からの客観的な意見からすれば、大いにズレた感はあるだろうが。

涼羽の思考は、そんな感じとなっている。

「じゃあ、この綺麗な髪を、このリボンで…」

重力に従って真っ直ぐに垂れ下がっている涼羽の髪を両手で束ねると、それを頭の後ろでまとめる。
そして、その位置でリボンを束ねた髪の根元に巻きつけ、綺麗にリボン結びをして留める。

胸のリボンタイと同じ形に結ばれたリボン。
そのリボンから垂れ下がる、涼羽の髪。

これもまた、実に可愛らしさを強調させる装飾となっている。

快活でいて、幼さも残している…
悪く言えば子供っぽい感じはあるが、それでいて涼羽の可愛らしさをより強調することができている。

自身が味付けをした、兄の可愛らしい姿を目の当たりにして、羽月の顔がでれっと崩れ…
ふにゃりと緩みきった笑顔になってしまっている。

「お兄ちゃん、可愛い~♪」

もうとっくに我慢の限界を超えていた羽月が、ぺたんと女の子座りの涼羽を押し倒してしまう。

「!う、わっ!」

押し倒されて仰向けに横たわった兄の上から覆いかぶさるように抱きつき、その胸に顔を埋めて目いっぱい甘えてくる。

「お兄ちゃん♪お兄ちゃん♪」

女子学生の可愛らしい姉にべったりと甘える、これまた可愛らしい妹の図。

どこからどう見ても姉妹にしか見えない兄妹のやりとり。
見ていて思わず和んでしまうような、ほのぼのとしたやりとり。

「お兄ちゃん♪可愛いお兄ちゃん、だあい好き♪」
「……はいはい」

その小さな身体を全て駆使して、目いっぱい甘えてくる妹、羽月。
そんな妹が可愛いのか、いつものように慈愛の笑顔を振りまいて…
そっと優しく抱きしめながら、頭を優しく撫で始める涼羽。

完全無欠の美少女と化した兄、涼羽。
そんな兄にべったりと甘える妹、羽月。

和やかで、可愛らしいこの兄妹のやりとり。
周囲から見れば、思わず和んでしまうであろうその雰囲気。

この高宮家では恒例となっているやりとりが、しばらく続くこととなった。

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