お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話

ただのものかき

今度から、ここで働くんだ…

「…アルバイト、かあ…」

十分に、自然に満ち溢れた公園での散歩を堪能し…
そろそろ日も暮れ始めた夕刻の頃。

その散歩の時にあった出来事――――
自宅の近所の保育園の園長である、秋月 祥吾に声をかけられ…
まさか、自分がそこで保父さんとしてのアルバイトをすることとなるなんて。

人のいい、それでいて真面目な祥吾の真摯で真剣なお願いに心を震わされ…
思わず、そのお願いに首を縦に振ることとなった涼羽。

その後で細かいところまで聞いてみたところ…
時間は、園児が全員迎えに来た時点で終了でいいとのこと。
その時間帯も、曜日によって変わるが、だいたい十七時半~十八時の間くらいになる、とのこと。
放課後急いでその保育園に向かって、到着後すぐに準備して始めたとしたら、大体十五時半くらいからの開始となるはず。
それを考慮すると、平日は大体二時間~二時間半くらいの勤務時間になるだろう。

業務の内容は、初めに聞いていた通り、園児の面倒を見ること。
つまり、幼い子供の相手が基本となるので、状況に応じて動く必要がある。
特に、今メインとなっている保母さんが年配ということもあるので…
そちらの負担を少しでも軽くするためのサポートも必要になってくるだろう。

また、平日と比べるとかなり少ないが…
土曜日にも、子供を預けてくる家庭があるため、基本的に土曜日も園児はいるらしい。
ただし、それは毎週ではなく、ほぼ隔週となっているとのことだが。

その時は、フルタイムで働くことは十分可能だと、涼羽は判断している。
涼羽の高校は、土曜日は授業がないため、普通に出勤できるだろうと思っている。

どうしても平日に早く帰る必要があったりする場合は、申し出てくれれば大丈夫、とのこと。
この辺も、向こうとしては非常勤扱いの学生アルバイトなので、無理は言わないスタンスなのだ。

ただ、秋月保育園の現在の実情を聞いてしまった涼羽としては、週六日全て働きたいと思っており…
そうして、少しでも現在の職員の人達の負担を軽減させてあげたい、と本気で思っている。

なので、今からアルバイトが始まってからの日々の生活に関して、ルーチンを脳内で調整中の状態だ。

それと、もともと新しいことに取り組むのは好きであり…
取り組んだことに対して、自身を向上させていくことに努力を惜しまない性格のため…
今から、内心アルバイトが始まるのを楽しみにしている面もある。

家庭環境の事情で部活もできなかった涼羽。
当然、アルバイトなど、できるはずもなかった。

普段から家のことで目いっぱい働いている涼羽なだけに…
働く、ということに関して非常に興味を持っていたのだ。

本当に偶然の出来事からなったこととはいえ…
自身が働く、ということが実現する、と思っただけで、涼羽の心も楽しみな気持ちでいっぱいになり…
どんなことをするのか、それをしていくことで、どんなことが自分にできるようになっていくのか…
今からワクワクしてしまっている、涼羽なのであった。



――――



「…ここで、働くことになるんだな…」

公園での散歩からの帰りに、少し寄り道して…
実際の勤務場所となる、秋月保育園の方に来てみた涼羽。

今は土曜日の夕方ということもあり、施設そのものは機能していない状態で、静かだ。

園児が勝手に外に出られないように、と、敷地を囲む壁は大人が乗り越えるのも困難な高さになっており…
また、一つしかない入り口となる正門の方も、十分すぎるほどの高さがある。

