とある英雄達の最終兵器
第103話 耳がぁぁぁ!!耳がぁぁぁぁ!!
(ダメ、か……ミアすまない)
広大な谷底一面を影で覆い尽くすような巨大な両腕が振り上げられ――。
ズゥゥゥウウウン。
テュールのギリギリをかすめるように、両腕を地面へと降ろしたベヒーモスは、その巨体を谷底へと這いつくばらせる。
「……へ?」
目を閉じ覚悟を決めてたテュールがおかしいな、と目を開けた時にベヒーモスは伏せの体勢になっていた。
「……は? な、何がどうなっ――」
「クゥーーーハッハッハ!! クゥワァッハッハ!! 俺様大勝利の巻ッッ!!」
何が何だか分からないテュールの耳に聞き覚えのある声が届く。その声の主を探すと――。
1人の男がベヒーモスの背中の上で仁王立ちし高笑いしていた。そう、その声の主こそ真っ先に逃げたかに思われていたテップであった。
テュール、それに人の姿に戻ったアンフィスとヴァナルもにわかに信じられない光景に言葉を失くす。10秒、20秒、鼻息荒く伏せの状態のままでベヒーモスが動かないのを確認し、3人はテップのもとへと降り立つ。
「おい、テップ……どういうことだ?」
「ん? いやちみ達が戦っている間にこっそぉりとベヒーモスの頭に張り付いて脳みそに直接魔法陣を刻みこんで支配下に置いただけさっ。フハハハハ俺天才!! 教科書に名前が載るぞ!! 伝説の国喰いを超えたベヒーモスを調伏せし男……その名も――テェェェェッッップ!!」
仮面ラ◯ダーの変身ポーズを取りながら浮かれまくってはしゃぐテップ。
「い、いや、すごいけど……。え、ほんと大丈夫?」
テュールは今尚動かないベヒーモスを見ながらも詰めの甘さに定評のあるテップに一株の不安を覚える。
「ッフ、では見せてあげよう! ベヒーモスのイカヅチを!!」
しかし、テップはそんな不審な視線にも動じることなく余裕の笑みを浮かべ某ラピュタ王のようなセリフを吐く。
そんなエセラピュタ王の言葉に反応するようにベヒーモスがその頭をもたげ、背中にいる4人へと振り返る。そして口を大きく開き――。
「「「――!?」」」バッ!!
テップを除く3人は脊髄反射で四方へ散らばるように退避する。
「ブルふぁ~」
「「「…………」」」
「ップ、ダハハハハハ!! ビビった? ビビった? ねぇビビった? どぉーだ! 俺の手にかかればベヒーモスにあくびをさせるのも朝飯前なのだよ!!」
テュールはテップの揺るがない自信にどうやら本当に支配下においたと信じ始める。しかし、その前に――。
「はぐぁ! ぐるぶふっ! でべろっぷぁ! な、何をするんだお前らぁ……」
テップの態度にイラついた3人は一発ずつ殴る。わりと強めに。
「で、テップ? こいつどうする気だ?」
「おぉーいてて――ん? こいつか? そりゃ最初の計画通り車を引かせてリエースを目指すだろ」
その言葉に再度ベヒーモスぼ頭から尻尾までを眺めるテュール。
「この巨体でか?」
その言葉にテップも流石にマズイと思ったのだろう、悩む仕草を見せる。
「ブルふぁ?」
「ん?」
そんな悩んでるテップに何か声をかけているベヒーモス。テップはその言葉に眉をひそめ、耳を傾けている。隣で聞いているテュールには当然何を言ってるか分からない。
「ふむふむ」
しかしテップはどうやら会話が通じてるようでベヒーモスの声に相槌を打っている。
「おいテップ? こいつ何て言ってるんだ?」
そんなテュールの問いかけにテップは答えず、ベヒーモスの訴えに思案顔で何度も頷くテップ。
「おい? テップ聞いて――」
「シッ!! うんうん。ほむほむ」
(こ……こんにゃろう……!)
