とある英雄達の最終兵器
第145話 居眠り運転は絶対にしちゃダメだぞ
「おい、テップ? もう市門見えてるぞ? おい? おーい? テップさーん聞いてますかー? 落ち着いてやれば君にもできるよ? おい! おいっ!! ブ、ブレぇぇーキ!!」
懐かしのリバティが目前に迫り、数十メートル先には市門と、そこの番をする衛兵の姿が見える。テュールは、御者席に何度も声を掛けるが全く返事がないことに焦り、遂には叫ぶ。
「……はっ!! ツヨシ止まれぇぇえ!!」
「ぶるふぁぁああ!!」
ようやくテュールの声に気付いたテップはトップスピードから一気に減速し、急停止を図る。その結果は当然──。
「にょわぁああーーー!!」
「キャっ」
「……これはいい訓練になりそう」
馬車ならぬベヒーモス車に乗った者たちを転がす結果になる。そしてツヨシは盛大に土煙を上げ、地面を焼き焦がしなら衛兵の直前で止まる。
「ハァハァ……、ビビったぁ。……って、な、何者だっ!!」
物凄い勢いで接近してきたベヒーモス車に胸を抑える衛兵。頭をニ、三度振り再起動すると毅然とした態度で土煙の中へ声を掛ける。そして視界が晴れると、まず目に映ったのはこの男──。
「フハハハハハ!! やべっ気持ちよくて寝てた。だが、そんなことは気にしない。とぉーぅ!! 久しぶりだなチーノ!!」
「ん? あぁ、なんだテップか。つーかテメぇいい加減にさんを付けろ。さんを! チーノさんだろが! って、そんなことよりこれはどういう──」
「あっ、チーノさんチッス!」
「……そりゃそうか、色男もいるわな。久しぶりだな。お前らがいないリバティは静かで過ごしやすいが、如何せん華がない。お姫様方もいるんだろ?」
ベヒーモス車の扉を開け、ウーミアを抱きかかえたテュールが降りる。そしてテュールは門の守衛をしているチーノに挨拶をする。チーノはと言えば、そんなテュールを見るなり、男どもには用がない、少女たち五人を出せと言ってくる。
テュールは肩をすくめ、一つ嘆息をつくと中から順番に女性陣を降ろしていく。そして一番先に降りるのはいつもこの少女。
「おぉー、チーノ久しぶりなのだ! それにペペロンも元気だったのだ?」
「おう、リリスちゃん久しぶりだなっ! 相変わらず元気で可愛らしいねぇ~」
「……ウス。自分も元気ス」
「なはははー! ペペロン全然元気そうじゃないのだ!」
そして、リリスはチーノの横に立つペペロンと呼ばれた衛兵をペシペシと叩きながら門をくぐっていく。それに続いて他の女性陣も次々に門をくぐる。
「お久しぶりです。お勤めご苦労さまです」
「……ん、ご苦労さま」
「フフ、いつも街の平和をありがとうございます」
「……ほら、ミア?」
「ごくろーさまですっ」
最後尾を歩くレフィーは、テュールからミアをひょいと取り上げ、衛兵の前で立ち止まる。そしてウーミアを衛兵の前に掲げると、ウーミアはピシッと敬礼し、真剣な表情で労う。
「ハハハ、ウーミアちゃんありがとな! おかえりなさいませっ!」
「……ウス、おかえりなさいませ」
そして、そんなウーミアに敬礼を返すチーノとペペロン。
そんな光景にほっこりした男性陣も女性陣に続く。
「さてっ、んじゃツヨシ行くべ」
「はぁー、とりあえず帰って昼寝……できねぇだろうなー。モヨモトたち三日も修行に付き合えなかったからウズウズしてんだろうなー」
「ハハ、違いないな。あぁー、俺は酒飲みてぇ」
「フフ、今日の修行が終わったら一杯飲みにいこうよー」
「恐らく修行が終わるのは夜中三時を回るでしょうが、銀星亭ならその時間でもやっているでしょう」
「るふぁっ♪」
何気ない会話をしながらツヨシとともに門をくぐろうとした。しかし──。
「…………えと、チーノさん? ペペロンさん? 何でそんな物騒なもので道を塞いでいるんですかね?」
チーノとペペロンの持つ長剣が交差するように掲げられ、テュールたちの行く手は阻まれた。
「おい、テュール? なになかったことにしようとしてんだ? おまえ、この牛みてぇなやつなんだ? お前のことだからただの牛じゃねぇだろ? つーか、こんな生き物みたことねぇよ」
「……ウス、自分も見たことないス」
そして、ツヨシを睨みながらその正体を明かせと要求される。当然、ベヒーモスなどと言ったら街に入れることは不可能だ。リエースではルチアの威光で何も聞かれずに預けられたが、リバティではそうはいかない。
「あー……。牛です。突然変異の牛です。リエース共和国で今流行っているんですよ。な? ツヨシ? お前牛だよな?」
テュールはとりあえずいつも通り、その場しのぎの嘘をつく。実に学習しない男である。そして、話を振られたツヨシはと言うと──。
「る……もふぁぁー。もぉふぁぁ」
精一杯牛の鳴き真似をしてくれたのであった。