門の方は下につけられた滑車を転がして動かす、スライド式。
内側で閂型の鍵があり、それも幼児の背では届かない位置にある。

敷地面積に対して、施設となる建物の大きさはそれほどでもなく…
幼児達が遊ぶには十分な広さと遊具施設がある。

これなら、高く作られた壁の中を息苦しく感じることもないと思われる。

だからといって、施設となる建物そのものもそこまで小さいわけではなく…
五十人を数える園児を収めてなお、十分なスペースがあるものであった。

階は三階まで存在し、園児が活動する部屋は二階まで。
三階は、事務室や設備室といった、職員側のスペースとなっている。

一階の端の方に、調理室となる給食センターがあり、そこから園児の食事が配膳されるようになっている。

ちなみに、事務室には事務作業用のコンピュータが数台存在しているが…
事務員が典型的な機械音痴ということもあり…
園児の情報や、職員の勤怠記録などの情報はほぼ、紙の帳簿による手書きでの管理となっている。

園長である秋月 祥吾は普通にコンピュータでの事務処理はできる。
といっても、それほど得意である、とは言えないのだが…

その祥吾が園児の世話をする保父の役割にベッタリなため…
どうしても普段の事務は、事務担当の職員一人に集中してしまう。

結果、コンピュータでのデータ管理を可能にするため…
この事務員が手書きで処理した記録を全て、祥吾がコンピュータにデータとして入力する必要が発生してしまうのだ。
とはいえ、事務系の管理自体はしっかりと行なってくれているため、手書きで残された記録をほぼそのまま入力するだけで済んでいるのだが。

それでも、一日一日の記録を打ち込んでいくとなると、それ相応の労力は避けられないため…
どうしても、祥吾の負担が大きくなってしまうのだが。

データ自体も、紙の帳簿をそのままコンピュータで再現しただけのものであり…
お世辞にも、データベースとは言えないもの。

そのため、月ごと、ジャンルごとのファイルが乱雑に並んでいるだけの状態なので…
いざ、そこから目的の情報を探すとなると、それだけでも労力を要してしまう。
それに、入力自体が二次元の表に直接打ち込む形になってしまうため…
どうしても、入力ミスのリスクが大きくなってしまうのだ。

給食に使う食材や、各消耗品の発注も、そんなこんなの事情により、電話での発注を行なっている。
だが、業者の方はメールやインターネットからの発注を推奨しており…
いい加減、そっちの方からの発注に切り替えて欲しいと思っている。

まあ、お得意様であることに変わりはないので、その辺を強く推すことはできないのだが。

職員の年齢層が高いこともあり、肉体的不安もあれば、この現代において、もはやデファクトスタンダードとまで言えるコンピュータによるデータ管理もままならず…
非常に問題に溢れている状況だと言える、この秋月保育園。

それでも、こうして日々をこなしていくことができているのは…
やはり、秋月園長を筆頭に、不器用でも自身の職務に対して真摯に取り組んでいくその姿勢…
そして、ここに来てくれる園児達のために、精一杯の真心を持って接していくその姿…
それらがあるからこその、この保育園なのだろう。

祥吾から伝えられた内情は、ほんの一部に過ぎないもの。
この職場で、一体どれだけのことができるのか…
すでにここで働いている人達の負担を、どのくらい軽減することができるのか…

「…俺にどれだけのことができるのか、全然分からないけど…頑張ろう!」

涼羽は、今からここで働くことが楽しみでたまらない状態と、なっていた。



――――



「お父さ~ん、お片付け、終わった~」
「おお、そうか~」

一方その頃、涼羽が不在の状況の高宮家では…
普段から涼羽にまかせっぱなしの、家の掃除や洗濯を…
父である翔羽と、娘である羽月の二人で手分けして、取り組んでいた。

普段から一人でこなしていて、手際のいい涼羽と比べると、進みは遅いものだが…
それでも、一つ一つを確実にこなしていっている。

そもそも、普段から涼羽が常に綺麗にしてくれていることもあるため、これといって目立った汚れやゴミもなく…
掃除に関しては、そこまですることがなかった、というのが大きかった。

ただ、翔羽と羽月、それぞれの自室の方が、普段の生活でややちらかってしまっていたので…
今はそれぞれの部屋を、片付けていっていたところなのだ。

洗濯に関しては、翔羽が使っているPCからインターネットで、基本的なことを検索して調べ…
それに基づいて、非常に無難なやり方で、じっくり時間をかけてこなしていった。