なおも話しかけるテュールを手で制し、ベヒーモスと会話(?)を続けている様子のテップ。そして、目を閉じ、深く息を吸ったかと思うと――。
「ぷぅぅちぃぃベヒィィィモスもぉぉぉぉっっっど!!」
突如叫びだした。
(もうヤダこの子……ついていけない……)
テップのあまりにも自由な行動に頭を抱えるテュールであった。
「ブルァァァァァァアアアア!!」
そして飼い主が飼い主なためかこっちも叫び出す始末である。谷底が揺れる、揺れる。テュール、アンフィス、ベリトは咄嗟に耳を塞ぐが、テップは仁王立ちのまま天を仰いでる。その耳から血を流して――。
(っておい! あいつ鼓膜破けてんじゃねぇか!! アホもあそこまで行くと清々しいな……)
そしてそんなベヒーモスは光に包まれその背中が蠕動し始める。4人はその背から飛び降り、行方を見守る。
「ぶふぁ~」
光が収まると、そこに現れたのは体長2m程の紫色の牛だった。先ほどまでの凶悪な面相と違い、どことなくまぬけ面に。ツノも左右に捻れたものが一本ずつ残っているだけであとの7本は綺麗さっぱり消えている。爪や牙もすっかり短くなり、また筋肉隆々だった四肢もどことなくぽっちゃりしてしまっている。
「えっらい可愛らしくなったな……これになら勝てそうだな」
目の前でぶふぁぶふぁ言いながら口をクッチャクッチャしているベヒーモスを眺めてテュールが呟く。
「え? なんて?」
テップの聴力は戻っていなかった。
「あーあー、よし。さて、あいつらと合流してこのベヒーモスでリエース目指そうぜ! なっ!」
「ぶるふぁ!」
しばらくあーあー言って聴力が戻ったのを確認したテップは3人と一匹にそう言う。そしてテップはベヒーモスに跨ると、両の捻れたツノを握り――。
「つーわけで崖の上で会おう。はいよぉぉおおお!!」
「ぶるふぁぁぁあああ!!」
崖を垂直にものすごい速度で駆け上がっていく。
(あんなギャグみたいなノリだけど流石は伝説の魔獣……腐っても鯛は鯛、か)
やはり最後まで呆れた様子で見届ける3人であった。
こうして4人と一匹は無事災厄の谷から生還し、仲間との合流を果たす。
当然テップの乗っている謎の牛みたいな生物が何か気になった面々はそれを尋ね、得意そうに経緯を話すテップに少しイラついたのは言うまでもない。
広大な谷底一面を影で覆い尽くすような巨大な両腕が振り上げられ――。
ズゥゥゥウウウン。
テュールのギリギリをかすめるように、両腕を地面へと降ろしたベヒーモスは、その巨体を谷底へと這いつくばらせる。
「……へ?」
目を閉じ覚悟を決めてたテュールがおかしいな、と目を開けた時にベヒーモスは伏せの体勢になっていた。
「……は? な、何がどうなっ――」
「クゥーーーハッハッハ!! クゥワァッハッハ!! 俺様大勝利の巻ッッ!!」
何が何だか分からないテュールの耳に聞き覚えのある声が届く。その声の主を探すと――。
1人の男がベヒーモスの背中の上で仁王立ちし高笑いしていた。そう、その声の主こそ真っ先に逃げたかに思われていたテップであった。
テュール、それに人の姿に戻ったアンフィスとヴァナルもにわかに信じられない光景に言葉を失くす。10秒、20秒、鼻息荒く伏せの状態のままでベヒーモスが動かないのを確認し、3人はテップのもとへと降り立つ。
「おい、テップ……どういうことだ?」
「ん? いやちみ達が戦っている間にこっそぉりとベヒーモスの頭に張り付いて脳みそに直接魔法陣を刻みこんで支配下に置いただけさっ。フハハハハ俺天才!! 教科書に名前が載るぞ!! 伝説の国喰いを超えたベヒーモスを調伏せし男……その名も――テェェェェッッップ!!」
仮面ラ◯ダーの変身ポーズを取りながら浮かれまくってはしゃぐテップ。
「い、いや、すごいけど……。え、ほんと大丈夫?」
テュールは今尚動かないベヒーモスを見ながらも詰めの甘さに定評のあるテップに一株の不安を覚える。
「ッフ、では見せてあげよう! ベヒーモスのイカヅチを!!」
しかし、テップはそんな不審な視線にも動じることなく余裕の笑みを浮かべ某ラピュタ王のようなセリフを吐く。
そんなエセラピュタ王の言葉に反応するようにベヒーモスがその頭をもたげ、背中にいる4人へと振り返る。そして口を大きく開き――。
「「「――!?」」」バッ!!