「……ったく。危険じゃないだろうな? とにかくお前がまた怪しい生き物を持ち込んだってことはウェッジ隊長に言っておくからな? ちゃんとギルドで騎獣登録しておけよ?」
テュールとツヨシのやり取りを完全に疑った目で見ながら、それでも諦めたように入場を許すチーノとペペロン。
「あざーっす。了解です。んじゃ、改めて……。ただいまっ! リバティーよ!!」
門をくぐったテュールは立ち止って街を見渡し、まるで英雄が凱旋したかのように大袈裟に声を張り上げる。当然他の四人とツヨシは、無言でテュールの横を追い越していく。
「んじゃー、まずはツヨシの登録しにいこうぜー」
テップが街の中で待っていた少女たちに声を掛ける。そしてその発言を受け、可愛らしいケモミミをピクリと動かす少女がいる。
「……ん、飼い主は私」
テップとレーベは、静かに睨み合う。そんな二人を見て周りの少女たちは苦笑だ。そしてカグヤがバカなことをしているテュールを引っ張ってくると、遊楽団の面々は冒険者ギルドを目指す。
キィ。
年季の入った扉がいつものように一鳴きし、開かれる。
「あら、テュールさん、それに皆さんも。確かリエースに行ってらしたんですよね? おかえりなさい」
「あぁ、レセさん、そうなんですよ。今戻りました」
ひらひらと手を振る受付嬢のレセ。それに軽く手を挙げ、応えるテュール。
「それで? 今日は何のごよ……、んん? その、生き物はなんでしょうか?」
「えと、用はそれなんですが、こいつの騎獣登録に来ました。なんていう種類の魔獣かは分からないんですけど、ちゃんと制御できているんで……、な、ツヨシ?」
「るふぁっ♪」
「……ふむ、では裏の訓練場へ連れて来て下さい。騎獣としてきちんと制御できているかの試験をしますので、それに通れば騎獣の証を渡します。仮に試験を通り、騎獣と認められても問題を起こせば登録した飼い主の責任となるので、承知しておいてくださいね?」
受付カウンターから出てきたレセはツヨシを一周見て歩き、一つ頷くとそう指示する。
「……ん、私が飼い主。ちゃんと責任をとる。ツヨシがんばろ?」
そして、テュールとレセの間に割って入るようにレーベが歩みを進め、そう宣言する。
「るふぁっ!!」
これに応えるようにツヨシも目に闘志を燃やし、鼻息を荒くする。
「フフ、では騎獣担当の者を寄越しますので、皆さんは裏へどうぞ」
そしてレセはそんなレーベとツヨシを見て、微笑むとカウンターの奥へと下がっていく。
こうして遊楽団一同は、ツヨシ騎獣試験に臨むこととなる。
懐かしのリバティが目前に迫り、数十メートル先には市門と、そこの番をする衛兵の姿が見える。テュールは、御者席に何度も声を掛けるが全く返事がないことに焦り、遂には叫ぶ。
「……はっ!! ツヨシ止まれぇぇえ!!」
「ぶるふぁぁああ!!」
ようやくテュールの声に気付いたテップはトップスピードから一気に減速し、急停止を図る。その結果は当然──。
「にょわぁああーーー!!」
「キャっ」
「……これはいい訓練になりそう」
馬車ならぬベヒーモス車に乗った者たちを転がす結果になる。そしてツヨシは盛大に土煙を上げ、地面を焼き焦がしなら衛兵の直前で止まる。
「ハァハァ……、ビビったぁ。……って、な、何者だっ!!」
物凄い勢いで接近してきたベヒーモス車に胸を抑える衛兵。頭をニ、三度振り再起動すると毅然とした態度で土煙の中へ声を掛ける。そして視界が晴れると、まず目に映ったのはこの男──。
「フハハハハハ!! やべっ気持ちよくて寝てた。だが、そんなことは気にしない。とぉーぅ!! 久しぶりだなチーノ!!」
「ん? あぁ、なんだテップか。つーかテメぇいい加減にさんを付けろ。さんを! チーノさんだろが! って、そんなことよりこれはどういう──」
「あっ、チーノさんチッス!」
「……そりゃそうか、色男もいるわな。久しぶりだな。お前らがいないリバティは静かで過ごしやすいが、如何せん華がない。お姫様方もいるんだろ?」
ベヒーモス車の扉を開け、ウーミアを抱きかかえたテュールが降りる。そしてテュールは門の守衛をしているチーノに挨拶をする。チーノはと言えば、そんなテュールを見るなり、男どもには用がない、少女たち五人を出せと言ってくる。
テュールは肩をすくめ、一つ嘆息をつくと中から順番に女性陣を降ろしていく。そして一番先に降りるのはいつもこの少女。
「おぉー、チーノ久しぶりなのだ! それにペペロンも元気だったのだ?」
「おう、リリスちゃん久しぶりだなっ! 相変わらず元気で可愛らしいねぇ~」
「……ウス。自分も元気ス」
「なはははー! ペペロン全然元気そうじゃないのだ!」
そして、リリスはチーノの横に立つペペロンと呼ばれた衛兵をペシペシと叩きながら門をくぐっていく。それに続いて他の女性陣も次々に門をくぐる。