ゆえに、今では庭にある物干し場に、今回洗濯したもの全てが干されている状態だ。

天候的にも、この日はまるで問題がなく…
むしろ、暖かな日差しが差し込んでいたため…
絶好の洗濯日和だったとも言える。

干し始めたのが少し遅い時間帯だったため、取り込めるようになるのには、もう少し時間がいるが。

「お父さんは、終わった?」
「ん?おお。俺の方も、終わったぞ」

ちょうどそれぞれの部屋の片付けも終わり、お互いに顔を見合わせて、それぞれの進捗を確認する二人。
そこまでひどい散らかりようではなかったため、片付けに関しては、そこまで時間がかかるものではなかった。

ただ、普段から取り組んでいなかったこともあり、不慣れな洗濯や掃除はさすがに時間がかかり…
結局、朝食を食べてからすぐに行動開始したものの…
そこから昼食を挟んで、ほぼ一日作業となってしまった。

「えへへ♪きれいになったね♪」
「ああ。綺麗になったな」

翔羽も、羽月も、お互いに満面の笑みでそれぞれの顔を見合わせ…
普段から涼羽が一人でやっていることを、少しでも肩代わりできたことを喜んでいる。

「お兄ちゃんって、ほんとにすごいね~」
「ああ…涼羽はこんなことをいつも一人で、やってくれてたんだな~…」

自分達は二人がかりで取り組んだにも関わらず…
結構な時間と労力を要することとなった、今回の作業。

これだけのことを、毎回一人でこなしてくれている…
翔羽にとっては、目に入れても痛くないと豪語できる最愛の息子。
羽月にとっては、大好きで大好きでたまらない最愛の兄。

普段から、涼羽がどれほどこの家をしっかりと支えていてくれているのか…
普段から、涼羽がどれほど自分達のために動いていてくれているのか…

それらを、改めて実感することとなった二人であった。

「これで、後は涼羽の帰りを待つだけ、だな」
「うん!お兄ちゃん、早く帰ってきてくれないかな~♪」

そんな大好きな涼羽に、早く会いたくてたまらない。
そんな大好きな涼羽に、思いっきりべったりとしたくてたまらない。

涼羽の普段の仕事を代わってやりとげた、という達成感に満ちた笑顔。
そして、それにより涼羽が帰ってきたら思う存分べったりできる、という期待の笑顔。

その両方が入り混じった笑顔をお互いに向けながら、今か今かと、涼羽の帰りを待ちわびる二人なのであった。



――――



「……あれ?」

ひとしきり、自分の職場となる秋月保育園を眺めたあと…
そろそろ家に帰ろうと、その足を自宅に向けようとしたその時。

「ひっく…ひっく…」

その視線のすぐ先に、蹲って泣いている、小さな女の子の姿が映ってきたのだ。
年齢は見た限りでは三~四歳くらい。
襟元がふわふわとした、真っ白なトレーナーに、ひらひらとした同色のフレアスカート。
そして、童話の中のアリスを思わせる、白と青のストライプのタイツ。