テップを除く3人は脊髄反射で四方へ散らばるように退避する。
「ブルふぁ~」
「「「…………」」」
「ップ、ダハハハハハ!! ビビった? ビビった? ねぇビビった? どぉーだ! 俺の手にかかればベヒーモスにあくびをさせるのも朝飯前なのだよ!!」
テュールはテップの揺るがない自信にどうやら本当に支配下においたと信じ始める。しかし、その前に――。
「はぐぁ! ぐるぶふっ! でべろっぷぁ! な、何をするんだお前らぁ……」
テップの態度にイラついた3人は一発ずつ殴る。わりと強めに。
「で、テップ? こいつどうする気だ?」
「おぉーいてて――ん? こいつか? そりゃ最初の計画通り車を引かせてリエースを目指すだろ」
その言葉に再度ベヒーモスぼ頭から尻尾までを眺めるテュール。
「この巨体でか?」
その言葉にテップも流石にマズイと思ったのだろう、悩む仕草を見せる。
「ブルふぁ?」
「ん?」
そんな悩んでるテップに何か声をかけているベヒーモス。テップはその言葉に眉をひそめ、耳を傾けている。隣で聞いているテュールには当然何を言ってるか分からない。
「ふむふむ」
しかしテップはどうやら会話が通じてるようでベヒーモスの声に相槌を打っている。
「おいテップ? こいつ何て言ってるんだ?」
そんなテュールの問いかけにテップは答えず、ベヒーモスの訴えに思案顔で何度も頷くテップ。
「おい? テップ聞いて――」
「シッ!! うんうん。ほむほむ」
(こ……こんにゃろう……!)
なおも話しかけるテュールを手で制し、ベヒーモスと会話(?)を続けている様子のテップ。そして、目を閉じ、深く息を吸ったかと思うと――。
「ぷぅぅちぃぃベヒィィィモスもぉぉぉぉっっっど!!」
突如叫びだした。
(もうヤダこの子……ついていけない……)
テップのあまりにも自由な行動に頭を抱えるテュールであった。
「ブルァァァァァァアアアア!!」
そして飼い主が飼い主なためかこっちも叫び出す始末である。谷底が揺れる、揺れる。テュール、アンフィス、ベリトは咄嗟に耳を塞ぐが、テップは仁王立ちのまま天を仰いでる。その耳から血を流して――。
(っておい! あいつ鼓膜破けてんじゃねぇか!! アホもあそこまで行くと清々しいな……)
そしてそんなベヒーモスは光に包まれその背中が蠕動し始める。4人はその背から飛び降り、行方を見守る。
「ぶふぁ~」
光が収まると、そこに現れたのは体長2m程の紫色の牛だった。先ほどまでの凶悪な面相と違い、どことなくまぬけ面に。ツノも左右に捻れたものが一本ずつ残っているだけであとの7本は綺麗さっぱり消えている。爪や牙もすっかり短くなり、また筋肉隆々だった四肢もどことなくぽっちゃりしてしまっている。
「えっらい可愛らしくなったな……これになら勝てそうだな」
目の前でぶふぁぶふぁ言いながら口をクッチャクッチャしているベヒーモスを眺めてテュールが呟く。
「え? なんて?」
テップの聴力は戻っていなかった。
「あーあー、よし。さて、あいつらと合流してこのベヒーモスでリエース目指そうぜ! なっ!」
「ぶるふぁ!」
しばらくあーあー言って聴力が戻ったのを確認したテップは3人と一匹にそう言う。そしてテップはベヒーモスに跨ると、両の捻れたツノを握り――。
「つーわけで崖の上で会おう。はいよぉぉおおお!!」
「ぶるふぁぁぁあああ!!」
崖を垂直にものすごい速度で駆け上がっていく。
(あんなギャグみたいなノリだけど流石は伝説の魔獣……腐っても鯛は鯛、か)
やはり最後まで呆れた様子で見届ける3人であった。
こうして4人と一匹は無事災厄の谷から生還し、仲間との合流を果たす。
当然テップの乗っている謎の牛みたいな生物が何か気になった面々はそれを尋ね、得意そうに経緯を話すテップに少しイラついたのは言うまでもない。
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コメント
凛として葱
ベヒーモスはバ○スで倒せますか?
ノベルバユーザー9588
流石に無いわ
親友殺しかけてんだぞ
失敗したら死ぬ状況に追い込んどいて活躍も何も無いわ
世界るい
あ、作者です。いつも読んでいただきありがとうございます。
そうなんです。たまにはテップ君も活躍して欲しいのでちゃっかり大手柄ですw
ねる
え⁉︎テップ…