「お久しぶりです。お勤めご苦労さまです」
「……ん、ご苦労さま」
「フフ、いつも街の平和をありがとうございます」
「……ほら、ミア?」
「ごくろーさまですっ」
最後尾を歩くレフィーは、テュールからミアをひょいと取り上げ、衛兵の前で立ち止まる。そしてウーミアを衛兵の前に掲げると、ウーミアはピシッと敬礼し、真剣な表情で労う。
「ハハハ、ウーミアちゃんありがとな! おかえりなさいませっ!」
「……ウス、おかえりなさいませ」
そして、そんなウーミアに敬礼を返すチーノとペペロン。
そんな光景にほっこりした男性陣も女性陣に続く。
「さてっ、んじゃツヨシ行くべ」
「はぁー、とりあえず帰って昼寝……できねぇだろうなー。モヨモトたち三日も修行に付き合えなかったからウズウズしてんだろうなー」
「ハハ、違いないな。あぁー、俺は酒飲みてぇ」
「フフ、今日の修行が終わったら一杯飲みにいこうよー」
「恐らく修行が終わるのは夜中三時を回るでしょうが、銀星亭ならその時間でもやっているでしょう」
「るふぁっ♪」
何気ない会話をしながらツヨシとともに門をくぐろうとした。しかし──。
「…………えと、チーノさん? ペペロンさん? 何でそんな物騒なもので道を塞いでいるんですかね?」
チーノとペペロンの持つ長剣が交差するように掲げられ、テュールたちの行く手は阻まれた。
「おい、テュール? なになかったことにしようとしてんだ? おまえ、この牛みてぇなやつなんだ? お前のことだからただの牛じゃねぇだろ? つーか、こんな生き物みたことねぇよ」
「……ウス、自分も見たことないス」
そして、ツヨシを睨みながらその正体を明かせと要求される。当然、ベヒーモスなどと言ったら街に入れることは不可能だ。リエースではルチアの威光で何も聞かれずに預けられたが、リバティではそうはいかない。
「あー……。牛です。突然変異の牛です。リエース共和国で今流行っているんですよ。な? ツヨシ? お前牛だよな?」
テュールはとりあえずいつも通り、その場しのぎの嘘をつく。実に学習しない男である。そして、話を振られたツヨシはと言うと──。
「る……もふぁぁー。もぉふぁぁ」
精一杯牛の鳴き真似をしてくれたのであった。
「……ったく。危険じゃないだろうな? とにかくお前がまた怪しい生き物を持ち込んだってことはウェッジ隊長に言っておくからな? ちゃんとギルドで騎獣登録しておけよ?」
テュールとツヨシのやり取りを完全に疑った目で見ながら、それでも諦めたように入場を許すチーノとペペロン。
「あざーっす。了解です。んじゃ、改めて……。ただいまっ! リバティーよ!!」
門をくぐったテュールは立ち止って街を見渡し、まるで英雄が凱旋したかのように大袈裟に声を張り上げる。当然他の四人とツヨシは、無言でテュールの横を追い越していく。
「んじゃー、まずはツヨシの登録しにいこうぜー」
テップが街の中で待っていた少女たちに声を掛ける。そしてその発言を受け、可愛らしいケモミミをピクリと動かす少女がいる。
「……ん、飼い主は私」
テップとレーベは、静かに睨み合う。そんな二人を見て周りの少女たちは苦笑だ。そしてカグヤがバカなことをしているテュールを引っ張ってくると、遊楽団の面々は冒険者ギルドを目指す。
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「あら、テュールさん、それに皆さんも。確かリエースに行ってらしたんですよね? おかえりなさい」
「あぁ、レセさん、そうなんですよ。今戻りました」
ひらひらと手を振る受付嬢のレセ。それに軽く手を挙げ、応えるテュール。
「それで? 今日は何のごよ……、んん? その、生き物はなんでしょうか?」
「えと、用はそれなんですが、こいつの騎獣登録に来ました。なんていう種類の魔獣かは分からないんですけど、ちゃんと制御できているんで……、な、ツヨシ?」
「るふぁっ♪」
「……ふむ、では裏の訓練場へ連れて来て下さい。騎獣としてきちんと制御できているかの試験をしますので、それに通れば騎獣の証を渡します。仮に試験を通り、騎獣と認められても問題を起こせば登録した飼い主の責任となるので、承知しておいてくださいね?」
受付カウンターから出てきたレセはツヨシを一周見て歩き、一つ頷くとそう指示する。
「……ん、私が飼い主。ちゃんと責任をとる。ツヨシがんばろ?」
そして、テュールとレセの間に割って入るようにレーベが歩みを進め、そう宣言する。
「るふぁっ!!」
これに応えるようにツヨシも目に闘志を燃やし、鼻息を荒くする。
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コメント
Ashley
今回も面白かったです!