その小さな手で顔を覆ってしまっているため、顔の造詣は分からないが…
少しふんわりとした、癖のある、黒に近い茶色のショートヘア。

以前、香奈と初めて会った時のようなシチュエーション。
それに、あの時と一緒だな、と思いながらも…

その幼い少女を見過ごす、という選択肢が涼羽にあるはずもなく…

とにかく、声をかけてみようと、その少女のそばまで近づいていった。

「どうしたの?なんで泣いてるの?」

あの時、香奈にした時と同じような、優しさと慈愛に満ち溢れた声を、目の前の少女にかける。
目の前で蹲る少女に目線を合わせるように、膝を地について。

「ひっく…えう?」

その声に気づいた少女が、その小さな両手から顔を離し、声のする方向へ向ける。

露になった少女の顔立ちは、くりくりとした大きな目に、小さくツンとした鼻。
そして、小さく可愛らしい唇と、整った造りをしている。

香奈と比べても、人並み以上に整った感じが強く、まるで精巧に作られた人形を思わせる…
まさに後の美少女として、非常に期待値の高い顔立ちをしていた。

ただ、その顔も、涙に濡れてくしゃくしゃになってしまってはいたが。

「あ…」

泣いて蹲っていた自分にかけられた、その優しげな声の主を見て、その泣き声が思わず止まる。

そのあまりにも優しく、母性と慈愛に満ち溢れた、幼げな美少女顔。
それが、自分に向けられていることで、少女の暗く沈んだ心にほっこりとした温かさが生まれてくる。

「かわいそうに…こんなに泣いて顔、くしゃくしゃにしちゃって…」

そんな沈んだ泣き顔の少女の頭を、壊れ物を扱うかのような繊細な手つきで、優しく撫でる涼羽。
そして、もう片方の手で、涙に濡れた少女の顔を、ポケットから取り出したハンカチで、優しく拭っていく。

「ん…」
「ほら、泣かないで。その可愛いお顔、綺麗にしてあげるね」

いきなり触れられてびくりとしたものの…
その手つきがくれる心地のよさに、思わず目を細めてしまう少女。
そして、目の前の人物が、自分を決して害することはない、という確信が、生まれてくる。
そう思うと、一人で蹲っていたことによる寂しさが埋められていくような感じがして…

「んぅ…」

思わず、自分を優しく扱ってくれる人物――――涼羽――――の胸にそっと抱きつき…
その小さな顔を、まるでマーキングするかのように涼羽の華奢な胸に擦り付け、頬ずりする。

「…ふふ…」

本当に、あの時と同じだと、涼羽は思った。
香奈の時も、こうして抱きついてきたな、と。
たまたま見かけただけの、この名前も知らない少女。
この少女も、その香奈と同じように自分に甘えてきてくれていると思うと…
途端に、この少女が可愛くてたまらなくなって、その小さな身体を、壊れ物を扱うような繊細さで抱きしめる。

「…だっこ、しゅき…」

まるで本当の母親のように、自分をこうして包み込んでくれるこの人物。
そんな人物がくれる、その幸福感と安らぎ。
それがたまらなく嬉しくて…
その舌足らずで、鈴の鳴るかのような可愛らしい声が、漏れ出てしまう。

「ふふ、よしよし」
「もっと、もっとちて?」
「うん、もっとしてあげるね?」
「えへへ…」

香奈よりもさらに幼く舌足らずな、その甘えてくる声。
こんな風に甘えられることに、とても幸せを感じてしまう涼羽が、そんな声に何も思わないはずなどなく…
その少女が求めるがままに、その幼く小さな身体を優しく抱きしめ…
そのふわふわとした髪を梳くように、その小さな頭を優しく撫でる。

そんな涼羽の優しさと母性、そして慈愛がくれる、その言いようのない幸福感。
その幸せな気持ちが、少女の幼い顔に、無邪気な笑顔を取り戻させてくれることと、なった。

やはり涼羽の幼い子供に対する接し方はどんな子に対しても通用するようで…
この少女も、すっかり涼羽に懐いてしまったのか…
その小さな手が、涼羽の華奢な身体から離れる様子を見せることなどなく…
逆に、もっと、もっとと言わんばかりに、目いっぱいの力でべったりと抱きついてくる。

「ふふ…ねえ、お名前、いえる?」

そんな感じで、すっかり自分にべったりと抱きついて、その幸せそうな天真爛漫な笑顔を浮かべている少女に、優しげな声で問いかける涼羽。
見た感じ、香奈よりも幼いようなので、自分の名前がちゃんと言えるかどうかは、正直分からないところはあるが。

「ちゃちゃき かちゅみ」

自分の名前というもの…
そして、名前を聞かれた時に何を答えればいいのか、は、分かっているようだ。

ただ、その舌足らずな発音のおかげで、うまく伝えることができないでいるのだが。
涼羽には、それがとても可愛らしく思えて…
ついつい、よりいっそうの優しさを込めてその頭を撫でてしまっている。

「おりこうさんだね、自分のお名前、言えるんだ」
「うん!えへへ」
「え~と…かすみちゃん、でいいのかな?」
「うん!わたち、かちゅみ!」

その舌足らずな発音のおかげで、名前の方が『かつみ』なのか、『かすみ』なのか判断がつき辛かった涼羽。
女の子なので、どちらかと言えば『かすみ』なのかな、と思い、そちらの方で問いかけてみたが…
どうやら、『かすみ』の方で合っているようだ。

ただ、それに答えてくれた声も舌足らずで、はっきりとしたものではなかったのがまた可愛らしかったのだが。

「ふふ、じゃあかすみちゃんは、今、いくつ?」

そんな少女――――かすみ――――に、せっかくなので、年齢も聞いてみる。
香奈よりも幼いのは間違いないので、おそらく三歳くらいではないか、と、あたりはつけているが。

「ちゃんちゃい!」

その天真爛漫な笑顔を絶やさず、先程までの沈んだ様子が嘘のような元気な声で答えるかすみ。
返ってきた答えは、涼羽の予想を確信に変えるものだった。

「おにゃまえは~?」
「え?」

今度は、かすみの方が涼羽に名前を聞いてくる。
いきなりなかすみの質問に、涼羽は思わず面食らった表情になってしまう。

「おねえちゃんの、おにゃまえ」
「!う…」

にこにこと、嬉しそうな笑顔でさらに問いかけるかすみの声。
初対面の幼子にまで、しっかりと女の子だと思われていることに、ショックを隠せない涼羽。

それでも、気を取り直し、かすみの問いかけに答えようと、その声を紡ぎ始める。

「お…お…お、姉ちゃんはね…涼羽っていうお名前なの」
「りょお?」
「う、うん…涼羽だよ」
「りょう…おねえちゃん…」
「う、うん…そう…」

内心、声を大にして自分は男だと言いたくなるところなのだが…
それを懸命に抑えて、その問いかけに答えていく涼羽。

これが自分と同年代以上の相手だったのなら、間違いなく涼羽はそれを抑えることをしなかっただろう。

こんな、舌足らずで幼い子供だったからこそ、グッとこらえることにしたのだ。

それでも、よほど自分が女の子だという勘違いを是正したかったのか…
その声には、納得のいかなさが滲み出ていた。

せめて、小学生くらいの子供だったのなら、ちゃんと言い聞かせることができたはずなのに。
そんな思いが胸中を占めてしまっているのだが。

しかし、このかすみよりも一つだけとはいえ、年上の香奈が、涼羽が男だということを全く信じてくれなかったのだから…
いかにその思いが無駄なものかということが、涼羽には分かってはいなかった。

「りょうおねえちゃん!」
「!な、なあに?」
「わたち、りょうおねえちゃん、らあ~いちゅき!」

いきなりのかすみの元気のいい呼びかけに、びくりとしながらも答える涼羽。
そして、そのかすみから、弾むような可愛らしい、それでいて舌足らずな声で、大好きと告げられる。

その優しさ、母性、慈愛…
それでもって、これでもかというくらいに自分を包み込んでくれる目の前の可愛いお姉ちゃん。

そんなお姉ちゃんが、大好きで大好きでたまらなくなってしまっているかすみ。
今この時出会ったばかりなのにも関わらず…

あの時の香奈と同じように、このかすみもすぐに懐いてしまい…
もうこれでもかというくらいに、涼羽にべったりと抱きついてしまっている。

「…ふふ、ありがとう…」

そんなかすみが可愛くてたまらなくなったのか…
戸惑いを隠せなかった涼羽の顔にも、優しい笑顔が浮かんでくる。

まさに幸せのひと時、と言えるであろうそのやりとり。
そのやりとりを終わらせたくなかったのか…
かすみは、これでもかと言えるほどに涼羽にべったりとし、う~んと甘えてくるのだった。

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